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家業のある方、家業を引き継ぎたい方、引き継がせたい方は遺言書を書きましょう(弁護士 星野文紀)

2021年3月2日 火曜日

第1 家業を相続する場合は遺言書を必ずつくりましょう

 事業を家族で行っている場合、事業は家族の大事な財産です。子供に引き継がせたい人も多いのではないでしょうか。
 もしあなたが会社の社長やオーナーで、子が将来その事業を継ぐ(事業承継・事業相続)予定をしているなら、あなたが元気なうちに、遺言書を書くことを強くおすすめします。

1 遺言がないと事業が続けられなくなる可能性が
 相続は、亡くなった人(被相続人)の死亡とともに発生し、被相続人の財産が相続人(被相続人の配偶者や子)に引き継がれます。
 相続財産は、遺言書が無ければ基本的に法定相続分での分割になります。そして、事業に関係する財産的権利も相続財産になります。
 相続人が複数いる場合、事業に関係する財産的権利は、相続人間で分割承継される可能性があるということです。そうなると会社の経営権はバラバラになり、事業の経営に関する意思決定で揉めたり、一時的に会社のキャッシュが流出したり、将来に渡って事業から得られる収益を按分しないといけなったりします。結局、会社の運営は滞り、最悪経営が続けられない原因となるのです。せっかく遺した財産が家族間の争いという最悪の結果になるのです。

2 遺言書があれば、スムーズに事業が続けられる
 しかし、遺言書があれば、特定の相続人に事業に関係する財産的権利を集中することが可能になり、事業を引き継ぐことが可能になります。事業を引き継がない相続人にもあらかじめ配慮をすることによって家族間の争いも防げます。事業を相続させたいなら、遺言を書くことを強くお勧めします。
 以下、遺言による事業承継について個人事業の場合と会社法人の場合に分けてポイントを説明してみます。

第2 遺言で、上手に事業を引き継ぐ方法
1 個人事業の場合
 個人事業を父親から子へ引き継ぐ場合を例に考えます。
 父親が個人事業で事業を営んでいる場合、法人格がないので、事業に関するすべての権利義務は、自然人である父親に帰属しています。事業主は父親個人であり、土地建物といった不動産や、機械設備等の動産、契約上の権利義務等に至るまで全て父親のものです。
 これら財産的権利は、通常、相続財産になりますので、遺言書のない相続が開始すると、相続は法定相続分によって処理され,子はすべて同じく第一順位の法定相続人になり、その相続分は全て同じになります。したがって、遺言がなければ、事業用の財産が遺産分割でバラバラになり、最悪、事業が続けられなくなる可能性があるのです。
 そこで、遺言書が必要になります。遺言書で跡を継ぐ人に事業用資産を集中させれば、遺言執行により跡を継ぐ人が事業用資産を承継することができます。
 経営者が元気なうちに事業用資産を後継者に相続させる遺言書を作成するべきです。

2 株式会社(有限会社)の場合
 会社の場合、事業に関する権利義務は、基本的に会社に属します。したがって、会社の株式をだれが承継するのかが問題となります。逆に株式さえ承継してしまえば、それで事業承継はできます。遺言書がなければ株式がバラバラになり、事業が承継出来なくなる可能性があります。
 したがって、経営者が元気なうちに必要な株式を後継者に相続させる遺言書を作成するべきです。

 

第3 遺留分の対策重要

 これまで述べてきたように、遺言書により事業承継は可能です。しかしまだ、遺留分という大きな問題が残っています。
遺留分とは、遺言書により、相続出来なかった(減らされた)相続人(兄弟姉妹以外)を保護するために認められる、最低限の割合であり、その割合分の相続財産は渡さなければいけません。
 遺留分割合は直系尊属だけの場合、「遺留分算定の基礎となる財産」の3分の1。 それ以外の場合は、財産の2分の1となります。例えば、推定相続人が、妻と子二人の場合、法定相続分は、妻2分の1、子2人は4分の1ずつですから、遺留分は、妻が4分の1、子2人は8分の1ずつということになります。
 したがって、仮に後継者に全財産を引き継ぐ場合、他の相続人から遺留分減殺請求がなされると、その割合の財産が持って行かれてしまうことになり、何らかの対策をしておかないと結局、事業が続けられないこともありえます。
 以下に、遺留分対策の方法を書いておきます、紙面の都合上箇条書きにとどめます。いずれの方法を採るのかは個別の判断になりますので、弁護士にご相談ください。

① 生前から調整しておく
② 遺言書の付言事項で説得する
③ 代償分割に用いる資金として生命保険を活用する
④ 事業用財産を早めに贈与する
⑤ 相続発生前に遺留分放棄の事前許可の審判を得る
⑥ 事業承継の際の遺留分に関する民法特例を使う
⑦ 生命保険を使って遺留分算定の対象財産を減らす
⑧ 生前に事業用財産を売買により譲渡する
⑨ 相続人以外に生前贈与を使う
⑩ 種類株式を発行する

 

 具体的な、遺言内容や、遺留分対策は個別の事例によって異なりますのでお気軽に弁護士までご相談下さい。

投稿者 川崎合同法律事務所

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