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東京大気汚染公害裁判勝利で きれいな空気をこどもたちへ /西村隆雄
2016年8月17日 水曜日
深刻な大気汚染・広がる被害
首都圏の大気汚染は、1980年代の後半に一気に悪化。都内では、幹線道路沿道のみならず、これから離れた一般地域でも、高濃度の汚染が全域に面的に広がっています。2003年秋からスタートした東京都などのディーゼル規制以降も、なお深刻な汚染が続いています。
このためぜんそく患者は、ますます増加傾向にあり、国が公健法による認定を打ち切った1988年以降、未救済患者は、高額な医療費負担で満足な治療も受けられず、病状は悪化の一途をたどり、失業しても何らの救済もなく、最後は生活保護に頼らざるをえなくなっています。
一次判決を乗りこえて
東京大気汚染公害裁判は、1996年に、ぜん息などの被害者が、国・東京都、首都高、トヨタなどメーカー7社を相手どって提訴しました。
2002年10月の一次東京地裁判決は、被害救済を12時間交通量4万台という巨大幹線道路沿道50mに限定し、面的汚染の因果関係を認めず、原告99名中何と92名の請求を棄却する一方、自動車メーカーの法的責任についてもこれを否定する厳しい判決となりました。
そこで私たちは、この間、この判決を克服し、面的汚染の因果関係と自動車メーカーの法的責任を明らかにすべく主張・立証を重ねてきました。
その一端をご紹介すれば、以下のとおりです。
自動車メーカーの責任
自動車は、ディーゼル車(燃料:軽油)、ガソリン車(燃料:ガソリン)に大別されますが、東京の大気汚染の元凶はディーゼル車。窒素酸化物の67%、浮遊粒子状物質の大半はディーゼル車から排出されているのです。
このディーゼル車、実は1970年代半ば以降のこの20~30年でガソリン車にとってかわって急増。宅急便の2トン積などの小型・中型トラックは、当時ほとんどガソリン車だったのが、大半がディーゼル車になってしまったのです。
それでは、もしこのディーゼル化がなかったら? 水谷洋一静岡大助教授によれば、ガソリンへの転換が可能な中小型トラック・バス、乗用車がガソリン車であったとすると、大型トラック・バスがディーゼル車のままでも、何と、東京都内の自動車からの粒子状物質の74%(1990年)、75%(1999年)がカットできることが判明。このことはメーカー側も一切争っていません。
このディーゼル化は、当時のオイルショック、円高不況で売上げ不振に陥ったメーカーが、燃費の良さを最大のポイントにして大々的な売込みをはかったことによるものです。しかも当時、すでにメーカーは、ディーゼル排ガスの有害性について十分に認識しえた(先の一次判決)のですから、自動車メーカーは法的責任を免れようもありません。
全面的汚染の因果関係
一方、一次判決が救済の範囲を『沿道』に限定した根拠は「千葉大調査」でした。しかし都内では非沿道地域であっても実は千葉大調査の沿道並みの汚染にさらされており、非沿道まで含めた因果関係が認められるべきです。
またその後発表された千葉大調査の結果では、非沿道地域であっても田園部の四倍近い発病危険にさらされており、非沿道まで含めた因果関係は明らかです。
さらに近年欧米では、日々の大気汚染濃度の高い日にぜん息発作が多発するという研究が多数蓄積されており、これらからすれば、自動車排ガス汚染でぜん息発作をくり返し、ぜん息が長期的にも増悪することが明らかとなっているのです。
100万署名で全面勝利判決を
以上の到達点をふまえて、私たちは来年にも予想される判決で、メーカーの加害責任を認め、面的被害を救済する全面勝利判決をかちとり、その上で、自動車メーカーはじめ国・都などの財源負担で新たな被害者救済制度を創設し、公害対策の強化と公害道路建設推進の道路行政の抜本的転換をはかっていきたいと考えています。
そのために、裁判所あての『100万署名』にぜひともご協力下さい。
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