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情報公開請求-口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーン- (弁護士 小林展大)

2022年12月10日 土曜日

小林展大弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

第1 はじめに
 情報公開請求の審査請求手続においては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述があります。
 審査請求手続は,原則書面審理なのですが,書面とは異なる事実発見の重要な機会を審理手続において設ける等の趣旨から,口頭意見陳述の機会が設けられています。
 私が行っている口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーンとは,情報公開請求の審査請求手続において,必ず行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述の両方を申立て,とにかく必ず口頭意見陳述を行う,とにかく口頭意見陳述を行えばそれでいい,というものです。実際には,各口頭意見陳述を行う目的,狙い,理由等はあるのですが,それを書き始めるとそれだけで記事の内容が長くなってしまうので,あえて書かないことにします。

 

第2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述
1 行政不服審査法31条の規定
⑴ 1項
  審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。

⑵ 2項
 前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。

 

⑶ 3項
 口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

⑷ 4項
 口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。

⑸ 5項
 口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。

2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行ってみて
⑴ 私が行っている,地方自治体に対する情報公開請求の審査請求手続において,地方自治体によっては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述の案内がありましたが,案内がなかった自治体もありました。

 

⑵ 次に,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述は,申し立てをしないと実施されませんでした。
  また,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会への諮問前に行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行った自治体と諮問後に行った自治体がありました。
  また,必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。

 

⑶ 私が行った行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,質問事項を作成して事前に提出し,同口頭意見陳述においてその回答を求めるようにしています。

 

⑷ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,記録の送付があった自治体と記録の送付がなかった自治体がありました。

⑸ 意見陳述を実施してみての感想としては,審査請求で対象文書の追加特定を求めている場合,既に開示された資料を読み込んでおく,他の地方自治体で特定,開示された文書,記録等を参考にする等の事前準備をしておくと,実施機関,処分庁において存在すると考えられる文書,記録を推測しやすいことがありました。
 また,対象文書の追加特定を求める場合,質問の仕方に工夫を要することがありました。
 一方,不開示処分の取り消しを求めている場合,意見陳述で効果的な質問をすることはかなり難しいと思います。不開示事由該当性について質問をしても,抽象的な回答に終始することが多かったです。
 さらに,審理員審理の場合,審理員が意見陳述の進行,指揮を適切に行うことで充実した意見陳述の実現につながったこともありましたし,審査請求人側で,類似事例との比較,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較等をすることにより,意見陳述を形骸化させず,充実した意見陳述を実現する努力をする必要があるのではないかと考えられます。

 

第3 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述
1 根拠規定
 情報公開条例,情報公開・個人情報保護審査会条例,情報公開・個人情報保護審査会設置条例,情報公開・個人情報保護審査会設置法等に規定があります。

2 手続の主な流れ
⑴ 地方自治体によっては,審査会の口頭意見陳述の案内がありました。

⑵ 必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。

 

3 口頭意見陳述の進行
 審査会の口頭意見陳述の説明,注意事項伝達,審査請求人(及び補佐人)の意見陳述,審査会委員との質疑応答という進行が多いと思います。
 私が申し立てた情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述は,今のところいずれも実施されていますが,審査会の口頭意見陳述の根拠規定については,義務規定もあれば,裁量規定もあり,申立をしても口頭意見陳述が実施されない場合もあります。

4 資料について
 私は,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述で言及する資料は,事前に提出しています。

5 口頭意見陳述の記録の送付の有無
 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述の記録の送付はありませんでした。

6 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を実施してみて
⑴ 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述には,実施機関,処分庁の職員は出席しません。

⑵ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と異なり,質問事項に沿って質疑応答という流れではありません。

⑶ 対象文書の特定,不開示事由該当性等,審査請求手続における争点を意識して口頭意見陳述を組み立てることが必要ではないかと考えられます。

⑷ 類似事例,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較を踏まえたり,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を踏まえたりして,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を充実化させる努力が必要ではないかと考えられます。

⑸ 補佐人帯同する場合には,事前に審査請求人と補佐人とで役割分担しておく方が現場での混乱が少ないように思います。

 

第4 終わりに
 情報公開請求の審査請求手続においては,口頭意見陳述も積極的に行い,我らが日本国憲法により保障されている知る権利の具現化を今後もはかりたいと思います。 

以上

投稿者 川崎合同法律事務所

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