Q&A
夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)
2026年5月15日 金曜日
中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。
離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。
◆財産分与とは?
財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。
基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。
◆別居前にできること
そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。
◆裁判所を通して行う財産調査
では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。
1.調査嘱託の申立て
夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。
2.【2026年4月~新制度】相手方に対する情報開示命令
2026年 4月に施行される改正家事事件手続法と人事訴訟法で、新たに当事者に対する情報開示命令という制度が導入されます。
この制度の対象となっているのは、財産分与に関する調停・審判事件や離婚調停、財産分与を求める内容の申立てがなされた離婚訴訟事件の他、婚姻費用や養育費、扶養料に関する調停・審判事件です。
これらの事件において、裁判所が必要があると認めるときに、当事者に対し、収入や資産の状況に関する情報開示命令を出すことができることになります。そして、開示を命じられた当事者が、正当な理由なく開示をしなかったり、虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処することができるという制裁まで導入されました。
情報開示命令は当事者に対して出されるものですので、第三者だけが持っていて、当事者が入手できないような情報については調査嘱託、第三者が持っているけれど当事者が入手可能な場合は、調査嘱託と情報開示命令の両方が選択肢となりえます。一般的には、第三者に対する調査嘱託の方が実効的な場合が多いと考えられますが、守秘義務を理由に回答しない第三者もいるため、状況に応じて手段を選択していくことになると考えられます。
◆別居前にある程度把握しておこう
裁判所における手続きをスムーズに進めるためには、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。
弁護士 中瀬奈都子
投稿者 | 記事URL
離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)
2026年5月15日 金曜日
中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。
離婚したい!となったときに、一番に頭に浮かぶのはお金の問題ではないでしょうか。
別居期間中の生活費、養育費、財産分与、年金分割、不貞行為やDVなどの慰謝料・・・後悔することがないよう、相手方としっかり話し合い、納得のいく合意を形成する必要があります。
今回は、養育費について取り上げます。
■「養育費」とは?
未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。
離婚後、子どもと一緒に暮らしていない親も、子どもの親である以上は、扶養義務があり(民法877条1項)、離婚をしても養育費を分担する義務があります。
その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として「養育費」を請求することができますが、通常は、子どもを育てている親が他方に対して、「養育費」の支払いを求めます。
【ポイント】
・離婚をしても、親であることはかわらないので、監護者でない親も養育費を分担しなければならない。
■「養育費」はいくらもらえるものなの?金額のほかに決めるべきことは?
●それでは、離婚後、私が子育てをするとして、相手方にどれくらい「養育費」を支払ってもらえるでしょうか。
基本的には、「婚姻費用」を決める場合と同じです。
いくらにするかは、夫婦で自由に決められます。
まずは、夫婦間で話し合いをし、協議で決まらなければ、調停の手続の中で、金額や支払方法を話し合うことになります。通常は、離婚条件を決めるにあたって「養育費」についても話し合うため、離婚調停を申し立てて、その中で話し合うことが多いです(養育費を決めずに離婚をして、後で養育費分担の調停を申し立てることもできます)。
もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、離婚訴訟の中で(あるいは養育費分担の審判手続の中で)、裁判官に決めてもらうことになります。
調停、審判、訴訟といった裁判所の手続きを利用する場合、「養育費」は、裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用算定表」をもとにして、計算することになります。
そのため、夫婦間で話し合う際にも、合意に至らず裁判所の手続きにうつることを想定して、「算定表」をもとに決めることが多いです。
●「養育費・婚姻費用算定表」が2019年12月23日に改定されました!
2019年12月23日に新しい「養育費・婚姻費用算定表」が公表されました。
最新の統計資料に基づいて更新されたもので、従前の「算定表」よりも、一般的には増額されています!
★新しい「算定表」はこちら!
●新しい「算定表」を見てみましょう
「算定表」の見方は、まず子どもの人数と年齢に合った表を選び、義務者(支払う側の配偶者)の年収欄と権利者(支払われる側の配偶者)の年収欄が交差する点を確認します。そこに書いてある金額が、標準的な「養育費」の額です。
なお、年収については、給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見ることになります。
例:会社員の夫 年収400万円 パートの妻 年収 75万円
子ども 6歳 離婚後、妻が親権者として子育てする場合
→ まず、表11を見ます。
縦軸(義務者の年収/万円と記載されている軸)の左側の数字で「400」のところから右方向に線をのばします。横軸(権利者の年収/万円と記載されている軸)の下側の数字で「75」のところから上に線をのばします。この二つの線が交差する、「4~6万円」が、義務者が負担すべき婚姻費用の標準的な月額を示しています。
●いつまで支払ってもらうか(成人まで、と諦めないで)
「婚姻費用」と違って、「養育費」の場合、支払いの終期を決める必要があります(「婚姻費用」はその概念からおのずと、終期は「別居又は婚姻関係を解消する時」と決まります)。
養育費分担義務の対象である子どもとは、未成熟子、つまり、自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいうとされています。
一般的には、成人して働く能力があれば未成熟子とは言えませんが、心身の障害によって働けない場合は成年に達していても未成熟子と言えますし、夫婦の収入や学歴、社会的地位から子どもが大学に進学してしかるべき場合は大学生も未成熟子と言えます。
夫婦双方が大学を卒業しており、離婚時の子どもの年齢からして進路がある程度明確になっているケースの場合、大学に進学することを前提に終期を決めるケースが多いです。
その場合、「子どもが大学を卒業するまで」という決め方ですと、浪人や留年等によって卒業する年がのび、終期をめぐる争いが生じかねません(また、不特定な文言にすると、強制執行する際に問題になり、強制執行できないということもありえます)。そのため、「22歳に達した後に到来する3月末日まで」などと明確に決めておくことをおすすめします。
子どもの心身の状況や就学状況はまちまちです。その子に応じた終期を決めることをおすすめします。終期をどう決めるかや、後に争いにならない文言の定め方は、お子さんのことだからこそ、とても重要です。是非、弁護士にご相談ください。
【ポイント】
・養育費の支払終期は、必ず成人までというわけではない。
・子どもの心身の状況や就学状況、親の学歴等によって、成人時を超えた終期を決めることも可能。
・後に争いにならないような文言にしておくことも重要。弁護士にご相談を!
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。
投稿者 | 記事URL
【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)
2026年5月15日 金曜日
中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。
未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。この生活保持義務について、改正法第817条の12第1項に明記されました。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができますが、通常は、離婚後に子どもを育てている親が、他方の親に対して、養育費の支払いを求めます。
しかし、養育費が支払われている割合は決して高くはありません。厚生労働省が実施した調査によれば(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、「現在も養育費を受け取っている」と回答した世帯は、母子世帯で28.1%、父子世帯ではわずか8.7%にとどまっています。つまり、7割以上の母子世帯、9割以上の父子世帯が養育費を受け取れていないのが現実です。
このような状況の中、養育費がきちんと支払われる仕組みを強化する目的で法改正が行われました。改正法が施行される2026年4月から、養育費の支払いを確保するための制度が導入されます。具体的に見ていきましょう。
1.「法定養育費」の創設
(1)「法定養育費」とは?
これまでは、離婚時に養育費の金額を取り決めていない場合、調停や審判といった裁判所の手続きを経なければならず、養育費が支払われるまで空白期間が生じていました。
今後は、離婚時に合意がなくても、離婚届けを出した時点から即座に暫定的な養育費として、子ども一人あたり月額2万円の支払いを請求できるようになります。
1人あたり月2万円は「少なすぎる」と感じる方も多いかと思います。このような意見に対して、法務省は、法定養育費は、親の間で取り決めがされるまでの間の暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めがない場合でも、法律に基づき直ちに一定額の請求権を発生させることで、離婚直後の子の生活が不安定になるのを防ぐことが目的と説明しています。つまり、法定養育費は、暫定的なものなのです。
(2)「算定表」との使い分けが重要
ここが混乱しやすいポイントなのですが、「2万円しかもらえない」というわけではありません。
改正法は、話合いや裁判所の手続きによって、双方の収入や生活水準にあわせた、生活保持義務の履践として適切な額を決定することを前提としています(法定養育費は、それまでの「つなぎ」なのです。)。
なお、裁判所の手続きの中で、どのように、その適切な額を決めているかは、こちらのコラムをご覧下さい。
整理すると、養育費について合意できないまま2026年4月1日以降に離婚した場合に、まずは法定養育費の制度を利用しつつ、家庭裁判所の調停手続などで適切な養育費を決める、という二段構えで進めていくことができるようになるのです。
【注意!】法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚するケースが対象です。ご注意ください。
2. 先取特権の付与
これが実務上、最もインパクトのある変更だと言われています。
これまで、相手が支払わない場合、差し押さえをするには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、裁判所が作成した特別な書類(調停調書、審判書や判決書)が必要でした。今回の改正で養育費請求権に先取特権が付与されたことで、法定養育費の規定に基づき、あるいは、公正証書になっていない合意文書に基づいて、相手の給与などを差し押さえられるようになります。
但し、先取特権が付与される額は、子ども1人あたり月8万円とされていることに注意が必要です。
3. 財産に関する情報開示命令(改正家事事件手続法第152条の2)
適切な養育費の額を決めようと、養育費の調停を申立てても、相手が給与明細や源泉徴収票といった収入情報を明らかにしないことがあります。勤務先が分かっていれば、勤務先に対して調査嘱託の申立てをして対応することができましたが、今般、家事事件手続法の改正によって、裁判所が必要があると認めるときに、申立て又は職権で、当事者に、収入・資産の情報を開示することを命じることができるようになります。そして、この命令に正当な理由なく背き、情報を開示しなかったり、嘘の情報を開示したりしたときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができるという制裁も導入されます。
4.強制執行手続きのワンストップ化
養育費が支払われていない場合、相手の給与を差押えるということを検討される方も多いかと思います。もっとも、相手がどこで働いているかわからない場合、給与を差押えることができません。そのような場合に勤務先を把握するための手続きとして、民事執行法は、財産開示手続や給与債権についての第三者からの情報取得手続を定めています。もっとも、差押えなどの強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きは、別個の手続きであるため、債権者は、その都度、申立てをしなければなりませんでした。
今回、民事執行法が改正され、養育費や婚姻費用については、財産開示手続きや第三者からの情報開示手続きを申し立てた場合、これらの手続きで分かった給与に対して差押えの申立てをしたとみなされるようになります。つまり、裁判所への1度の申立てで、勤務先の特定、給与の差押さえまでを連続して行える仕組みが整えられました。
5.補足:共同親権になると養育費はどうなる?
よくある誤解に「共同親権になれば、お互い親なのだから養育費は払わなくていいのでは?」というものがありますが、これは間違いです。
親権のかたちに関わらず、親には子どもに自分と同程度の生活を保障する「生活保持義務」があります。 共同親権であっても、基本的には、子どもと一緒に暮らして直接養育している親(監護者)に対し、他方の親が支払う形は変わりません。
(ただし、父母が一定の期間ごとに子どもを交代で監護する場合(監護の「期間の分掌」)、その内容によっては実態を考慮して金額が調整されるケースも出てきうると思われます。)
6.まとめ
今回の法改正で、養育費が支払われるようにするための方策が増えます。養育費について揉めている、養育費が支払われず困っているという方は、諦めず、弁護士にご相談ください。
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。
投稿者 | 記事URL
【2026年4月施行】離婚後の親子関係はどう変わる?~「共同親権」の基礎知識~【選択的共同親権が導入されます!】(弁護士 中瀬奈都子)
2026年3月9日 月曜日
2024年5月に成立し、今年(2026年)4月1日から施行される改正民法。これにより、約80年ぶりに「離婚後の単独親権」という原則が見直され、「離婚後の共同親権」が選択肢として導入されます。
つまり、これまで、離婚後は必ず父か母の【どちらか一方】に親権を定める必要があったものが、今回の改正により、離婚後も「共同親権」を選択できるようになるのです。すでに離婚しているケースでも適用され、単独親権から共同親権へ変更することができるようになるため、いま子育て中の、既に離婚した方、現在離婚を検討されている方にとって大きな変更と言えるのではないでしょうか。
- 改正のポイント:選択制の導入
新制度では、離婚時に以下のいずれかを父母の話し合いで決めます。
- 共同親権: 父母双方が親権を持つ。
- 単独親権: どちらか一方が親権を持つ。
もし父母間の話し合いや調停がまとまらない場合は、裁判所が「子の利益」を最優先に考え、どちらにするかを判断します(新民法819条2項、5項、7項参照)。共同親権とするか、単独親権とするかについて、原則・例外の関係があるものではないとされています。
- 「共同」とはどこまで協力するのか?
「共同親権になったら、日常のささいなこともすべて元配偶者の許可が必要なの?」という不安の声をよく耳にします。
実務上の運用は以下のようになると整理されています。
|
事項 |
決定の仕組み |
具体例 |
|
身上監護の 重大行為 |
父母が共同で決定 |
転居、進路の決定(私立小・中学への入学、高校進学・退学、就職、長期海外留学など)、大きな手術など心身に重大な影響を与える医療行為 |
|
財産管理 行為 |
父母が共同で決定 |
子ども名義の預貯金口座の開設、子どもに対して債務を負担させる契約の締結、子どもの所有する財産の処分など |
|
日常 行為 |
子どもと同居している親が単独で決定可 |
日々の食事、習い事の選択、軽微な病気の受診など |
|
急迫の 事情 |
子どもと同居している親が単独で決定可 |
緊急手術、虐待からの避難など |
- DVや虐待がある場合はどうなる?
改正にあたって最も議論された点です。
新民法819条7項は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮しなければならないと定めつつ、以下に述べる事由にあたる場合のように共同親権と定めることによって子の利益を害すると認められるときは、単独親権とし、父母の一方を親権者と定めなければいけないと定めています(必要的単独親権)。
単独親権にしなければならない場合は、以下のとおりです。
- 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき【親子の関係性に着目した必要的単独親権事由】
- 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれのある場合など、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき【父母の関係性に着目した必要的単独親権事由】
つまり、裁判所が「DVや虐待のおそれがある」と判断した場合には、共同親権を認めてはならないとされているのです。
4.裁判所はどう判断する?
改正後は、父母の協議や調停がととのわない場合、裁判所が「子の利益」を基準に判断することになります。単に「親がそうしたいから」ではなく、子どもにとってどちら良いのかがポイントです。
改正法施行後の事案の集積が待たれますが、裁判所は、主に以下の要素を総合的に見るものと考えられます。
- 父母と子との関係性
・子の面前で父母間で口論を繰り返していたり、子に対して他方の親の悪 口をことさらに言ったりと子どもを紛争に巻き込まないための配慮に欠けていないか
・養育費をきちんと支払っているか
・年長の子どものケースは、子どもの意思を尊重する観点から、子どもに父母双方の関わりを求める意向があるか、一方の親に対する拒否的感情があるかなども重要視される
- 父母の関係性:親権の共同行使のために最低限な意思疎通が可能か(頻繁な連絡や友好関係までは不要)。
5.具体的なケースを考えてみましょう
- ケース1
☛性格の不一致で離婚することになったが感情的な対立が低く、いわゆる円満離婚。別居中も父は定期的に子と面会しており、母ともLINEで習い事についてや体調についての報告をやり取りできている。父・母ともに「子どもの進路については二人で話し合いたい」と考えている。
- 裁判所の判断ポイント:
- 父母間に最低限のコミュニケーションが可能である。
- 双方が養育に関わる意欲があり、対立が激しくない。
- 結論: 子の健全な成長のために、共同親権が妥当とされる可能性が高いと考えられる。
ケース2:
☛婚姻中、父から母への身体的暴力(DV)があった。現在、母と子はシェルターを経て避難中。父は「反省している、親権は譲らない」と主張している。
- 裁判所の判断ポイント:
- 上述のとおり、改正法では、DVや虐待の恐れがある場合は、必ず単独親権としなければならない。
- 父母が対等に話し合える関係になく、共同親権にすると母子の安全が脅かされる。
- 結論: 父の意向に関わらず、母の単独親権となる。
ケース3:
☛DVなどはないが、離婚の経緯で激しく対立。母は「顔も見たくない、一切関わらないでほしい」と主張し、他方で、父は「養育費も払うし、教育にも関わりたい」と主張。話し合いが全く成立しない。
- 裁判所の判断ポイント:
- 意思疎通の困難さがどの程度かが焦点。
- 単に「嫌いだから」という理由だけで単独親権になるわけではありません。他方の親に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動があり、協力関係を構築できない理由があるかがポイントになります。
- 結論: 暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の構築を阻害しているような場合、そのことだけで協力関係の構築が期待できないとするのは、子の利益の観点から見て慎重に検討が必要とされています。より具体的な事情次第というところでしょう。
まとめ
共同親権導入後、単独親権か共同親権かという争いや、共同親権にした場合に何が日常行為で何が身上監護上の重大行為かといった争いが生じ、紛争が増える、あるいは紛争が複雑化することが予想されます。
親権について問題になりそうな時には、是非、お気軽に弁護士にご相談ください。
投稿者 | 記事URL
調停? 弁護士を入れて交渉? ―あなたの離婚に適切な方法選択―(弁護士 川口彩子)
2026年3月5日 木曜日
1 離婚するときに決めるべきこと
(1)離婚にあたり,最初の壁は「離婚をするかどうか」です。お互いに離婚を望んでいる場合もあるでしょうし,片方は離婚を決意していても,もう片方の気持ちが追いつかない場合もあります。条件次第では離婚してもよいという気持ちはあるけれども,条件が折り合わない場合は合意できません。
(2) 次に問題となるのは「親権者」です。20歳未満(2022年4月1日からは18歳未満)のお子さんについては,父母のいずれかを親権者に指定しなければなりません。
※なお、民法の改正に伴い、2026年4月1日からは、離婚届を提出する際に、親権者に関して協議がととのっていない場合(単独親権にするか、共同親権にするか、単独親権にするとして父母のどちらを親権者にするかについて合意できていない場合)であっても、裁判所に対して親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てをしていれば、離婚届を受理してもらえるようになります(新民法765条1項2号)。
(3) 上記(1)(2)については,離婚の前に必ず決めなければなりませんが,養育費,慰謝料,財産分与,面会交流,年金分割などについては,何も取決めをせずに離婚することも可能です。とはいえ,離婚してしまうと夫婦は他人となるわけですから,あらかじめ離婚前に決めごとをしておくのが望ましいでしょう。
2 離婚の方法
「離婚届」を提出して離婚することを「協議離婚」といいます。3組に1組が離婚をする時代などと言われていますが,国内の大部分の離婚は協議離婚です。
当事者間で協議が整わないとき,あるいは当事者が家庭裁判所調停での解決を望むときは,家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。調停で離婚についての合意が成立したときは「調停離婚」(場合により「審判離婚」)となります。
調停での合意ができなかったときは,離婚の成否について裁判で決着をつけることになります。判決で離婚が認められた場合は「裁判離婚」,裁判を進めるなかで当事者が合意し,裁判手続を利用して離婚を成立させることを「和解離婚」といいます。離婚の裁判は「調停前置主義」といわれ,調停での話合いを試みてからでないと提訴することができません。ただし,例外的に,相手方が行方不明の場合や,収監中であるなど,調停における話合いが不可能な場合には,調停を経ずに裁判に進むことができます。
3 協議離婚か調停離婚か
(1) 当事者間で話し合いが進められそうな場合
法律相談で解決水準を知る
当事者間の話し合いで決めごとができそうな場合は,協議離婚でよいと思います。ただし,協議離婚の場合,法的に決められるのは,離婚するということと親権者をどちらに指定するかということだけになります。
特に,養育費など,今後も支払いが続く場合には,公正証書を作成するなどして,万一,不払いがあった場合に速やかに財産の差押えができるよう,備えておいた方がよいでしょう。
取決めをしたい内容について,弁護士がご相談に乗ることが可能です。調停や裁判の事例をもとに,どこまで請求ができるのか,どの水準で解決するのが妥当かなどアドバイスをいたします。
(2) 弁護士を代理人に選任して,協議離婚を目指す場合
弁護士は中立な第三者ではない
ご相談を受けるなかで,「第三者に入ってもらって話し合いをしたい」と言われることがあります。ただ,弁護士は中立な第三者とはなりえず,ご相談を受けた方の立場に立ってしか行動できません。双方の言い分を聞いて,弁護士がジャッジするということはできませんので,そこはご理解をいただいています。
協議離婚で弁護士が前面に出てくるのは,ご相談を受けた方の「代理人」として,相手方と離婚の協議をする場合です。
話合いでの解決が可能そうか
ただ,相手方が離婚を頑なに拒んでいる場合,あるいは双方が強く親権を主張している場合など,弁護士が話をしたところで到底合意が得られなそうなケースでは,この過程を省略し,最初から調停を申し立てる場合も少なくありません。つまり,これまでの相手方の言動から,協議離婚が可能かどうかを見極め,可能そうだったら代理人として交渉にあたるということになります。
どこまで条件にこだわるか
離婚,親権では合意ができそうでも,金銭面等のその他の条件での合意が難しそうな場合は,ご相談者がその条件にどこまでこだわるかによります。こちらにも譲歩の余地があるのでしたら,弁護士を代理人として粘り強く交渉していくという道もありますが,交渉の余地が一切ない場合は,弁護士を立てたとしても協議離婚を目指すのは難しいということになるでしょう。
公正証書の作成が必要か
その他の判断要素としては,公正証書の作成までもっていけるかどうかということもあります。公正証書の作成には,相手方の協力が不可欠です。不払いのときに強制執行を受けることを了承する書類ですから,相手方によっては,応じてもらえないこともあります。公正証書までの作成はしなくとも,現時点では合意書が作成できればそれでよしとするのであれば,交渉による協議離婚の道も見えてきますが,強制執行を可能とする法的な効力を持たせたい,けれども公正証書作成につき相手方の協力を得ることが難しそうな場合は,やはり調停の申立てを選択することになります。調停で合意ができれば,裁判所が作成する調停調書をもとに将来強制執行をすることが可能となります。
公正証書を作成せずとも,相手方が最後まできちんと支払ってくれるだろうという信頼がある場合は,合意書の作成で終わらせてもよいと思います。また,そもそも将来にわたる支払いの約束がない場合(たとえば一括払いで既に支払いを受けた場合)は,あえて公正証書にする必要はないと言えます。
合意書に反して支払いがなされなかった場合ですが,未払金を強制的に回収するには,まず民事裁判を起こし,そこで勝訴判決を得てから強制執行手続に進むことになります。
(3) 調停離婚に適した場合
相手方の同意がすぐには得られないと思われる場合
離婚することに同意が得られず,あるいは親権での対立がある場合は,最初から調停を申し立てることになります。必ずしも調停で解決がはかられるとは限りませんが,時間をかけて話し合いをしていくことで,相手方との合意が形成できる場合もあります。調停では,「第三者」である調停委員が,交互に双方の話を聞いてくれますので,その中で気持ちの整理をつけていただくことが期待できます。
相手方と話をすることが難しい場合
調停の場では,原則として,個別に話を聞かれます。あなたがお話しした内容は,調停委員を通じて相手方に伝わり,相手方の考えは調停委員を通じて聞かされます。相手方の前では委縮して話をすることができない場合や,どちらかが一方的に話し続け口を挟む余地がない場合など,冷静かつ建設的な話し合いができない場合には,裁判所に間に入ってもらって,決めるべき内容に向かって話を整理してもらうことになります。
妥当な解決をはかりたい場合
相手方が離婚や親権について一応は同意してる場合でも,養育費を極端に低く設定することや,お子さんにとって過負担となる面会交流を条件としてくるなど,一般的な水準からかけ離れた要求をされることがあります。逆の立場では,法外な養育費を請求されているというような場合もあります。
調停離婚の場合には,裁判所が間に入って解決をはかることになりますので,一般水準とはかけ離れた要求を排除することが可能となります。
決めごとに法的効力を持たせたい場合
相手方との話し合いが可能な場合は,協議離婚及び公正証書作成でもよいのですが,公正証書を作成するには通常2万円前後の費用がかかります。弁護士をつけなければ,調停の申立て費用は郵便切手代を含めても2000円程度ですから,大きなご負担なく,将来強制執行が可能となる書類を作成してもらうことが可能となります。
4 弁護士をつけるメリット
交渉で協議離婚を目指す場合
概ね着地点は見えているにもかかわらず,当事者同士だとどうしても感情的になって決めるべきことが決められない場合があります。そのような場合,弁護士を入れることによって,淡々と決めるべきことを決めていくことができます。
また,法律の専門家が提案することで,こちらの提案の妥当性,正当性について信用してもらいやすくなるという効果もあります。
こちらが弁護士をつけることで相手方にも弁護士がつく場合があり,専門家同士で妥当かつ迅速な解決をはかることが可能となります。
調停での解決を目指す場合
調停ではその場その場で判断を求められることが多くあります。内容によっては次回までに検討してきますとして回答を留保することもできますが,当事者にはその判断が難しいことがあります。一人で調停に臨むと,裁判所の意図を汲みきれずに,表面上の言葉で一喜一憂し,思うように調停が進められなかったという話をよく伺います。弁護士をつけておらず,当事者一人で調停をしていると,紛争解決を優先するあまり,調停委員から不利な結論を押し付けられることがあります。もちろんこれは調停委員の良し悪しによるのですが,必要以上にあなたの権利が削られないように防御するのが弁護士です。
弁護士は,現在,裁判所がどのような方向性を目指して話を進めようとしようとしてるのか,言外にある意図を汲んでこちらの対応を組み立てます。こちらが検討すべき点,やっておかなければならない点を的確に把握し,しっかり対策をして,調停に臨みましょう。
また,財産分与については計算が複雑になる場合も多く,専門家の助言があるに越したことはありません。その他,対立点が多く, 論点が多岐にわたる場合や,たくさんの条件を決めなければならない場合,弁護士は豊富な事例をもとに,あなたの立場を最大限まもりながら,着地点を見つけます。
既に調停が始まってしまっている方,調停の申立てを考えている方,相手方から調停を申し立てられそうになっている方,ぜひ一度ご相談に見えてください。あなたの現在の状況に応じたアドバイスをさせていただきます。
(2026年1月改訂)
投稿者 | 記事URL
相続あるある(弁護士 渡辺登代美)
2025年11月13日 木曜日
1 遺言書を作りましょう
「よもや、親子兄弟姉妹で争うようなことはあるまい。」
きっと、誰もがそう思うでしょう。
でも、兄弟姉妹にも配偶者がおり、子がおり、生活があります。私たち庶民の程度の財産は、いくらあっても困ることはありません。できることなら、たくさん欲しいと思うのが人情です。
そこで、親子間、兄弟姉妹間で、思わぬ相続争いが発生することがあります。
大丈夫だと思っても、遺言を作成しておくことをお勧めします。法定相続分どおり、ということでも構わないのです。
生前、常々言い聞かせていても、だめなのです。決められた遺言の方式に則らなければ効力は生じません。遺言で、自分が力を入れていた活動に関係する団体に寄付することもできます。
2 さまざまな相続
一昔前は、土地建物を長男に相続させるべく、父親が亡くなった場合、母親が他の兄弟姉妹に代わって名義変更をしてしまう、などということもありました。不動産の名義が変えられていても、必ずしもあきらめなければならないものではありません。
相続手続をしようと戸籍をとったところ、亡くなった父親に、母親も知らない子がいたことが判明したこともありました。離婚した親の相続では、再婚後の配偶者や子が登場し、複雑な人間模様を呈します。
相続登記が義務化され、両親、祖父母、曾祖父母名義のままになっている不動産に決着をつけなければならない場面も発生しています。全く知らない人から、突然訴訟を提起されたと、びっくりして相談にみえます。関係者が数十人に上ることもありました。従兄弟姉妹どおしでもめさせるわけにいかないから、自分たち兄弟姉妹の世代で解決するのが終活だと言っている人もいました。
3 住んでいる持家の相続は大変です
親名義の不動産に子の一人が同居していて親が亡くなった場合、解決が難しくなることがあります。不動産は遺産としてかなりの価値がありますから、他の子どもたちは代償金を請求します。しかし、不動産の価値は売却しなければ現実化しません。住んでいる不動産ですから、売却するわけにいかず、かといって売らなければ代償金を支払えない、という八方ふさがりの状態に陥ってしまうことがままあります。
農地などもあって、家業とともに子の一人が相続するのであれば、他の子もまだ納得し易いかもしれません。現代は、会社員家庭で、遺産は実家の不動産しかない、というような場合も多くあります。
同居している子に全遺産を相続させるという遺言を作成しておいて、代償金の金額を遺留分まで減らせば(2分の1になります)、分割払い等、不動産を売却しなくても解決の目途が立つかもしれません。
遺産分割が終わったら、以後、関係を断ちたいと言い出す人もいます。いずれにしても、遺言を作成しておくことは、自分が死んだ後の紛争を和らげることに役立ちます。
投稿者 | 記事URL
離婚した後、旧姓に戻る? それとも夫の姓をそのまま使う?子どもが大きくなった後、旧姓には戻れるの?という疑問にお答えします(弁護士 川口彩子)
2025年10月2日 木曜日
結婚するときには、夫か妻のどちらかの姓を選ばなければなりません。その夫婦が離婚するときには、姓を変えた側が、旧姓に戻るか、婚姻時の姓をそのまま使うか選ぶ必要があります。日本では、妻側が姓を変えるケースが大半なので、ここでは、結婚のときに妻が姓を変えたケースでご説明します。
まず、婚姻時の姓をそのまま使う場合です。お子さんが慣れ親しんだ姓なので、そのまま名乗らせてあげたいというケース、子どもたちは独立したが、結婚してから長年使ってきたので、もはや旧姓に戻るつもりはないというケースが多いですね。
その場合は、離婚届を提出する際に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出してください。用紙は役所に備え付けてあります。
(ちなみに、協議離婚ではなく、裁判所で調停離婚や裁判離婚した場合にも、役所には離婚届を提出する必要があります。調停離婚や裁判離婚の場合、夫のサインや証人のサインは不要です。)
離婚時に旧姓に戻る場合ですが、結婚前の戸籍に戻る場合と、ご自身が筆頭者となって新しく戸籍をつくる場合があります。新しく戸籍をつくる場合には、離婚届に新しい本籍地を記載する際、筆頭者の氏名の欄に旧姓でフルネームをご記入ください。
なお、現在の戸籍の制度では、親子三代が同じ戸籍に入ることはできません。戸籍に入れるのは二代までです。なので、離婚後にお子さんと同じ戸籍になりたい場合には、お子さんを連れて親の戸籍に入ることはできませんので、ご自身が筆頭者となって新しく戸籍をつくることになります。
離婚後の氏をどうするか決めて離婚届を提出すると、ご自身は元夫の戸籍から抜けて元の戸籍に戻るか、ご自身が筆頭者となった新しい戸籍がつくられます。元夫の戸籍のご自身の欄には「除籍」という表示がなされ、元夫の戸籍から抜けてどこの戸籍に異動したのか、新しい本籍地が表示されます。
一方、お子さんの戸籍は、親権者が戸籍から抜けた妻だったとしても、自動的に親権者の戸籍に移るわけではありません。お子さんの戸籍を母親の戸籍に移すには、お子さんの住所地を管轄する家庭裁判所で「子の氏の変更」の手続をする必要があります。
家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立書」の書式をもらってくるか、裁判所のHPから「子の氏の変更許可申立書」の書式をダウンロードしてください。
申立書を提出すると後日「審判」が送られてきますので、それを役所にご提出ください。
ここで注意が必要なのは、元夫の氏を名乗ることにした場合でも、お子さんと一緒の戸籍になりたい場合には、「子の氏の変更」の手続が必要となるということです。「申立人の氏『鈴木』を、母の氏『鈴木』に変更することを求める」という申立てになりますから、違和感はありますよね。ただ、「子の氏の変更」は、あくまでも戸籍を異動させるための手続なので、この申立てが必要となるのです。
なお、15歳未満のお子さんの「子の氏の変更」は、親権者が法定代理人として手続を進めることができますが、15歳以上のお子さんについては、お子さん自身に申立書を記載していただく必要があります。
裁判所への提出は、郵送もしくは持参となりますが、15歳以上のお子さんの申立書を親権者がお子さんに代わって持参することは構いません。
あるいは、離婚のときに、ご自身だけ旧姓に戻り、お子さんはそのまま元夫の戸籍においておくこともできます。そうすると、母と子で苗字が違うことになりますが、ご自身は旧姓を名乗ることができ、お子さんたちはそのまま今までの姓を名乗ることが可能です。元夫が筆頭者となっている戸籍のお子さんの欄には、親権者が母であることの記載はありますので、戸籍が別々でも問題ありません。
ただ、この場合、元夫が再婚すると、お子さんと同じ戸籍に新しい妻も入ってきますから、それは気になる方もいらっしゃるかもしれません。
お子さんが成人しているような場合には、ご自身だけ夫の戸籍から抜けるケースが多いように思います。もちろん、お子さんが成人していても、「子の氏の変更」の手続により、母の戸籍に入ることを希望する方もおられます。
離婚から何年も過ぎて、お子さんも独立し、いよいよ旧姓に戻りたいという方もいらっしゃいます。
その場合は、家庭裁判所で「氏の変更」の手続をし、裁判所の審判を得れば、旧姓に戻ることができます。離婚のときに旧姓を選ぶのであれば、家庭裁判所の手続は不要ですが、いったん元夫の姓を選んでしまうと、旧姓に戻るために家庭裁判所の手続が必要です。事情聴取のため、裁判所から呼出しがあることもあります。
お子さんが結婚して、自分一人の戸籍になっている場合は、単独で手続ができますが、お子さんがまだ戸籍に残っている場合には、その戸籍ごと氏が変更されてしまいますので、15歳以上のお子さんについては、氏の変更についてお子さんの同意書が必要となります。
戸籍のことで疑問がございましたら、ぜひ法律相談をご利用ください。
投稿者 | 記事URL
遺言作成は元気なうちに~遺言作成のすすめ~(弁護士 星野文紀)
2024年11月21日 木曜日
あなたが亡くなったら、あなたの周りにどのような変化がおこるでしょうか。法律的には相続がおきます。
弁護士の仕事の中で、遺産分割協議というは、比較的多い類型ですが、近年、家庭裁判所に出される遺産分割事件の件数は増えています。いわゆる「争続(あらそうぞく)」が増えているということで残念な事実です。
相続争いをさけるもっともポピュラーな方法は遺言です。もっとも、日本財団の調査では、60歳~79歳で遺言書をすでに作成している人は3.4%しかいません。約8割の人が加入している生命保険に比べればずっと低いです。残念ですね。
あなたには大切な家族はいますか。配偶者はいますか。子供はいますか。兄弟姉妹はいますか。それとも他に大切なものがありますか。遺言の有無によって、これらの人が助かったり、不幸になったりしますので、是非、遺言作成を検討してみてください。
遺言作成が特に必要な人がいますのでご紹介します。
①結婚しているけど子供がいないひと
②事業を経営しているひと
③不動産の資産が多いひと
④残念ながら相続人間の仲が悪いひと
⑤相続人間で遺産の配分に強弱をつけたいひと
⑥相続人以外に財産を残したいと思っているひと
⑦法定相続人がいないひと
理由としては、
①は子供がいないと法定相続人が配偶者と兄弟姉妹になり、遺産を分けることになるが、全ての遺産を配偶者に渡したいと考える人が多いため
②は事業を承継させるひとを決めておいた方がいいため
③は、不動産を分けるには工夫が必要なため
④は、予め、具体的に遺産の配分を決めてあげた方がいいため
⑤~⑦は、あなたの意思を尊重するためです。
遺言の方法は、公正証書遺言が圧倒的にオススメです。自筆証書遺言とは違い、法的に無効になるリスクが少なく、盗難、紛失、隠匿や改ざんのリスクがなく、相続発生後に家庭裁判所の検認が不要で、遺言の執行までに時間が早く、遺産がもらえない親族等と関わる必要性がぐっと減るからです。
「付言事項」というものを書くのもおすすめです。遺言書には、相続人に対するメッセージとして法的拘束力を持たない「付言事項」を書き添えることができます。これを利用し、相続人にあなたの思いを伝えてみてはいかがでしょうか。残された人へのラブレターのようなものです。
また、遺言作成は元気なうちにお早めが鉄則です。高齢や病気になると意思表示が怪しくなったり、字が書けない、読めない、話せない、必要書類が揃えられないなど、いろいろな問題が起きてきます。遺言作成が難しくなったり、費用がかかったり、時には不可能になったりします。
遺言書は、15歳以上であればいつでも作成でき、古すぎるために遺言書が無効になることはありません。またいつでも内容を変えられます。遺言が無くて困ることは多いですが、作成が早すぎるということはないので、是非、お早めの作成をオススメします。
遺言書作成についてわからないことや、手伝って欲しいことがある場合、是非、われわれ弁護士にご相談ください。あなたの思いを教えてください。
投稿者 | 記事URL
よりよい遺言書を作るために~「遺言執行者」をご存知ですか?~(弁護士 中瀬奈都子)
2024年11月21日 木曜日
■昨今の「終活」ブームの中、よりよい最期を迎えるために、残された家族のために、遺言書を準備しようと考えている方が多くいらっしゃると思います。弊所にも多数の方から遺言書作成のご相談が寄せられています。その際、「遺言執行者」を定めておくことをお薦めする場合があります。この「遺言執行者」、どういう役割を持つ人か、みなさんご存知ですか?
■「遺言執行者」とは?
「遺言執行者」とは、遺言の内容を実現することを職務とする者のことです。具体的には、遺言の内容にしたがって、相続財産を管理したり、預金を払い戻して分配したり、不動産を売却したり、証券の名義を書き換えたり、相続人や受遺者へ遺産を引き渡したりといったことを行います。
「遺言執行者」は、遺言によって予め決めておくことができるほか、遺言に定めがない場合や、遺言で定められた遺言執行者が死亡したり、辞退した場合など不在になってしまった場合に相続が発生した後に利害関係人の申立てによって家庭裁判所で選任してもらうことができます。
■手続を円滑に進めるために
遺言に、認知が定められていたり、推定相続人の廃除(被相続人が相続人の権利をはく奪する手続き)や取消しが定められていたり、一般社団法人の設立が定められている場合には、「遺言執行者」が必須になります。
上記のように「遺言執行者」が必須な場合以外でも、ご自身が亡くなった後、その遺志を確実に実行し、手続がスムーズに進むように、遺言書を作る際に「遺言執行者」を定めておくようお薦めするケースは多いです。
例えば、亡くなった後に不動産を売却して、お金に換えてから相続人に分配して欲しい場合、遺言執行者を定めておかないと、不動産の売却などを相続人全員で行う必要があるので、非協力的な相続人が出てくると支障をきたしてしまいます。「遺言執行者」を定めておけば、「遺言執行者」は単独で遺言を執行できるため、相続人の非協力的を気にする必要がないのです。上記のとおり、相続発生後に家庭裁判所に申立てをして「遺言執行者」を選任してもらうこともできますが、遺言で予め「遺言執行者」を定めておいた方がより簡便でスムーズです。
そして、「遺言執行者」には、相続人の一人や受遺者を指定することもできます。「遺言執行者」になれないのは、未成年者と破産者だけです。
■「遺言執行者」に弁護士を定めておくのをお薦めします
「遺言執行者」は相続が開始されたら、
☑戸籍謄本などを取り寄せて、相続人の調査をして相続人を速やかに確定する
☑全ての相続人に遺言執行者に就任した旨の通知をする
☑遺産を調査して、正確な財産目録を作成して、全ての相続人に交付する
☑遺産を適切に管理する
☑預金の解約や証券等の売却、名義変更などの手続をして、相続人や受遺者に相続財産を引き渡す
☑遺言執行が終了した場合、相続人や受遺者に遅滞なく経過や結果を報告する
といった業務を行うことになります。
また、「遺言執行者」は、遺言執行業務について善管注意義務を負っており、職務を行うにつき過誤があった場合、相続人から善管注意義務違反として損害賠償請求を受けることがあり得ます。
相続人の1人を「遺言執行者」に定めることができますが、このような職責を負うことから、相続財産が多項目にわたったり、高額であったり、不動産があったりと、遺言執行が簡単に進まなさそうなケースには、専門家である弁護士を「遺言執行者」に定めるようお薦めしています。
また、高齢の配偶者に遺産を残したいが、配偶者自身で相続の手続を行うことが困難であると考えられる場合や、遺産が県外など遠隔地に分散している等手続自体が煩雑になる場合にも、専門家である弁護士を「遺言執行者」に定めるのがお薦めです。
■さいごに
家族が亡くなった後は、悲しみの中、葬儀や納骨といった故人を弔う儀式のほか、年金の受給停止や公的保険の資格喪失届の提出等の公的手続きを行うなど、たくさんの手続きをすることになります。
さらに相続手続を行うことはご家族・親族に大きな負担となりえます。残されたご家族のために、「遺言執行者」として、専門家である弁護士を定めておくことをお薦めします。
遺言書を作成したい、遺言執行者について詳しく知りたいという方は、是非、ご相談にいらしてください!
投稿者 | 記事URL
老後に備えた新しい「家族信託」活用のすすめ(弁護士 川岸卓哉)
2024年9月11日 水曜日
川岸卓哉弁護士については、こちらをご覧下さい。
現在の日本は高齢化社会を迎えています。親のこれからが心配な方、自分の生活や財産管理が心配になってきた方も多いのではないでしょうか。
成年後見制度なども活用できますが、後見にならない段階での高齢者の生活や財産管理をどうするのかなど問題があります。一方、相続における争いも増えており、遺言作成もお勧めしていますが、認知症が始まってからだと遺言の作成もできないなどこちらも必ずしも万全の制度とは言えません。
そこで、近年、家族信託という新しい方法に注目が集まっています。「家族信託」とは、信託の一種です。信託とは委託者の財産から特定の財産を分離することで財産を管理する制度です。財産を受託者に渡してしまうといっても、完全に受託者の財産になってしまうわけではなく、受託者は信託の目的に従った管理処分しかできません。つまり、信託された財産は、頼んだ人(委託者)からも頼まれた人(受託者)からも切り離された、信託の目的のための独立した財産になります。
家族信託の典型的な活用例としては、配偶者亡き後の高齢者福祉型信託があります。例えば、高齢のAさんは、認知症になった妻の所持金について、事業に失敗した長男がたびたび持ち出すのを見て、自分が死んだ後の妻の生活を心配している。次男はしっかり者だが、すべての財産を次男に相続させるのもやり過ぎだと思う。こんな場面で、活用できる家族信託として、受託者を次男、受益者を妻とする遺言信託とし、妻の死亡による信託終了後は、財産を長男、次男で均等に分けるスキームを組めば、自分が死亡後の配偶者の生活を保障しながら、子の相続争いも防ぐことができます。
信託は、活用次第では、多様な可能性がある制度です。自分の要望をどうやったら実現できるかを弁護士一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
投稿者 | 記事URL
最近のブログ記事
- 夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)
- 離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)
- 【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)
- 【2026年4月施行】離婚後の親子関係はどう変わる?~「共同親権」の基礎知識~【選択的共同親権が導入されます!】(弁護士 中瀬奈都子)
- 調停? 弁護士を入れて交渉? ―あなたの離婚に適切な方法選択―(弁護士 川口彩子)
- 相続あるある(弁護士 渡辺登代美)
- 離婚した後、旧姓に戻る? それとも夫の姓をそのまま使う?子どもが大きくなった後、旧姓には戻れるの?という疑問にお答えします(弁護士 川口彩子)
- 遺言作成は元気なうちに~遺言作成のすすめ~(弁護士 星野文紀)
- よりよい遺言書を作るために~「遺言執行者」をご存知ですか?~(弁護士 中瀬奈都子)
- 老後に備えた新しい「家族信託」活用のすすめ(弁護士 川岸卓哉)
月別アーカイブ
- 2026年5月 (3)
- 2026年3月 (2)
- 2025年11月 (1)
- 2025年10月 (1)
- 2024年11月 (2)
- 2024年9月 (1)
- 2023年11月 (1)
- 2023年6月 (1)
- 2023年2月 (1)
- 2022年9月 (1)
- 2022年6月 (1)
- 2021年7月 (1)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (13)
- 2021年2月 (1)
- 2021年1月 (1)
- 2020年2月 (1)
- 2020年1月 (3)
- 2019年9月 (1)
- 2019年8月 (3)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (3)
- 2019年4月 (9)
- 2018年11月 (1)
- 2018年8月 (2)
- 2018年7月 (5)
- 2018年6月 (4)
- 2018年5月 (1)
- 2017年12月 (2)
- 2017年6月 (2)
- 2017年2月 (2)





