ケーススタディー
雇止め(更新拒絶)されても、働きつづけることができる場合もあります!(弁護士 山口毅大)
2018年8月31日 金曜日
1 相談に至る経緯
相談者は,20年以上,勤務していた職場で,飲食業務等に従事し,何十回も有期雇用契約を更新されてきた方でした。
次回の更新の段階になって,相談者は,会社から突然,次回の契約を更新しないと告げられました。
会社が挙げてきた理由は,いずれも事実無根であったり,問題が無いことばかりであったので,相談者は,会社に対し更新するように求めました。
すると,会社は,雇止めを撤回すると言ってきましたが,相談者に対し,代わりに,一定の不明確な条件で更新しない旨の不更新条項が記載されている書面にサインするように言いました。
そこで,相談者は,数名の弁護士に相談しました。ですが,受任を断られてしまい,労働問題を労働者側で行っている当職に相談を申し込みました。
2 本件の主な争点
本件の争点は,
① 雇用継続への合理的期待が生じているか,
② 雇止めに客観的合理的理由があるか,社会通念上相当であるかどうか
という点にありました。
3 相談後の経緯
相談者のお話を伺うと,20年以上,同じ就労場所で,同じ業務を行ってきたことから業務内容が臨時ではないこと,雇用期間が長いこと,更新回数が多いこと,一度雇止めを撤回したこと,雇用の目的からして必要以上に短い期間を定めていることから雇用継続への合理的期待が生じていると考えられました。
このように,雇用継続への合理的期待が生じている場合に,労働者が契約更新を求めていれば,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当ではなければ,雇止めできず,従前の契約内容で更新されます。
次に,会社が挙げた雇止めの理由について,いずれも,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当ではないことは明らかでした。
なお,確認書については,サインする義務もない上,抽象的な条件での不更新条項が入っていましたので,サインしないように助言しました。これにサインすると,後で,条件が成就したことにより不更新とすると言われかねないからです。
そこで,まずは,当職は,会社に対し,内容証明郵便を送付し,相談者に対する雇止めが労働契約法19条2号に反し,許されないことから雇止めの撤回,確認書のサインの強制をせずに,更新することを求めました。
その結果,会社は,雇止めを諦め,従前通りの条件で契約を更新しました。
4 さいごに
契約期間が満了したことをもって,契約終了と会社から言われると,その通りであると思ってしまう方も多いかと思います。ですが,今回のように,雇用継続への合理的期待が生じている場合で,雇止めが客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当ではない場合には,従前の契約内容で更新されます。また,実質的に無期契約と同視できる場合にも,雇止めが客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当ではない場合には,従前の契約内容で更新されます。
今回のように,交渉のみで,復職できるケースは,あまり多くはありません。ですが,更新しないことを通知された場合に,すぐに相談頂ければ,今回のように雇止めを撤回させることができる場合もあります。また,訴訟で争うことも可能です。
諦めずに,まずは,ご相談ください。
投稿者
最近のブログ記事
- 遺言作成は元気なうちに~遺言作成のすすめ~
- よりより遺言書を作るために~「遺言執行者」をご存知ですか?~
- 孤立出産による乳児死体遺棄・殺人事件で執行猶予判決を獲得!(弁護士 長谷川 拓也)
- 追突事故の後遺障害につき、後遺障害等級12級該当として解決した事例(弁護士 小林展大)
- 性暴力が性暴力と認められた─Aさんの5年間のたたかい─(弁護士 川口彩子)
- 相談者にとって今本当に必要なことは何か(弁護士 藤田温久)
- 雇止め(更新拒絶)されても、働きつづけることができる場合もあります!(弁護士 山口毅大)
- 失踪宣告の取消が認められたケース(弁護士 小林展大)
- グリーンディスプレイ青年過労事故死事件画期的勝利和解-通勤帰宅途上の過労事故死にも会社に安全配慮義務違反を認める(弁護士 川岸卓哉)
- 黒字リストラの横行する日立製作所における退職強要・パワハラ・不当査定 損害賠償請求提訴しました(弁護士 川岸卓哉)