Q&A

2017年12月28日 木曜日

ご存知ですか?無期転換ルール(労働契約法18条)弁護士 山口毅大

1 無期転換ルールとは?

 

 2012年8月,同一の使用者との間で締結された2つ以上の期間の定めがある労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が,使用者に対して,期間の定めのない労働契約に転換することを申込むと期間の定めのない契約に転換するという「無期転換ルール」が成立しました。

 この無期転換ルールが作られたのは,合理的な理由がないのに,有期労働契約社員が正社員よりも,不利な労働条件や不安定な雇用のもとで,雇用されている現状を改善する点にあります。

 この無期転換ルールは,2013年4月1日以後を契約期間の初日とする有期労働契約について適用されます。

 

2 要件(無期転換ルールが適用されるための条件)

 

(1)無期労働契約への転換申込権が発生する要件は,次の通りです。

 

 ① 同一の使用者との間の2以上の有期労働契約が締結されたこと

 

 ② 2以上の有期労働契約を通算した雇用期間が5年を超えたこと

 

 使用者との間で締結された1の有期労働契約の契約期間が満了した日と,使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まない期間が6か月以上であるときは,当該期間前に満了した有期労働契約の契約期間は,通算契約期間に算入しないクーリング期間があります。なお,無契約期間の直前に満了した1の有期労働契約の契約期間が1年に満たない場合,当該契約期間に2分の1を乗じて得た数に1月未満の端数がない場合には,その月数を,1月未満の端数がある場合には,その端数を切り上げた月数をクーリング期間の長さとすると定められています。

 

 もっとも,研究開発力強化法,大学教員等任期法では,大学等及び研究開発法人における有期労働契約の研究者・技術者・教員については,10年越えとする例外規定があります。
 また,専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する

特別措置法では,5年を超える一定の期間内に完了することが予定される業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識,技術または経験を有する有期契約労働者は,業務完了までの期間あるいは期間が10年を超える場合には10年間は,無期転換申込権が発生しません。更に,60歳以上の定年に達した後に同一の事業主または高年齢者雇用安定法上の特殊関係事業主に引き続き雇用される者は,同一事業主または特殊関係事業主に継続雇用されている期間は無期転換申込権の発生するための通算契約期間に算入しないとされています。

 

 

(2)無期転換申込権が発生しただけでは,無期契約に転換しません。労働者が無期転換申込権を行使する必要があります。その要件は,次のとおりです。

 

 ③ 現に締結している有期労働契約の契約期間の満了までに無期転換申込権を行使すること

 

 もっとも,最初の有期労働契約の期間内にこの申し込みをしなくとも,その後,更新された場合には,更新された核契約の期間内に,そのつど,転換申込が可能です。

 

3 効果(無期労働契約の成立)

 

 無期転換申込権を行使した効果として,契約期間満了日の翌日を就労開始日とする無期労働契約が成立します。

 期間以外の労働条件は,有期労働契約中の労働条件のままですが,別段の定めがあれば,それによります。

 

4 今後の対応について

 

 今後,使用者が,5年到来の直前に,更新拒絶をしたり,更新限度を設定することが考えられます。ですが,このような場合,そもそも,雇用継続への合理的な期待が生じていると判断されたり,そもそも,無期転換ルールの適用を阻止するための脱法行為とされ,無効となる可能性があります。

  ですので,使用者から5年到来の直前に更新拒絶されたり,更新限度を設定された場合には,すぐにご相談ください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

2017年12月14日 木曜日

初動が大事な交通事故 -弁護士 山口毅大

 突然の交通事故に遭われた被害者の方は,事故後,どのように損害賠償請求をすればいいのかわからないまま,過ごされてしまうこともあるかと思います。

 

 ですが,交通事故の態様によっては,被害者の方にも,不注意があったとして,過失割合が問題となることがあります。この過失割合によっては,損害賠償額が減ってしまうこともあります。また,交通事故の態様が明らかではなく,この過失割合が争われ,訴訟になることもあります。

 

 この交通事故の態様を明らかにする方法としては,刑事記録,自動車や自転車等の損傷状況等が考えられます。

 

 交通事故に遭った際に,軽い怪我であったり,事故後しばらくして痛み出した場合,物損事故扱いされていることがあります。その場合,警察において,事故についての実況見分がなされず,実況見分調書が作成されません。そうすると,刑事記録では,事故態様がわからないということになりかねません。

 

 ですので,怪我をしているのに,物損事故扱いされている場合には,速やかに警察に連絡し,診断書等を取った上で,人身事故扱いにしてもらう必要があります。

 

 長期間,物損扱いのままにすると,交通事故と怪我との因果関係が不明であるとして,人身事故扱いにしてもらえない場合もありますので,お早めに対応されることをお勧めします。

 

 その他,人身事故扱いになった場合,治療費,逸失利益,慰謝料,休業損害等を請求できる場合があります。その場合,弁護士を代理人にして加害者あるいは加害者側保険会社と交渉すると,適切な過失割合を前提に,裁判基準に基づいて,増額交渉ができる場合もあります。

 

 ですので,交通事故に遭われた場合には,お早めにご相談下さい。

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2017年12月7日 木曜日

高齢の母親の老後の財産管理のために家族信託制度を利用した事例(弁護士 川岸卓哉)

1 ご相談内容

 相談者は、高齢の母親と同居をされているご長男でした。母親が80代と高齢であり、今のところ深刻な認知症などの症状は出ていませんが、今後の財産管理が不安であるため、母親の財産を自分が管理できるように、最近テレビなどで話題となっている家族信託を活用したいとのご要望で、母親と一緒に相談にお越し頂きました。母親の持っている財産は、普通預金口座複数と、同居している土地建物等にご長男と共有持ち分をお持ちでした。

 

2 老後に備えた新しい「家族信託」

 現在の日本は高齢化社会を迎えています。今回の相談者ご家族のように、親のこれからが心配な方、自分の生活や財産管理が心配になってきた方も多いのではないでしょうか。

 このような場合、成年後見制度なども活用できますが、認知能力がそこまで低下していない段階での高齢者の生活や財産管理をする制度としては権限がなく不十分です。そこで、近年、家族信託という新しい方法に注目が集まっています。「家族信託」とは、信託の一種です。信託とは委託者の財産から特定の財産を分離することで財産を管理する制度です。財産を受託者に渡してしまうといっても、完全に受託者の財産になってしまうわけではなく、受託者は信託の目的に従った管理処分しかできません。つまり、信託された財産は、頼んだ人(委託者)からも頼まれた人(受託者)からも切り離された、信託の目的のための独立した財産になります。家族信託の典型的な活用例としては、今回の相談者の方のように、配偶者亡き後の高齢者福祉型信託があります。

 

3 事件解決の流れ

 今回のケースでは、母親の財産のうち預金口座を信託財産として、ご長男が通帳や印鑑、カードなどを管理する信託契約とし、母親のために生活費、医療費、入居施設料等を支払うことを目的とする委任契約も同時に締結しました。そして、母親が亡くなったときには、残余財産を遠方に住む次男が帰属させることとし、兄弟間のバランスにも配慮する内容としました。なお、土地については、ご長男が共有持分を持っているため母親の勝手な処分などは難しいこと、税金面でのメリットが乏しいことから、今回は信託財産の対象から外しました。

 以上の信託契約・委任契約の内容の公正証書作成に至るまで、初回相談から3ヶ月ほどで完了することが出来ました。

 

4 家族信託のすすめ

 今回の解決方法以外にも、家族信託は、活用次第では、多様な可能性がある柔軟な制度です。自分の要望をどうやったら実現できるかを弁護士一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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