トピックス

2016年8月17日 水曜日

結審・判決迎える建設アスベスト訴訟/西村 隆雄 2011.9

長年にわたって建設作業に従事してきた労働者が、建設現場で吸い込んだアスベストによって肺ガン、中皮腫、石綿肺などを発病したとして、国、アスベスト建材製造メーカーを相手どって損害賠償を求めた建設アスベスト訴訟が、来年1月13日に横浜地裁でいよいよ結審を迎え、来春には判決言渡しのはこびとなってきました。

 アスベスト(石綿)は、綿のように柔らかな天然鉱物で、断熱性、耐火性、絶縁性などに優れ、極めて廉価であることから、「奇跡の鉱物」ともてはやされ、全面使用禁止となった2006年までに約1000万トンが輸入され、その約7割が建設材料に使用されてきました。アスベストは微細な繊維で、一旦吸収すると自力で排出することができず体内に留まり続ける発がん性物質で、肺ガン、中皮腫・石綿肺などを引きおこします。これらのアスベスト関連疾患は、いずれも有効な治療法がなく、治癒の見込みがないため、いったん発病した患者には悲惨な死が待ち受けているのが特徴です。また、発病までの潜伏期間が10年から長くは50年と極めて長期であるのも特徴で、使用のピークからみて、今後10年にぼう大な被害者が出現する危険性が言われています。

 裁判では、学者の証人尋問によって肺ガンについては1955年、中皮腫を含めても1964年に医学的知見が確立しており、この時点で「使用禁止」にすべきてあったこと、そして国はアスベストの危険性を十分に知っていながら、建築基準法の耐火構造等にアスベスト建材を指定、認定するという積極的な加害行為によってアスベスト被害を蔓延させてきたなどを明らかにしてきました。

 建設アスベスト訴訟は、横浜地裁と東京地裁の首都圏訴訟が先行してきましたが(東京も来年結審・判決)、本年札幌、京都、大阪で新たな提訴がなされ、さらに九州でも提訴準備が進んでいます。

 こうしたたたかいの広がりをふまえて、私たちは、横浜、東京での地裁勝訴判決に際して控訴断念を求めるたたかいをいどみ、政府・国会に対する働きかけを強めて、全国の建設アスベスト被害者を救済する基金制度の創設をかちとっていきたいと思っています。公正判決要請署名をはじめとして、ご支援のほどよろしくお願いします。

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2016年8月17日 水曜日

日の丸・君が代裁判 一連の最高裁判決を受けて/川口 彩子 2011.9

 国旗に向かって起立し国歌を斉唱しないと、音楽教師は君が代をピアノで伴奏しないと懲戒処分にする。3回・4回と処分が重なれば分限免職となる…。この悪夢のような10・23通達が東京都教育委員会から出されたのは2003年。今年で8年になる。

 今年3月10日、東京高等裁判所は、10・23通達直後の卒業式・入学式で懲戒処分を受けた都立学校の教職員170名の処分を取り消す画期的な勝訴判決を言い渡した。ところが最高裁は今年5月30日を皮切りに、次々と教師側を敗訴させる判決を出す事態となっている。

 最高裁にかかっていた日の丸・君が代関連の裁判は全国で15件。最高裁はこれを在庫一掃セールとばかりに立て続けに10件の判決を出した。教師たちに起立を強制する命令が、教師たちの思想良心の自由を間接的に制約することは認めながらも、その制約を許すほどの必要性・合理性が認められるとするもので、結論としては憲法19条に違反しないというのである。

 思想良心の自由は、憲法に定められている自由権の中でも最高位に位置する、人間が人間として生きるための大切な自由である。そのような大切な自由に対する制約が認められるかどうかについては、本来、厳格に審査されなければならない。人権保障の最後の砦となるべき最高裁が、いとも簡単に個人の思想良心の自由への制約を容認するとは、なんとも悲しく、罪深いとしか言いようがない。

 しかし注目すべきは、最高裁の14人の裁判官のうち2人の裁判官から、最高裁の出す結論には反対であるという「反対意見」が出されたことである。宮川光治裁判官の反対意見は「これまで人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調する教育実践を続けてきた教育者として、その魂というべき教育上の信念を否定することになる」として、生徒の前だからこそ起立することができないという教師たちの思いを汲んでくれた。

 冒頭紹介した3月10日の東京高裁の事件、2006年9月21日に東京地裁で違憲判決の出された予防訴訟はまだ最高裁に係属したばかりである。まだこの問題は終わっていない。多様な意見、そして多様な思想に寛容で、自らの思想良心にしたがう自由の保障される社会を築くため、これからも努力していくことを誓いたい。

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2016年8月17日 水曜日

『震災ボランティア派遣』で石巻へ/鈴木 亮平 2011.9

 8月はじめ、事務職員3名が神奈川労連の震災ボランティア派遣に同行し、宮城県石巻市南浜町・門脇町での作業に従事してきました。南浜町・門脇町は、住宅を含む多くの建物が津波に流されるなど、甚大な被害をうけた地域のひとつです。現地ではお盆の時期を間近にひかえ、墓地のガレキやゴミの撤去が求められていました。

 作業は、アスベスト曝露や負傷による破傷風を防止するために、真夏の炎天下にもかかわらず、帽子、ゴーグル、マスク、長袖・長ズボン、長靴の装着が必須となり、大変過酷な作業となりました。

 現場は、近くの製紙工場から流れ出たパルプが様々なガレキとからまって固まり、倒れて散乱した墓石を覆っていました。重機がほとんど役に立たず、地道に手作業で撤去作業を進めるしかなかったため、作業は遅々として進みませんでした。

 それでも、墓参りに訪れた遺族からは、感謝の言葉を頂くことができました。

 震災発生から半年が経とうとしています。見渡す限りのガレキをまえに、ボランティアの手だけでは復興への見通しはたちません。行政の責任ある対応が求められています。

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2016年8月17日 水曜日

国労・岡さん、松本さん JR不採用で逆転勝訴/岩村 智文 2011.9

 神奈川新聞2011年8月31日記事のとおり、国鉄分割民営化当時から担当してきた国労事件のうち、2人の不採用事件について、8月30日、東京高裁で勝訴判決を得ました。

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2016年8月17日 水曜日

憲法に照らして公正な判決を/ 「川崎市による憲法違反の政党機関紙購読調査」裁判 原告 穂積 建三 2011.8

私たちが、市職員といえども、どういう政党機関紙を読もうが完全に自由です。川崎市長や当局から購読の理由を聞かれたり、購読していることにとやかく言われることは全くありません。
 ところが、行政法の学者を自称していた川崎市の阿部孝夫市長は、2003年3月、係長級以上の職員を対象に「政党機関紙の購読勧誘に関するアンケート調査」を強行しました。私たち市職員6人がこれは憲法違反の思想調査だと訴えている裁判は9年目に入り、東京高裁における控訴審はいよいよ9月29日に判決が言い渡されます。
 1審(2009年)は、本件調査は「原告らに回答を強制されたものとは言えず、その思想及び良心の自由ないし沈黙の自由を違法に侵害したものとはいえない」と、憲法第19条が保障している「思想・良心の自由」を極めて狭く解釈し、原告の訴えを棄却しました。

共産党をターゲットにした政治的な調査
 本件調査は「公務の中立性・公平性の観点から実情を把握する」と称して、すべての政党機関紙を対象に、「市議会議員から政党機関紙の購読勧誘を受けたことがあるか」、「圧力を感じたか」、「購読したか」などを問うものでした。
 2002年12月市議会で、公明党議員が「共産党の議員が地位を利用して市職員に赤旗を勧めている」と質問し、阿部市長が「圧力を感じて購読しているとすれば、重大な問題」と調査を約束したことが発端でした。
 市役所の中で政党機関紙の購読を勧誘している議員は共産党だけでしたから、職員には、それは共産党の「赤旗」に関する調査だとすぐに分かりました。だからこそ、原告の請求を棄却した1審でさえも、「『しんぶん赤旗』を念頭に置いた調査であることが窺われる」と認定したのです。
 本件調査の設問は、言い換えると、「共産党をどう思うか」、その親疎・遠近感の表白を迫るものでした。調査用紙に「回答は強制するものではありません」「個人の思想等を調べるものではありません」などの添え書きがあったことは、思想調査との批判を何としても免れようとする、川崎市の苦肉の策でした。

危険な『思想』の持ち主をあぶり出す「踏み絵」
 本件調査は、総務局を頂点とする人事・業務の指揮命令系統と機構を丸ごと使って、職員には公務としておろされ、各課長が用紙を配布し、課長机上に置いた書類袋(一部出先は庁内便)で回収しました。課長には、誰が回答し、回答しなかったか、誰がどういう回答をしたか、チェックできる仕組みで行われたのです。
 回答しなかった者は、共産党支持者、同党に親近感をもつ者であろうと推測され、それは、市職員の中の共産党支持者、同党に親近感をもつ者を「あぶり出す」、いわば「踏み絵」的な効果をもつものであったと言わなければなりません。
 公権力である川崎市が、人の内心のものの見方や考え方を知ろうとするのは、権力にとって危険な「思想」の持ち主を掌握し、有形無形の圧迫・干渉を加えるためです。1審判決のように、厳密な意味の「強制」がない限り第19条違反にならないというのでは、「思想・良心の自由」を憲法が保障している意味がありません。川崎市が、人の内心の「思想」を知ろうとすること自体が憲法第19条に違反するのです。

「しんぶん赤旗」の購読を萎縮させる
 川崎市は、調査終了後、阿部市長の指示のもとに、総務局長名で各局区長あてに、市職員に対するメッセージとして「政党機関紙の購読にあたっては、自らの意思で判断するのが当然」との通知を出しました。阿部市長が日本共産党に批判的な立場に立つ者であることを市職員は知っていましたので、それは、今後、赤旗を購読している者は自主的判断で購読していると見なすとのアナウンス効果で、市職員の「しんぶん赤旗」購読に萎縮効果をもたらしたのです。

“公正な判決を求める”要請署名にご協力を
 裁判の当事者になるとは夢にも思わなかった原告6人には、不安の中で船出した裁判闘争の8年余でした。当時は原告全員が現役の市職員でしたが、今は全員が退職しました。控訴審を闘ったこの2年余、未開の地を切り開くような弁護団の先生方のご努力、憲法学者の意見書提出などで、憲法における「思想・良心の自由」「プライバシー権」などの今日的意義という視点から、1審判決の誤りを明らかにし、本件調査の違憲性を深め、明らかにしてきました。
 私たちは、今度こそ、憲法に照らして公平な判断で、阿部孝夫川崎市長による憲法違反の「思想調査」を弾劾する判決を迎えようと、裁判所へ向けた“公正な判決を求める”要請署名の運動に全力を挙げています。ぜひ、ご支援くださるようお願いいたします。

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2016年8月17日 水曜日

福岡運輸の懲戒解雇撤回を求める !!/沢井 功雄 2011.6

現在、事務所の西村弁護士、三嶋弁護士、沢井弁護士で福岡運輸事件弁護団を結成しています。横浜地方裁判所川崎支部で原告の懲戒解雇が有効であるとの不当判決が出たため、東京高等裁判所に控訴中の事件です。弁護団よりも、原告の悲痛な叫びを掲載する方が良いと判断したので、以下原告の声を掲載します。

 2009年2月20日、私は、福岡運輸株式会社を懲戒解雇されました。
 2011年3月29日、横浜地方裁判所川崎支部は、会社が私に対して行った懲戒解雇を有効とする判断を示しました。
 判決は、会社のアルコール検査体制の不備があったこと、これまで入社以来10数年間にわたって、私が会社から何らの処分を科されていないこと、私が会社のアルコール検査を受けたのは、前日の飲酒から16時間以上も経過してからであるにもかかわらず、0.354㎎という異常な数値が検知されたこと、出社時に自宅を出る時に、前日のお酒が残っているのかを確認するために、自分専用の簡易式アルコール検査器で0㎎を確認して出勤したこと、点呼係や係長にも息のにおいを嗅いでもらい「アルコールのにおいはしない。お酒が残っているようにも見えない」と言われたこと等の事情を一切考慮しませんでした。
 判決は、アルコール検査の結果、検出された0.354㎎という数値を大前提とし、私の情状を一切考慮せずに数値のみを取り上げて解雇するといった極めて不当なものでした。
 つまり、判決は、私たちの主張のほとんどを無視したものであり、極めて不当な判断と言わざるを得ないものでした。働く者の基本的な権利を踏みにじる判決と言わざるを得ません。
 全日本建設交運一般労働組合神奈川県南支部の福岡運輸分会は、これまでも経営不振の際には会社の存続を考えて賃下げ提案を受諾するなど、労使関係の正常化を含めて労働組合として努力してきた経緯があります。
 また、会社との基本協定では、社員の身分、賃金、労働条件に関する事項を団体交渉事項としています。
 今回の不当解雇は、この基本協定をも踏みにじるものであり、会社がおかした二重の違法行為を容認する判決を認めることは到底できません。全国・職場内外の労働組合・労働者及び市民の皆様の力強いご支援、弁護団の献身的な援助にもかかわらず、このような不当判決が出されたことに対し、大きな怒りを感じています。
 私は、この不当判決を跳ね返して勝利するために、いっそうたたかいを強めていく決意のもとに、東京高等裁判所に控訴をしました。
 今後もみなさま方のご支援、ご協力をお願いいたします。

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2016年8月17日 水曜日

テクノプロエンジニアリング整理解雇事件判決の光と陰/ 三嶋 健 2011.6

1 判決の意義
 2011年1月26日、横浜地方裁判所第7民事部は、原告に対する整理解雇を無効とする判決を下した。
 被告テクノプロ・エンジニアリングの親会社であるラディアホールディングス(旧「グッドウィル・グループ」)は、2009年2月に、被告を初め、グループ傘下の派遣会社シーテック、CSIに4000名の解雇を指示し、被告は4月から、その指示を実行した。派遣契約が切れて待機が1か月となった社員はすべて解雇の対象となり、有無をいわさず解雇されたのである。
 判決は、原告の解雇を無効とすることにより、4000名の解雇を断罪したのであるから、その影響は計り知れない。

2 本件整理解雇の特徴
 本件解雇は会社が黒字である中で実施されたものであり、そのためか、被告は、整理解雇でありながら、財務資料を一切証拠として提出しなかったところに、際だった特徴がある。
 被告は、黒字での下での整理解雇を正当化するために、「新理論」を主張した。①会社にとって、待機社員の存在は打撃となるので、待機社員の整理解雇はその特殊性が考慮されるべきだ(派遣労働特殊論)、②本件整理解雇は将来の経営危機を回避するために予防的に解雇することも認められるべきだ(予防整理解雇論)。③親会社が危機であれば、その再建のために、不可分一体である子会社の従業員の整理解雇も許されるべきだ(親子会社一体論)、④希望退職募集はかえって人材流出を招く異なるので必要不可欠とはいえない(人材流出論)等である。

3 判決の内容
(1) 厳格に解釈する姿勢
 判決は、整理解雇が正当とされるために、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の相当性が必要であるとしつつ、それらが一つでもだめなら解雇が無効となる要件ではなく、解雇が正当であるための要素としたが、整理解雇は、経営上の必要性に基づく労働者の責めなき解雇だから、その正当性は厳格に判断される必要があるとした。判決は他の裁判例と同様、「要素」論を採用しつつ、その正当性を認めるためには、厳格に判断すべきだとした点は評価できる。
(2) 人員削減の必要性について
 人員削減の必要性につき、待機率の増加など被告の経営状況は悪い方向に向かってはいるが、被告に切迫した人員削減の必要性はないと断じた。人員削減の必要性につき、「切迫」を条件とした点は評価できる。被告の予防整理解雇論を排し、また、当然のことであるが、親会社の事情は考慮せず、親子会社一体論を認めなかった。
(3) 解雇回避努力について
 解雇回避努力についても、希望退職の募集をしなかったことを重く見て、その努力をつくしていないと断じ、被告の人材流出論を排した。
(4) 人員選択の合理性について
 人員選択の合理性についても、13年間も継続的に勤務し始めて待機となった原告を「待機社員」というだけで、整理解雇の対象とすることは不合理であるとした。
(5) 手続きの相当性について、被告が財務資料を出さなかったことを指摘し、原告側には、不満が残るかもしれないがと断りながらも、被告の対応が明らかに相当性を欠くとまでは言えないとした。
 以上、判決は、本件整理解雇につき、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性を認めず、原告側の圧勝であった。
(6) 判決の問題点
 賃金について、判決は、残業代を含めた「平均賃金」を認めず、残業代抜きの、ほとんど「基本給」のみの金額をしか認めなかった。判決は、基本給があまりに低いため、残業代によってかろうじて労働者の生活が成り立っている実態に目を向けていない点に問題がある。
 また、被告は、控訴した上、賃金請求権につき、仮執行の停止の申立をし、裁判所がそれをあっさり認めた点に問題が残った。その結果、原告は、本案判決前に勝ち取った仮処分が判決の言い渡しにより失効し、また、判決の賃金請求の仮執行の執行停止が認められてしまったため、賃金の支払いを法的に請求できる手段を失い、かえって窮地に陥ってしまったのである。かつて、横浜地裁は、賃金については、労働者の生存権を保障するものとして、仮執行の停止を認めなかった。この点は、裁判所の解雇された労働者の実態に対する無理解を示すものであり、大いに問題が残る。

4 東京高裁へ
 弁護団全員が、原審判決の不十分な点を質し、労働者の権利の大いなる前進に寄与する覚悟であり、完全勝利のために闘志を燃やしている。

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2016年8月17日 水曜日

パーソナルサポートサービス /沢井 功雄 2011.1

 2010年5月11日より、内閣府により、パーソナルサポートサービス検討委員会が発足した。
 同委員会は、貧困問題における生活困窮者は、氷山の一角であり、より広い対象者に適用可能な普遍性のある対応策が必要であるとの趣旨から、利用者それぞれのニーズや状態に応じた「個別的」、利用者それぞれのステージに応じた「継続的」、縦割り支援体制の克服のため「制度横断的」なセーフティネットワーク構築を目的として、設立されている。
 パーソナルサポートサービスは、イギリスの「ニューディール政策(1998年~)」の一環である、ジョブセンター・プラス(求職者手当、所得補助、就労不能手当等の給付サービスや職業・教育訓練等の雇用サービスを総合的に提供する機関)を中心とした、離職期間に応じた就労支援展開をモデルとしている。
具体的には、生活・居住形態や就労の有無などにかかわらず、「寄添い型・伴走型支援」として、個別的かつ継続的に、パーソナルサポーターが、専門家の立場から相談・カウンセリングを行い、必要なサービスに〈つなぎ〉、また〈もどす〉役割を担う。
 要は、孤立した貧困層の生活再建をマンツーマンで伴走支援(この人には、このような問題点があるから、この専門家をつけて支援しようということ)するプロジェクトである。
 第1次モデル事業として、釧路、京都、福岡、沖縄、横浜が選定されており、横浜市では、2010年12月24日から、2012年の3月末日まで、横浜市の委託事業として、15歳から、39歳までの方を対象として、週6日間、10時から17時まで、常設の相談場所を設けて、パーソナルサポート(相談及びコーディネート)を行っている。
http://personalsupporters.youthport.jp/
 横浜での同事業は、若者支援、就職・就労支援、起業支援、高齢者支援、生活困窮者支援、女性支援、母子支援等、外国人支等各方面のNPO、市民団体が結集しており、第2次モデル事業11か所(大阪、静岡、岐阜等)をあわせても、パーソナルサポートサービスの理想型と言われている。
 パーソナルサポートサービスの研修会議に赴いたところ、パーソナルサポーターは、すでに事件、活動等を通じて、既知のNPO、市民団体の方が多かった。土足でずかずか入り込んでいくような形になったが、非常に仕事のしやすいメンバーばかりであり、本原稿投稿時(2010年1月19日)において、毎週1回は、反貧困ネットワーク神奈川(筆者は、事務局長をしている)
http://hanhinkonkanagawa.web.fc2.com/katudou.html
の会員を中心とした弁護士の法律相談枠を入れている。
 現在のところ、相談内容は、労働相談、就職相談、生活相談が多く、メンタルの問題を抱えている相談者も多い。パーソナルサポーターは、各方面のスペシャリストであるが、他分野の問題は、その専門家につなぐだけではなく、少しでも、他分野の問題についての理解を深めようとの意思のもと、相互交流を深めており、非常に意欲旺盛である。
 2008年後半以降から、貧困問題は、注目を浴びている。2009年は、とにかく、緊急性が高い事案が多く、生活保護を受給させる、住居の確保をすることに重点が置かれていた。2010年に入ってからは、2008年後半ほどは、2008年後半に起こった大量解雇のような事態は無くなってきており、一旦ドロップアウトした層が、求職しても、短期の雇用しかなく、失職してしまい、スパイラルにはまったままの状態が続いている。ますます貧困の格差は進んでしまい、そのようなスパイラルにはまった層は、生活状況が変わらず、生活環境を変えられないまま、社会からの疎外感を感じ、メンタルにも問題を抱えてしまうことが多い。このような層には、継続的、総合的なケアが必要であり、パーソナルサポートサービスは、貧困問題解消のための現時点での到達点の一つである。今年は、この運動に熱心に取り組んでいきたいと考えている。

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2016年8月17日 水曜日

反貧困年末ワンストップ大相談会-inかながわ-の感想/星野 文紀 2011.1

 弁護士になって4日目に、相談会に参加させていただきました。相談だけでなく、ビラ配りや、炊き出しの列の整理のお手伝いもさせていただきました。
 相談会には多くの人に相談に来てもらうことができ、また、相談に訪れた方にも、多くは相談にきてよかったと思っていただけたようでした。
 来ていただいた相談者の方の中には、チラシやクチコミによって知って来たという方もいれば、たまたま通りがかりに知って訪れた方もいました。通りがかりに相談に来たという方は、今日はここを通ってよかった、たまたまこのイベントに出会わなければ相談に行かなかったかもしれないとおっしゃっていました。その意味で、町に出て相談会をすると普段建物の中でまっているときには出会えない人に出会えるメリットがあったかもしれません。
 また、普段は、仕事と親の介護で相談に来る時間がないとおっしゃっている方もいました、その意味では、日曜日に法律相談をしていることも意義が大きいと思いました。
 さらに、相談者の中には、家も仕事もなく困っている人はもちろん、今は家に住んでいるが仕事がなく、もうすぐ貯金がなくなり住む家がなくなりそうだからどうすればいいのかという方もおられました。早めに相談してくれたことで、住処をなくすという事態は避けれそうです。これも、この相談会が気軽に相談できる場を提供したからだと思います。
以上のようにこの相談会に大きな意味があることを感じました。自分がこのような意義ある活動に参加できたことをうれしく思います。
 また、この相談会の特色として行政、労働組合、弁護士、司法書士、医師等の専門家が一体となって貧困の問題に取り組んでいる事があります。
 人が暮らしていくには、健康、仕事、住処等さまざまな問題が生じます、これらをクリアするためには一人の専門家だけでは出来ることが限られてしまいます。さまざまな分野の専門家が知識を出し合うことで一人の人間の問題にやっと対処できるのです。今回この相談会に参加してこのことの意味を実感しました。
 特に相談者に資力がない場合、行政サービスを利用することが多くなります。弁護士としても貧困問題に取り組む上では、アクセスをつなぐのに必要な程度の行政サービスの知識は習得しておくべきと感じました。
 また、さまざまな分野の専門家が集まることで、別の視点から問題を見ることができ、よりよい解決法を見つけることが出来ると感じました。
今後も、さまざまな専門家と連携して、貧困の撲滅のための取り組みに参加していきたいと思います。

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2016年8月17日 水曜日

今、再び「司法の反動化」阻止を!/篠原義仁 2010.7.23

【1】  2000年3月4日、今次「司法改革」を国民の立場からアプローチし、真に国民のための司法改革となるのか否か、前進面はどの点に見い出せ、他方、問題点はないのか、克服すべき課題は何か、ということで、消費者団体、公害環境団体の仲間が集まり、実践的に学習、検討する場としての組織を起ちあげた。組織の名称も、オンブズマン活動を連想させる、「司法に国民の風を吹かせよう(略称「風の会」)実行委員会」と名づけられた。
 以来、規模は様々であったが、Part1からPart18まで、実に多彩な取り組みが展開された。消費者訴訟、公害環境訴訟、教育現場の訴訟から、刑事弾圧事件、再審無罪事件に至るまで個別事例を題材にしての学習交流会、「司法改革」全般の課題から、団体訴権、裁判員制度、行政訴訟の改革問題、少年法「改正」問題などの個別課題に至るまでの制度内容の検討も行われた。
 とりわけ、私たちオンブズマン活動にも連なる弁護士費用敗訴者負担制度については組織をあげて反対運動に起ち上り、「司法改革」関連法案のなかでは唯一であるが、国会に提出された法案について会期切れ、議会の解散ということではなく、本質的討議の末に廃案に追い込んだ。
 日弁連や関係諸団体からは、「風の会」のめざましい奮闘があったからこそ、廃案に追い込めたと高く評価された。
 会期切れ等による廃案でなく、正面からの採決で廃案という成果を勝ちえたのは、(私の子どもの頃の)「オイコラ警察、反対」「デートもできない警職法反対」という、スローガンでたたかわれた、警察官職務執行法の改悪闘争以来の「快挙」という成果をあげた。
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【2】  そして、組織結成から10年。本年4月3日に、「『司法改革』を検証する」と題して、その中間総括の集いを開催した。
 取りあげた題材は、(1)安保条約と米兵犯罪 ── 横須賀基地米兵犯罪・国賠訴訟、(2)言論・表現の自由と裁判所 ──
ビラ配布弾圧・堀越事件、(3)市民の手による行政監視と住民訴訟 ── オンブズマン活動と住民訴訟、(4)非正規労働者の権利と裁判闘争 ──
日立メディコ、松下PDP最高裁判決をのりこえるたたかい、(5)大気汚染裁判と和解後の取り組み ──
東京大気裁判と「三本柱」の取り組み、ということで多岐にわたったが、その目線は、「市民の眼」から、今次「司法改革」を裁判の現場から、立法のたち遅れの是正をはかるたたかいから、国連憲章、国際的水準との比較から討議が行われ、その上で、中長期的な展望に基づく討議が展開された。
 「司法改革」の現状での検証と将来展望を見定めるうえでの貴重なシンポジウムとなった。
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【3】  そして、横浜地裁の、私たちオンブズマン訴訟で、2つの判決。
 6月23日の中原消防署住民訴訟と7月14日の王禅寺住民訴訟の2つの敗訴判決。
 中原消防署事件にあっては、先行取得時の財務負担行為は時期を失して監査請求(住民訴訟)の対象とはならず、長年にわたる「塩漬け」状態を解消するために選択した川崎市の有り様、すなわち、自らが土地買収やホテル建設のリスクを負うことなしに不動産を賃借してホテル営業ができる、というホテル業者にとって好都合な消防署と、ホテルの複合施設を、川崎市がいくつかの優遇措置を講じて実施していいのかに限定されて、監査請求、そして、住民訴訟が提起された。
 私たちの取り組みの基本には、こんな安直な「塩漬け土地」の解消があっていいのか、という怒りにも似た市民感情があった。
 しかし、横浜地裁(佐村裁判長)は、災害時における避難所施設の必要性を川崎市主張のとおり、鵜のみにして、ひとかけらの「リップサービス」もなしに、原告側主張を斬り捨てて敗訴の言渡を行った。
 王禅寺事件はどうか?
もっとずさんな事実認定で、原告主張を排斥した。その杜撰さと判決の論理の誤まり、判決批判の詳細は、別稿(江口論稿)に譲るとして、川崎市主張を要約的、羅列的に並べただけの論理展開で、しかも、原告の提出した証拠の具体的検証を抜きにして、(1)川崎市から土地開発公社に先行取得を委託(平成2年)したことについて、委託契約が存在したと強引に認定した事実認定(平成6年の南伊豆保養所用地の先行取得に委託契約が存在しなかったことは川崎市も自認。それ以前の平成2年にも存在するはずがない)、(2)固定資産税に係る地価評価(路線価も同じ)は平成2年当時も現時点でも価格変動がないこと(バブル経済の波をうけても、接道のない、使い勝手の悪い山林価格に変動はない)、平成18年の川崎市が行った鑑定評価をも総合すると、平成2年の地価評価が先行取得価額よりはるかに低額であることは明白で、従って、川崎市が土地開発公社に行わせた先行取得価格は異常に高額なのに、それを証拠に基づかず正当と認定した誤まり、(3)そもそも公共事業の「代替地」目的のために先行取得する必要はなく、証拠に照らしても川崎市の関係部局が先行取得を望んでいないことは明らかなのに何の根拠もなく川崎市の言い分を鵜のみにしている誤まり、(4)取得した土地が接道がない、使い勝手の悪い土地で、仮に取得の必要性があっても取得目的(代替用地)に合致するはずはないし、価格も安いのに、これを提出証拠を無視してバッサリと斬り捨てた誤まり等々、「不当判決」どころか判決の名に値しない判示内容となっている。しかも、平成2年当時の市長を阿部孝夫と事実認定した判決は茶番というしかない。
 これでは判決ではない。証拠は全然見ていないのではないか。検証も実施せず、原告提示の現場写真、報告書も無視して裁判といえるのか。
 7月20日のオンブズマン幹事会で怒りが渦巻いた。
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【4】  「司法改革」の重要な柱の一つとして、司法消極主義、行政追随主義の弊害の是正が叫ばれた。
 横浜地裁の判決は、旧態依然の「行政ベッタリ」の司法の体質を再び露呈した。
 いや、むしろ、佐村裁判長に代表される、中堅裁判官の司法適格に係る資質が厳しく問われるところとなっている。佐村裁判長の資質は、東京地裁時代の審理・判決内容、破産・債務整理を担当したときの「異常な資質」からして、従前からも問題視されていた。
 司法の制度の改善とともに、私たちは、1人ひとりの裁判官の資質をも含めて厳しい監視の眼を強めてゆく必要がある。
 ひと昔前いわれた「司法の反動化」阻止のスローガンが、今も現実的な生ま生ましいスローガンとなっている。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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