ケーススタディー
離婚で問題となる財産分与のこと(弁護士 小野通子)
2026年8月20日 木曜日
離婚に関するお金の相談で尋ねられることが多いのは、相手方が不貞を行ったから、相手方からこんなモラハラをされたから、いくら慰謝料をもらえますか、ということです。
もちろん、慰謝料も大切ですが、慰謝料よりも財産分与の方が大きい額になることが多く、
離婚後の生活設計のためにも、財産分与についてもっとお話しさせて頂きたいな、と思うことが多いです。
そこで今回は、財産分与について、これまでお受けした事案などで問題となったこと等を書いてみます。
1 財産分与とは
そもそも財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に取得した財産を衡平に分けることです。
婚姻期間中に取得した財産は、夫婦の協力があったからこそ取得できたとの考え方の下、夫婦どちらの収入が多かった等の事情とは無関係に2分の1ずつ分割するのが通常です。
従って、どちらの名義にしてあるかは問題にならず、婚姻期間中に取得した財産を夫婦双方が衡平に得られるよう、多い方から、少ない方へと財産を引き渡すことになります。
このような制度ですので、夫婦の協力によって得られたのではない相続財産などは財産分与の対象とはなりませんし、婚姻前からもっていた財産も除かれます。
2 基準時
まず、いつの時点であった財産を分けるのかが問題となりますが、通常は、夫婦の協力がなくなった時点として、別居時が基準時とされることが多いです。
家庭内別居の場合、夫婦の経済的な協力関係がなくなったと言えるのかが問題となり、家庭内別居となってもその時点を直ちに基準時とはできない場合も多いと思われます。
これと似たような概念で問題となるのは、財産評価の基準時です。
財産分与の基準時は、いつあった財産を財産分与の対象とするのかという範囲についての問題ですが、財産評価の基準時は、いつの時点での財産の評価額を用いて計算するのかという問題です。
別居時に離婚するのであれば問題とはなりませんが、別居から長期間経って離婚にいたる場合、最近では、不動産や株式などは大きく値上がりしていたりすることも多く、大きな問題となります。
結論としては、不動産や株式などの値上がりは、通常、夫婦どちらかの努力等とは無関係なものですから、実際に分割する時点での評価額を用いるというのが裁判所における扱いです。
3 問題となりやすい財産
●法人名義の財産
配偶者が会社の代表者だという場合、会社の財産も財産分与の対象となるのではないかと聞かれることがありますが、会社の株式や持分権は対象の財産となりますが、
通常、会社の財産自体が直接財産分与の対象財産となるものではありません。
ただし、会社名義ではあるものの、実質的に配偶者の個人財産と同視できるような事情がある場合には、衡平の見地から対象財産に含めるとの考え方もあります。
●交通事故の賠償金
交通事故を原因として支払われた財産がある場合、その原因によって財産分与の対象となるか否か結論が異なります。
治療費や修繕費等については、治療費や修繕費等として使用されなければ夫婦の共有財産として残っていたものと考えられるますので、財産分与の対象となります。
休業損害として支払われたものについては、給与の代わりとして支払われたものですので、財産分与の対象となります。
一方、慰謝料については、夫婦の協力とは無関係と考えられますので、財産分与の対象とはなりません。
●子名義の財産
お年玉やお小遣いなどでお子さんが自由に使えるものとして渡されたお金は、お子さんの財産であり、財産分与の対象とはならないと考えられますが、
お子さんの将来の学費等に充てるためにご両親が蓄えたお子さん名義の預貯金は実質的には夫婦の共有財産ですので、財産分与の対象になると考えられます。
●宝石や時計など
夫婦のどちらかが身につける宝石や時計などは、通常は夫婦いずれかの専用の財産であるとして、財産分与の対象とされることは少ないです。
ただし、特に高価なものについては財産分与の対象となるとされた裁判例もありますし、投資目的で購入されたものについては当然財産分与の対象となります。
●退職金
退職金が既に支払われており、預金として残っていれば当然財産分与の対象となりますが、将来支払われる予定のものについても、退職金は賃金の後払いであるとの考え方から、財産分与の対象となります。
解雇されたり、会社が倒産する等して支払われないかもしれない等ということも考えられますが、その蓋然性が特に高い場合でない限り、特に考慮されません。
ただし、会社に勤務していた期間が、婚姻期間より長い場合が多いため、婚姻期間と婚姻期間外の期間に分けて、財産分与の対象となる退職金の額を計算します。
●保険の解約返戻金
生命保険や学資保険などは、解約返戻金の額を財産分与の対象とします。
よく、保険を解約しなきゃいけないのですか、と聞かれることがありますが、単に計算上のものですので、実際に保険を解約する必要はないことが殆どです。
●ローン付きの不動産
不動産の時価から残ローンを控除したものを財産分与の対象とすると考えることが最も簡単な考え方です。
夫婦の財産が、オーバーローンとなっている不動産しか無い場合は、財産分与はプラスの財産を分ける制度であるとの考え方の下、財産分与の裁判所への申立がそもそも認められません。
オーバーローンの不動産の他にも財産がある場合、説は分かれていますが、他の財産と通算して分割するのが衡平と考えられます。
4 最後に
たくさんのケースがあり、書き切れなかったケースがたくさんあります。
また、個々のご相談で事情が異なり、通常とは異なる解決となることもたくさんあります。
財産分与は、離婚後の生活を支える非常に大切なものです。
離婚後に、あの時もっと考えていればよかったと後悔されないように、私達に一緒に考えさせてください。
投稿者 | 記事URL
マッチングアプリで知り合った人にお金をだまし取られた!お金を取り戻したい!どうしたらいいの!?(弁護士 長谷川拓也)
2026年8月10日 月曜日
今回は、
【解決事例】マッチングアプリで知り合った女性に数百万円をだまし取られた事案で、刑事告訴・示談交渉を経て被害金全額と弁護士費用の一部を回収した事例
のご紹介です。
◯ご相談内容
依頼者の男性は、マッチングアプリで知り合った女性と親しくなり、将来を見据えた真剣な交際をしていました。
そうした中で、女性は、依頼者に対し、「難病を患っており、高額な治療費が必要である」「入院のため学費を支払うことができず、このままでは大学を退学しなければならない」「大学を辞めれば将来の夢や希望している職業を諦めなければならない」などと繰り返し説明し、学費や生活費の援助を求めてきました。
依頼者は、信頼していた女性の話を信じ、「夢を諦めてほしくない」「力になりたい」という思いから、複数回にわたり送金を行い、その総額は数百万円に及びました。
しかし、その後、依頼者は、女性とは突然連絡が取れなくなり、女性が説明していた病気や大学生活などの重要な事実の多くが虚偽である可能性がうかがわれました。
依頼者は、直ちに警察へ相談しましたが、「金銭の貸し借りであれば民事上の問題ではないか」との説明を受け、民事不介入を盾に、十分な対応を受けることができませんでした。
一方で、依頼者は「自分がだまされたことが恥ずかしい」「自分にも落ち度があったのではないか」と強い自責の念を抱いており、誰にも相談できず、一人で悩み続けていました。
そのような状況の中で、このたび、ご縁があり、当事務所へご相談をいただきました。
◯弁護士の対応
まず、依頼者から詳細な事情を丁寧に伺い、LINE等のやり取りや送金記録などの証拠を一つひとつ確認しました。
恋愛感情を利用して金銭をだまし取る、いわゆるロマンス詐欺や恋愛詐欺では、相手方が偽名や匿名でマッチングアプリやSNSを利用していることが多く、実際の氏名や住所が分からないため、責任追及そのものが困難なケースも少なくありません。
しかし、本件では、幸い、依頼者が女性の氏名と電話番号を把握していたため、それらの情報を基に住民票等の調査を行い、現在の所在を確認しました。
その結果、女性は依頼者と連絡を絶った後に、住所を変更し、さらに姓も変更していました。その理由は明らかではありませんが、責任追及を免れようとしていることがうかがわれる状況でした。
また、依頼者からうかがった女性が在籍しているという大学に対し、女性の在籍確認の照会をしたところ、やはり、女性が在籍している事実は確認できませんでした。
そこで、当職は、収集した資料をもとに、女性に対し、内容証明郵便により返還請求を行いました。
しかし、女性は、内容証明郵便を無視し、何ら回答を行いませんでした。
もっとも、事前に、このような対応も想定していたため、当初から、民事手続だけではなく刑事手続も視野に入れて準備を進めていました。
具体的には、金銭の交付に至る経緯などの証拠を法的観点から整理・分析し、詐欺罪の成立を基礎付ける資料を整えたうえで、刑事告訴を行いました。
冒頭のとおり、依頼者が最初に警察へ相談した際には、十分な対応が得られませんでしたが、証拠を体系的に整理し、事案の全体像を明らかにした資料を提出した結果、警察は捜査を開始することとなりました。
刑事告訴後も、依頼者は、何度も警察で事情聴取を受けることになりました。
もっとも、警察官から求められる説明や資料は、専門的であり、「何を説明すべきか」「どの証拠が重要なのか」を被害者自身が理解することは容易ではありません。
また、事情聴取では、限られた時間の中で話が進むため、警察官から十分な説明を受けられないことも少なくありません。
そこで当職は、警察がどの点を重視しているのかを法的観点から分析し、依頼者に分かりやすく説明するとともに、事情聴取に向けた助言や追加証拠の収集・整理を行いました。
◯解決結果
刑事告訴後、女性は、依頼者の件とは別の同種詐欺事件で起訴され、その後、依頼者の件でも起訴されました。
起訴後には、女性に代理人弁護士が選任されました。
代理人弁護士からは、依頼者が支払った金額全額を被害弁償として返還したいとの提案がありました。
しかし、依頼者は、だまし取られた金銭を取り戻すために弁護士へ依頼し、各種調査に始まり、内容証明郵便の発送、刑事告訴など、多大な時間と費用を要していました。
そこで当職は、単に当初支払った金額を返還するだけでは依頼者の損害は回復されないと主張し、女性の代理人弁護士との間で粘り強く示談交渉を重ねました。
その結果、女性は、当方の主張を受け入れ、依頼者は、だまし取られた数百万円全額の返還を受けることに加え、その回収のために要した弁護士費用等についても一部補填を受ける内容で示談が成立しました。
依頼者は経済的な損害を大きく回復できただけでなく、「泣き寝入りせず最後まで戦ってよかった」と大変安心された様子でした。
◯弁護士からのコメント
マッチングアプリやSNSを利用した恋愛感情につけ込む詐欺は、近年急増しています。
このような事件では、「だまされた自分が悪いのではないか」と自分を責めてしまい、誰にも相談できない方が少なくありません。また、警察へ相談しても、「民事上の問題ではないか」と判断され、十分な対応がなされないケースもあります。
しかし、相手方が最初から虚偽の事実を述べ、金銭をだまし取る意思を有していたのであれば、民事上の返還請求だけでなく、刑事上の責任追及が可能となる場合があります。
もっとも、そのためには、詐欺罪等の犯罪の成立を基礎付ける証拠を適切に収集・整理し、事案を法的な観点から構成していくことが重要です。
また、相手方の所在調査や証拠の収集、内容証明郵便の送付、刑事告訴、示談交渉など、それぞれの段階で適切な対応が求められます。
もちろん、すべての事案で本件と同様の結果が得られるわけではありません。相手方の所在や資力、証拠関係などによっては回収が困難となるケースもあります。
しかし、早い段階で適切な対応を行うことによって、解決の可能性を大きく高めることができる場合も少なくありません。
当事務所では、マッチングアプリやSNSを利用したロマンス詐欺、恋愛詐欺についても、民事・刑事の双方の観点から最適な解決方法を検討し、被害回復に向けて全力でサポートしています。
「警察に相談したが取り合ってもらえなかった」「相手と連絡が取れず、どうしたらいいか分からない」「だまされたかもしれないが、誰にも相談できない」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
投稿者 | 記事URL
最近のブログ記事
- 離婚で問題となる財産分与のこと(弁護士 小野通子)
- マッチングアプリで知り合った人にお金をだまし取られた!お金を取り戻したい!どうしたらいいの!?(弁護士 長谷川拓也)
- 酒酔い、赤信号無視… 起死回生の逆転劇(弁護士 西村隆雄)
- 日本に住むフィリピン人がなくなったとき、相続放棄はできるの?(弁護士 長谷川拓也)
- 離婚事件を通して知り合った女性の話(弁護士 三嶋 健)
- 「事実婚のままでは相続できない!?」 ~大切なパートナーに財産を遺すために遺言書を作りましょう~(弁護士 前田ちひろ)
- 無戸籍児の特別養子縁組~解決事例のご紹介~(弁護士 畑福生)
- 孤立出産による乳児死体遺棄・殺人事件で執行猶予判決を獲得!(弁護士 長谷川 拓也)
- 追突事故の後遺障害につき、後遺障害等級12級該当として解決した事例(弁護士 小林展大)
- 性暴力が性暴力と認められた─Aさんの5年間のたたかい─(弁護士 川口彩子)


