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【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

nakase

 

未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。この生活保持義務について、改正法第817条の12第1項に明記されました。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができますが、通常は、離婚後に子どもを育てている親が、他方の親に対して、養育費の支払いを求めます。
しかし、養育費が支払われている割合は決して高くはありません。厚生労働省が実施した調査によれば(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、「現在も養育費を受け取っている」と回答した世帯は、母子世帯で28.1%、父子世帯ではわずか8.7%にとどまっています。つまり、7割以上の母子世帯、9割以上の父子世帯が養育費を受け取れていないのが現実です。
このような状況の中、養育費がきちんと支払われる仕組みを強化する目的で法改正が行われました。改正法が施行される2026年4月から、養育費の支払いを確保するための制度が導入されます。具体的に見ていきましょう。

1.「法定養育費」の創設
(1)「法定養育費」とは?
これまでは、離婚時に養育費の金額を取り決めていない場合、調停や審判といった裁判所の手続きを経なければならず、養育費が支払われるまで空白期間が生じていました。
今後は、離婚時に合意がなくても、離婚届けを出した時点から即座に暫定的な養育費として、子ども一人あたり月額2万円の支払いを請求できるようになります。
1人あたり月2万円は「少なすぎる」と感じる方も多いかと思います。このような意見に対して、法務省は、法定養育費は、親の間で取り決めがされるまでの間の暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めがない場合でも、法律に基づき直ちに一定額の請求権を発生させることで、離婚直後の子の生活が不安定になるのを防ぐことが目的と説明しています。つまり、法定養育費は、暫定的なものなのです。

(2)「算定表」との使い分けが重要
ここが混乱しやすいポイントなのですが、「2万円しかもらえない」というわけではありません。
改正法は、話合いや裁判所の手続きによって、双方の収入や生活水準にあわせた、生活保持義務の履践として適切な額を決定することを前提としています(法定養育費は、それまでの「つなぎ」なのです。)。
なお、裁判所の手続きの中で、どのように、その適切な額を決めているかは、こちらのコラムをご覧下さい。
整理すると、養育費について合意できないまま2026年4月1日以降に離婚した場合に、まずは法定養育費の制度を利用しつつ、家庭裁判所の調停手続などで適切な養育費を決める、という二段構えで進めていくことができるようになるのです。
【注意!】法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚するケースが対象です。ご注意ください。

2. 先取特権の付与
これが実務上、最もインパクトのある変更だと言われています。
これまで、相手が支払わない場合、差し押さえをするには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、裁判所が作成した特別な書類(調停調書、審判書や判決書)が必要でした。今回の改正で養育費請求権に先取特権が付与されたことで、法定養育費の規定に基づき、あるいは、公正証書になっていない合意文書に基づいて、相手の給与などを差し押さえられるようになります。
但し、先取特権が付与される額は、子ども1人あたり月8万円とされていることに注意が必要です。

3. 財産に関する情報開示命令(改正家事事件手続法第152条の2)
適切な養育費の額を決めようと、養育費の調停を申立てても、相手が給与明細や源泉徴収票といった収入情報を明らかにしないことがあります。勤務先が分かっていれば、勤務先に対して調査嘱託の申立てをして対応することができましたが、今般、家事事件手続法の改正によって、裁判所が必要があると認めるときに、申立て又は職権で、当事者に、収入・資産の情報を開示することを命じることができるようになります。そして、この命令に正当な理由なく背き、情報を開示しなかったり、嘘の情報を開示したりしたときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができるという制裁も導入されます。

4.強制執行手続きのワンストップ化
養育費が支払われていない場合、相手の給与を差押えるということを検討される方も多いかと思います。もっとも、相手がどこで働いているかわからない場合、給与を差押えることができません。そのような場合に勤務先を把握するための手続きとして、民事執行法は、財産開示手続や給与債権についての第三者からの情報取得手続を定めています。もっとも、差押えなどの強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きは、別個の手続きであるため、債権者は、その都度、申立てをしなければなりませんでした。
今回、民事執行法が改正され、養育費や婚姻費用については、財産開示手続きや第三者からの情報開示手続きを申し立てた場合、これらの手続きで分かった給与に対して差押えの申立てをしたとみなされるようになります。つまり、裁判所への1度の申立てで、勤務先の特定、給与の差押さえまでを連続して行える仕組みが整えられました。

5.補足:共同親権になると養育費はどうなる?
よくある誤解に「共同親権になれば、お互い親なのだから養育費は払わなくていいのでは?」というものがありますが、これは間違いです。
親権のかたちに関わらず、親には子どもに自分と同程度の生活を保障する「生活保持義務」があります。 共同親権であっても、基本的には、子どもと一緒に暮らして直接養育している親(監護者)に対し、他方の親が支払う形は変わりません。
(ただし、父母が一定の期間ごとに子どもを交代で監護する場合(監護の「期間の分掌」)、その内容によっては実態を考慮して金額が調整されるケースも出てきうると思われます。)

6.まとめ
今回の法改正で、養育費が支払われるようにするための方策が増えます。養育費について揉めている、養育費が支払われず困っているという方は、諦めず、弁護士にご相談ください。
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

投稿者 川崎合同法律事務所

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