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ペットに関するトラブル~離婚時の我が子の引き取り問題を中心に~(弁護士 畑福生)
2022年11月21日 月曜日
こんにちは!弁護士の畑 福生です。昨年から保護猫と暮らしています。
我が家ではお猫様が世界の中心となっていますが、 一緒に暮らしてみると改めて「ペット」というより「家族」なのだと実感します。
この記事では分かりやすさのために「ペット」と書きますが、家族ともいうべきペットにまつわるトラブルについて、離婚時の引き取りの問題にも触れながら紹介したいと思います。
1 ペットにまつわるトラブルについて
ペットに関するトラブルとしては、次のように様々なものが挙げられます。
・ペットが被害者となる場合
例えば、交通事故や動物病院、ペットホテル、トリミングショップでのミスによってケガをした等
・ペットが加害者となる場合
例えば、ペットが噛んだり引っかいたりして怪我をさせた、物を壊した、野良猫や野鳥への餌やりで隣家に糞尿被害が出た等
・それ以外の契約に関する問題
例えば、ペットショップとの契約問題、 賃貸住宅でのペットの飼育トラブル、ペットの葬儀に関するトラブル、ペットに財産を残したいという意向を遺産分割協議に反映させること、動物保護団体を装った里親詐欺等
2 ペットの引き取り問題
このように様々なトラブルが生じ得るところですが、今回は、特に離婚の際にペットを誰が引き取るかという問題についてまとめたいと思います。
⑴ ペットは「物」として扱われる
大事な大事な我が子、この世に二つとない大切な命ではありますが、民法上はペットは「物」として扱われてしまいます(民法85条)。
そのため、民法上は、ペット自身は権利を持たず、むしろ所有権の対象として、すなわち誰かの所有物として取り扱われます。
⑵ ペットは財産分与の対象となりうる
「物」として所有権の対象となることから、 結婚生活の中で、夫婦の家計からペットを購入したような場合には、ペットは夫婦の共有財産となります。他方で、 結婚前からどちらかが飼っていたなどの特別な事情がある場合はその方のみの財産となります、
夫婦の子どもについては、離婚時にどちらが親権を得るかが問題となりますが、残念ながらペットには親権は存在しません。
そのため、共有財産として扱われたペットは、夫婦の離婚時に財産分与(=夫婦が協力して築き上げた財産を公平に分配する手続き)の対象となります。
⑶ 一般的な財産分与の方法
ア 現金、預貯金など
財産分与において、現金や預貯金など分けやすいものであれば、夫婦が半分ずつ取得するというように計算することが多いです。
イ 不動産など
また、不動産などそのままでは二つに分けられないものは、
①売却して売上げを夫婦で分ける方法や、
②その物の財産的な価値(売却価格など)の2分の1を夫婦のどちらかが他方に支払って、その方が所有権を得る(片方は所有権を得る、もう片方が相当額のお金を得る)という方法がメジャーです。
その他にも、③(土地であれば)分筆して二つの土地にしてしまうことや、④分けずに共有として残しておくということもあり得ますが、様々なリスクから③④はおススメしないことが多いです。
⑷ ペットの 財産分与の方法は?
このような方法を踏まえると、ペットの財産分与はどのように考えればよいでしょうか。
まず、当然ながらペットは物理的に分けられないので、上記「ア」や「イ」の③の分けてしまうという方法はとれません。
また、大事な我が子を売るなんてとんでもない。上記「イ」のうちの①方法 (売却) もできませんよね。
そうすると、上記「イ」の③(お金を払うなどしてどちらかが取得)が残ります。
ただ、夫婦共有財産としてのペルシャ猫の価値が15万円として主張された事案において、裁判所は「 通常、ペットの猫の飼育には、相当の費用が必要となること、また、ペットの猫が病気等に罹患することも稀ではなく、相当高額の治療費を必要とする場合もあることに照らせば、ペットを財産的価値があるものとして扱い、財産分与の対象財産とすることは相当でないというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。」( 横浜家庭裁判所相模原支部 平成29年10月30日判決・ D1-Law.com判例体系:28261791)とされています。
特別な場合を除いて、一般的にペットには財産的な価値が認められにくいことが多いです。
そのため、離婚時のペットの引き取りは、無償でどちらか一方がペットを引き取るとなることも多いかと思います。
⑸ じゃあ、どちらが引き取るかはどう決めるの?
ア 話合い
まずは、話し合いで、どちらが引き取るのがペットにとって幸せかを踏まえて、どちらが引き取るべきかを決めることとなります。
イ 調停
話合いでもまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では裁判所(調停委員会)を介して、合意を目指します。離婚調停の中で財産分与について話し合うのもできますし、財産分与を目的とした調停を起こすこともできます。
ウ 審判・離婚裁判
調停でもまとまらない場合は、裁判所が審判によってまたは離婚裁判の中で、当事者の主張を踏まえて、判断を下します。
審判や裁判において、裁判所がどういった事情を踏まえて判断をするのかは明確に示されてはいません。
ただ、ペットが人間の子ども同様に愛情をもって取り扱われるべき存在であることからすれば、
・離婚までにどちらが主にペットの世話をしていたか
・どちらによりなついているか
・離婚後の飼育環境や経済状況など、客観的にみて夫婦どちらに飼育されるのがペットの幸福につながるか
などの事情の総合考慮の上で、判断がなされることになると考えられます。
ですので、審判や裁判においてはその点を踏まえた主張・立証が欠かせません。
⑹ その他、ペットの養育費は?ペットの面会交流は?
既に述べたとおり、残念ながら、ペットは人間の子どもとは異なり所有物として扱われてしまうので、ペットの所有権を取得した方から、他方に対して養育費を請求することはできません。また面会交流を求める法律上の権利もないと考えられます。
ただ、愛する我が子に会いたい、我が子の健康な生活に貢献したいという気持ちもあるはずです。
先程のどちらが引き取るかを話し合いで決める際に、「あなたにこの子を託すから、その代わり月に何回かは合わせてほしい」、「この子のご飯代や医療費を払うから合わせてほしい」といった条件をつけて交渉し、少しでもお気持ちを叶える方向で合意をするということも考えられます。
審判や裁判で最終的に裁判所が判断するとなると、どちらが所有権を取得するかという話にしかなりませんが、話合い(調停含む)であれば、柔軟な解決も可能です。
特にペットについては医療費の負担が高額となりやすいことから、相手方に医療費の支払いなどのメリットを提示しつつ、面会交流などこちらの希望を一定程度叶えるということも考えられます。
川崎合同法律事務所は、弁護士、事務員含め愛するペットと暮らす所員も多く在席しています。
ペットの財産分与の問題含め、離婚の問題について皆様のご相談に多くお答えしております。
お困りの際は是非ご相談ください。
≪離婚・男女問題特設ページはこちら≫
https://www.kawagou.org/divorce/
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