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相続、遺言の法律 大改正のQ&A(弁護士 西村隆雄)

2021年1月22日 金曜日

西村隆雄弁護士については、こちらをご覧下さい。

 民法の内、相続、遺言法については、1980年以来大きな見直しはされてきませんでした。
 しかしこの間、社会の高齢化が進展し、相続開始時における配偶者の年齢も高齢化しているため、その保護の必要性が高まっていたことなどから、大改正が行われ、一昨年7月から施行されるところとなっています。
 そこでこの内、よくご質問のある点について、ご説明したいと思います。

 

Q 長期間婚姻している夫婦間の贈与について、配偶者に有利な改正が行われたのですか。
A これまでは、夫婦間で贈与をしたとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして扱われるため、贈与がなかった場合と同じ額の遺産しか受け取れませんでした。
  しかし、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与が行われた場合、配偶者の長年の貢献に報い、老後の保障の趣旨で贈与が行われていることを重視して、この贈与分は除外して、残りの遺産について遺産分割をすることとして、配偶者を有利に扱うこととなりました。

 

Q 配偶者の居住権を保護する改正がなされたというのは、どういう点でしょうか。
A 配偶者が、相続開始時に亡くなった方名義の建物に居住していた場合は、従来もその方との間に使用貸借契約が成立していたと推定されて、一定の保護がはかられてはいました。
  しかし第三者に居住建物が遺贈されてしまったり、亡くなった方が居住を認めないと意思表示をしていた場合などは、居住が保護されませんでした。
  今回の改正では、こうした場合でも、常に最低6カ月は配偶者の居住権が保障されることになりました。

 

Q 配偶者の居住権を長期的に保護するための改正も行われたと聞きましたが。
A これまでは配偶者が引き続きその建物に居住したい場合は、その建物を相続により取得するしか道はありませんでした。したがって住む場所は確保できても、他の預金などの財産は受け取れなくなってしまう事態となっていました。
  今回の改正で、遺産分割の選択肢として、あるいは遺言において、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようになりました。
  すなわちたとえば、配偶者と子供が相続する場合、配偶者は配偶者居住権と預金の一部を、子供は配偶者居住権という負担のついた建物所有権と預金の一部をそれぞれ取得するということが可能になったのです。居住の期間は終身とすることも一定期間とすることも可能で、その負担に見合った財産評価がされて、分割が行われることになります。

Q 相続人以外の者(例えば亡き長男の妻)の貢献を考慮するための制度が導入されたと聞きましたが、どういうことでしょうか。
A 例えば、亡き長男の妻が義父の介護に献身的に尽くした場合であっても、これまでは義父の相続人(長女、次男)は、介護を全く行っていなくても相続財産を取得することができたのに対して、亡き長男の妻は相続財産の分配にあずかれないという不合理が指摘されていました。
  そこで今回、相続開始後、長男の妻は、相続人(長女、次男)に対して、介護の貢献度に応じて金銭請求することができるようになりました。

 

Q 死亡後は預金が凍結されて、生活費や葬儀費用の支払いにも充てられないと聞いていたのですが、いかがですか。
A 従来は争いがある限り、遺産分割が終了するまで、一部の相続人が単独で預金をおろすことはできませんでした。
  それが、仮払いの必要性ありと認められる場合には、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになるとともに、預金のうち一定額(預金額×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分)については、裁判所の判断を経ずして、金融機関の窓口で支払いが受けられるようになりました。

 

Q 遺言書の保管について、新たな制度ができたと聞いたのですが。
A これまで遺言する方が自分で書いた遺言(自筆証書遺言)は、自宅(仏壇、金庫等)に保管されることが多く、遺言諸が紛失したり、相続人によって廃棄、隠匿、改ざんされるなど、問題が生ずることがありました。
  そこで今回、法務局に保管の申請ができることになり、死亡後は相続人が写しの交付、閲覧請求ができる保管制度が創設されました。

 

Q 自分で書く遺言(自筆証書遺言)の方式が緩和されたというのはどういうことですか。
A これまでは遺言書の全文をすべて自分で書かなければなりませんでした。すなわち財産目録の、不動産や預金の内容まで、すべて手書きが要求されていたのです。
  しかしこれは今の時代にそぐわないとして、パソコンで財産目録を作成したり、預金通帳のコピーを添付することも可能となりました。但しパソコン打ち出しやコピーについては、その1枚1枚に署名捺印が必要ですので気を付けましょう。

 

投稿者 川崎合同法律事務所

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