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今、再び「司法の反動化」阻止を!/篠原義仁 2010.7.23
2016年8月17日 水曜日
【1】 2000年3月4日、今次「司法改革」を国民の立場からアプローチし、真に国民のための司法改革となるのか否か、前進面はどの点に見い出せ、他方、問題点はないのか、克服すべき課題は何か、ということで、消費者団体、公害環境団体の仲間が集まり、実践的に学習、検討する場としての組織を起ちあげた。組織の名称も、オンブズマン活動を連想させる、「司法に国民の風を吹かせよう(略称「風の会」)実行委員会」と名づけられた。
以来、規模は様々であったが、Part1からPart18まで、実に多彩な取り組みが展開された。消費者訴訟、公害環境訴訟、教育現場の訴訟から、刑事弾圧事件、再審無罪事件に至るまで個別事例を題材にしての学習交流会、「司法改革」全般の課題から、団体訴権、裁判員制度、行政訴訟の改革問題、少年法「改正」問題などの個別課題に至るまでの制度内容の検討も行われた。
とりわけ、私たちオンブズマン活動にも連なる弁護士費用敗訴者負担制度については組織をあげて反対運動に起ち上り、「司法改革」関連法案のなかでは唯一であるが、国会に提出された法案について会期切れ、議会の解散ということではなく、本質的討議の末に廃案に追い込んだ。
日弁連や関係諸団体からは、「風の会」のめざましい奮闘があったからこそ、廃案に追い込めたと高く評価された。
会期切れ等による廃案でなく、正面からの採決で廃案という成果を勝ちえたのは、(私の子どもの頃の)「オイコラ警察、反対」「デートもできない警職法反対」という、スローガンでたたかわれた、警察官職務執行法の改悪闘争以来の「快挙」という成果をあげた。
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【2】 そして、組織結成から10年。本年4月3日に、「『司法改革』を検証する」と題して、その中間総括の集いを開催した。
取りあげた題材は、(1)安保条約と米兵犯罪 ── 横須賀基地米兵犯罪・国賠訴訟、(2)言論・表現の自由と裁判所 ──
ビラ配布弾圧・堀越事件、(3)市民の手による行政監視と住民訴訟 ── オンブズマン活動と住民訴訟、(4)非正規労働者の権利と裁判闘争 ──
日立メディコ、松下PDP最高裁判決をのりこえるたたかい、(5)大気汚染裁判と和解後の取り組み ──
東京大気裁判と「三本柱」の取り組み、ということで多岐にわたったが、その目線は、「市民の眼」から、今次「司法改革」を裁判の現場から、立法のたち遅れの是正をはかるたたかいから、国連憲章、国際的水準との比較から討議が行われ、その上で、中長期的な展望に基づく討議が展開された。
「司法改革」の現状での検証と将来展望を見定めるうえでの貴重なシンポジウムとなった。
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【3】 そして、横浜地裁の、私たちオンブズマン訴訟で、2つの判決。
6月23日の中原消防署住民訴訟と7月14日の王禅寺住民訴訟の2つの敗訴判決。
中原消防署事件にあっては、先行取得時の財務負担行為は時期を失して監査請求(住民訴訟)の対象とはならず、長年にわたる「塩漬け」状態を解消するために選択した川崎市の有り様、すなわち、自らが土地買収やホテル建設のリスクを負うことなしに不動産を賃借してホテル営業ができる、というホテル業者にとって好都合な消防署と、ホテルの複合施設を、川崎市がいくつかの優遇措置を講じて実施していいのかに限定されて、監査請求、そして、住民訴訟が提起された。
私たちの取り組みの基本には、こんな安直な「塩漬け土地」の解消があっていいのか、という怒りにも似た市民感情があった。
しかし、横浜地裁(佐村裁判長)は、災害時における避難所施設の必要性を川崎市主張のとおり、鵜のみにして、ひとかけらの「リップサービス」もなしに、原告側主張を斬り捨てて敗訴の言渡を行った。
王禅寺事件はどうか?
もっとずさんな事実認定で、原告主張を排斥した。その杜撰さと判決の論理の誤まり、判決批判の詳細は、別稿(江口論稿)に譲るとして、川崎市主張を要約的、羅列的に並べただけの論理展開で、しかも、原告の提出した証拠の具体的検証を抜きにして、(1)川崎市から土地開発公社に先行取得を委託(平成2年)したことについて、委託契約が存在したと強引に認定した事実認定(平成6年の南伊豆保養所用地の先行取得に委託契約が存在しなかったことは川崎市も自認。それ以前の平成2年にも存在するはずがない)、(2)固定資産税に係る地価評価(路線価も同じ)は平成2年当時も現時点でも価格変動がないこと(バブル経済の波をうけても、接道のない、使い勝手の悪い山林価格に変動はない)、平成18年の川崎市が行った鑑定評価をも総合すると、平成2年の地価評価が先行取得価額よりはるかに低額であることは明白で、従って、川崎市が土地開発公社に行わせた先行取得価格は異常に高額なのに、それを証拠に基づかず正当と認定した誤まり、(3)そもそも公共事業の「代替地」目的のために先行取得する必要はなく、証拠に照らしても川崎市の関係部局が先行取得を望んでいないことは明らかなのに何の根拠もなく川崎市の言い分を鵜のみにしている誤まり、(4)取得した土地が接道がない、使い勝手の悪い土地で、仮に取得の必要性があっても取得目的(代替用地)に合致するはずはないし、価格も安いのに、これを提出証拠を無視してバッサリと斬り捨てた誤まり等々、「不当判決」どころか判決の名に値しない判示内容となっている。しかも、平成2年当時の市長を阿部孝夫と事実認定した判決は茶番というしかない。
これでは判決ではない。証拠は全然見ていないのではないか。検証も実施せず、原告提示の現場写真、報告書も無視して裁判といえるのか。
7月20日のオンブズマン幹事会で怒りが渦巻いた。
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【4】 「司法改革」の重要な柱の一つとして、司法消極主義、行政追随主義の弊害の是正が叫ばれた。
横浜地裁の判決は、旧態依然の「行政ベッタリ」の司法の体質を再び露呈した。
いや、むしろ、佐村裁判長に代表される、中堅裁判官の司法適格に係る資質が厳しく問われるところとなっている。佐村裁判長の資質は、東京地裁時代の審理・判決内容、破産・債務整理を担当したときの「異常な資質」からして、従前からも問題視されていた。
司法の制度の改善とともに、私たちは、1人ひとりの裁判官の資質をも含めて厳しい監視の眼を強めてゆく必要がある。
ひと昔前いわれた「司法の反動化」阻止のスローガンが、今も現実的な生ま生ましいスローガンとなっている。
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