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元内閣法制局長官 阪田雅裕氏と弁護士 岩村智文氏との対談を踏まえて ~解釈改憲による集団的自衛権の行使の容認を認めない~/山口 毅大 2014.6

2016年8月17日 水曜日

第1 緊急学習会の開催~阪田氏と岩村氏の対談~

1 緊急学習会の概要
  2014年5月15日,川崎市中原区で,「秘密保護法の廃止を目指す川崎市民の会」主催で,解釈改憲による集団的自衛権の行使に関する緊急学習会を行いました。この「秘密保護法の廃止を目指す川崎市民の会」には,当事務所の三嶋健弁護士や川岸卓哉弁護士も参加しております。
  緊急学習会では,元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と当事務所の弁護士で日弁連秘密保護法対策本部副部長の岩村智文弁護士が解釈改憲による集団的自衛権の行使をテーマに対談しました。この学習会に,200名を超す市民が参加しました。

2 三嶋健弁護士による主催者あいさつ
  主催者あいさつとして,当事務所の三嶋健弁護士が「集団的自衛権の行使容認を解釈改憲で認めることは憲法体制の否定であって,決して許されるものではありません。そのことについて,本日,元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と日弁連秘密保護法対策本部副部長の岩村智文弁護士の対談があります。ぜひこの機会にこの問題を考えていき,ともに反対していきましょう」と呼びかけました。

3 阪田氏の講演
  阪田氏の講演では,①立法過程の概要,②内閣法制局と憲法,③政府の憲法9条解釈についての説明がありました。
  特に,現在の政府の憲法9条解釈について,正当な法的理論がないこと,9条の空文化・規範性の喪失,国会での議論の積み重ねを経ていないこと,正規の改正手続きの存在を無視するものであることから,解釈変更は許されないと述べました。

4 阪田氏と岩村氏との対談
  対談では,阪田氏は,解釈改憲による「集団的自衛権」の行使容認は,憲法9条を無視するに等しいものであり,立憲主義と法の支配の否定であると述べました。
  岩村氏は,阪田氏に対し,「安保法制懇は,憲法解釈が戦後一貫してきたわけではないと主張していますが,どう見ていますか」と問いかけました。これに対して,阪田氏は,「憲法9条に関しては,戦力を持たず,交戦権を認めないという解釈は戦後の吉田内閣から一貫して全く変わっていない」と述べ,安保法制懇の欺瞞を鋭く指摘しました。
  さらに,阪田氏は,「集団的自衛権」は,他国に対する武力攻撃に対して,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力を行使するものであるところ,憲法9条2項は,他国に攻撃をしかける交戦権を認めておらず,どう解釈しても,合憲とはいえないと述べました。その上で,阪田氏は,「法的理論で説明できない解釈をするなら,法治国家,立憲主義の看板をおろしたほうがいい」と述べ,解釈改憲が立憲主義を破壊すると指摘しました。
  最後に,岩村氏が,「今日の学習会を,集団的自衛権について私達国民が議論し,安倍政権の狙いを打ち破る出発点にしたい」と強いメッセージを述べたところ,阪田氏は,「今,国民みんなの踏ん張りどころです。問題点を周りに訴えて欲しい」とこれに応え,学習会に参加した市民に訴えかけました。

第2 情勢を正しく認識し,解釈改憲を阻止する運動へ

1 正当な憲法の解釈と立法事実の歪曲
  正当な憲法の解釈とは,論理的に首尾一貫していること,誤った事実認識に基づくものでないこと,正当とされる過去の法令や判例を適切に説明しうると同時に,今後起こりうる同種の事件をも適切に解決しうる解釈であること,その時々の社会の多数派の解釈に従うべきことを意味するものではなく,多くの人の納得を得られるような解釈であることが求められます。上記対談でのやりとりからもわかるとおり,安保法制懇は,このような憲法の解釈のイロハを全く理解していないのです。
  特定秘密保護法の成立後,安倍政権はタカ派的色彩を濃くしており,従前の「専守防衛」の理念を放擲し,「積極的平和主義」という欺瞞に満ちたレッテルの下に,中国の軍事的台頭や北朝鮮等の周辺国に対抗するという歪曲された立法事実の下,集団的自衛権の行使を解釈改憲で実現しようとしています。
  ナチスの高官であったヘルマン・ゲーリングは,ニュルンベルク裁判の最中,ギルバート心理分析官に対し,以下のように述べています。
「もちろん,普通の人間は戦争を望まない。(中略)しかし最終的には,政策を決めるのは国の指導者であって,民主主義であれファシスト独裁であれ議会であれ共産主義独裁であれ,国民を戦争に参加させるのは,つねに簡単なことだ。(中略)とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い,平和主義者を愛国心に欠けていると非難し,国を危険にさらしていると主張する以外には,何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ。」

2 メッセージ
  私たちは,今の情勢を正しく認識した上で,集団的自衛権に係る 解釈改憲を絶対に阻止することを目指す必要があります。
  そのために,みなさま,そして,みなさまの身近な方に対して,集団的自衛権の行使を認める解釈改憲が立憲主義に反するもので,私たちの権利を脅かすものであることを伝えてください。
  当事務所の弁護士は,憲法学習会の講演依頼を積極的に引き受けておりますので,お気軽にご依頼ください。

投稿者 川崎合同法律事務所

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