Q&A
【2026年4月施行】離婚後の親子関係はどう変わる?~「共同親権」の基礎知識~【選択的共同親権が導入されます!】(弁護士 中瀬奈都子)
2026年3月9日 月曜日
2024年5月に成立し、今年(2026年)4月1日から施行される改正民法。これにより、約80年ぶりに「離婚後の単独親権」という原則が見直され、「離婚後の共同親権」が選択肢として導入されます。
つまり、これまで、離婚後は必ず父か母の【どちらか一方】に親権を定める必要があったものが、今回の改正により、離婚後も「共同親権」を選択できるようになるのです。すでに離婚しているケースでも適用され、単独親権から共同親権へ変更することができるようになるため、いま子育て中の、既に離婚した方、現在離婚を検討されている方にとって大きな変更と言えるのではないでしょうか。
- 改正のポイント:選択制の導入
新制度では、離婚時に以下のいずれかを父母の話し合いで決めます。
- 共同親権: 父母双方が親権を持つ。
- 単独親権: どちらか一方が親権を持つ。
もし父母間の話し合いや調停がまとまらない場合は、裁判所が「子の利益」を最優先に考え、どちらにするかを判断します(新民法819条2項、5項、7項参照)。共同親権とするか、単独親権とするかについて、原則・例外の関係があるものではないとされています。
- 「共同」とはどこまで協力するのか?
「共同親権になったら、日常のささいなこともすべて元配偶者の許可が必要なの?」という不安の声をよく耳にします。
実務上の運用は以下のようになると整理されています。
|
事項 |
決定の仕組み |
具体例 |
|
身上監護の 重大行為 |
父母が共同で決定 |
転居、進路の決定(私立小・中学への入学、高校進学・退学、就職、長期海外留学など)、大きな手術など心身に重大な影響を与える医療行為 |
|
財産管理 行為 |
父母が共同で決定 |
子ども名義の預貯金口座の開設、子どもに対して債務を負担させる契約の締結、子どもの所有する財産の処分など |
|
日常 行為 |
子どもと同居している親が単独で決定可 |
日々の食事、習い事の選択、軽微な病気の受診など |
|
急迫の 事情 |
子どもと同居している親が単独で決定可 |
緊急手術、虐待からの避難など |
- DVや虐待がある場合はどうなる?
改正にあたって最も議論された点です。
新民法819条7項は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮しなければならないと定めつつ、以下に述べる事由にあたる場合のように共同親権と定めることによって子の利益を害すると認められるときは、単独親権とし、父母の一方を親権者と定めなければいけないと定めています(必要的単独親権)。
単独親権にしなければならない場合は、以下のとおりです。
- 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき【親子の関係性に着目した必要的単独親権事由】
- 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれのある場合など、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき【父母の関係性に着目した必要的単独親権事由】
つまり、裁判所が「DVや虐待のおそれがある」と判断した場合には、共同親権を認めてはならないとされているのです。
4.裁判所はどう判断する?
改正後は、父母の協議や調停がととのわない場合、裁判所が「子の利益」を基準に判断することになります。単に「親がそうしたいから」ではなく、子どもにとってどちら良いのかがポイントです。
改正法施行後の事案の集積が待たれますが、裁判所は、主に以下の要素を総合的に見るものと考えられます。
- 父母と子との関係性
・子の面前で父母間で口論を繰り返していたり、子に対して他方の親の悪 口をことさらに言ったりと子どもを紛争に巻き込まないための配慮に欠けていないか
・養育費をきちんと支払っているか
・年長の子どものケースは、子どもの意思を尊重する観点から、子どもに父母双方の関わりを求める意向があるか、一方の親に対する拒否的感情があるかなども重要視される
- 父母の関係性:親権の共同行使のために最低限な意思疎通が可能か(頻繁な連絡や友好関係までは不要)。
5.具体的なケースを考えてみましょう
- ケース1
☛性格の不一致で離婚することになったが感情的な対立が低く、いわゆる円満離婚。別居中も父は定期的に子と面会しており、母ともLINEで習い事についてや体調についての報告をやり取りできている。父・母ともに「子どもの進路については二人で話し合いたい」と考えている。
- 裁判所の判断ポイント:
- 父母間に最低限のコミュニケーションが可能である。
- 双方が養育に関わる意欲があり、対立が激しくない。
- 結論: 子の健全な成長のために、共同親権が妥当とされる可能性が高いと考えられる。
ケース2:
☛婚姻中、父から母への身体的暴力(DV)があった。現在、母と子はシェルターを経て避難中。父は「反省している、親権は譲らない」と主張している。
- 裁判所の判断ポイント:
- 上述のとおり、改正法では、DVや虐待の恐れがある場合は、必ず単独親権としなければならない。
- 父母が対等に話し合える関係になく、共同親権にすると母子の安全が脅かされる。
- 結論: 父の意向に関わらず、母の単独親権となる。
ケース3:
☛DVなどはないが、離婚の経緯で激しく対立。母は「顔も見たくない、一切関わらないでほしい」と主張し、他方で、父は「養育費も払うし、教育にも関わりたい」と主張。話し合いが全く成立しない。
- 裁判所の判断ポイント:
- 意思疎通の困難さがどの程度かが焦点。
- 単に「嫌いだから」という理由だけで単独親権になるわけではありません。他方の親に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動があり、協力関係を構築できない理由があるかがポイントになります。
- 結論: 暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の構築を阻害しているような場合、そのことだけで協力関係の構築が期待できないとするのは、子の利益の観点から見て慎重に検討が必要とされています。より具体的な事情次第というところでしょう。
まとめ
共同親権導入後、単独親権か共同親権かという争いや、共同親権にした場合に何が日常行為で何が身上監護上の重大行為かといった争いが生じ、紛争が増える、あるいは紛争が複雑化することが予想されます。
親権について問題になりそうな時には、是非、お気軽に弁護士にご相談ください。
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