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川崎市保育問題交流会・中央大学経済学部小尾ゼミ共同調査 『2023年度川崎保育実態調査報告書』を発表しました
2025年2月13日 木曜日
報告書発表時の報道
・東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/379792
・毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20241219/ddl/k14/040/060000c
1 川崎市保育実態調査のためのアンケートの実施
(1)アンケート実施の概要
実施目的:本アンケートは、川崎市とその近隣地域において社会・労働分野を中心に活動する弁護士、研究者、労働組合、NPO関係者などの集まりである川崎市保育問題交流会(代表:川岸卓哉弁護士)、社会政策、労働問題を専門とする中央大学経済学部小尾晴美及び同氏ゼミナール学生の共同により、川崎市内の認可保育所で働く保育職員の労働環境の他、保育所利用者におけるワークライフバランスの質に関する政策研究及び提言のための基礎となる実態を明らかにすべく、調査を行ったものです。
実施主体:川崎市保育問題交流会、中央大学経済学部小尾晴美及び同氏ゼミナール学生
実施方法:2023年7月~10月、川崎市内の認可保育所(全438園)宛てに、働く方アンケート、施設長アンケート、保護者アンケートを発送しました。
回 収 率:働く方アンケートの有効回答数は491票。施設長アンケートの有効回答数は45票。保護者アンケートの有効回答数は121票でした。
(2)アンケート結果の概要
ア 働く方アンケートについて:保育の質の向上に向けた労働環境等の改善を
本調査では、川崎市の保育の特徴として、株式会社立の保育所が多いことが明らかとなった。株式会社立の保育所における賃金の低さも際立っており、正社員でも過半数超の52.7%が年収300万円未満、非正規だと91.7%にのぼることが明らかになりました。
また、賃金に加え、多くの保育士が業務量の悩みを抱えていることが分かりました。特に職場の職員数が足りていなとの回答は85%を超え、国や川崎市に対する要求等の自由記載でも、配置基準の見直しを求める声が多くあがっています。
更には、本調査により、労基法を遵守していない保育所が多いことが分かりました。休憩時間については、69.9%の保育士が適切に取ることができず、時間外手当については、65%の保育士がもらっていないことが明らかになりました。
イ 保護者アンケートについて:父母の自由時間の確保に向けた協力、分担を
ワークライフバランスの満足度に影響する「自由に使える時間」について、夫婦間の育児分担割合が母親に偏っていることからして、共働き世帯の多くの母親において、自分時間について不満を持っていることが分かりました。
一方で、労働時間の長さや帰宅時間の遅さは、父親に負担が偏っていることも明らかになりました。母親の育児分担の割合を上手く減少させるためには、父親がより積極的に育児に参加することが不可欠ですが、同時に、夫婦間で仕事・育児・自分時間を包括して無理なく分担することも必要だといえる結果でした。
ウ 施設長アンケートについて:保育士の処遇改善の必要性は、施設長も認識
現場で働く保育士の声と同様、現在の配置基準について、不十分であるとの回答が95.6%にのぼっているほか、運営上の課題としては、保育士の確保が86.7%、職員の処遇改善が68.9%となっています。自由記述の回答においても、保育士の賃金引上げとし配置基準の改善に関する要望が複数あがっており、施設長においても、保育士の処遇改善の必要性を強く認識しているという結果となりました。
(3)【本調査で得られた主な結果(中央大学経済学部 小尾晴美助教報告書まとめ抜粋)】
「不適切な保育」の事件が大きく取りざたされて以降、全国の保育所等での事故や虐待行為が様々なメディアで取り上げられ、注目されるようになった。保育事故の発生や「不適切な保育」の背景として、保育士の処遇の低さや長時間労働の問題がある。
この20年ほどの間で、日本における就学前保育の状況は大きく変化した。年齢が低く、相対的に手のかかる3歳未満児の在園児の割合は2000年には24%であったのが、2020年には約4割を占めるに至っている。また、延長保育のニーズの高まりを背景として、保育所の開所時間は長時間化している。11時間を超えて開所している保育所の数は、2000年で全体の約4割にあたる8939であったのが、22年には、81.7%にあたる2万5126に増加している(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。しかしこの20年間、保育士の配置基準はなんら変わっておらず、国が保育施設に給付する園児一人当たりの経費(公定価格基本分単価)の額もほとんど変わっていない。国が保育施設に給付する公定価格では、週40時間制を前提とした8時間保育体制の保育士数が基本とされている。しかし、保育士の業務には、会議・打ち合わせや書類を作成する事務作業などもある。実質的に保育所にとっては、園児が8時間を超えて園にいる時間帯や、土曜保育については、国の給付で想定されている以上の人員の配置か、保育士の時間外(サービス)労働で対応せざるを得ないシステムとなっているのである。
このような背景を受け、本調査は、川崎市の保育の実態を把握するために実施された。保育現場で働く保育職員の労働条件の改善、保育の質の向上などを前進させることを目的に認可保育園で現に働いている保育者、施設長、子どもを保育園に預けている親からデータを得ている。複眼でとらえることで実態をリアルに捉えることができた。本調査が、今後の保育者の処遇改善、さらには保育政策や保育実践の質向上にいささかでも寄与できるならば、うれしい限りである。
、本調査から、今日の川崎における保育者が、賃金の低さ、業務負担の大きさなどの点において、厳しい労働条件下におかれていることが明らかになった。2024年には、長い間改善が求められてきた配置基準の改善が実施され、4・5歳児配置について30対1から25対1へ、1歳児の5対1への改善が図られることとなった。しかし、本調査で保育者や施設長から「適正」とされた人数とは依然としてギャップがある。1歳児の5対1への改善については当面先送りされているため、早期実施を求めていくこと、すべての年齢において配置 基準をさらに改善することが求められる。また、今回はじめて保護者調査を実施した結果、家庭内の無償労働のジェンダー的偏り、その雇用労働への影響、他方で、雇用労働としてケア労働が安価に提供されているという実態が明らかになった。働く親を支え、子どもの育ちを支えるケアの重要性を可視化し、その価値を社会的、政治的に高く位置付けることが望まれる。本調査結果が、保育者、働く親のみなさんのよりよい就労・子育て環境実現に寄与し、子どものより豊かな育ちに活かされることを願うばかりである。
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