Q&A
借金でお困りではありませんか 弁護士 小野 通子
2017年6月8日 木曜日
借金でお困りではありませんか
弁護士 小野 通子
1 はじめに
弁護士をしていて、最も多いご相談の一つは借金の問題です。
皆さま、とてもお疲れのご様子で、または、焦ったご様子でご相談にいらっしゃいます。
我々としては、このような状態になる前に、お気軽にご相談いただきたいと考え、債務整理のご相談は無料とさせていただいております。
ご相談いただいた場合、弁護士は、借金を減額したり、支払いに猶予を持たせたりすることで、ご相談者のご負担を減らす手続きをします。これは一般に債務整理という手続きになります。債務整理のご相談では、我々弁護士は、ご相談者から収入や支出をお聞きした上で、通常3つの手続き(任意整理、個人再生、自己破産)から、ご相談者の生活再建に最適と思われる手続きをお勧めすることになりますが、これらがそれぞれどのような手続きか、簡単にご説明いたします。
2 任意整理(過払い金請求)
任意整理とは、個々の債権者との間で交渉を行い、支払総額や支払方法について改めて合意をし直し、その後、その合意にしたがって弁済をしていくという手続きです。個人再生や自己破産のように、法律に制限されることも少なく、また、裁判所を介する手続きでもないことから、一部の債権のみを対象に整理するなども可能で、非常に自由度の高い手続きです。ただし、借金の元本は原則支払っていいただくことになりますので(利息は免除されることが多い)、個人再生や自己破産よりも債権の圧縮額は小さくなります。
なお、過払い金請求もほぼ同じ手続きで行われます。ご相談者の中には、自分にも過払い金があるのではないか調べたいということでご相談にいらっしゃる方もいますが、借金の返済が大変だとの理由でご相談にいらっしゃったけれども、弁護士が調査した結果、実は、借金は全額なくなり、逆にお金が戻ってくるという結果になるご相談者もいらっしゃいます。
任意整理の手続きはおおよそ以下のようになります。
① 弁護士と面会でご相談。借金の状況、収入・支出の状況等をお聞きします。
任意整理が最適と思われた場合、契約書を締結し、任意整理の委任を受けます。
② 弁護士から、各債権者に受任通知を出します。
これ以降、ご依頼者に債権者から直接連絡が来ることはなくなります。
③ 債権者から取り寄せた取引履歴から、弁護士が、利息制限法に基づく引き直し計算をし、債務額を確定します。利息制限法を超える利息を支払っていた場合、債務額が減額されます(過払い金を回収できる場合もあります)。
④ ご依頼者の収入・支出の状況から、3~5年程度で返済可能な返済計画をご提案します(元々の契約より毎月の返済額が小さくなります)
⑤ ご依頼者の了解を得た上で、各債権者に返済計画を提案します。
返済計画の合意ができた場合、合意書を作成します。
⑥ 返済計画に従った返済を開始していただきます。
3 個人再生
債務の全額の返済は不可能であるが、どうしても自宅を手放したくない場合には、個人再生(小規模個人再生・給与所得者等再生)手続きをおすすめします。
裁判所が認可した返済計画に従った返済をすることで、自宅を残したまま、借金を5分の1程度に圧縮することができるというメリットがありますが、利用者には将来において継続的に収入を得る見込みがあり、債務総額が5000万円を超えない等の制限があります。また、他の債務整理手続きに比べ、若干煩雑な手続きになります。なお、ご自宅を残す場合には、住宅ローンを圧縮することはできません。
手続きはおおよそ以下のようになります。
① 弁護士と面会でご相談。借金の状況、収入・支出、自宅の価値や残ローンの状況等をお聞きします。
個人再生が最適と思われた場合、契約書を締結し、個人再生の委任を受けます。
② 弁護士から、各債権者に受任通知を出します。
これ以降、ご依頼者に債権者から直接連絡が来ることはなくなります。
③ 債権者から取り寄せた取引履歴から、弁護士が、利息制限法に基づく引き直し計算をし、返済額を確定します。利息制限法を超える利息を支払っていた場合債務額が減額されます(過払い金を回収できる場合もあります)。
④ ご依頼者から集めていただいた資料に基づき、弁護士が個人再生申立書を作成し、裁判所に申立を行います。
⑤ 個人再生申立後、裁判所から個人再生委員が選任された場合には、個人再生委員と面談をしていただき、財産や債務の状況、再生計画案等について確認を受けます。
特に問題がなければ、裁判所から個人再生開始決定が出されます。
⑥ 個人再生開始決定後、各債務者に対し、債権額の調査等が確認されます。
⑦ 債務総額が決定したところで、弁護士は、ご依頼者とご相談の上、再生計画案を作成し、裁判所と個人再生委員に提出します。
裁判所は、個人再生委員や債務者に意見聴取の上、再生計画を認可します。
⑧ 再生計画が認可された場合、ご依頼者には、その再生計画にしたがって弁済を行っていただきます。再生計画に従った弁済を全て完了すれば、それ以上の弁済をする必要はなくなります。
4 自己破産
自己破産とは、裁判所から免責許可をもらうことで借金を原則全額免除してもらう手続きです(税金や養育費等一部免責されない例外があります)。したがって、借金を全て無くして、人生をリセットしたいと考えている方に向いています。ただし、ほとんどの財産を債権者に分配することが必要となりますので、自宅を残したい等のご希望がある場合には利用できません。
手続きはおおよそ以下のようになります。
① 弁護士と面会でご相談。借金の状況、収入・支出の状況等をお聞きします。
自己破産が最適と思われた場合、契約書を締結し、自己破産の委任を受けます。
② 弁護士から、各債権者に受任通知を出します。
これ以降、ご依頼者に債権者から直接連絡が来ることはなくなります。
③ 債権者から取り寄せた取引履歴から、弁護士が、利息制限法に基づく引き直し計算をし、返済額を確定します。利息制限法を超える利息を支払っていた場合債務額が減額されます(過払い金を回収できる場合もあります)。
④ ご依頼者から集めていただいた資料に基づき、弁護士が自己破産申立書を作成し、裁判所に申立を行います。
⑤ 管轄の裁判所によっては、弁護士と一緒に、ご依頼者に裁判官との面接(5分程度)に行っていただきます。
一定基準以上の資産が存在する等場合には裁判所から破産管財人が選任されます。この場合には、免責許可決定を受けるまでに管財人との面接や債権者集会への出席が必要となります。
資産が一定基準以下の場合には同時廃止となり、破産管財人は選任されませんが、免責許可決定を受けるまでに、2か月程度、債権者の意見を聞くための待期期間となります。
⑥ 裁判所から免責許可決定が出た場合、原則借金はゼロになります。
5 まとめ
以上は、大まかな債務整理の手続きですが、イメージを持っていただけたでしょうか。
債務整理を弁護士に依頼された場合、過払い金の請求だけという場合を除き、いわゆるブラックリストに載り、数年間はお借り入れができないことにはなってしまいますが、会社にばれたり、親戚にばれたりという恐れはありません。
借金の返済で頭がいっぱいになる前に、ぜひ、お気軽に弁護士にご相談いただければ幸いです。
投稿者
最近のブログ記事
- 老後に備えた新しい「家族信託」活用のすすめ(弁護士 川岸卓哉)
- 知っておくと安心!初回の調停で気をつけること(弁護士 川口彩子)
- 夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)
- 空き家問題の対処法(弁護士 星野文紀)
- 民法・不動産登記法等の改正等 その2(弁護士 山口毅大)
- 改めて遺言について考えませんか?(弁護士 小野通子)
- 民法・不動産登記法等の改正等 その1~相続土地国庫帰属法とは~(弁護士 山口毅大)
- 借家のトラブル-家を借りる前に知らないと困る基礎知識 (弁護士 星野文紀)
- 離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)
- ご家族が亡くなられた後にすべきことは?(遺産相続)弁護士 山口毅大 2021.4更新
月別アーカイブ
- 2024年9月 (1)
- 2023年11月 (1)
- 2023年7月 (1)
- 2023年6月 (1)
- 2023年2月 (1)
- 2022年9月 (1)
- 2022年6月 (1)
- 2021年7月 (1)
- 2021年5月 (1)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (13)
- 2021年2月 (2)
- 2021年1月 (1)
- 2020年2月 (1)
- 2020年1月 (3)
- 2019年9月 (1)
- 2019年8月 (3)
- 2019年6月 (2)
- 2019年5月 (3)
- 2019年4月 (9)
- 2018年11月 (1)
- 2018年8月 (2)
- 2018年7月 (5)
- 2018年6月 (4)
- 2018年5月 (1)
- 2017年12月 (2)
- 2017年6月 (2)
- 2017年2月 (2)