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夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

nakase

 

 離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
 しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
 では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。 

 

◆財産分与とは?
 財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
 婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
 財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
 財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。

 基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
 ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。

 

◆別居前にできること
 そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
 通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
 もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。

 

◆裁判所を通して行う財産調査
 では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。

1.調査嘱託の申立て
夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
 そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
 調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
 調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
 ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
 例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
 その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
 私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。

2.【2026年4月~新制度】相手方に対する情報開示命令
2026年 4月に施行される改正家事事件手続法と人事訴訟法で、新たに当事者に対する情報開示命令という制度が導入されます。
この制度の対象となっているのは、財産分与に関する調停・審判事件や離婚調停、財産分与を求める内容の申立てがなされた離婚訴訟事件の他、婚姻費用や養育費、扶養料に関する調停・審判事件です。
これらの事件において、裁判所が必要があると認めるときに、当事者に対し、収入や資産の状況に関する情報開示命令を出すことができることになります。そして、開示を命じられた当事者が、正当な理由なく開示をしなかったり、虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処することができるという制裁まで導入されました。
情報開示命令は当事者に対して出されるものですので、第三者だけが持っていて、当事者が入手できないような情報については調査嘱託、第三者が持っているけれど当事者が入手可能な場合は、調査嘱託と情報開示命令の両方が選択肢となりえます。一般的には、第三者に対する調査嘱託の方が実効的な場合が多いと考えられますが、守秘義務を理由に回答しない第三者もいるため、状況に応じて手段を選択していくことになると考えられます。

 

◆別居前にある程度把握しておこう
裁判所における手続きをスムーズに進めるためには、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。

 弁護士 中瀬奈都子

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離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

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離婚したい!となったときに、一番に頭に浮かぶのはお金の問題ではないでしょうか。
別居期間中の生活費、養育費、財産分与、年金分割、不貞行為やDVなどの慰謝料・・・後悔することがないよう、相手方としっかり話し合い、納得のいく合意を形成する必要があります。
今回は、養育費について取り上げます。

 

■「養育費」とは?

 

未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。
離婚後、子どもと一緒に暮らしていない親も、子どもの親である以上は、扶養義務があり(民法877条1項)、離婚をしても養育費を分担する義務があります。
その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として「養育費」を請求することができますが、通常は、子どもを育てている親が他方に対して、「養育費」の支払いを求めます。

【ポイント】
・離婚をしても、親であることはかわらないので、監護者でない親も養育費を分担しなければならない。

 

■「養育費」はいくらもらえるものなの?金額のほかに決めるべきことは?

●それでは、離婚後、私が子育てをするとして、相手方にどれくらい「養育費」を支払ってもらえるでしょうか。
基本的には、「婚姻費用」を決める場合と同じです。
いくらにするかは、夫婦で自由に決められます。
まずは、夫婦間で話し合いをし、協議で決まらなければ、調停の手続の中で、金額や支払方法を話し合うことになります。通常は、離婚条件を決めるにあたって「養育費」についても話し合うため、離婚調停を申し立てて、その中で話し合うことが多いです(養育費を決めずに離婚をして、後で養育費分担の調停を申し立てることもできます)。
もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、離婚訴訟の中で(あるいは養育費分担の審判手続の中で)、裁判官に決めてもらうことになります。
調停、審判、訴訟といった裁判所の手続きを利用する場合、「養育費」は、裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用算定表」をもとにして、計算することになります。
そのため、夫婦間で話し合う際にも、合意に至らず裁判所の手続きにうつることを想定して、「算定表」をもとに決めることが多いです。

 

●「養育費・婚姻費用算定表」が2019年12月23日に改定されました!
2019年12月23日に新しい「養育費・婚姻費用算定表」が公表されました。
最新の統計資料に基づいて更新されたもので、従前の「算定表」よりも、一般的には増額されています!
★新しい「算定表」はこちら!

 

●新しい「算定表」を見てみましょう
「算定表」の見方は、まず子どもの人数と年齢に合った表を選び、義務者(支払う側の配偶者)の年収欄と権利者(支払われる側の配偶者)の年収欄が交差する点を確認します。そこに書いてある金額が、標準的な「養育費」の額です。
なお、年収については、給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見ることになります。

例:会社員の夫 年収400万円  パートの妻 年収 75万円 
  子ども 6歳 離婚後、妻が親権者として子育てする場合

→ まず、表11を見ます。

縦軸(義務者の年収/万円と記載されている軸)の左側の数字で「400」のところから右方向に線をのばします。横軸(権利者の年収/万円と記載されている軸)の下側の数字で「75」のところから上に線をのばします。この二つの線が交差する、「4~6万円」が、義務者が負担すべき婚姻費用の標準的な月額を示しています。

 

●いつまで支払ってもらうか(成人まで、と諦めないで)
 「婚姻費用」と違って、「養育費」の場合、支払いの終期を決める必要があります(「婚姻費用」はその概念からおのずと、終期は「別居又は婚姻関係を解消する時」と決まります)。
 養育費分担義務の対象である子どもとは、未成熟子、つまり、自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいうとされています。
 一般的には、成人して働く能力があれば未成熟子とは言えませんが、心身の障害によって働けない場合は成年に達していても未成熟子と言えますし、夫婦の収入や学歴、社会的地位から子どもが大学に進学してしかるべき場合は大学生も未成熟子と言えます。
 夫婦双方が大学を卒業しており、離婚時の子どもの年齢からして進路がある程度明確になっているケースの場合、大学に進学することを前提に終期を決めるケースが多いです。
 その場合、「子どもが大学を卒業するまで」という決め方ですと、浪人や留年等によって卒業する年がのび、終期をめぐる争いが生じかねません(また、不特定な文言にすると、強制執行する際に問題になり、強制執行できないということもありえます)。そのため、「22歳に達した後に到来する3月末日まで」などと明確に決めておくことをおすすめします。
 子どもの心身の状況や就学状況はまちまちです。その子に応じた終期を決めることをおすすめします。終期をどう決めるかや、後に争いにならない文言の定め方は、お子さんのことだからこそ、とても重要です。是非、弁護士にご相談ください。
【ポイント】
・養育費の支払終期は、必ず成人までというわけではない。
・子どもの心身の状況や就学状況、親の学歴等によって、成人時を超えた終期を決めることも可能。
・後に争いにならないような文言にしておくことも重要。弁護士にご相談を!

 

 川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。     
 女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
 ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

 

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【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

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未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。この生活保持義務について、改正法第817条の12第1項に明記されました。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができますが、通常は、離婚後に子どもを育てている親が、他方の親に対して、養育費の支払いを求めます。
しかし、養育費が支払われている割合は決して高くはありません。厚生労働省が実施した調査によれば(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、「現在も養育費を受け取っている」と回答した世帯は、母子世帯で28.1%、父子世帯ではわずか8.7%にとどまっています。つまり、7割以上の母子世帯、9割以上の父子世帯が養育費を受け取れていないのが現実です。
このような状況の中、養育費がきちんと支払われる仕組みを強化する目的で法改正が行われました。改正法が施行される2026年4月から、養育費の支払いを確保するための制度が導入されます。具体的に見ていきましょう。

1.「法定養育費」の創設
(1)「法定養育費」とは?
これまでは、離婚時に養育費の金額を取り決めていない場合、調停や審判といった裁判所の手続きを経なければならず、養育費が支払われるまで空白期間が生じていました。
今後は、離婚時に合意がなくても、離婚届けを出した時点から即座に暫定的な養育費として、子ども一人あたり月額2万円の支払いを請求できるようになります。
1人あたり月2万円は「少なすぎる」と感じる方も多いかと思います。このような意見に対して、法務省は、法定養育費は、親の間で取り決めがされるまでの間の暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めがない場合でも、法律に基づき直ちに一定額の請求権を発生させることで、離婚直後の子の生活が不安定になるのを防ぐことが目的と説明しています。つまり、法定養育費は、暫定的なものなのです。

(2)「算定表」との使い分けが重要
ここが混乱しやすいポイントなのですが、「2万円しかもらえない」というわけではありません。
改正法は、話合いや裁判所の手続きによって、双方の収入や生活水準にあわせた、生活保持義務の履践として適切な額を決定することを前提としています(法定養育費は、それまでの「つなぎ」なのです。)。
なお、裁判所の手続きの中で、どのように、その適切な額を決めているかは、こちらのコラムをご覧下さい。
整理すると、養育費について合意できないまま2026年4月1日以降に離婚した場合に、まずは法定養育費の制度を利用しつつ、家庭裁判所の調停手続などで適切な養育費を決める、という二段構えで進めていくことができるようになるのです。
【注意!】法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚するケースが対象です。ご注意ください。

2. 先取特権の付与
これが実務上、最もインパクトのある変更だと言われています。
これまで、相手が支払わない場合、差し押さえをするには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、裁判所が作成した特別な書類(調停調書、審判書や判決書)が必要でした。今回の改正で養育費請求権に先取特権が付与されたことで、法定養育費の規定に基づき、あるいは、公正証書になっていない合意文書に基づいて、相手の給与などを差し押さえられるようになります。
但し、先取特権が付与される額は、子ども1人あたり月8万円とされていることに注意が必要です。

3. 財産に関する情報開示命令(改正家事事件手続法第152条の2)
適切な養育費の額を決めようと、養育費の調停を申立てても、相手が給与明細や源泉徴収票といった収入情報を明らかにしないことがあります。勤務先が分かっていれば、勤務先に対して調査嘱託の申立てをして対応することができましたが、今般、家事事件手続法の改正によって、裁判所が必要があると認めるときに、申立て又は職権で、当事者に、収入・資産の情報を開示することを命じることができるようになります。そして、この命令に正当な理由なく背き、情報を開示しなかったり、嘘の情報を開示したりしたときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができるという制裁も導入されます。

4.強制執行手続きのワンストップ化
養育費が支払われていない場合、相手の給与を差押えるということを検討される方も多いかと思います。もっとも、相手がどこで働いているかわからない場合、給与を差押えることができません。そのような場合に勤務先を把握するための手続きとして、民事執行法は、財産開示手続や給与債権についての第三者からの情報取得手続を定めています。もっとも、差押えなどの強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きは、別個の手続きであるため、債権者は、その都度、申立てをしなければなりませんでした。
今回、民事執行法が改正され、養育費や婚姻費用については、財産開示手続きや第三者からの情報開示手続きを申し立てた場合、これらの手続きで分かった給与に対して差押えの申立てをしたとみなされるようになります。つまり、裁判所への1度の申立てで、勤務先の特定、給与の差押さえまでを連続して行える仕組みが整えられました。

5.補足:共同親権になると養育費はどうなる?
よくある誤解に「共同親権になれば、お互い親なのだから養育費は払わなくていいのでは?」というものがありますが、これは間違いです。
親権のかたちに関わらず、親には子どもに自分と同程度の生活を保障する「生活保持義務」があります。 共同親権であっても、基本的には、子どもと一緒に暮らして直接養育している親(監護者)に対し、他方の親が支払う形は変わりません。
(ただし、父母が一定の期間ごとに子どもを交代で監護する場合(監護の「期間の分掌」)、その内容によっては実態を考慮して金額が調整されるケースも出てきうると思われます。)

6.まとめ
今回の法改正で、養育費が支払われるようにするための方策が増えます。養育費について揉めている、養育費が支払われず困っているという方は、諦めず、弁護士にご相談ください。
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

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