Q&A

2023年2月28日 火曜日

民法・不動産登記法等の改正等 その2(弁護士 山口毅大)

山口毅大弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

 民法・不動産登記法等の改正等 その2 ~共有物の管理の範囲の拡大・明確化~改正民法等の施行が迫っています。共有物の管理等でお困りごとがございましたら、ぜひ弁護士にご相談ください。

 

1 はじめに

 2021年4月21日、民法・不動産登記法等の改正等がなされました。この改正等の内容は、多くの市民の方に影響を与える大改正です。ただ、その改正点等の内容は、多岐にわたります。そこで、今回は、民法の共有物の管理の範囲の拡大・明確化されたことについて、解説いたします。

2 義務の明確化

 ⑴ 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
  現行民法では、単独で占有権原がない共有者が共有物を占有した場合、他の共有者に対し、いかなる義務を負うのかについて、明確になっていませんでした。
  今回の改正では、不必要な紛争を防止するために、この義務の内容を明確にしました。

 ⑵ 改正民法では、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除いて、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うということになりました(新民法249条2項)。
  さらに、共有物を使用している共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならないことが明記されました(新民法249条3項)。遺産共有の場合も、相続の承認をした共同相続人は、遺産を使用するに際して、善良な管理者の注意義務を負うことになりました。なお、熟慮期間中は、従前のとおり、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理すれば足ります(新民法918条)。

3 管理行為の範囲に関する改正

⑴ 現行民法は、共有物に変更を加える場合、共有者全員の同意が必要とされていました。ですが、これを全てに適用すると、実質的には、共有者に与える影響が小さい場合であっても、反対者がいれば変更ができなくなり、円滑な共有物の利用、管理に支障が生じる場合がありました。
  そこで、改正民法では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更(以下「軽微変更03」といいます。)は、各共有者の持分の価格の過半数で決することができるものと規定されました(新民法251条1項、252条4項)。「形状の変更」とは、その外観、構造等の変更を、「効用の変更」とは、その機能や用途の変更のことをいいます。いかなる場合に、軽微変更にあたるのかについては、変更箇所及び範囲、変更行為の態様及び程度等を総合して判断されます。具体的に、舗装行為や大規模修繕工事は、原則として、軽微行為にあたると考えられます。

⑵ また、現行民法のもとでは、共有物に対する賃借権その他の使用を目的とする権利(以下「賃借権等」といいます。)の設定は、原則として、管理行為であり、持分の価格の過半数で決することができるとする判例がありました(最判昭和39年1月23日集民71号275頁)。ですが、これでは、長期間の賃借権等の設定がなされた場合、共有者による共有物の使用、収益等が制約されるので、全員の同意が必要であると考えられていましたが、その区別の基準が不明確でした。
  そこで、改正民法では、一定の期間を超えない短期賃借権等の設定を除く、賃借権の設定等は、共有者全員の同意が必要になるとされました(新民法252条4項)。具体的に一定の期間を超えない短期賃借権等の設定とは、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等については10年、それ以外の土地の賃貸借等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6ヶ月を超えないものがその対象となります。ここで注意しなければならないこととして、建物所有目的の土地賃借権等の設定、建物賃借権の設定が挙げられます。まず、建物所有目的の土地賃借権等の設定は、仮に、契約で存続期間を5年以内と定めても借地借家法により、存続期間が30年となってしまうので、一時使用目的である場合を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法3条、25条)。また、建物賃借権の設定も、仮に、契約で存続期間を3年以内と定めても、借地借家法により、正当の事由があると認められない限り、契約の更新をしない旨の通知をすることができない以上、不更新条項付定期建物賃貸借、取り壊し予定の建物賃貸借、一時使用目的の建物賃貸借を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法28条、38条1項、39条1項、40条)。

4 施行日と経過措置
 

 今回の民法等の改正は、改正された部分との関係で施行日が異なりますので、注意が必要です。なお、不動産登記法の改正に関する部分を除く民法の改正部分については、2023年5月1日から施行されます。
 それ以外にも、今回の民法等改正において、個別に経過措置が定められていますので、個別具体的に、改正された民法等が適用されるかどうかについて、確認する必要があります。基本的な考え方は、施行日以後は、既に生じている権利関係についても改正後の規定が適用されることを前提にして、経過措置を講ずべき規定が個別に定められています。

5 ご不明な点があれば、ご相談へ

 以上のとおり、共有物の管理に関する基本的な改正事項に絞って、解説してまいりましたが、これまでの現行法の考え方を踏まえる必要や他にも留意すべき改正点がございますので、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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2023年2月3日 金曜日

突然、夫(妻)や子どもが逮捕に!?何をしたら良いの?家族ができることは?(弁護士 長谷川拓也)

長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。
 
 ある人について、「逮捕」になった旨のニュースを聞いたとき、どういった印象を抱くでしょうか。

・きっと悪いことをしたのだろう

・自分は真面目に生活しているので関係がないことだ

 逮捕(勾留)という言葉のみを聞いた時、多くの方は、自身には無縁のこととして捉えているように思います。

 

 しかし、一方で、弊所で受けるご相談の中には、

・警察官が任意の事情聴取だと言って夫(妻)を連行したのですが、1日経っても帰ってきません。

・子どもが事件を起こしてしまったようで、○○警察に捕まっているとの連絡を警察官より受けました。助けてあげたいのですが、何ができるでしょうか。

といったご相談が少なくありません。

 

 多くの刑事事件では、逮捕(勾留)は、家族にとって、突然のでき事です。家族は、本人と話して本人の状況や事件の内容を知ることすらできず、心配や不安の中で、本人のために何かできることはしたいものの、何ができるか分からず、適時適切に行動することができなくなってしまうことは当然です。

 

 家族が本人のためにできることは多種多様です。

 しかし、多くの方にとっては、刑事事件は、冒頭で述べたとおり、あまり馴染みの深いものではありません。そのため、突然の逮捕(勾留)に適時適切に対応のうえ、結果として、本人の処遇を良くするためには、家族のみの力では困難です。

 

 そのため、本人のため、専門家である弁護士と家族が連携をとっていくことは、必要不可欠です。

 

 刑事事件では、経済的に弁護士に依頼することが難しい場合においても、国が国の負担で弁護人を付けることとなっています(国選)。

 

 もっとも、すべての刑事事件に国選の弁護人が付くものではありません。

 

 例えば、詳細は割愛いたしますが、逮捕段階(勾留前)は、国選の対象外であり、逮捕(勾留)の罪名によっては、そもそも、国選が付く対象ではないこともあります。

 

 更には、国選は、裁判所や弁護士会等の複数の機関を通じ、個別の担当弁護士に打診・連絡をするという制度の都合上、本人と弁護士の接触は、逮捕時より起算して、3~4日以上を過ぎた頃です。

 

 その上、国選の場合、弁護士は、本人との接触以前には、家族の連絡先はおろか、本人に家族がいるかも知りません。また、固定電話を持たずに、まして、LINE等が主流の昨今においては、家族の電話番号を覚えていないことも少なくありませんので、弁護士が家族との連絡を容易に取り合うことができない場合もあります。

 

 刑事事件は、帰結によっては、本人の人生を左右するものであり、初期段階での対応が極めて重要です。

 

 弊所では、半世紀以上の歴史の中で、多くの刑事事件を取り扱ってきましたが、早期の段階でご依頼をいただいたため、適時適切に初動対応を図ることができ、結果として、本人の処遇をより良いものにすることができた例は少なくありません。

 

 突然、夫(妻)や子ども等の家族が逮捕になった際には、家族のみで抱え込んでしまい、何をしたら良いのか慌てず、まずは、早期の段階で弊所にご相談にお越しいただけますと幸いです。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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