Q&A

Q&A

自死遺族の法律問題に注力しています(弁護士 小野通子)

2021年3月19日 金曜日

小野通子弁護士については、こちらをご覧ください。

 日本は世界的に見ても大変自殺者数の多い国です。家族を自死で亡くされた自死遺族は、突然の悲しみと同時に、非常に多くの法律問題を抱えてしまうことになります。しかし、なかなか周囲に相談することもできず、おひとりで悩みを抱えざるを得なくなってしまうことも多いようです。
 一方で、自死遺族が抱える法律問題には、期間制限のある問題も多く、悩まれている内に、取り返しのつかない事態に追い込まれてしまうこともしばしばです。
 私は、弁護士登録直後からずっと、このような自死遺族の皆様の法律問題に、力を入れて取り組んでおります。ここでは、自死遺族の皆様が直面することの多い法律問題について、簡単にご紹介します。

1 家族が賃貸アパートの中で自死された場合

 賃貸アパートの中で自死された場合、相続人や保証人に対して、大家さんから原状回復費や損害賠償金の請求を受けることが大半です。これらの費用が適正な金額であれば、相続人や保証人も、お支払いになることもやむを得ないとお考えになるかもしれませんが、多くのケースで過大な原状回復費や損害賠償金の請求を受けている実態があります。
 例えば、亡くなった部屋だけではなく上下左右の部屋の賃料分も請求されたり、今後何十年先の賃料分の保証まで請求されたりなどです。
 亡くなった方に、財産や労災の可能性がない場合には、相続人であれば、相続放棄をとるという方法もありますが、相続放棄には3か月という非常に短い期間制限がありますし、保証人になっている場合には相続放棄をしても責任は免れません。
 したがって、相続放棄ができない場合や保証人の場合には、大家さんにお支払いする金額が適正金額となるよう交渉(場合によっては裁判)する必要があります。
 適正金額は、アパートの事情によって様々ですので、早めにご相談いただければ幸いです。

2 家族が鉄道に飛び込んで自死された場合

 家族が鉄道に飛び込んで自死された場合にも、賃貸アパートで自死された場合同様、鉄道会社から多額の損害賠償請求をされる可能性があります。
 この損害賠償請求についても、相続放棄ができる場合であれば別ですが、相続放棄ができない場合には、この損害賠償金が適正金額か否かが問題となります。
 鉄道会社から損害賠償請求をされた場合には、まずは金額の算定根拠を出してもらい、そこに過大な請求が含まれていないか否か確認します。適正金額はこの場合も、事情(乗客への払い戻しがあったか、車両の修繕費はいくらか等)によって様々ですので、ご相談いただければ幸いです。
 なお、鉄道会社から受ける可能性のある損害賠償請求の時効は3年間です。

3 家族が借金を抱えたまま自死された場合

 家族が突然自死された場合、遺族は、亡くなった家族に、借金があったのか否かすらわからない場合があります。そのため、まずは、亡くなった方の持っていたカードや請求書等を調べ、それでもわからなければ信用情報機関に問い合わせを行ったりします。その結果、財産よりも借金が多い場合には相続放棄を選択することになりますが、前述のとおり、相続放棄には3か月という短い期間制限があります。
 そのため、もし、調査が間に合わない場合には熟慮期間の延長手続きを取り、相続放棄が可能な期間を延長することになります。
 また、財産のある範囲で借金を負担する限定承認という手続きもありますが、相続人全員が共同して行う必要があるなど、相続放棄に比べると複雑な手続きになります。

4 生命保険が自死を理由に支払われない場合

 自死遺族が生命保険金の請求をすると、しばしば、生命保険会社の担当者が、自死の場合には生命保険金は出ませんとの説明をすることがあります。しかし、自殺の場合に一律に生命保険金が出ないわけではありません。
 まず、生命保険会社の自殺免責が認められるのは、生命保険会社の責任開始時から2年または3年に限定されています。したがって、2年または3年経過後の自殺の場合には、生命保険金は支払われます。
 また、免責期間内の自殺であっても、重い精神疾患にり患していた場合などには生命保険金が支払われる場合があります。ただし、この場合にも、別に告知義務違反が問題となることもありますので、生命保険金の支払いを拒否された場合にはご相談ください。

5 自死の理由が会社の働き方(過重労働やパワハラ等)にあると思われる場合

 自死された家族が、会社員や公務員として働いていた場合、会社や国に対する損害賠償請求や労災申請ができる場合があります。労災が認められると、年金や一時金で手厚い補償を受けることができ、損害賠償請求では数千万円が認められる場合も少なくありません。
 ただし、遺族が相続放棄をしてしまった場合には、会社や国に対する損害賠償請求が制限されてしまいますので注意が必要です。
 また以下の通り、期間制限もありますので、お早めにご相談いただければ幸いです。

労災の葬祭料の請求 自死後2年間  
労災の遺族補償給付の請求 自死後5年間
損害賠償請求 自死後5年または10年間

 

投稿者 川崎合同法律事務所

カテゴリ一覧

まずはお電話でお話してみませんか

まずはお電話でお話してみませんか

まずはお電話で
お話してみませんか