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パーソナルサポートサービス /沢井 功雄 2011.1

2016年8月17日 水曜日

 2010年5月11日より、内閣府により、パーソナルサポートサービス検討委員会が発足した。
 同委員会は、貧困問題における生活困窮者は、氷山の一角であり、より広い対象者に適用可能な普遍性のある対応策が必要であるとの趣旨から、利用者それぞれのニーズや状態に応じた「個別的」、利用者それぞれのステージに応じた「継続的」、縦割り支援体制の克服のため「制度横断的」なセーフティネットワーク構築を目的として、設立されている。
 パーソナルサポートサービスは、イギリスの「ニューディール政策(1998年~)」の一環である、ジョブセンター・プラス(求職者手当、所得補助、就労不能手当等の給付サービスや職業・教育訓練等の雇用サービスを総合的に提供する機関)を中心とした、離職期間に応じた就労支援展開をモデルとしている。
具体的には、生活・居住形態や就労の有無などにかかわらず、「寄添い型・伴走型支援」として、個別的かつ継続的に、パーソナルサポーターが、専門家の立場から相談・カウンセリングを行い、必要なサービスに〈つなぎ〉、また〈もどす〉役割を担う。
 要は、孤立した貧困層の生活再建をマンツーマンで伴走支援(この人には、このような問題点があるから、この専門家をつけて支援しようということ)するプロジェクトである。
 第1次モデル事業として、釧路、京都、福岡、沖縄、横浜が選定されており、横浜市では、2010年12月24日から、2012年の3月末日まで、横浜市の委託事業として、15歳から、39歳までの方を対象として、週6日間、10時から17時まで、常設の相談場所を設けて、パーソナルサポート(相談及びコーディネート)を行っている。
http://personalsupporters.youthport.jp/
 横浜での同事業は、若者支援、就職・就労支援、起業支援、高齢者支援、生活困窮者支援、女性支援、母子支援等、外国人支等各方面のNPO、市民団体が結集しており、第2次モデル事業11か所(大阪、静岡、岐阜等)をあわせても、パーソナルサポートサービスの理想型と言われている。
 パーソナルサポートサービスの研修会議に赴いたところ、パーソナルサポーターは、すでに事件、活動等を通じて、既知のNPO、市民団体の方が多かった。土足でずかずか入り込んでいくような形になったが、非常に仕事のしやすいメンバーばかりであり、本原稿投稿時(2010年1月19日)において、毎週1回は、反貧困ネットワーク神奈川(筆者は、事務局長をしている)
http://hanhinkonkanagawa.web.fc2.com/katudou.html
の会員を中心とした弁護士の法律相談枠を入れている。
 現在のところ、相談内容は、労働相談、就職相談、生活相談が多く、メンタルの問題を抱えている相談者も多い。パーソナルサポーターは、各方面のスペシャリストであるが、他分野の問題は、その専門家につなぐだけではなく、少しでも、他分野の問題についての理解を深めようとの意思のもと、相互交流を深めており、非常に意欲旺盛である。
 2008年後半以降から、貧困問題は、注目を浴びている。2009年は、とにかく、緊急性が高い事案が多く、生活保護を受給させる、住居の確保をすることに重点が置かれていた。2010年に入ってからは、2008年後半ほどは、2008年後半に起こった大量解雇のような事態は無くなってきており、一旦ドロップアウトした層が、求職しても、短期の雇用しかなく、失職してしまい、スパイラルにはまったままの状態が続いている。ますます貧困の格差は進んでしまい、そのようなスパイラルにはまった層は、生活状況が変わらず、生活環境を変えられないまま、社会からの疎外感を感じ、メンタルにも問題を抱えてしまうことが多い。このような層には、継続的、総合的なケアが必要であり、パーソナルサポートサービスは、貧困問題解消のための現時点での到達点の一つである。今年は、この運動に熱心に取り組んでいきたいと考えている。

投稿者 川崎合同法律事務所

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