2022年11月28日 月曜日
労働者の権利348号(2022年11月発行)に掲載されました(弁護士 川口彩子)
日本労働弁護団 季刊紙 労働者の権利348号(2022年11月発行)に、川口彩子弁護士の「地位・関係性を利用した継続的な性行為強要型セクハラ事件逆転勝訴判決のご報告」が掲載されました。
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|2022年11月21日 月曜日
ペットに関するトラブル~離婚時の我が子の引き取り問題を中心に~(弁護士 畑福生)
こんにちは!弁護士の畑 福生です。昨年から保護猫と暮らしています。
我が家ではお猫様が世界の中心となっていますが、 一緒に暮らしてみると改めて「ペット」というより「家族」なのだと実感します。
この記事では分かりやすさのために「ペット」と書きますが、家族ともいうべきペットにまつわるトラブルについて、離婚時の引き取りの問題にも触れながら紹介したいと思います。
1 ペットにまつわるトラブルについて
ペットに関するトラブルとしては、次のように様々なものが挙げられます。
・ペットが被害者となる場合
例えば、交通事故や動物病院、ペットホテル、トリミングショップでのミスによってケガをした等
・ペットが加害者となる場合
例えば、ペットが噛んだり引っかいたりして怪我をさせた、物を壊した、野良猫や野鳥への餌やりで隣家に糞尿被害が出た等
・それ以外の契約に関する問題
例えば、ペットショップとの契約問題、 賃貸住宅でのペットの飼育トラブル、ペットの葬儀に関するトラブル、ペットに財産を残したいという意向を遺産分割協議に反映させること、動物保護団体を装った里親詐欺等
2 ペットの引き取り問題
このように様々なトラブルが生じ得るところですが、今回は、特に離婚の際にペットを誰が引き取るかという問題についてまとめたいと思います。
⑴ ペットは「物」として扱われる
大事な大事な我が子、この世に二つとない大切な命ではありますが、民法上はペットは「物」として扱われてしまいます(民法85条)。
そのため、民法上は、ペット自身は権利を持たず、むしろ所有権の対象として、すなわち誰かの所有物として取り扱われます。
⑵ ペットは財産分与の対象となりうる
「物」として所有権の対象となることから、 結婚生活の中で、夫婦の家計からペットを購入したような場合には、ペットは夫婦の共有財産となります。他方で、 結婚前からどちらかが飼っていたなどの特別な事情がある場合はその方のみの財産となります、
夫婦の子どもについては、離婚時にどちらが親権を得るかが問題となりますが、残念ながらペットには親権は存在しません。
そのため、共有財産として扱われたペットは、夫婦の離婚時に財産分与(=夫婦が協力して築き上げた財産を公平に分配する手続き)の対象となります。
⑶ 一般的な財産分与の方法
ア 現金、預貯金など
財産分与において、現金や預貯金など分けやすいものであれば、夫婦が半分ずつ取得するというように計算することが多いです。
イ 不動産など
また、不動産などそのままでは二つに分けられないものは、
①売却して売上げを夫婦で分ける方法や、
②その物の財産的な価値(売却価格など)の2分の1を夫婦のどちらかが他方に支払って、その方が所有権を得る(片方は所有権を得る、もう片方が相当額のお金を得る)という方法がメジャーです。
その他にも、③(土地であれば)分筆して二つの土地にしてしまうことや、④分けずに共有として残しておくということもあり得ますが、様々なリスクから③④はおススメしないことが多いです。
⑷ ペットの 財産分与の方法は?
このような方法を踏まえると、ペットの財産分与はどのように考えればよいでしょうか。
まず、当然ながらペットは物理的に分けられないので、上記「ア」や「イ」の③の分けてしまうという方法はとれません。
また、大事な我が子を売るなんてとんでもない。上記「イ」のうちの①方法 (売却) もできませんよね。
そうすると、上記「イ」の③(お金を払うなどしてどちらかが取得)が残ります。
ただ、夫婦共有財産としてのペルシャ猫の価値が15万円として主張された事案において、裁判所は「 通常、ペットの猫の飼育には、相当の費用が必要となること、また、ペットの猫が病気等に罹患することも稀ではなく、相当高額の治療費を必要とする場合もあることに照らせば、ペットを財産的価値があるものとして扱い、財産分与の対象財産とすることは相当でないというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。」( 横浜家庭裁判所相模原支部 平成29年10月30日判決・ D1-Law.com判例体系:28261791)とされています。
特別な場合を除いて、一般的にペットには財産的な価値が認められにくいことが多いです。
そのため、離婚時のペットの引き取りは、無償でどちらか一方がペットを引き取るとなることも多いかと思います。
⑸ じゃあ、どちらが引き取るかはどう決めるの?
ア 話合い
まずは、話し合いで、どちらが引き取るのがペットにとって幸せかを踏まえて、どちらが引き取るべきかを決めることとなります。
イ 調停
話合いでもまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では裁判所(調停委員会)を介して、合意を目指します。離婚調停の中で財産分与について話し合うのもできますし、財産分与を目的とした調停を起こすこともできます。
ウ 審判・離婚裁判
調停でもまとまらない場合は、裁判所が審判によってまたは離婚裁判の中で、当事者の主張を踏まえて、判断を下します。
審判や裁判において、裁判所がどういった事情を踏まえて判断をするのかは明確に示されてはいません。
ただ、ペットが人間の子ども同様に愛情をもって取り扱われるべき存在であることからすれば、
・離婚までにどちらが主にペットの世話をしていたか
・どちらによりなついているか
・離婚後の飼育環境や経済状況など、客観的にみて夫婦どちらに飼育されるのがペットの幸福につながるか
などの事情の総合考慮の上で、判断がなされることになると考えられます。
ですので、審判や裁判においてはその点を踏まえた主張・立証が欠かせません。
⑹ その他、ペットの養育費は?ペットの面会交流は?
既に述べたとおり、残念ながら、ペットは人間の子どもとは異なり所有物として扱われてしまうので、ペットの所有権を取得した方から、他方に対して養育費を請求することはできません。また面会交流を求める法律上の権利もないと考えられます。
ただ、愛する我が子に会いたい、我が子の健康な生活に貢献したいという気持ちもあるはずです。
先程のどちらが引き取るかを話し合いで決める際に、「あなたにこの子を託すから、その代わり月に何回かは合わせてほしい」、「この子のご飯代や医療費を払うから合わせてほしい」といった条件をつけて交渉し、少しでもお気持ちを叶える方向で合意をするということも考えられます。
審判や裁判で最終的に裁判所が判断するとなると、どちらが所有権を取得するかという話にしかなりませんが、話合い(調停含む)であれば、柔軟な解決も可能です。
特にペットについては医療費の負担が高額となりやすいことから、相手方に医療費の支払いなどのメリットを提示しつつ、面会交流などこちらの希望を一定程度叶えるということも考えられます。
川崎合同法律事務所は、弁護士、事務員含め愛するペットと暮らす所員も多く在席しています。
ペットの財産分与の問題含め、離婚の問題について皆様のご相談に多くお答えしております。
お困りの際は是非ご相談ください。
≪離婚・男女問題特設ページはこちら≫
https://www.kawagou.org/divorce/
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|2022年11月15日 火曜日
離れて暮らしている子どもに会いたい~面会交流について~ (弁護士 中瀬奈都子)
離婚をするときには、必ず、どちらが親権者になるかを決めなけばなりません。親権者にならない親にとっては、離婚後も子どもと連絡をとりあえるか、会えるか、ということはとても気になる問題だと思います。
また、離婚までに至らず、夫婦が別居している段階においても、他方配偶者が子どもを連れて出ていった場合には同じ問題が生じます。
「離れて暮らしている子どもとなかなか会えていない、どうすればよいか」、「離婚後も子どもと交流できるようにするために、どういう約束事をとりつければよいか」、あるいは、「元パートナーから子どもと会わせてほしいと言われているがどうすればいいか」というご相談を受けることがしばしばあります。
◇面会交流とは?
子どもと離れて暮らしている親(非監護親)と子どもが、直接会ったり、それ以外の方法で交流をすることを「面会交流」と言います。
面会交流は、親の権利という側面だけでなく、子どもの成長にとって大切な役割を果たすものであり、子の権利という側面も有すると言われています。
そして、民法には、面会交流について、協議で決める場合、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(見法766条1項)とされているため、子の利益(子の福祉)を第一に考えるべきことがはっきりしています。
◇面会交流の方法
面会交流の方法は、直接会うことに限られません。
電話でのやりとりや手紙のやりとり、非監護親からのプレゼントの送付、子の写真や動画の送付などいろんな方法があります(これらを間接交流といいます。)。
最近では、ZOOMやLINEでのやりとりもさかんです。
◇家庭裁判所の運用
仮に当事者間での話し合いで決められず、後述する調停や審判手続きで面会交流について決めることになった場合、裁判所は、面会交流が、子の健全な育成にとって有益であるという基本的な立場にたち、子の福祉を害するなどの特段の事情がある場合を除いて、原則として認めるべき、という運用になっています。
☛裁判所が公開している動画を見ると、家庭裁判所の運用がよくわかります。
・離婚をめぐる争いから子どもを守るために
・子どもにとって望ましい話し合いとなるために
家庭裁判所では、以下のような判断要素によって、面会交流を認めるかどうか、どのような方法・頻度で交流するかといったことを考えることになります。
① 子どもに関する要素(子どもの意思、年齢、子どもの心身や生活環境におよぼす影響)
② 監護親に関する要素(監護親の意思、監護親の養育監護に対する影響、監護親の生活状況)
③ 非監護親に関する要素(非監護親の問題点)
④ 両親の関係に関する要素(別居・離婚に至った経緯、別居・離婚後の関係性)等
子の福祉を最優先に考慮しなければならないことから、特に①の子どもに関する要素が最重要視されます。
子どもの意思に関しては、子どもが非監護親に嫌悪、拒否、恐怖などの感情を示している場合には、面会交流が認められない方向になります。
もっとも、両親間の対立が激しかったり、長期間交流していなかったりすることで、当初は不安感や抵抗感を示す子どもも少なくありません。特に幼年の子は、一番身近な監護親の前では、「会いたくない」と言っていても、実際に会ってみると楽しく過ごした・・・ということが多々あります。一緒に暮らす監護親の愛情を守りたいために、監護親の気持ちに沿う反応を見せることがあるのです。また、時間をかけてならしたり、面会交流の方法を工夫することで、子どもの不安や抵抗感が解消されることもあります。
子どもの表面的な反応だけで、面会交流の可否を決めるべきでない場合もあることに留意しましょう。
◇面会交流が制限、禁止されうる場合とは?
家庭裁判所の基本的な立場は会わせる、ですが、もちろん制限、禁止すべきケースもあります。そのような場合は、しっかりと事情を説明していく必要があります。
では、子の福祉を害するとして、面会交流が制限、禁止されうるのは、どんな事情がある場合でしょうか。
例えば、①子の連れ去りのおそれがある場合、②非監護親から虐待のおそれがある場合、③非監護親から監護親に対する暴力がある場合などが考えられます。
子どもを監護親のもとから突然連れ去るのは、子どもから生活基盤を失わせる行為ですので、面会交流を制限、禁止すべき事由にあたります。また、子どもへの虐待行為は言うまでもありません。監護親に対する暴力も、子どもの面前で行われれば、心理的虐待にあたるため、面会交流を制限・禁止する方向になり得ます。
また、面会交流について合意した約束事を守らないといったことも、その内容が重大だったり、何度も約束を破ったりした場合には、子どもの利益を害し、当事者間の信頼関係を損なうことでもあるため、面会交流を制限・禁止するべき事由にあたります。
なお、養育費を支払わないから、会わせたくないというご相談をいただくこともありますが、面会交流の実施と養育費の支払いは対価関係にないため、支払わないことをもって面会交流を制限・禁止することはできません。
もちろん、養育費の不払いはそれはそれで大問題です。強制執行などの手段をもって解決できる場合もあります。諦めず、是非ご相談ください。
◇子どもと会う、会わせるのはいいけれど、相手方には会いたくない・・・
まだお子さんが小さく、一人で行動ができない場合には、どうしても監護親が面会場所までお子さんを連れて行く必要があります。別居や離婚に至った当事者どうしですから、顔をあわせるのに抵抗があるのも当然です。
そのような場合には、例えば、面会交流に関する支援を行っている団体を利用することが考えられます。
面会交流支援団体は、例えば、次のようなことをしてくれます。
・連絡調整:具体的な日時や場所等を決めるための連絡を代わりに行ってくれます。
・子どもの受渡し支援:子どもの受渡しを代わりに行ってくれます。
・見守り支援:面会交流の場に付き添い、面会交流を見守ってくれます。
◇今回のポイント
① 一番大切なのは「子の福祉」
② 面会交流には、直接会うだけでなく、様々なメニューがあります
③ 面会交流支援団体をうまく利用しましょう
面会交流について、当事者間ではなかなか話し合いができない、どういうことを決めたらいいか分からないということがあろうかと思います。
そのような場合は、是非、当事務所へご相談ください。ご不安な点、当事者間で争点になっている点を丁寧にお聞きし、お子さんの利益に適う面会交流の可否、条件、そして手続の進め方についてアドバイスいたします。
(弁護士中瀬奈都子)
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