2018年1月31日 水曜日
「根本パンフ」を発刊しました
1 川崎合同法律事務所は、「地域に根ざした活動」を合言葉にして、1968年4月に事務所を開設し、以来、「自由・人権・統一」の理念の実現をめざして奮闘し、2018年4月に開設50周年を迎えることになりました。
事務所開設50周年の記念レセプションは、
とき 2018年4月13日(金) 午後6時半
ところ JR川崎駅前 日航ホテル
を予定しています。
2 この50周年の時機に事務所開設50周年記念誌とは別に、事務所の創設者である根本孔衛さんの弁護士生活60周年を間近に控えるにあたっての、その「一代記」をコンパクトな冊子にまとめることとしました。
根本さんにこの企画を持ちかけ、将来の川崎合同法律事務所や民主的法律家諸団体、そして、今まで根本さんが関わってきた主要事件の関係者に向けて何か発信することがありますかと問いかけたところ、「一代記」は大袈裟だと言いつつも、若手弁護士やその他の関係者に継承したいことがある、と回答してきました。
そこで、川崎合同法律事務所として事務所開設50周年に合わせて、根本さんからの聞き取りを実施し、小冊子を編むこととしました。
3 聞きとりの内容は、多岐にわたるのですが、その取組みそのものは、現代に脈々とつながっています。川崎民商弾圧事件は、今の倉敷民商弾圧事件や重税反対運動に、東芝臨時工解雇事件は、今の非正規のたたかい、その立法闘争に、新島ミサイル射爆場事件は、全国各地の基地反対運動に、そして、沖縄違憲訴訟は、辺野古、高江の反基地運動や「沖縄差別」撤廃闘争に、それぞれ連なり、今もって色あせずに今日的課題となっています。
だからこそ、根本さんは、たたかいの継承を願って皆さんに伝えたい、と発したのでしょう。
4 この小冊子は、事務所開設10周年記念誌に根本さん自身が冠した、「自由・人権・統一」というタイトルをメインにして、「弁護士生活60周年に向って」「君たちに伝えたい 根本孔衛一代記」とサブタイトルを付して発刊することとし、本年1月に入り完成しました。
発行部数は限定されていますが、2018年4月13日の50周年レセプションの参加者に配布する予定にしています。この外、根本さんの関係者、事務所関係者にも無償で、但し、送料は自己負担で若干配布することも予定しています。従って、4月13日のレセプションに是非お越し下さい。しかし、根本さんに近い人で、4月13日には支障があって参加できない方は「パンフ必要」ということで、お申し越し下さい。若干部、配布は可能となっています。
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|2018年1月15日 月曜日
一条工務店の事業場外労働のみなし制度について労働基準監督署に申し入れをしました(弁護士 川岸卓哉)
1 申し入れの概要
申入人は、株式会社一条工務店において営業職として就労をしていた方です。
武蔵小杉展示場の営業職には、事事業場外労働のみなし制度(労働基準法38条の2第1項本文)が適用され、定額の営業手当が残業代として扱われるのみで、残業代が支給されていませんでした。
申入人は、会社に対して残業代を請求したが応じず、川崎北労働基準監督署に指導を求めたが事業場外みなし制度の適用について判断をできず指導されませんでした。そこで、横浜地方裁判所に労働審判を申し立てをし、裁判所は、事業場外労働のみなし制の適用及び営業手当が残業代として支給されることを否定する判断を示し、これを前提に、一条工務店が申入人に対して残業代を支払う内容の和解に至りました。
横浜地方裁判所の判断を踏まえ、川崎北労働基準監督署に対し、あらためて、違法な事業場外労働のみなし制度を適用している一条工務店へ是正指導を求めるとともに、労働基準監督署として、事業場外労働のみなし制度の違法な適用がされないよう、各企業に対して周知を求めました。
2 申し入れ事項
① 株式会社一条工務店武蔵小杉展示場で就労する営業職に適用されている事業場外労働のみなし制度(労働基準法38条の2第1項本文)は違法であるため、是正指導されたい。
② 株式会社一条工務店の営業職において支給されている営業手当は、残業代として扱うことは違法であるため、是正指導されたい。
③ 事業場外労働みなし制度の適用は限定的であることを、労働基準監督署として各企業に対してあらためて周知されたい。
3 事業場外労働のみなし制度の制度趣旨
事業場外労働のみなし制度は、労働者が労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合において、「労働時間を算定し難いとき」には、所定時間を超えて労働したものとみなすものです。この制度趣旨は、本来使用者は労働時間を把握しこれを算定する義務があるところ、事業外で労働する場合にはその労働の特殊性からこのような義務を認めることは困難を強いることから、例外的にその算定の便宜を図ったもので、適用は限定的に解釈されます。
最高裁判所平成26年1月24日第2小法廷判決は、募集型の企画旅行における添乗員の業務につき、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないと判断したもので、事業場外労働のみなし制度について判例にあたる。最高裁判例は、労働者の業務の性質、内容やその遂行方法、態様等、使用者と労働者との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を踏まえて、業務に従事する労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったといえるかどうかを判断の基準としています。
4 光和商事事件の判決
営業職の事業場外労働のみなし制度の適用を否定した先例となる裁判例として、光和商事事件判決(大阪地裁平成14年7月19日)があります。判決のポイントとして以下の2点が挙げられます。
① 会社事業所における出勤時間・退勤時間の把握
外勤先に直行直帰は原則としておらず基本的に事業所において出勤時間及び退勤時間を把握できる。
② 外勤中の業務についての報告・管理と携帯電話による把握の可能性
外勤中の業務についても、簡単なメモ書き程度の内容とはいえその日の行動内容が報告・管理されており、携帯電話等で所在把握が可能である。
以上の光和商事事件判決を踏まえると、外勤勤務の営業職であっても、事業所において出退勤時間把握でき、外勤中の勤務内容についても会社に報告・管理されている場合には、出勤時間から退勤時間までの労働している状況を把握することはできることから、少なくとも出勤時間及び退勤時間の間は労働時間として時間算定可能と判断していると評価できます。
5 労働時間を把握し算定することは可能であった
申入人が就労をしていた一条工務店の展示場においては、営業職に対して、原則として直行についてペナルティを持って禁止をし、直帰の場合も具体的な業務終了時間を報告させるなどしており、始業時間及び就業時間の管理は可能であった。さらに、外勤の営業についても、社内ネットワークシステムに従い割り振られた営業先顧客に対して、当日に行き先及び帰社時間のホワイトボードに記載したうえで、営業活動後に社内ネットワークシステムに営業内容の具体的内容を記載する一連の運用から、一条工務店は外勤業務を把握することは優に可能でした。したがって、一条工務店において、営業職の労働時間を算定することが困難だとは到底いえず、事業場外みなし労働を適用するのは違法です。
6 残業代名目の営業手当は許されない
一条工務店は、賃金規定上、営業手当が時間外等の割増賃金の定額分として支給するとされており、残業代から営業手当分の金額が控除されると主張していました。そして、一条工務店は、担当顧客との契約件数が多くなれば、労働時間も長くなるとみるのが合理的であり、賃金規程で営業手当が「従業員の勤務状況等に応じて変動する」とされているのは、そのためであると主張しました。
しかしながら、営業手当名目の定額残業代に関する就業規則の規定を、安易に容認するのは、割増賃金制度によって時間外労働等を抑制しようとする労働基準法の趣旨が没却される結果になりかねません。したがって、営業手当による固定残業代の規程が有効とされるには、営業手当が実質的に時間外労働の対価としての性格を有していることが必要です(東京地裁平16(ワ)第9057号、コミネコミュニケーション事件)。一条工務店の営業手当が残業代としての性質を有しないのは明らかでした。
7 申し入れの背景
昨今、社会的に問題となっているNHK女性記者過労自殺事件の原因の一つに、事業場外労働みなし制度が適用され、労働管理がなされていなかったことが指摘されています。通信技術が発達し、誰もが携帯電話を所持している現代において、事業場外労働みなし制度が適用される場面はほとんどないにもかからわず、違法に導入されることにより、会社の労働時間管理の懈怠を許し、過重労働、固定残業代とあわせて残業代不払いの温床となっています。
政府は、働き方改革一括法案において、「残業代ゼロ・働かせ放題」の高度プロフェッショナル制度の導入や裁量労働制の拡大など、労働時間規制の適用除外の範囲を拡大する法案の成立を狙っています。しかし、労働時間規制の適用除外としてすでに実施されている事業場外労働のみなし制度に関する本件からも明らかなとおり、本来適用される要件を満たさないにもかかわらず、違法に適用・実施されているところです。安易な労働時間規制の適用除外の拡大は、違法な運用がされる危険性が高く、労働基準監督署の監督機能も十分でないこともあり、上記申し入れを行うに至りました。
自分の職場では事業場外労働のみなし制度が適用さている方は、残業代が支払われていないことに疑問を持っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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|2018年1月1日 月曜日
川崎合同法律事務所は、50周年を迎えます。
1968年4月に開設された当事務所は、地域の皆様に支えられ、2018年4月をもって50周年を迎えます。
2名の弁護士と1名の事務員の3人体制でのスタートから50年。おかげさまで、弁護士・事務員あわせて26名が所属する、神奈川県内でも最大規模の事務所へと発展しました。これもひとえに、依頼者の皆様、様々な事件・運動をともにたたかってきた労働組合、民主団体の皆様のご愛顧・ご支援の賜物と、心より厚く御礼申し上げます。
50年を振りかえると、川崎公害裁判、大企業の思想差別事件、商工業者の税金裁判といった、川崎で生活し、働く人々の生命・健康、暮らしを守るたたかいから、近年では、日産事件、いすゞ事件、資生堂・アンフィニ事件などの非正規労働者切り事件、首都圏建設アスベスト訴訟や福島原発事故被害救済訴訟と、神奈川のみならず全国規模のたたかいまで、活動範囲を広げて参りました。
「50にして天命を知る」という言葉があります。71年間、戦後の日本の平和を支えてきた日本国憲法が改悪されるかもしれない事態を迎えた今、私たちは、改めて、開設時からの理念どおり、「『憲法と人権』、『平和と民主主義』の理念を実践的に追求する」ことを使命として、歴史の荒海を乗り越え、未来を切り開いて行く決意です。
これからもよろしくお願い申し上げます。
川崎合同法律事務所
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