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相続登記義務化迫る!未登記の相続土地はありませんか! 処理にお困りの方は弁護士にご相談ください。 (弁護士 星野文紀)
2022年12月27日 火曜日
2023年2月16日(木)10:30~くらしの法律講座でわかりやすくお話しします。詳細は、こちらの頁をご覧下さい。
1 日本の「所有者不明土地」は九州よりも広い?
最近、「所有者不明土地」が各地で社会問題になっています。「所有者不明土地」とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。
「所有者不明土地」は日本各地で増加しており、その面積を合わせると、九州よりも広く、国土の約22%(平成29年度国土交通省調べ)におよぶというのです。そして今後も、所有者不明土地は、さらに増えていくと予想されています。
2 「所有者不明土地」はこうして増える
所有者不明土地が生じる主な原因としては、
① ①土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと
② ②所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと
などがあげられます。相続放棄も関係しているとも言われています。これらのことにより、登記簿からは所有者がだれかわからなくなるのです。
3 「所有者不明土地」があると、土地が売れない。地域社会の妨げになる。
所有者を登記簿上特定することができないと、いろいろな不具合が生じます。
まず、生きている所有者の登記がなければ、土地を売ったりすることはできません。また、隣地の所有者が不明だと、境界の確認も困難になり、周辺の土地の売却や利用も困難になっていきます。結果、地域全体に使えない土地がどんどん増えていくことになります。
4 相続登記の放置・先延ばしは危険
相続登記は、時間が経てば経つほど困難になります。
具体的に見ていきましょう。相続登記をしないまま祖父母名義の土地に住んでいた父が亡くなって、長男が家を引き継いだとします。長男からすると、曾祖父名義の土地を引き継いだことになります。この土地の相続登記をするとなると、長男から見て、祖父母の兄弟姉妹やその子供(つまり親のいとこ達)と遺産分割協議をしなければなりません。話もしたことのない場合や、会ったことさえないことも多いでしょう。仮に、祖父がその土地を相続するという口頭での合意があったと聞いていましてもその話を知らない人に通用せず、土地を均等に分けなければいけなくなるかもしれません。相続人の1人の行方がわからないかもしれません。結果、相続登記ができないことも考えられます。
このように関係する人が増えることと互いの関係性が遠くなることで話合いが極めて困難になるのです。相続登記の放置は大変危険です。
5 相続登記の義務化。罰則あり
また、前述のとおり、未登記土地が社会問題となっていることから、相続登記を義務化するため、2021年4月21日に民法や不動産登記法などの改正法が成立し、相続登記が義務づけられることになりました。
正当な理由なく、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請をしなかった場合には、10万円以下の過料に処されます。
この改正法は、2024年4月から施行される予定です。
改正法施行後は、速やかに相続登記を行わないと処罰される可能性も出てくるのです。
6 放置されている相続は弁護士にご相談を
相続の手続きは、先送りにすると非常に困難になるという特性があります。自身の将来や将来世代に負担を掛けないように、早めに、相続の処理をされることをおすすめします。処理に問題がある場合や、どうしていいのかわからない場合は、弁護士がお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。
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|情報公開請求-口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーン- (弁護士 小林展大)
2022年12月10日 土曜日
第1 はじめに
情報公開請求の審査請求手続においては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述があります。
審査請求手続は,原則書面審理なのですが,書面とは異なる事実発見の重要な機会を審理手続において設ける等の趣旨から,口頭意見陳述の機会が設けられています。
私が行っている口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーンとは,情報公開請求の審査請求手続において,必ず行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述の両方を申立て,とにかく必ず口頭意見陳述を行う,とにかく口頭意見陳述を行えばそれでいい,というものです。実際には,各口頭意見陳述を行う目的,狙い,理由等はあるのですが,それを書き始めるとそれだけで記事の内容が長くなってしまうので,あえて書かないことにします。
第2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述
1 行政不服審査法31条の規定
⑴ 1項
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
⑵ 2項
前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。
⑶ 3項
口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
⑷ 4項
口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
⑸ 5項
口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。
2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行ってみて
⑴ 私が行っている,地方自治体に対する情報公開請求の審査請求手続において,地方自治体によっては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述の案内がありましたが,案内がなかった自治体もありました。
⑵ 次に,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述は,申し立てをしないと実施されませんでした。
また,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会への諮問前に行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行った自治体と諮問後に行った自治体がありました。
また,必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
⑶ 私が行った行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,質問事項を作成して事前に提出し,同口頭意見陳述においてその回答を求めるようにしています。
⑷ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,記録の送付があった自治体と記録の送付がなかった自治体がありました。
⑸ 意見陳述を実施してみての感想としては,審査請求で対象文書の追加特定を求めている場合,既に開示された資料を読み込んでおく,他の地方自治体で特定,開示された文書,記録等を参考にする等の事前準備をしておくと,実施機関,処分庁において存在すると考えられる文書,記録を推測しやすいことがありました。
また,対象文書の追加特定を求める場合,質問の仕方に工夫を要することがありました。
一方,不開示処分の取り消しを求めている場合,意見陳述で効果的な質問をすることはかなり難しいと思います。不開示事由該当性について質問をしても,抽象的な回答に終始することが多かったです。
さらに,審理員審理の場合,審理員が意見陳述の進行,指揮を適切に行うことで充実した意見陳述の実現につながったこともありましたし,審査請求人側で,類似事例との比較,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較等をすることにより,意見陳述を形骸化させず,充実した意見陳述を実現する努力をする必要があるのではないかと考えられます。
第3 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述
1 根拠規定
情報公開条例,情報公開・個人情報保護審査会条例,情報公開・個人情報保護審査会設置条例,情報公開・個人情報保護審査会設置法等に規定があります。
2 手続の主な流れ
⑴ 地方自治体によっては,審査会の口頭意見陳述の案内がありました。
⑵ 必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
3 口頭意見陳述の進行
審査会の口頭意見陳述の説明,注意事項伝達,審査請求人(及び補佐人)の意見陳述,審査会委員との質疑応答という進行が多いと思います。
私が申し立てた情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述は,今のところいずれも実施されていますが,審査会の口頭意見陳述の根拠規定については,義務規定もあれば,裁量規定もあり,申立をしても口頭意見陳述が実施されない場合もあります。
4 資料について
私は,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述で言及する資料は,事前に提出しています。
5 口頭意見陳述の記録の送付の有無
情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述の記録の送付はありませんでした。
6 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を実施してみて
⑴ 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述には,実施機関,処分庁の職員は出席しません。
⑵ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と異なり,質問事項に沿って質疑応答という流れではありません。
⑶ 対象文書の特定,不開示事由該当性等,審査請求手続における争点を意識して口頭意見陳述を組み立てることが必要ではないかと考えられます。
⑷ 類似事例,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較を踏まえたり,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を踏まえたりして,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を充実化させる努力が必要ではないかと考えられます。
⑸ 補佐人帯同する場合には,事前に審査請求人と補佐人とで役割分担しておく方が現場での混乱が少ないように思います。
第4 終わりに
情報公開請求の審査請求手続においては,口頭意見陳述も積極的に行い,我らが日本国憲法により保障されている知る権利の具現化を今後もはかりたいと思います。
以上
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|安倍元首相の国葬に対する住民監査請求(弁護士 藤田温久)
2022年12月1日 木曜日
1 2022年7月8日、同月10日投票の参議院選挙の街頭応援演説をしていた安倍 晋三元首相が銃撃を受け死亡し、同月22日、岸田首相は国葬(故安倍晋三国葬儀、 以下「本国葬」)を行うことを閣議決定しました。
慣例的に行われてきた「内閣・自由民主党合同葬」ではなく「国葬」とする理由は、①首相在籍期間が憲政史上最長、②日本経済再生や外交に大きな実績、③ 外国首脳ら国際社会から高い評価がある等とされました。
2 住民監査請求
しかし、本国葬は、明らかに違憲・違法であるため、9月15日、私達弁護士は県民・市民とともに、地方自治法に基づき、神奈川県、横浜市、川崎市の各監査委員に対し、知事、各市長、各議会議長が参列のために使用する公金(旅費・日当・宿泊費)の支出差し止め(支出後は返還請求)を求めて住民監査請求を行いました。
3 何故、本国葬が違憲・違法なのでしょうか。
(1)戦前の天皇制下では「国葬令」により、「國家ニ偉功アル者」の葬儀は、天皇の「思召」をもって、天皇の命令により実施されました。「国葬」は、国家が特定の「功臣」の死を政治的な狙いで利用するものだったのです。
(2)国葬令は、1947年に日本国憲法の基本原理と両立しないものとして法律により失効しました。現在の日本において、国を挙げて行なう公葬を規定する法律(皇室典範以外)は存在しません。
(3)本国葬の違憲性・違法性
先ず、国民は平等であり(憲法14条)国は天皇以外を当然に特別扱いできません。本国葬は、法的根拠なく安倍氏を特別扱いして国費で葬儀をするものであり憲法14条に反します。また、故人に追悼の念を抱くか否かは個人的な営為であり個人の歴史観や世界観、政治信条に深く根ざした行為です。本国葬は、その追悼を、有形無形の圧力により国民に強いるという意味で、思想良心の自由を保障した憲法19条に反するものです。更に、本国葬は政教分離原則(憲法20条・89条)、表現の自由(憲法21条)にも反するものです。
次に、本国葬は、法律に基づかないものです。岸田首相は、内閣府設置法に内閣府の所掌事務として「国の儀式」が挙げられているから「法的根拠」はあると言いますが詭弁です。行政は「法律を誠実に執行する」(憲法73条1号)ものであり、行政権の執行には、法律を執行するための機関を作る根拠となる「行政組織法」と、具体的に行政活動を営む際の手続や要件、活動の内容や効果に関する「行政作用法」が必要です。しかし、内閣府設置法は「行政組織法」=ハードウエアにすぎず、国葬に関する「行政作用法」=ソフトウエアは存在しないからです。本国葬は「法律に基づく行政の原理」に反しているのです。重大な違法行為です。
4 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの違法性
地方自治法は、普通地方公共団体は、「地域における事務及びその他の事務」で「法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」を処理するとしています。
しかし、知事らが本件国葬に出席するために公金を支出する根拠となる法律も政令も存在せず、その他の根拠もないため、公金支出は違法です。
5 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの不当性
住民監査請求では、違憲・違法性だけではなく不当性も監査対象になります。仮に百歩譲って、本国葬が違憲・違法ではないとしても、本国葬は著しく不当であり出席のために公金を支出ことも不当であり許されないのです。
つまり、安倍元首相は、
①「アベノミクス」により、日本経済の競争力を奪い、国民の格差と貧困を拡大し、
②「モリ」「カケ」「サクラ」問題など権力の私物化を進め、
③ 教育基本法の改悪や、安保法制・集団的自衛権行使等の違憲行為により
「民主主義」と「憲法秩序」を破壊してきました。このような安倍元首相を国葬にして評価することは、著しく不当だからです。
6 本国葬の強行
岸田政権は、国民の多数が反対する中で(直近の主な全国10の世論調査全てで反対が賛成を大きく上回っていました)本国葬を2022年9月27日に強行しました。
7 意見陳述会と請求の却下
横浜市は10月20日、神奈川県は翌21日、川崎市は27日に請求人と関係職員の意見陳述会を開催し、短時間ですが監査委員との質疑応答も行われました。当事務所の藤田、畑両弁護士も陳述を行いました。
ところが、 横浜市は11月4日、神奈川県は11月11日、川崎市は11月11日にそれぞれ請求を却下しました。却下の理由は、判で押したように、閣議決定に基づき国から招待状が来て出席することは社会通念上相当と認められる社交儀礼上の行為であり国との信頼関係維持増進に資するものであるから地方公共団体の事務に含まれるというものでした。
結局、各監査委員は、県や市の公費支出に法令上の根拠がないこと国葬が違憲違法であることにつき全く検討しないまま、監査請求を棄却したものであり、極めて不当です。
8 監査請求の成果
しかし、本監査委請求を含む国民の本国葬に対する反対の運動は、無駄ではありませんでした。本国葬には、招待者の4割は参列せず、県知事4名、政令市市長1名が欠席し、全国のほとんどの市町村・学校において弔意を表することもされませんでした。また、G7諸国及び国連常任理事国の現役首脳の参加はゼロであり、岸田政権が本件国葬の意義として掲げた「弔問外交」も外交以前に破綻してしまいました。
自民党二階氏は「国葬は当たり前だ。やらなかったらバカだ」「国葬が終わったら反対していた人も良かったと思うはず。日本人なら」等と発言していました。しかし、そうはなりませんでした。世論調査の結果は、本件国葬を評価しない人が評価する人を大きく上回っています。本住民監査請求の請求人も当初は37人でしたが、国葬後も続々と増え、217人の方が請求人となりました。 本国葬に対する市民の反対の意思の表れといえるでしょう。このまま国葬問題に蓋をすることは許されません。このような違憲違法な公費支出をした県知事、川崎市長に対して4月の一斉地方選挙で責任を問いましょう。
以上
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