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家賃を払わない借主に、家を明渡してもらうには(弁護士 渡辺登代美)

2021年3月15日 月曜日

渡辺登代美弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

 家を貸していて、「家賃を払ってもらえないので、出ていって欲しい。」というような場合、どうしたら良いのでしょうか。

 

1 1か月の滞納で出ていってもらうのは難しいです
 賃貸借契約書には、「貸主は、借主が賃料その他の債務の支払いを1か月以上怠ったとき、何らの催告なしに契約を解除することができる。」というような契約解除条項が入っているのが一般的です。
 しかし、賃貸借契約のような継続的契約は、貸主・借主相互の信頼関係のうえに成立っているといえますので、この信頼関係を破壊するに至ったと認められるような事情がなければ、なかなか賃貸借契約の解除は許容されません。病気や怪我など、突然賃料が払えなくなることはままあるのに対し、借主にとって住む場所を失うことは重大なことがらだからです。契約書に1か月と書いてあったとしても、通常、1か月賃料を滞納しただけで契約を解除して出ていってもらうことは難しいです。
 裁判をやっている感覚では、最低でも滞納3か月、6か月あればまあ大丈夫かな、という感じです。

 

2 裁判で判決を得た後、強制執行しなければならない場合もあります
 その後、裁判を起こして建物明渡の判決をもらい、それでも出てもらえない場合は、強制執行をします。裁判所の執行官が現地に赴き、まず、「いついつまでに明渡しなさい。」という警告と貼紙をします。その日は、とりあえず、それで終了です。
 次に、もう一度、執行官が定められた明渡期日に現地に行き、まだ明渡されていない場合、建物内の物を運び出し、業者に保管させる措置がとられます。1か月程度保管した後、売却処分されるのが通常です。
 強制執行費用や、未払賃料は、借主に請求することができますが、月々の賃料を支払えなくなっているような状態の人ですから、回収するのは困難です。そこで大事なのが、保証人です。近ごろは、保証会社が保証するケースも増えています。

 

3 明渡の完了まで1年、費用は100万円くらいかかることがあります
 賃料の不払いが発生してから、明渡の強制執行が完了するまでには、1年くらいかかってしまうことも多いです。執行費用を借主や保証人に請求することはできますが、明渡の裁判を依頼するときの弁護士費用や借主が置いていった動産の保管費用は貸主が負担することになります。多くの動産を放置したまま借主が逐電してしまった場合など、弁護士費用と保管費用で合計100万円くらいかかってしまうこともありますが、自力救済が認められていない日本の法制度下では、借主の持ち物を勝手に処分してしまうことはできないため、健全な賃貸業を継続するためには、致し方ないことだと思います。

 

4 逆に賃料が払えなくなった場合は、話合いの余地があります
 逆に、賃料が払えなくなってしまった場合でも、「明日すぐに、荷物をまとめて出ていけ。」と言われることはなく、家主との話し合いによって若干の猶予を得ることは可能です。上記したような建物明渡の裁判をし、強制執行をする費用や時間を考えれば、貸主が譲歩する余地も充分あると考えられるからです。

 いずれにしても、弁護士に相談してみて下さい。法律的な解決方法が見出せるはずです。

投稿者 川崎合同法律事務所

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