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日本通運川崎支店-無期転換逃れ地位確認訴訟(弁護士 川岸卓哉)
2020年1月23日 木曜日
1 事案の概要
本件は、労働契約法18条「無期転換ルール」逃れに対する裁判である。原告は、日本通運川崎支店で派遣社員の事務職を経て、2013年より、日本通運株式会社に、1年契約更新の有期労働契約で直接雇用された。その後、契約更新は4回されましたが、無期転換申込権が発生する通算契約期間5年のわずか1日前、2018年6月末日をもって、期間満了による雇止めされた。これに対し、雇い止め無効を主張し、横浜地方裁判所川崎支部に提訴した。
無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として、立法されたものであるが、本件雇止めは、無期転換ルールの法の趣旨を真正面から否定し無期転換を阻止することに目的がある。
2 雇止め法理の形成・発展に逆行する不更新条項
本件雇用契約書には、派遣を経て最初の直接雇用契約当初から「当社における最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない」という、いわゆる不更新条項が挿入されていた。そもそも、労契法19条において制度化された雇止め法理は、有期労働契約は合意された期間の満了によって当然に終了するという契約法理に対して、解雇権濫用法理という重要な労働法理を尊重して法定更新制度を設けたものである。つまり、合意原則よりは雇用関係の存続保護という要請を重視して、形成された法制度であり、それについて不更新条項による潜脱を認めることは、雇い止め法理の形成・発展に逆行することになる。
本件訴訟の3つの争点①そもそも更新上限規定が労働契約法18条を逸脱し公序良俗に反して無効②更新上限規定への同意が自由な意思に基づくものではなく無効、以上の論点を前提に、③本件件雇い止めが、雇い止めの無効について定めた労働契約法19条に反して無効であるかである。
特に、争点①については、国会答弁で示されてきた労働契約法18条の立法趣旨を法解釈に斟酌すれば、使用者が、有期雇用契約に5年以内の更新上限を付して利用することについて、公序良俗違反といえる場合には、更新上限は違法無効と解釈される。意見書をお願いした立正大学准教授高橋賢治先生は、労働契約法は、5年以内の有期労働契約の利用はいずれの場合も許されるという趣旨で濫用防止規定があえて設けなかったのではなく、「解釈は後の判例により論理的に決せざるを得なくなる」と指摘している。
3 契約書の形式的文言を突破する必要
2018年以降、全国で、本件と同様の無期転換逃れを争う裁判が提訴・係争され、今後、各地の裁判所の判断により、労働契約法18条に関する、新たな労働法理が創出されていくなか、本件裁判の帰趨も、日通のみならず広く非正規労働者の将来も左右する結果となる。非正規労働事件の運動展開は困難があるが、全川崎地域労働組合及び国民救援会神奈川支部を中心に支援共闘会議が結成され、署名5000筆を裁判所に提出するなど、運動を広げている。
本件のように、当初より不更新条項が契約書に記載されていた内容でも、立場の弱い労働者は契約締結せざるを得ない労働者は潜在的に多数存在する。契約書の形式的契約文言の壁を事実と道理に基づく主張で突破してきた歴史が、有期契約の労働者を救済する判例法理形成の歴史である。これにならい、労働契約法18条の趣旨に適った新たな判例法理を作り出すため、全力を尽くす決意である。
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