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ご家族が亡くなられた後にすべきことは?(遺産相続)弁護士 山口毅大 2021.4更新

2021年4月19日 月曜日

山口毅大弁護士については、こちらをご覧下さい。

 【目次】

1 ご家族が亡くなられた後にすべきことは?
2 まずすべきことは?遺言書の確認、相続人の確定、遺産(相続財産)の確定
3 遺言書の確認とは?
4 相続人の確定とは?
5 遺産(相続財産)の確定とは?
6 遺産(相続財産)の分け方~遺産分割協議とは?
7 遺産分割調停とは?
8 遺産分割審判とは?
9 共有物分割訴訟とは?
10 相続放棄の方法は?
11 相続税の申告期限は?
12 遺留分とは?
13 寄与分とは?
14 特別受益とは?
15 わからないことがあったら?

1 ご家族が亡くなられた後にすべきことは?
 ご家族が亡くなった後、遺産相続について、どのようにすればいいのかわからない方も多いと思います。
 きちんと対応しないと、あとで相続をめぐって、争いになってしまうこともあります
 そこで、今回は、遺産相続をテーマに、ご家族が亡くなった後にすべきことについて、説明します。

 やるべきことは,
  遺言書の確認
  相続人の確定
  遺産(相続財産)の調査・確定(遺留分,寄与分,特別受益等の確認も含む。)
  遺産分割協議

 場合によっては,
  遺産分割調停
  遺産分割審判
  共有物分割訴訟
  相続放棄
  相続税の申告
  遺留分侵害額請求(旧法:遺留分減殺請求)
などが挙げられます。

2 まず、すべきことは?遺言書の確認、相続人の確定、遺産(相続財産)の確定
 まず、はじめにやらなければならないことは、
  遺言書の確認
  相続人の確定
  遺産(相続財産)の確定
です。
 その上で、遺産(相続財産)をどう分けるか話し合って行く必要があります。

3 遺言書の確認とは?
 被相続人(亡くなられた方)が遺言書を作っていたか否かを確認する必要があります。

 遺言書には、いくつか種類がありますが、実際に作られている主な遺言書は、
  自筆証書遺言
  公正証書遺言
があります。
 自筆証書遺言は、被相続人(亡くなられた方)が自署にて作成した遺言です。公正証書遺言は、被相続人(亡くなられた方)が公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
 自筆証書遺言の場合、相続人に対し、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続である検認を経なければなりません。具体的な手続は、遺言書の保管者または遺言者を発見した相続人が遺言者(亡くなられた方)の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。検認しないまま、遺言を執行したり、遺言書を開封した場合、5万円以下の過料に処せられる可能性や偽造、変造したと言われる可能性がありますので、注意しましょう。
 有効な遺言書が作成されていれば、遺言書に記載された内容に従って遺産(相続財産)を分割して、相続手続を進めていきますが、遺言書がない場合、あるいは、あっても形式等に不備があって、遺言が無効になってしまう場合は、相続人全員で遺産をどのように分けるかについて話し合うこと(遺産分割協議)が必要になってきます。
 なお、遺言書があっても、相続人全員が、遺言内容と異なる分割方法について同意すれば、遺言内容と異なる分割をすることができます。

4 相続人の確定とは?
 相続人の確定とは、相続人が誰であるかを確定することです。これをきちんとしておかないと、遺産分割協議書(簡単にいうと、遺産の分け方について決めた文書)を作ったあとに、遺産分割協議が無効になってしまう危険があるからです。
 相続人の確定の具体的な方法は、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍を取り寄せることです。取り寄せた戸籍を見て、相続人が誰であるかを確定してきます。
 このように戸籍を調査するのは、相続人が知らない被相続人(亡くなられた方)の子どもがいる場合等があるからです。
 相続人の範囲は、

  第1順位 被相続人(亡くなられた方)の配偶者、子ども
  ※ 子どもが先に亡くなっている場合、その子ども(孫)(代襲相続)
  ※※ 子どもとその子ども(孫)も先に亡くなっている場合、ひ孫(再代襲相続)
  第2順位 被相続人(亡くなられた方)の父母
  ※ 父母が先に亡くなっている場合、その父母(祖父母)
  第3順位 被相続人(亡くなられた方)の兄弟姉妹
  ※ 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子ども(おい、めい)
  ※※ 昭和55年以後は、兄弟姉妹について再代襲相続はありません。
 です。

 相続関係図を作成しておくと、便利です。

5 遺産(相続財産)の確定とは?
 遺産(相続財産)の確定とは、被相続人(亡くなられた方)の残した財産を明らかにすることです。
 遺産(相続財産)に含まれる主な財産は、
  預貯金(従来は、当然承継されると考えられてきましたが、判例変更がありました。)
  現金
  不動産
      不動産賃借権(借地権等)
  有価証券(株式等)
  動産(貴金属類、自動車等)
  債務(借金など)
等です。
 なお、生命保険金は、民法上、遺産(相続財産)に含まれないので、注意が必要です。
 遺産(相続財産)目録を作成すると便利です。
 遺産(相続財産)がわからない場合、ある程度調査することで、分かる場合があります。たとえば、被相続人(亡くなられた方)の不動産については、市区町村の固定資産税課で「名寄帳」を入手すれば、その区域での被相続人(亡くなられた方)名義の不動産がわかります(東京23区の場合には、都税事務所になります。)。また、預貯金は、被相続人(亡くなられた方)が利用していた、あるいは利用していたと思われる金融機関に照会することで確認できます。
 他の相続人が勝手に被相続人(亡くなられた方)の預貯金等を引き出す可能性があって、あとで取り戻すことが難しいことが予想される場合には、予め金融機関に被相続人(亡くなられた方)が死亡したことを届け出ておくことで、勝手に引き出させないようにすることができます。
 遺産の評価は、実務上、現実に分割する時点(遺産分割時)となります。なお、寄与分、特別受益(寄与分、特別受益については、のちほど説明致します。)が問題となる場合には、みなし相続財産を算出する必要がありますので、その場合には、相続開始時の評価も必要になります。
 遺産の評価方法で、相続人のもらえる財産額が大きく変わってくることがありますので、遺産の評価方法について、疑問がある方は、弁護士にご相談ください。

6 遺産(相続財産)の分け方~遺産分割協議とは? 
 相続人と遺産(相続財産)の確定が終わったら、相続人の間で、遺産(相続財産)をどのように分けるか話し合う必要があります。これを遺産分割協議といいます。
 話し合いの結果、相続人間で合意ができた場合には、遺産分割協議が成立したということになります。
 遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、相続人だけでも作成することができますが、不動産や預貯金等がある場合、遺産分割協議書の記載が不十分であると、名義変更や払い戻し等ができない場合があります。その場合、改めて、作成し直す必要があります。
 このような事態にならないように、遺産分割協議書作成にあたっては、弁護士にご相談されることをおすすめします。主に注意すべきポイントをいくつか示すと
 ①不動産の表示は、全部事項証明書に基づき正確に記載すること
 ②銀行預金口座は、口座のある支店名も明示すること
 ③相続人の住所は、印鑑登録証明書の記載に合わせ、同一の記載をすること
 ④相続人の真意と人違いでないことを明らかにするために、相続人全員が署名して登録済の印鑑(実印)で押印し、全員の印鑑登録証明書を添付すること
 等が挙げられます。

7 遺産分割調停とは?
 相続人間での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停は、裁判所を利用した話し合いで、調停官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が、遺産分割の方法について、相続人の考えを確認しながら、争点を整理して、合意に向けた話し合いをしていきます。

 申し立てるにあたって、必要なものは、具体的には、
  ①遺産分割調停申立書
  ②被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍
  ③被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している者がいる場合、その子(及び代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍
  ④相続人全員の住民票または戸籍附票
  ⑤遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写し等)
  ⑥相続関係図
  ⑦その他裁判所から求められた資料
があります。

 申立人は、相続人で、申立先は、相手方の住所を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所です。申立費用は、収入印紙1200円と予納郵便切手(各裁判所によって異なります。)です。
 遺産分割調停は、当事者だけでもできます。しかし、調停において、単にご自身が言いたいことを述べているだけでは、自らの希望を実現することは難しいでしょう。法律の知識を前提に、事実を論理的に主張する必要があります。
 ですので、仮に、相手方に弁護士が付いていなくても、弁護士にご依頼されることがおすすめです。

8 遺産分割審判とは?
 遺産分割調停での話し合いがまとまらず、調停が不成立に終わった場合、その事件は、遺産分割審判手続に自動的に移行します。審判手続中でも、話し合いがまとまれば、調停が成立しますが、話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所によってどのように遺産分割をすべきか審判が出されます。
 遺産分割審判手続では、訴訟のように、それぞれの相続人が書面で、主張を行い、主張を裏付ける資料を提出することになります。
 その段階では、多くの場合、適切に法律上の主張をする必要があるので、弁護士にご依頼されることをおすすめします。

9 共有物分割訴訟とは? 
 遺産分割審判で、遺産である不動産について相続人全員の共有とする審判が下されることがあります。この場合、審判後に、共有物分割訴訟を経なければ、遺産である不動産は、相続人全員の共有のままになってしまいます。このような審判が下されると、遺産である不動産を分割するために、さらに時間と費用がかかる場合があります。
訴訟ですので、それぞれの相続人が書面で、主張を行い、主張を裏付ける資料を提出することになります。その段階では、多くの場合、適切に法律上の主張をする必要があるので、弁護士にご依頼されることをおすすめします。

10 相続放棄の方法は?
 遺産を調査した結果、債務(借金、未払い金等)しかないということもあるでしょう。債務の相続をしたくない場合、相続放棄を行う必要があります。相続放棄をすれば、はじめから相続人とならなかったとみなされます。
 もっとも、プラスの遺産もある場合には、相続放棄をしてしまうと、プラスの遺産も相続できなくなるので、注意が必要です 。
 具体的な相続放棄の方法は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することでできます。この相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行う必要があります。もっとも、被相続人(亡くなられた方)の遺産(相続財産)の調査のため、家庭裁判所に相続放棄期間の伸長を求めることができます。また、万が一、3か月が経過しても、遺産(相続財産)が全く存在しないと信じた場合には、相続財産の全部もしくは一部を認識した時または通常認識しうる時から期間を数えます。

11 相続税の申告期限は?
 相続税の申告期限は、相続開始後10か月です。もっとも、その間に、遺産分割協議がまとまらないことがあるでしょう。その場合には、未分割として相続税申告します。なお、事業収入がある場合、4か月以内に所得税の準確定申告をする必要があります。

12 遺留分とは?
 遺留分とは、兄弟姉妹及びその子以外の法定相続人に対して認められた、被相続人の意思によっても奪えない相続分のことです。父母等の直系尊属のみが相続人の場合には、1/3それ以外の場合には1/2となります。 
 遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます(遺留分侵害額請求)。
※ 旧法:遺留分減殺請求。
 遺留分権利者が、自分のために相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内にしなければ、遺留分侵害額請求権は、時効によって消滅するので、注意が必要です。また、相続開始から10年経過すると、事情のいかんを問わず遺留分侵害額請求をすることができなくなるので、こちらも注意が必要です(除斥期間)。さらに,遺留分に関する権利行使によって生じた金銭債権については,通常の金銭債権と同様の消滅時効がかかります(債権法改正法施行前においては,10年,施行後においては,5年の消滅時効にかかります。)。
 遺言書がある場合、遺留分が侵害されていないか確認することが必要となります。

13 寄与分とは?
 共同相続人の中に被相続人の財産の維持・増加に特別に寄与した者がいる場合、この特別の寄与を考慮し、この者に対して特別に与えられる相続財産への持ち分のことを寄与分といいます。単なる精神的な支援だけでは、寄与分の対象になりません。典型例としては、被相続人の事業に関する事業に関する労務の提供、被相続人の事業に関する財産上の給付、被相続人の療養看護が挙げられます。
 法律で定められた義務の履行としての行為は、たとえ、「被相続人の財産の維持・増加」に貢献したとしても、それが当該義務により通常期待されている範囲内のものを超えるものでなければなりません。また、寄与行為に対する対価や補償を受けていないこと(無償性)、特別の寄与によって、被相続人の財産が維持されたり、増加されたりすること(因果関係)が必要となります。
 寄与分の額は寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を斟酌して決定されます。
 実際に、寄与分があるのかどうかについて確認する必要があります。

14 特別受益とは?
 遺贈のほか、婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として、被相続人から共同相続人に贈与された財貨のことを特別受益といいます。
 被相続人が相続開始時において有していた財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産と見なし、これを法定相続分率で割った相続分を算出し、この相続分から遺贈又は贈与の価額を控除した残額が具体的相続分となります。
 実際に、特別受益があるのかどうかについて確認する必要があります。

15 わからないことがあったら?
 これまでご説明してきたように、遺産相続は、専門的な知識が必要とされるので、当然、ご自身の事案に応じた適切な進め方や解決方法等がわからないことがあると思います。
 その場合、お一人で悩まれることなく、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

ご相談をご希望の方はこちらから、お問い合わせください。

 

投稿者 川崎合同法律事務所

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