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過労事故死事件解決の先の約束の書「睡眠科学・医学・労働法学から考え直す日本の労働時間規制」(日本評論社)を出版しました(弁護士 川岸卓哉)

2025年4月28日 月曜日

川岸卓哉弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

■2018年 グリーンディスプレイ青年過労事故死事件和解解決

2014年4月24日、株式会社グリーンディスプレイで就労していた渡辺航太さん(死亡当時24歳)が、長時間不規則労働の末、徹夜での勤務後の帰宅途中に単独バイク事故を起こし死亡した事件がありました。2018年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部は、企業の通勤途上の過労運転事故を防ぐ安全配慮義務を認定したうえで、賠償、謝罪及び再発防止を約束させる和解決定をし、解決に至りました。

■和解解決の先の約束

裁判を闘った原告、弁護団、支援の会は、和解解決にあたり「本件が勝利和解によって終結しても、航太さんが母淳子さんと共に暮らした家に帰ってくることは二度とありません。航太さんの短い生涯と引き替えに残されたこの和解が、地球よりも重い一人ひとりの命を大事にする社会を創る希望となることを願うものです」と声明を発表しました。この声明文を執筆した私としては、裁判の終結で終わりにすることはできませんでした。それは、私にとって、原告である母淳子さん、そして航太さんとの約束でした。

そこで、航太さんの生きた証、裁判に立ち上がった母淳子さんの歩みや、支援してもらった多くの仲間たちとの出会い、画期的な和解を示した裁判所の矜持を、記録として残すことにしました。それが、2020年に私と原告の渡辺淳子さんの共著で出版した「過労事故死~隠された労災~」(旬報社)でした。

■もう一つの約束過労死撲滅の政策提言の書

もう一つ、私にはやり残したことがありました。それは、二度と航太さんのような過労死が起きないよう、労働時間規制を社会に求める政策提言の書を世に出すことでした。そこで、私は、この事件の意見書を書いて頂いた睡眠科学者の佐々木司先生(大原記念労働科学研究所)と、ちょうど当時日本通運無期転換逃れ事件で意見書を書いて頂いた労働法研究者の高橋賢司先生(立正大学)にお声がけし、日本評論社の編集者柴田英輔さんの協力を得て、あらたに出版を企画することになりました。幾度も編集会議を重ねる中で、過労死問題の解決には医学の観点も不可欠と考え、さらに広瀬俊雄医師(産業医学センター所長)と、笽島茂三教授(三重大学)にも著者に加わって頂きました。こうして、労働法学、睡眠科学と医学の知見を結集し、あるべき労働時間規制を示す「睡眠科学・医学・労働法学から考え直す日本の労働時間規制」(日本評論社)を出版することができました。事件から10年、ようやく約束を果たすことができて、ほっとしています。

この本の内容が社会に広まり、労働時間規制が実現すれば、日本社会において過労死は撲滅できると考えています。ぜひ一人でも多くの方にお手に取って頂きますようお願いします。

睡眠科学・医学・労働法学から考え直す日本の労働時間規制

 

投稿者 川崎合同法律事務所

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