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夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

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 離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
 しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
 では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。 

 

◆財産分与とは?
 財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
 婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
 財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
 財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。

 基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
 ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。

 

◆別居前にできること
 そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
 通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
 もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。

 

◆裁判所を通して行う財産調査
 では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。

1.調査嘱託の申立て
夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
 そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
 調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
 調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
 ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
 例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
 その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
 私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。

2.【2026年4月~新制度】相手方に対する情報開示命令
2026年 4月に施行される改正家事事件手続法と人事訴訟法で、新たに当事者に対する情報開示命令という制度が導入されます。
この制度の対象となっているのは、財産分与に関する調停・審判事件や離婚調停、財産分与を求める内容の申立てがなされた離婚訴訟事件の他、婚姻費用や養育費、扶養料に関する調停・審判事件です。
これらの事件において、裁判所が必要があると認めるときに、当事者に対し、収入や資産の状況に関する情報開示命令を出すことができることになります。そして、開示を命じられた当事者が、正当な理由なく開示をしなかったり、虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処することができるという制裁まで導入されました。
情報開示命令は当事者に対して出されるものですので、第三者だけが持っていて、当事者が入手できないような情報については調査嘱託、第三者が持っているけれど当事者が入手可能な場合は、調査嘱託と情報開示命令の両方が選択肢となりえます。一般的には、第三者に対する調査嘱託の方が実効的な場合が多いと考えられますが、守秘義務を理由に回答しない第三者もいるため、状況に応じて手段を選択していくことになると考えられます。

 

◆別居前にある程度把握しておこう
裁判所における手続きをスムーズに進めるためには、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。

 弁護士 中瀬奈都子

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離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

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離婚したい!となったときに、一番に頭に浮かぶのはお金の問題ではないでしょうか。
別居期間中の生活費、養育費、財産分与、年金分割、不貞行為やDVなどの慰謝料・・・後悔することがないよう、相手方としっかり話し合い、納得のいく合意を形成する必要があります。
今回は、養育費について取り上げます。

 

■「養育費」とは?

 

未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。
離婚後、子どもと一緒に暮らしていない親も、子どもの親である以上は、扶養義務があり(民法877条1項)、離婚をしても養育費を分担する義務があります。
その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として「養育費」を請求することができますが、通常は、子どもを育てている親が他方に対して、「養育費」の支払いを求めます。

【ポイント】
・離婚をしても、親であることはかわらないので、監護者でない親も養育費を分担しなければならない。

 

■「養育費」はいくらもらえるものなの?金額のほかに決めるべきことは?

●それでは、離婚後、私が子育てをするとして、相手方にどれくらい「養育費」を支払ってもらえるでしょうか。
基本的には、「婚姻費用」を決める場合と同じです。
いくらにするかは、夫婦で自由に決められます。
まずは、夫婦間で話し合いをし、協議で決まらなければ、調停の手続の中で、金額や支払方法を話し合うことになります。通常は、離婚条件を決めるにあたって「養育費」についても話し合うため、離婚調停を申し立てて、その中で話し合うことが多いです(養育費を決めずに離婚をして、後で養育費分担の調停を申し立てることもできます)。
もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、離婚訴訟の中で(あるいは養育費分担の審判手続の中で)、裁判官に決めてもらうことになります。
調停、審判、訴訟といった裁判所の手続きを利用する場合、「養育費」は、裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用算定表」をもとにして、計算することになります。
そのため、夫婦間で話し合う際にも、合意に至らず裁判所の手続きにうつることを想定して、「算定表」をもとに決めることが多いです。

 

●「養育費・婚姻費用算定表」が2019年12月23日に改定されました!
2019年12月23日に新しい「養育費・婚姻費用算定表」が公表されました。
最新の統計資料に基づいて更新されたもので、従前の「算定表」よりも、一般的には増額されています!
★新しい「算定表」はこちら!

 

●新しい「算定表」を見てみましょう
「算定表」の見方は、まず子どもの人数と年齢に合った表を選び、義務者(支払う側の配偶者)の年収欄と権利者(支払われる側の配偶者)の年収欄が交差する点を確認します。そこに書いてある金額が、標準的な「養育費」の額です。
なお、年収については、給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見ることになります。

例:会社員の夫 年収400万円  パートの妻 年収 75万円 
  子ども 6歳 離婚後、妻が親権者として子育てする場合

→ まず、表11を見ます。

縦軸(義務者の年収/万円と記載されている軸)の左側の数字で「400」のところから右方向に線をのばします。横軸(権利者の年収/万円と記載されている軸)の下側の数字で「75」のところから上に線をのばします。この二つの線が交差する、「4~6万円」が、義務者が負担すべき婚姻費用の標準的な月額を示しています。

 

●いつまで支払ってもらうか(成人まで、と諦めないで)
 「婚姻費用」と違って、「養育費」の場合、支払いの終期を決める必要があります(「婚姻費用」はその概念からおのずと、終期は「別居又は婚姻関係を解消する時」と決まります)。
 養育費分担義務の対象である子どもとは、未成熟子、つまり、自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいうとされています。
 一般的には、成人して働く能力があれば未成熟子とは言えませんが、心身の障害によって働けない場合は成年に達していても未成熟子と言えますし、夫婦の収入や学歴、社会的地位から子どもが大学に進学してしかるべき場合は大学生も未成熟子と言えます。
 夫婦双方が大学を卒業しており、離婚時の子どもの年齢からして進路がある程度明確になっているケースの場合、大学に進学することを前提に終期を決めるケースが多いです。
 その場合、「子どもが大学を卒業するまで」という決め方ですと、浪人や留年等によって卒業する年がのび、終期をめぐる争いが生じかねません(また、不特定な文言にすると、強制執行する際に問題になり、強制執行できないということもありえます)。そのため、「22歳に達した後に到来する3月末日まで」などと明確に決めておくことをおすすめします。
 子どもの心身の状況や就学状況はまちまちです。その子に応じた終期を決めることをおすすめします。終期をどう決めるかや、後に争いにならない文言の定め方は、お子さんのことだからこそ、とても重要です。是非、弁護士にご相談ください。
【ポイント】
・養育費の支払終期は、必ず成人までというわけではない。
・子どもの心身の状況や就学状況、親の学歴等によって、成人時を超えた終期を決めることも可能。
・後に争いにならないような文言にしておくことも重要。弁護士にご相談を!

 

 川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。     
 女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
 ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

 

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【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

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未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。この生活保持義務について、改正法第817条の12第1項に明記されました。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができますが、通常は、離婚後に子どもを育てている親が、他方の親に対して、養育費の支払いを求めます。
しかし、養育費が支払われている割合は決して高くはありません。厚生労働省が実施した調査によれば(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、「現在も養育費を受け取っている」と回答した世帯は、母子世帯で28.1%、父子世帯ではわずか8.7%にとどまっています。つまり、7割以上の母子世帯、9割以上の父子世帯が養育費を受け取れていないのが現実です。
このような状況の中、養育費がきちんと支払われる仕組みを強化する目的で法改正が行われました。改正法が施行される2026年4月から、養育費の支払いを確保するための制度が導入されます。具体的に見ていきましょう。

1.「法定養育費」の創設
(1)「法定養育費」とは?
これまでは、離婚時に養育費の金額を取り決めていない場合、調停や審判といった裁判所の手続きを経なければならず、養育費が支払われるまで空白期間が生じていました。
今後は、離婚時に合意がなくても、離婚届けを出した時点から即座に暫定的な養育費として、子ども一人あたり月額2万円の支払いを請求できるようになります。
1人あたり月2万円は「少なすぎる」と感じる方も多いかと思います。このような意見に対して、法務省は、法定養育費は、親の間で取り決めがされるまでの間の暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めがない場合でも、法律に基づき直ちに一定額の請求権を発生させることで、離婚直後の子の生活が不安定になるのを防ぐことが目的と説明しています。つまり、法定養育費は、暫定的なものなのです。

(2)「算定表」との使い分けが重要
ここが混乱しやすいポイントなのですが、「2万円しかもらえない」というわけではありません。
改正法は、話合いや裁判所の手続きによって、双方の収入や生活水準にあわせた、生活保持義務の履践として適切な額を決定することを前提としています(法定養育費は、それまでの「つなぎ」なのです。)。
なお、裁判所の手続きの中で、どのように、その適切な額を決めているかは、こちらのコラムをご覧下さい。
整理すると、養育費について合意できないまま2026年4月1日以降に離婚した場合に、まずは法定養育費の制度を利用しつつ、家庭裁判所の調停手続などで適切な養育費を決める、という二段構えで進めていくことができるようになるのです。
【注意!】法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚するケースが対象です。ご注意ください。

2. 先取特権の付与
これが実務上、最もインパクトのある変更だと言われています。
これまで、相手が支払わない場合、差し押さえをするには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、裁判所が作成した特別な書類(調停調書、審判書や判決書)が必要でした。今回の改正で養育費請求権に先取特権が付与されたことで、法定養育費の規定に基づき、あるいは、公正証書になっていない合意文書に基づいて、相手の給与などを差し押さえられるようになります。
但し、先取特権が付与される額は、子ども1人あたり月8万円とされていることに注意が必要です。

3. 財産に関する情報開示命令(改正家事事件手続法第152条の2)
適切な養育費の額を決めようと、養育費の調停を申立てても、相手が給与明細や源泉徴収票といった収入情報を明らかにしないことがあります。勤務先が分かっていれば、勤務先に対して調査嘱託の申立てをして対応することができましたが、今般、家事事件手続法の改正によって、裁判所が必要があると認めるときに、申立て又は職権で、当事者に、収入・資産の情報を開示することを命じることができるようになります。そして、この命令に正当な理由なく背き、情報を開示しなかったり、嘘の情報を開示したりしたときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができるという制裁も導入されます。

4.強制執行手続きのワンストップ化
養育費が支払われていない場合、相手の給与を差押えるということを検討される方も多いかと思います。もっとも、相手がどこで働いているかわからない場合、給与を差押えることができません。そのような場合に勤務先を把握するための手続きとして、民事執行法は、財産開示手続や給与債権についての第三者からの情報取得手続を定めています。もっとも、差押えなどの強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きは、別個の手続きであるため、債権者は、その都度、申立てをしなければなりませんでした。
今回、民事執行法が改正され、養育費や婚姻費用については、財産開示手続きや第三者からの情報開示手続きを申し立てた場合、これらの手続きで分かった給与に対して差押えの申立てをしたとみなされるようになります。つまり、裁判所への1度の申立てで、勤務先の特定、給与の差押さえまでを連続して行える仕組みが整えられました。

5.補足:共同親権になると養育費はどうなる?
よくある誤解に「共同親権になれば、お互い親なのだから養育費は払わなくていいのでは?」というものがありますが、これは間違いです。
親権のかたちに関わらず、親には子どもに自分と同程度の生活を保障する「生活保持義務」があります。 共同親権であっても、基本的には、子どもと一緒に暮らして直接養育している親(監護者)に対し、他方の親が支払う形は変わりません。
(ただし、父母が一定の期間ごとに子どもを交代で監護する場合(監護の「期間の分掌」)、その内容によっては実態を考慮して金額が調整されるケースも出てきうると思われます。)

6.まとめ
今回の法改正で、養育費が支払われるようにするための方策が増えます。養育費について揉めている、養育費が支払われず困っているという方は、諦めず、弁護士にご相談ください。
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

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藤田温久弁護士が新かながわ(2026年5月3日・10日号)に寄稿しました

2026年5月15日 金曜日

藤田温久弁護士については、こちらをご覧下さい。

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憲法記念日にあたって
川崎合同法律事務所弁護士 藤田温久(寄稿)

憲法実現の道こそ
世界平和への道

5月3日は、憲法記念日です。改憲の危険性などについて、川崎合同法律事務所の藤田温久弁護士に寄稿してもらいました。

■明文改憲の「危機」
今年1月の総選挙の結果、再び、明文改憲の危険が大きく浮上した。
自民・維新、国民民主、参政などの改憲賛成派の衆議院における議席数が改憲発議に必要な3分の2をはるかに超えただけではない。

高市首相は、自民を右からあおってきた維新との連立合意に改憲を盛り込み、4月12日の自民党定期大会では、自衛隊法すら無視し制服着用の現役女性自衛官に君が代を歌わせ、「(憲法改正の)時は来た」と叫び、憲法審査会の動きを加速しているのである。

■何のための改憲か
安倍内閣以降、改憲派は世界情勢の悪化により急速な防衛力の強化が求められているとし、その足かせとなっている憲法9条を変えねばならないと主張してきた。

「世界情勢の悪化」は、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル、中国の台湾政策などを口実に、バイデンらが唱えてきた「権威主義国VS民主主義国」の対決の時代となった。日本は同盟国、同志国とともに「権威主義国」と闘える体制を築かねばならないというわけだ。

■崩壊した改憲の根拠
しかし、第2次大戦後、国連憲章において、集団的安全保障による軍事的措置、自衛権の行使以外の戦争は原則として不法法化された。その結果、ベトナム戦争など多くの戦争は「自衛権」行使なので国連憲章違反ではない等と「弁明」されてきた。

ところが、今年1月4日、米国はベネズエラに対し一方的軍事攻撃を敢行し大統領夫妻を拉致した。トランプ大統領は、政権転覆、石油利権獲得が目的であったことを微塵もなく語り、国際的非難に対し、「私の行動を決めるのは私の道徳心だけだ」と国際法に拘束されないことを公言するに至った。つまり、米国自ら「ならず者国家」であることを自認したのだ!

次いで、2月28日、米国とイスラエルはイランに対し、大規模な一方的武力攻撃を開始し最高指導者ハメネイ師など政権要人多数を殺害した。その後も攻撃はエスカレートし女子小学生ら175人、現在3000人を超す市民が爆殺され2万6000人以上が負傷している。

トランプ大統領は、「米国の意図を持つ邪悪な体制の転換」を目的とする「予防的攻撃」「先制攻撃」であることを自認している。いずれも、国連憲章・国際法を一顧だにしない攻撃の自認である。

まさに、70年以上国連決議に反しガザなどを不法占拠し、パレスチナ人へのジェノサイドを続けてきた折り紙付きの「ならず者国家」イスラエルとの共演である。

高市首相は、相次ぐ米国の暴挙に対し全く批判することができない。しかし、「ならず者国家」を「同志国」として共に戦争する国になることは、日本も「ならず者国家」になることだ。日本は戦後国際法秩序の中では、もはや、改憲の目的は崩壊したことは明白である。

■日本が目指すべき道
イラン攻撃は、国際法違反だけでなく世界経済、世界の人々の生活と安全を危機に落とし込めるものである。世界で、日本で戦争の停止を求める市民の声が広がっている。

このため、3月訪米しトランプにへつらった米国一辺倒の高市首相ですら「日本にはできることとできないことがある」と説明しイランへの派兵要請にすぐに応じることはできなかった。「できないこと」の根拠は憲法9条だったという。

まさに、憲法9条の戦争を止める力=実効性が示されたのだ。前述の通り、改憲の根拠は崩壊した。

今こそ、日本国憲法の理想、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の市民と共に闘うときが来たと思う。改憲ではなく、憲法の理想の実現のために!

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【4/7開催】司法修習生(予定者)・経験弁護士向け学習会・事務所説明会に参加しませんか

2026年4月2日 木曜日

弊所では、司法修習生(予定者)・経験者向け学習会・説明会を開催しております

 

【日時】2026年4月7日(火)18:30~(終了後、懇親会予定)

【場所】川崎合同法律事務所

【テーマ】子どもに関わる法律実務

【講師】弁護士 前田 ちひろ(子どもの権利委員会等所属)

 

【お申し込み】

メール:hasegawa★kawagou.org(担当弁護士:長谷川拓也)
※件名に「学習会申込み」と記載の上、★をアットマークに変えてメールください。

TEL:044-221-0121

・JR「川崎駅」より徒歩約9分
・京浜急行「川崎駅」より徒歩約5分

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畑 福生弁護士がFMヨコハマに出演しました

2026年3月19日 木曜日

畑福生弁護士については、こちらをご覧下さい。 

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 畑 福生弁護士が、FMヨコハマ「Kiss & Ride」(2026年2月2日放送)の コーナー「弁護士に聞いてみよっ」にて、労働問題について解説しました。

​ 残業代は、ボーナスでなく時間外労働を抑制するための使用者へのペナルティであることや解雇規制などについてお話ししています。

 労働問題は特に早めの相談が鍵になりますので、気兼ねなく弊所にご相談いただけますと幸いです。

放送は​以下からご聴取いただけます(最低1年間は視聴可能とのことです)。

 

 

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中学校で議論に関する講義・ワークショップを行いました(弁護士 畑 福生)

2026年3月12日 木曜日

畑福生弁護士については、こちらをご覧下さい。 

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 2025年12月17日、一般社団法人 Omoshiroさんの運営する、横浜市立寛政中学校内居場所において、『他人を「言い負かす」 「論破する」ではなく「最大多数の最大幸福」を目指す「話す力」を学ぶ』と題して、議論に関する講義を行いました。

 「論破」や「言い負かす」という言葉が独り歩きしがちな昨今、言葉を使って市民の権利を守る弁護士として、議論というものはケンカをしないでみんなの納得を見つけるための人類の発明であることをお話ししました。

 交渉においては、独りよがりにならずに、相手のニーズをしっかりとつかんで双方「WinーWin」の関係を作ることが重要になります。

 そのことを実感してもらうために、ワークショップとして、「オレンジゲーム」を取り入れてみました。二手に分かれて一つしかないものを取り合うというお題の中で、互いに交渉して自己の願いを達成してみようというゲームです。

 このお題は、よくよく話を聞いていると双方実は欲しいものの部分が異なり、一つしかない物も分け合うことができる(例えば姉妹がオレンジを取り合う場面で、姉はマーマレードジャムを作るために皮がほしい、妹はジュースを作るために果肉がほしいというもの)ようになっており、「WinーWin」の状況を体験することができるようになっています。

 今回はオレンジ以外にも、大きな画用紙、特大の段ボール、包装のきれいなクッキーに関するお題も用意して各グループが違うお題で挑戦できるようにしてみました。

 以下の写真のように、お題(自らの求めるもの)の書かれたついたてを用いて、お互いに相手の要望が分からないようになっているのがポイントです。

 中学生たちは熱心に取り組んでくれていました。交渉前の作戦会議では、「このように交渉してみよう」と考えていたことが、いざ交渉の場になると前提からひっくり返ってしまい、一から相手の要望を真摯に聞いてみようと努力する姿が見られました。

 私たちは、法律問題の講義も多く依頼されますが、今回のように弁護士としてのスキルに関する講義というのも新鮮で楽しかったです。

 弊所では幅広く講義・講演のご依頼お受けしておりますので、是非ご検討ください。

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【2026年4月施行】離婚後の親子関係はどう変わる?~「共同親権」の基礎知識~【選択的共同親権が導入されます!】(弁護士 中瀬奈都子)

2026年3月9日 月曜日

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2024年5月に成立し、今年(2026年)4月1日から施行される改正民法。これにより、約80年ぶりに「離婚後の単独親権」という原則が見直され、「離婚後の共同親権」が選択肢として導入されます。

つまり、これまで、離婚後は必ず父か母の【どちらか一方】に親権を定める必要があったものが、今回の改正により、離婚後も「共同親権」を選択できるようになるのです。すでに離婚しているケースでも適用され、単独親権から共同親権へ変更することができるようになるため、いま子育て中の、既に離婚した方、現在離婚を検討されている方にとって大きな変更と言えるのではないでしょうか。

 

  1. 改正のポイント:選択制の導入

新制度では、離婚時に以下のいずれかを父母の話し合いで決めます。

  • 共同親権: 父母双方が親権を持つ。
  • 単独親権: どちらか一方が親権を持つ。

もし父母間の話し合いや調停がまとまらない場合は、裁判所が「子の利益」を最優先に考え、どちらにするかを判断します(新民法819条2項、5項、7項参照)。共同親権とするか、単独親権とするかについて、原則・例外の関係があるものではないとされています。

 

  1. 「共同」とはどこまで協力するのか?

「共同親権になったら、日常のささいなこともすべて元配偶者の許可が必要なの?」という不安の声をよく耳にします。

実務上の運用は以下のようになると整理されています。

事項

決定の仕組み

具体例

身上監護の

重大行為

父母が共同で決定

転居、進路の決定(私立小・中学への入学、高校進学・退学、就職、長期海外留学など)、大きな手術など心身に重大な影響を与える医療行為

財産管理

行為

父母が共同で決定

子ども名義の預貯金口座の開設、子どもに対して債務を負担させる契約の締結、子どもの所有する財産の処分など

日常

行為

子どもと同居している親が単独で決定可

日々の食事、習い事の選択、軽微な病気の受診など

急迫の

事情

子どもと同居している親が単独で決定可

緊急手術、虐待からの避難など

  1. DVや虐待がある場合はどうなる?

改正にあたって最も議論された点です。

新民法819条7項は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮しなければならないと定めつつ、以下に述べる事由にあたる場合のように共同親権と定めることによって子の利益を害すると認められるときは、単独親権とし、父母の一方を親権者と定めなければいけないと定めています(必要的単独親権)。

単独親権にしなければならない場合は、以下のとおりです。

  • 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき【親子の関係性に着目した必要的単独親権事由】
  • 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれのある場合など、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき【父母の関係性に着目した必要的単独親権事由】

つまり、裁判所が「DVや虐待のおそれがある」と判断した場合には、共同親権を認めてはならないとされているのです。

 

4.裁判所はどう判断する?

改正後は、父母の協議や調停がととのわない場合、裁判所が「子の利益」を基準に判断することになります。単に「親がそうしたいから」ではなく、子どもにとってどちら良いのかがポイントです。

改正法施行後の事案の集積が待たれますが、裁判所は、主に以下の要素を総合的に見るものと考えられます。

  1. 父母と子との関係性

 ・子の面前で父母間で口論を繰り返していたり、子に対して他方の親の悪 口をことさらに言ったりと子どもを紛争に巻き込まないための配慮に欠けていないか

 ・養育費をきちんと支払っているか

 ・年長の子どものケースは、子どもの意思を尊重する観点から、子どもに父母双方の関わりを求める意向があるか、一方の親に対する拒否的感情があるかなども重要視される

  1. 父母の関係性:親権の共同行使のために最低限な意思疎通が可能か(頻繁な連絡や友好関係までは不要)。

 

5.具体的なケースを考えてみましょう

  • ケース1

性格の不一致で離婚することになったが感情的な対立が低く、いわゆる円満離婚。別居中も父は定期的に子と面会しており、母ともLINEで習い事についてや体調についての報告をやり取りできている。父・母ともに「子どもの進路については二人で話し合いたい」と考えている。

  • 裁判所の判断ポイント:
    • 父母間に最低限のコミュニケーションが可能である。
    • 双方が養育に関わる意欲があり、対立が激しくない。
  • 結論: 子の健全な成長のために、共同親権が妥当とされる可能性が高いと考えられる。

ケース2:

☛婚姻中、父から母への身体的暴力(DV)があった。現在、母と子はシェルターを経て避難中。父は「反省している、親権は譲らない」と主張している。

  • 裁判所の判断ポイント:
    • 上述のとおり、改正法では、DVや虐待の恐れがある場合は、必ず単独親権としなければならない。
    • 父母が対等に話し合える関係になく、共同親権にすると母子の安全が脅かされる。
  • 結論: 父の意向に関わらず、母の単独親権となる。

 

ケース3:

☛DVなどはないが、離婚の経緯で激しく対立。母は「顔も見たくない、一切関わらないでほしい」と主張し、他方で、父は「養育費も払うし、教育にも関わりたい」と主張。話し合いが全く成立しない。

  • 裁判所の判断ポイント:
    • 意思疎通の困難さがどの程度かが焦点。
    • 単に「嫌いだから」という理由だけで単独親権になるわけではありません。他方の親に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動があり、協力関係を構築できない理由があるかがポイントになります。
  • 結論: 暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の構築を阻害しているような場合、そのことだけで協力関係の構築が期待できないとするのは、子の利益の観点から見て慎重に検討が必要とされています。より具体的な事情次第というところでしょう。

 

 

まとめ

共同親権導入後、単独親権か共同親権かという争いや、共同親権にした場合に何が日常行為で何が身上監護上の重大行為かといった争いが生じ、紛争が増える、あるいは紛争が複雑化することが予想されます。

親権について問題になりそうな時には、是非、お気軽に弁護士にご相談ください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

調停? 弁護士を入れて交渉? ―あなたの離婚に適切な方法選択―(弁護士 川口彩子)

2026年3月5日 木曜日

1 離婚するときに決めるべきこと

(1)離婚にあたり,最初の壁は「離婚をするかどうか」です。お互いに離婚を望んでいる場合もあるでしょうし,片方は離婚を決意していても,もう片方の気持ちが追いつかない場合もあります。条件次第では離婚してもよいという気持ちはあるけれども,条件が折り合わない場合は合意できません。

(2) 次に問題となるのは「親権者」です。20歳未満(2022年4月1日からは18歳未満)のお子さんについては,父母のいずれかを親権者に指定しなければなりません。

 ※なお、民法の改正に伴い、2026年4月1日からは、離婚届を提出する際に、親権者に関して協議がととのっていない場合(単独親権にするか、共同親権にするか、単独親権にするとして父母のどちらを親権者にするかについて合意できていない場合)であっても、裁判所に対して親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てをしていれば、離婚届を受理してもらえるようになります(新民法765条1項2号)。

(3) 上記(1)(2)については,離婚の前に必ず決めなければなりませんが,養育費,慰謝料,財産分与,面会交流,年金分割などについては,何も取決めをせずに離婚することも可能です。とはいえ,離婚してしまうと夫婦は他人となるわけですから,あらかじめ離婚前に決めごとをしておくのが望ましいでしょう。

2 離婚の方法
 「離婚届」を提出して離婚することを「協議離婚」といいます。3組に1組が離婚をする時代などと言われていますが,国内の大部分の離婚は協議離婚です。
 当事者間で協議が整わないとき,あるいは当事者が家庭裁判所調停での解決を望むときは,家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。調停で離婚についての合意が成立したときは「調停離婚」(場合により「審判離婚」)となります。
 調停での合意ができなかったときは,離婚の成否について裁判で決着をつけることになります。判決で離婚が認められた場合は「裁判離婚」,裁判を進めるなかで当事者が合意し,裁判手続を利用して離婚を成立させることを「和解離婚」といいます。離婚の裁判は「調停前置主義」といわれ,調停での話合いを試みてからでないと提訴することができません。ただし,例外的に,相手方が行方不明の場合や,収監中であるなど,調停における話合いが不可能な場合には,調停を経ずに裁判に進むことができます。

3 協議離婚か調停離婚か
(1) 当事者間で話し合いが進められそうな場合
法律相談で解決水準を知る
 当事者間の話し合いで決めごとができそうな場合は,協議離婚でよいと思います。ただし,協議離婚の場合,法的に決められるのは,離婚するということと親権者をどちらに指定するかということだけになります。
 特に,養育費など,今後も支払いが続く場合には,公正証書を作成するなどして,万一,不払いがあった場合に速やかに財産の差押えができるよう,備えておいた方がよいでしょう。
 取決めをしたい内容について,弁護士がご相談に乗ることが可能です。調停や裁判の事例をもとに,どこまで請求ができるのか,どの水準で解決するのが妥当かなどアドバイスをいたします。 

 

(2) 弁護士を代理人に選任して,協議離婚を目指す場合
弁護士は中立な第三者ではない
 ご相談を受けるなかで,「第三者に入ってもらって話し合いをしたい」と言われることがあります。ただ,弁護士は中立な第三者とはなりえず,ご相談を受けた方の立場に立ってしか行動できません。双方の言い分を聞いて,弁護士がジャッジするということはできませんので,そこはご理解をいただいています。
 協議離婚で弁護士が前面に出てくるのは,ご相談を受けた方の「代理人」として,相手方と離婚の協議をする場合です。

話合いでの解決が可能そうか
 ただ,相手方が離婚を頑なに拒んでいる場合,あるいは双方が強く親権を主張している場合など,弁護士が話をしたところで到底合意が得られなそうなケースでは,この過程を省略し,最初から調停を申し立てる場合も少なくありません。つまり,これまでの相手方の言動から,協議離婚が可能かどうかを見極め,可能そうだったら代理人として交渉にあたるということになります。

どこまで条件にこだわるか
 離婚,親権では合意ができそうでも,金銭面等のその他の条件での合意が難しそうな場合は,ご相談者がその条件にどこまでこだわるかによります。こちらにも譲歩の余地があるのでしたら,弁護士を代理人として粘り強く交渉していくという道もありますが,交渉の余地が一切ない場合は,弁護士を立てたとしても協議離婚を目指すのは難しいということになるでしょう。

公正証書の作成が必要か
 その他の判断要素としては,公正証書の作成までもっていけるかどうかということもあります。公正証書の作成には,相手方の協力が不可欠です。不払いのときに強制執行を受けることを了承する書類ですから,相手方によっては,応じてもらえないこともあります。公正証書までの作成はしなくとも,現時点では合意書が作成できればそれでよしとするのであれば,交渉による協議離婚の道も見えてきますが,強制執行を可能とする法的な効力を持たせたい,けれども公正証書作成につき相手方の協力を得ることが難しそうな場合は,やはり調停の申立てを選択することになります。調停で合意ができれば,裁判所が作成する調停調書をもとに将来強制執行をすることが可能となります。
 公正証書を作成せずとも,相手方が最後まできちんと支払ってくれるだろうという信頼がある場合は,合意書の作成で終わらせてもよいと思います。また,そもそも将来にわたる支払いの約束がない場合(たとえば一括払いで既に支払いを受けた場合)は,あえて公正証書にする必要はないと言えます。
 合意書に反して支払いがなされなかった場合ですが,未払金を強制的に回収するには,まず民事裁判を起こし,そこで勝訴判決を得てから強制執行手続に進むことになります。

 

(3) 調停離婚に適した場合
相手方の同意がすぐには得られないと思われる場合
 離婚することに同意が得られず,あるいは親権での対立がある場合は,最初から調停を申し立てることになります。必ずしも調停で解決がはかられるとは限りませんが,時間をかけて話し合いをしていくことで,相手方との合意が形成できる場合もあります。調停では,「第三者」である調停委員が,交互に双方の話を聞いてくれますので,その中で気持ちの整理をつけていただくことが期待できます。

相手方と話をすることが難しい場合
 調停の場では,原則として,個別に話を聞かれます。あなたがお話しした内容は,調停委員を通じて相手方に伝わり,相手方の考えは調停委員を通じて聞かされます。相手方の前では委縮して話をすることができない場合や,どちらかが一方的に話し続け口を挟む余地がない場合など,冷静かつ建設的な話し合いができない場合には,裁判所に間に入ってもらって,決めるべき内容に向かって話を整理してもらうことになります。

妥当な解決をはかりたい場合
 相手方が離婚や親権について一応は同意してる場合でも,養育費を極端に低く設定することや,お子さんにとって過負担となる面会交流を条件としてくるなど,一般的な水準からかけ離れた要求をされることがあります。逆の立場では,法外な養育費を請求されているというような場合もあります。

 調停離婚の場合には,裁判所が間に入って解決をはかることになりますので,一般水準とはかけ離れた要求を排除することが可能となります。

決めごとに法的効力を持たせたい場合
 相手方との話し合いが可能な場合は,協議離婚及び公正証書作成でもよいのですが,公正証書を作成するには通常2万円前後の費用がかかります。弁護士をつけなければ,調停の申立て費用は郵便切手代を含めても2000円程度ですから,大きなご負担なく,将来強制執行が可能となる書類を作成してもらうことが可能となります。

 

4 弁護士をつけるメリット
交渉で協議離婚を目指す場合
 概ね着地点は見えているにもかかわらず,当事者同士だとどうしても感情的になって決めるべきことが決められない場合があります。そのような場合,弁護士を入れることによって,淡々と決めるべきことを決めていくことができます。
 また,法律の専門家が提案することで,こちらの提案の妥当性,正当性について信用してもらいやすくなるという効果もあります。
 こちらが弁護士をつけることで相手方にも弁護士がつく場合があり,専門家同士で妥当かつ迅速な解決をはかることが可能となります。

調停での解決を目指す場合
 調停ではその場その場で判断を求められることが多くあります。内容によっては次回までに検討してきますとして回答を留保することもできますが,当事者にはその判断が難しいことがあります。一人で調停に臨むと,裁判所の意図を汲みきれずに,表面上の言葉で一喜一憂し,思うように調停が進められなかったという話をよく伺います。弁護士をつけておらず,当事者一人で調停をしていると,紛争解決を優先するあまり,調停委員から不利な結論を押し付けられることがあります。もちろんこれは調停委員の良し悪しによるのですが,必要以上にあなたの権利が削られないように防御するのが弁護士です。
 弁護士は,現在,裁判所がどのような方向性を目指して話を進めようとしようとしてるのか,言外にある意図を汲んでこちらの対応を組み立てます。こちらが検討すべき点,やっておかなければならない点を的確に把握し,しっかり対策をして,調停に臨みましょう。
 また,財産分与については計算が複雑になる場合も多く,専門家の助言があるに越したことはありません。その他,対立点が多く, 論点が多岐にわたる場合や,たくさんの条件を決めなければならない場合,弁護士は豊富な事例をもとに,あなたの立場を最大限まもりながら,着地点を見つけます。

 既に調停が始まってしまっている方,調停の申立てを考えている方,相手方から調停を申し立てられそうになっている方,ぜひ一度ご相談に見えてください。あなたの現在の状況に応じたアドバイスをさせていただきます。

 

(2026年1月改訂)

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

高市首相 「馬車馬」発言について(弁護士 川岸卓哉)

2026年3月5日 木曜日

川岸卓哉弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

二〇二五年十月、 自民党の高市首相は 就任会見でこう述べた。

「もう全員に働いていただきます。 馬車馬のように働いていただきます。私 自身も『ワークライ フバランス』という 言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります。」

 この言葉が流行語大賞を受賞した裏で、過労死で家族を亡くした遺族たちは憤り、「命を軽んじている」「この言葉のために 私の家族は亡くなった」と訴えた。

この首相の言葉は、単なる個人の決意表明ではなく、 労働時間規制の緩和という明確な政策目理念に基づくものであったと考えざるを得ない。

首相はその後も国会答弁等において、現行の規制により「残業代が減り、生活費のために無理な副業をして健康を損ねる人が出るのを心配している」「企業が過剰に反応し、本来ならもう少し働けるのに乖離がある」などと述べ、緩和の必要性を説いている。

しかし、この論理は極めて欺瞞的である。労働者が生活のために残業を望まざるを得ない状況があるならば、 解決すべきは賃金水準の低さであり、労働時間の延長ではない。健康を守るための規制を、健康を理由に破壊するという論理矛盾は看過できない。

すでに、現行法の下でも三六協定を締結すれば、一か月百時間未満、年九百六十時間までの時間外労働が可能である これは実質的に「過労死ライン」すれすれを法が容認している状態だ。

長時間労働が健康を害する医学的・科学的知見は明快である。

週五十五時間ないし六十時間、 あるいは一日十一時間以上の長時間労働は、脳・心臓疾患の重大な健康阻害を引き起こす。一日五~七時間未満の睡眠では、脳心臓疾患などの過労死が発症するリスク領域にある。健康を確保するためには最低限七時間程度の睡眠が確保できていたかどうかが重要であり、日本人の生活実態を踏まえると、最低でも十二時間から十三時間の勤務間インターバルが必要となる。政権の考える規制緩和は、過労死を防ぐための科学的根拠を無視した暴挙なのは明らかである。

そもそも、日本社会には過労死を生み出すという構造的問題が根深く存在する。

使用者の指揮命令下で残業を命じられる立場にある労働者は自らの生命や健康を管理する主体性を奪われやすい。また、個の都合より組織を優先する会社本位主義や滅私奉公の精神 、そして人間を単なるコストと見なす市場原理が、私生活や睡眠までも成長の資源として消費し尽くしている。この過労死を生み出す前近代的な現実を無視して「労働者の選択」という美名のもとで規制を外すことは、極めて危うい論理である。

労働法は、過酷な労働環境に抗った先人たちが、団結して勝ち取ってきた闘いの歴史の結晶である。過労死弁護団や遺族たちが長年闘い、ようやく勝ち取ってきたのが、長時間労働規制帰省であり、「長時間労働は人の心身を壊す人災である」という法的・社会的な共通認識だ。首相の発言は、この歩みを否定し、前近代的な精神主義へと時計の針を巻き戻すものである。

文化の享受や創造の基盤となるのは、 個人の自由・自律性だ。一人の人間が自らのリ ズムを取り戻し、おかしいことには明確に「ノー」と言える知識と感性を研ぎ澄すこと。私たちが守るべきは、非人間的な規制緩和によって実現する企業の成長効率ではなく、一人の市民が自由な時間を謳歌し、文化に親しむ権利である。馬車馬の如き「使い捨て」を許さない 社会を創るのは、他ならぬ私たち一人ひとりの意志と行動である。

   (この原稿は「ミュージック・マガジン」2026年2月号に寄稿したものです)

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