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協議離婚時の公正証書の活用について(弁護士 川口彩子)

2018年6月29日 金曜日

合意書をつくったはいいけれど…

 「約束した養育費を元夫が支払ってくれない」というご相談を受けることがあります。口約束の場合もありますが,「念書」「覚書き」「合意書」といった書類をお持ちになっている方もいらっしゃいます。そのとき確かに約束しているわけですから,特段の事情がなければ,その書面は有効です。

なんと二度手間!
 ただし,当事者間で作成した書面しかない場合,支払いの請求をすることはできますが,相手が応じてくれないと,次のステップは裁判ないし調停の申立てということになってしまいます。つまり,裁判所でもう一度,強い効力のある書面を作り直さなければならないということです。

 

公正証書とは

 この手間を回避するのに活用されているのが各地にある公証役場で作成する公正証書です。公正証書は,元裁判官,元検察官など,法務大臣が任命する公証人が作成する公文書です。当事者間の合意を「契約書」という形で,公文書にしてもらうのです。
 公正証書で養育費や慰謝料,財産分与などの支払いを約束する場合,支払う側に「強制執行認諾文言」という条項が入れられます。つまり,決められた期限までに支払いがなければ,ただちに強制執行を受けても異議ありませんという言葉です。この「強制執行認諾文言」があると,あらためて裁判や調停をしなくても,不払いがあった場合にただちに強制執行に移ることが可能です。お金の支払いの約束がある場合は,あらかじめ公正証書にしておくことをお勧めします。
 
公正証書作成までの段取り

 ここで注意が必要なのは,公証人は,当事者の間に入って調整をしてくれる人ではないということです。あくまでも,公正証書にしてもらう内容は自分たちで話し合って決める必要があります。内容が固まったら,公証役場に連絡をして,公証人に合意内容をお伝えしてください。後日,公証人から公正証書の案文が届きますので,当事者双方が事前に確認し,修正がある場合は,修正を公証人に依頼します。公正証書の内容が確定したら,当日,当事者双方が公証役場に行き,同席の下で,内容の確認と,それぞれの署名押印が行われます。 

委任状について

 どうしても相手方当事者と同席したくない,同席できないという場合,代理人を立てることもできます。その場合,強い効力を持つ書面を作成することになりますので,通常の委任状では足りません。どのような内容の公正証書を作るかといった内容面まで踏み込んだ委任状が必要となりますので,公証役場との事前協議が必要となります。

 

不本意な公正証書を作らないために

 先ほど述べたとおり,公正証書にする内容は自分たちで決めなければなりません。離婚にあたって,何をどこまで請求できるのか,養育費や慰謝料の基準,財産分与の考え方などを事前に知っておくことが重要です。相手方と話し合う前,あるいは話合いの途中など,内容を固める前にご相談ください。

 また,弁護士が代理人となって,相手方と交渉を行う場合もあります。どの段階で弁護士が入るのか,どのような方法で事件を解決に導くのかについては,具体的なご事情をお聞きして,最善の方法をアドバイスします。弁護士が代理人となって,相手方と交渉を行い,公正証書を作成する場合には,公証人とのやり取りの窓口にもなりますので,安心しておまかせください。

 以上

投稿者 川崎合同法律事務所

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