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相続あるある(弁護士 渡辺登代美)

2025年11月13日 木曜日

渡辺登代美弁護士については、こちらをご覧下さい。 

 

1 遺言書を作りましょう

「よもや、親子兄弟姉妹で争うようなことはあるまい。」

きっと、誰もがそう思うでしょう。

でも、兄弟姉妹にも配偶者がおり、子がおり、生活があります。私たち庶民の程度の財産は、いくらあっても困ることはありません。できることなら、たくさん欲しいと思うのが人情です。

そこで、親子間、兄弟姉妹間で、思わぬ相続争いが発生することがあります。

大丈夫だと思っても、遺言を作成しておくことをお勧めします。法定相続分どおり、ということでも構わないのです。

生前、常々言い聞かせていても、だめなのです。決められた遺言の方式に則らなければ効力は生じません。遺言で、自分が力を入れていた活動に関係する団体に寄付することもできます。

 

2 さまざまな相続

一昔前は、土地建物を長男に相続させるべく、父親が亡くなった場合、母親が他の兄弟姉妹に代わって名義変更をしてしまう、などということもありました。不動産の名義が変えられていても、必ずしもあきらめなければならないものではありません。

相続手続をしようと戸籍をとったところ、亡くなった父親に、母親も知らない子がいたことが判明したこともありました。離婚した親の相続では、再婚後の配偶者や子が登場し、複雑な人間模様を呈します。

相続登記が義務化され、両親、祖父母、曾祖父母名義のままになっている不動産に決着をつけなければならない場面も発生しています。全く知らない人から、突然訴訟を提起されたと、びっくりして相談にみえます。関係者が数十人に上ることもありました。従兄弟姉妹どおしでもめさせるわけにいかないから、自分たち兄弟姉妹の世代で解決するのが終活だと言っている人もいました。

 

3 住んでいる持家の相続は大変です

親名義の不動産に子の一人が同居していて親が亡くなった場合、解決が難しくなることがあります。不動産は遺産としてかなりの価値がありますから、他の子どもたちは代償金を請求します。しかし、不動産の価値は売却しなければ現実化しません。住んでいる不動産ですから、売却するわけにいかず、かといって売らなければ代償金を支払えない、という八方ふさがりの状態に陥ってしまうことがままあります。

農地などもあって、家業とともに子の一人が相続するのであれば、他の子もまだ納得し易いかもしれません。現代は、会社員家庭で、遺産は実家の不動産しかない、というような場合も多くあります。

同居している子に全遺産を相続させるという遺言を作成しておいて、代償金の金額を遺留分まで減らせば(2分の1になります)、分割払い等、不動産を売却しなくても解決の目途が立つかもしれません。

遺産分割が終わったら、以後、関係を断ちたいと言い出す人もいます。いずれにしても、遺言を作成しておくことは、自分が死んだ後の紛争を和らげることに役立ちます。

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酒酔い、赤信号無視… 起死回生の逆転劇(弁護士 西村隆雄)

2025年10月21日 火曜日

西村隆雄弁護士については、こちらをご覧下さい。 

 

はじめに

 事故が起きたのは、7月下旬深夜1時過ぎでした。川崎区の幹線道路上で、自転車に乗って道路を横断していたNさんに乗用車が衝突。Nさんはその場で救急搬送され、骨盤骨折、左足骨折、左前十字じん帯損傷などの重傷を負って、入院2か月、通院11か月の長期加療を余儀なくされました。

 ご相談を受け、早速相手方との交渉を持ったのですが、相手方は、横断歩道上での当方赤信号無視の事故で、酒酔いの上でのものと主張してきました。

 当方はお酒が入っていたことは事実ですが、酒気帯び程度で酒酔いには至っておらず、交差点から20m以上離れた地点での衝突とのことで、お互い主張がかけ離れています。

 そこで裁判を提起することとなりました。双方とも川崎在住で、事故現場も川崎ですので、当然横浜地方裁判所川崎支部での裁判となるところでしたが、あえて横浜地方裁判所(本庁)に提訴することにしました。その心は、私は弁護士になる前の修習で、本庁第6民事部に配属されました。ここは交通専門部で、交通事故を一手に扱うこととなっており、当時から交通事故に関してはしっかりした審理を行い、また被告側につく保険会社の代理人に対してもはっきりとモノを言っていく傾向があったのを見てきたからです。

 案の定、なんで川崎支部ではないのですかと聞かれましたが、事案複雑なのでお願いしたいと話して、受け付けてもらえました。

 

事故態様

 夜間の事故で、第3者の目撃者、ドライブレコーダー映像等の客観的な証拠も存在しない中、双方の主張は大きく対立しました。

 交差点の手前20m以上離れた地点を横断していて衝突したとの当方の主張に対して、相手方は、横断歩道上を赤信号で進行してきた当方に衝突したと主張。ここで問題なのは、本来であれば双方立ち会いの下で作成されるはずの実況見分調書が、当方は重傷を負い搬送されてしまったので、相手方立ち会いのみで作られ、その後当方立ち会いでの調書が作られていない点です。相手方はこの実況見分調書に基づいて主張を展開してきました。

 さてここで重要なのが、過失割合です。当方(被害者側)にどれだけの過失があったかというのが問題になり、例えば80パーセントの過失ありとなれば、全体の損害が1000万円であったとしても、1000万円×(1-0.8)=200万円しか賠償が認められないのです。これを過失相殺といいます。

 ここで本件についてみると、衝突地点が横断歩道上となれば当方の基本過失割合は80パーセントとなるのに対して、交差点外での衝突となれば基本過失割合は30パーセントとなり大きく異なってくるため、ここが最大の争点となってくるのです。

 

当方の主張

 客観証拠が限られている中、現場に残されていた被害者のものとみられる血痕の位置(片側2車線の外側車線の外側)と相手方車両の破損状況(左前部フロントガラスに同心円状のひび割れ破損)を重視すべきと主張しました。

 すなわち当方は相手方車両のバンパー等で跳ね飛ばされることなく、相手方車両の前部左側ボンネット上に持ち上げられ、左前部フロントガラスに衝突し、その後落下しそのまま倒れて流血し、外側車線の外側に血痕が残された。この血痕の位置は、中央車線を走行して交差点内で衝突し、その後中央車線上で停止したとの相手方主張とは明らかに矛盾することを強調しました。

 一方当方が搬送された病院のカルテに、医師による「赤信号で横断歩道を渡り受傷」などの記載があると、相手方が主張してきました。これに対して、当方は、事故直後は意識レベルが悪く聴き取りは不能であり、一般に搬送されてきた場合、受け入れ医師は救急隊員から事故状況を聞き取るのが普通であり、救急隊員は現場に居合わせた関係者、本件でいえば相手方から事故状況を聞き取っている可能性が大であると主張しました。

 

裁判所和解案

 以上の審理を踏まえて、裁判所は事故態様と過失割合についての所見を示したうえで、和解案を提示しました。概要は以下のとおりです。

 「実況見分調書の相手方車両の停止位置と血痕の位置が離れすぎており、この停止位置、ひいては相手方主張の衝突位置が必ずしも正確とは認められない。そもそも相手方は当方自転車に気づかなかったからこそ衝突したのであり、相手方が当時衝突地点を正確に認識できたとは認めがたく、本件事故の衝突地点は、横断歩道の付近であったという程度では採用できるものの、横断歩道上で衝突したとまでは認めがたい。」

 上記カルテの記載についても、「当方に事故の記憶がない以上、この記載は相手方の説明に基づくものと認められ、相手方は衝突地点を正確に把握していたとは認められないので、この記載も採用できない」

 「以上から本件事故の衝突地点が横断歩道上であったとまでは認めがたく、当方の基本過失割合は30パーセントと認めるのが相当である。」

 なお当方の酒酔い運転についても、「酒酔い運転に至らなかった可能性があるとしても、酒気帯び運転の状態であった可能性は否定できず過失修正するのが相当」と提示しました。

 相手方はこの所見と和解案を全面的に受け入れて、和解成立に至りました。

 

健康保険の適用

 ところで当方が加入していた健康保険組合は、途中まで、本件は酒酔い運転で、かつ横断歩道上での赤信号横断であるので、健康保険法116条により、健康保険は適用できないとの見解でした。

 しかし裁判所の上記所見が出たため、健康保険組合は見解を改め、酒酔い運転、横断歩道上の赤信号横断はいずれも認定できないとして、健康保険適用の判断となりました。

 このため非適用であれば約400万円となっていた医療費が、適用となったため自己負担分のみの約120万円に減縮できたばかりでなく、限度額適用認定申請による高額療養費制度を利用できることとなったため、さらに医療費を大幅に縮減できることとなったのは大変に大きかったといえます。

 

私は弁護士経験40年以上となりますが、交通専門部での修習をきっかけに、多く交通事故案件を扱ってまいりました。今回もその経験が生かされたと思います。どうぞ、交通事故でお悩みの方、ご相談ください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

離婚した後、旧姓に戻る? それとも夫の姓をそのまま使う?子どもが大きくなった後、旧姓には戻れるの?という疑問にお答えします(弁護士 川口彩子)

2025年10月2日 木曜日

川口彩子弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

結婚するときには、夫か妻のどちらかの姓を選ばなければなりません。その夫婦が離婚するときには、姓を変えた側が、旧姓に戻るか、婚姻時の姓をそのまま使うか選ぶ必要があります。日本では、妻側が姓を変えるケースが大半なので、ここでは、結婚のときに妻が姓を変えたケースでご説明します。

まず、婚姻時の姓をそのまま使う場合です。お子さんが慣れ親しんだ姓なので、そのまま名乗らせてあげたいというケース、子どもたちは独立したが、結婚してから長年使ってきたので、もはや旧姓に戻るつもりはないというケースが多いですね。
その場合は、離婚届を提出する際に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出してください。用紙は役所に備え付けてあります。
 (ちなみに、協議離婚ではなく、裁判所で調停離婚や裁判離婚した場合にも、役所には離婚届を提出する必要があります。調停離婚や裁判離婚の場合、夫のサインや証人のサインは不要です。)

離婚時に旧姓に戻る場合ですが、結婚前の戸籍に戻る場合と、ご自身が筆頭者となって新しく戸籍をつくる場合があります。新しく戸籍をつくる場合には、離婚届に新しい本籍地を記載する際、筆頭者の氏名の欄に旧姓でフルネームをご記入ください。

なお、現在の戸籍の制度では、親子三代が同じ戸籍に入ることはできません。戸籍に入れるのは二代までです。なので、離婚後にお子さんと同じ戸籍になりたい場合には、お子さんを連れて親の戸籍に入ることはできませんので、ご自身が筆頭者となって新しく戸籍をつくることになります。

離婚後の氏をどうするか決めて離婚届を提出すると、ご自身は元夫の戸籍から抜けて元の戸籍に戻るか、ご自身が筆頭者となった新しい戸籍がつくられます。元夫の戸籍のご自身の欄には「除籍」という表示がなされ、元夫の戸籍から抜けてどこの戸籍に異動したのか、新しい本籍地が表示されます。

一方、お子さんの戸籍は、親権者が戸籍から抜けた妻だったとしても、自動的に親権者の戸籍に移るわけではありません。お子さんの戸籍を母親の戸籍に移すには、お子さんの住所地を管轄する家庭裁判所で「子の氏の変更」の手続をする必要があります。

家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立書」の書式をもらってくるか、裁判所のHPから「子の氏の変更許可申立書」の書式をダウンロードしてください。

※ダウンロードはこちらから

申立書を提出すると後日「審判」が送られてきますので、それを役所にご提出ください。

ここで注意が必要なのは、元夫の氏を名乗ることにした場合でも、お子さんと一緒の戸籍になりたい場合には、「子の氏の変更」の手続が必要となるということです。「申立人の氏『鈴木』を、母の氏『鈴木』に変更することを求める」という申立てになりますから、違和感はありますよね。ただ、「子の氏の変更」は、あくまでも戸籍を異動させるための手続なので、この申立てが必要となるのです。

なお、15歳未満のお子さんの「子の氏の変更」は、親権者が法定代理人として手続を進めることができますが、15歳以上のお子さんについては、お子さん自身に申立書を記載していただく必要があります。

裁判所への提出は、郵送もしくは持参となりますが、15歳以上のお子さんの申立書を親権者がお子さんに代わって持参することは構いません。

あるいは、離婚のときに、ご自身だけ旧姓に戻り、お子さんはそのまま元夫の戸籍においておくこともできます。そうすると、母と子で苗字が違うことになりますが、ご自身は旧姓を名乗ることができ、お子さんたちはそのまま今までの姓を名乗ることが可能です。元夫が筆頭者となっている戸籍のお子さんの欄には、親権者が母であることの記載はありますので、戸籍が別々でも問題ありません。

ただ、この場合、元夫が再婚すると、お子さんと同じ戸籍に新しい妻も入ってきますから、それは気になる方もいらっしゃるかもしれません。

お子さんが成人しているような場合には、ご自身だけ夫の戸籍から抜けるケースが多いように思います。もちろん、お子さんが成人していても、「子の氏の変更」の手続により、母の戸籍に入ることを希望する方もおられます。

離婚から何年も過ぎて、お子さんも独立し、いよいよ旧姓に戻りたいという方もいらっしゃいます。

その場合は、家庭裁判所で「氏の変更」の手続をし、裁判所の審判を得れば、旧姓に戻ることができます。離婚のときに旧姓を選ぶのであれば、家庭裁判所の手続は不要ですが、いったん元夫の姓を選んでしまうと、旧姓に戻るために家庭裁判所の手続が必要です。事情聴取のため、裁判所から呼出しがあることもあります。

※申立書の記載例はこちら

お子さんが結婚して、自分一人の戸籍になっている場合は、単独で手続ができますが、お子さんがまだ戸籍に残っている場合には、その戸籍ごと氏が変更されてしまいますので、15歳以上のお子さんについては、氏の変更についてお子さんの同意書が必要となります。

戸籍のことで疑問がございましたら、ぜひ法律相談をご利用ください。 

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

畑福生弁護士が小田原市立下曽我小学校ホームページに掲載されました

2025年9月11日 木曜日

畑福生弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

 2025年9月8日に畑福生弁護士が講師をした、小田原市立下曽我小学校の「いじめ予防教室」について、小学校ホームページの学校日記に掲載されました。

https://www.ed.city.odawara.kanagawa.jp/shimosoga_s/weblog/130203923?tm=20250909110345

 

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【10/31開催】79期司法修習予定者向け学習会・事務所説明会に参加しませんか

2025年9月11日 木曜日

第79期司法修習予定者のみなさま、合格おめでとうございます!

弊所では、第79期司法修習予定者向け学習会・説明会を開催しております

 

【日時】2025年10月31日(金)18:30~ 

【場所】川崎合同法律事務所

※ZOOMも併用しますが、できるだけ現地参加をお願いします。

【テーマ】生業を返せ、地域を返せ!

~福島原発事故原状回復訴求訴訟~
前人未踏の裁判に挑んだ原告らに学ぶ~

【講師】弁護士 渡辺登代美

 

 

★要事前申込★

【お申し込み】
maeda@kawagou.org(担当弁護士:前田ちひろ)
※件名に「学習会申込み」と記載の上、メールにてご連絡ください。
※ZOOM参加希望の方は、申込みの際にその旨も併せてお知らせください。

【アクセス】
・JR「川崎駅」より徒歩約9分
・京浜急行「川崎駅」より徒歩約5分

TEL:044-221-0121

 

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

【9/12開催】79期司法修習予定者向け学習会・事務所説明会に参加しませんか

2025年9月11日 木曜日

第79期司法修習予定者のみなさま、合格おめでとうございます!

弊所では、第79期司法修習予定者向け学習会・説明会を開催しております

 

【日時】2025年09月12日(金)18:30~ 

【場所】川崎合同法律事務所

※ZOOMも併用しますが、できるだけ現地参加をお願いします。

【テーマ】子どもに寄り添う法律実務

~子ども担当弁護士とは~

【講師】弁護士 前田ちひろ

 

 

★要事前申込★

【お申し込み】
maeda@kawagou.org(担当弁護士:前田ちひろ)
※件名に「学習会申込み」と記載の上、メールにてご連絡ください。
※ZOOM参加希望の方は、申込みの際にその旨も併せてお知らせください。

【アクセス】
・JR「川崎駅」より徒歩約9分
・京浜急行「川崎駅」より徒歩約5分

TEL:044-221-0121

 

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日本に住むフィリピン人がなくなったとき、相続放棄はできるの?(弁護士 長谷川拓也)

2025年9月9日 火曜日

長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

人がなくなったときには、様々な手続を要しますが、その中でも、意外と大変なのが相続放棄です。
ご家族がなくなったとき、その方に有益な財産があるなら良いですが、借金はもとより、山林原野といった処分の難しい事実上のマイナスの財産については、相続をしないとい
う選択肢がありえます。
このとき、意外と知られていないのは、相続放棄については、家庭裁判所を通じた手続が必要ということです。しかも、この相続放棄の手続については、原則として、相続の開
始を知った時(その多くは、ご家族がなくなったことを知った時でしょう。)から3カ月以内に行う必要があり、この期間を過ぎてしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があります。
ところで、ご家族の中には、日本国籍ではない方がいる場合もあるでしょう。そういう方がなくなったときには、相続放棄はできるのでしょうか。
日本国籍以外の方がなくなった場合は、その相続の取り扱いについては、なくなった方の国の法律がどういうルールになっているかが問題となりえます。必ずしも、相続について、日本と同じように定めているとは限りません。
たとえば、フィリピンでは、フィリピン民法16条第2文では、相続に関し、フィリピンの本国法を準拠法とする旨定めていることから、日本で長らく暮らしているフィリピン人がなくなった場合でも、フィリピン法が準拠法となります。
さて、フィリピンでは、日本とは異なり、相続放棄という概念がありません。そもそも、フィリピンには、マイナスの財産を相続するという概念がなく、必然的に、相続放棄自体もないのです。
 したがって、以上を前提とすると、原則、日本に住むフィリピン人がなくなったときには、日本で相続放棄が出来ないこととなります。
 しかしながら、このような帰結は、ときに様々な問題を生じさせます。たとえば、私がご相談を受けたケースで、フィリピン人の配偶者がなくなったので、その相続放棄につき
依頼したいというものがありました。ご依頼者様のお話をうかがうと、なくなった配偶者様には、日本での借金があり、相続人であるご依頼者様に督促が届いているので、なんと
か相続放棄したいということでした。ご依頼者様は、ご自身で相続放棄手続を進めようとして、裁判所に申立てを行ったそうですが、相続放棄が裁判所を通じた複雑な手続である
こと、ましてや、原則、フィリピン国籍の方について相続放棄ができないということもあり、裁判所で上手く対応してもらえず、困っていました。
 さて、このケースでは、もし、相続放棄ができないとすると、ご依頼者様は、借金の宛先であるカード会社など各社に対し、配偶者様がフィリピン国籍であり、相続手続については、日本法ではなく、フィリピン民法の適用があること、そして、フィリピン民法では、負債については、相続の対象ではなく、日本では、原則、相続放棄ができないものの、相続自体はしていないこと、よってしたがって、配偶者様の借金について相続をしておらず、支払義務がないことなどをいちいち説明することとなるでしょう。しかし、カード会
社など各社では、必ずしも、フィリピン民法について理解がある訳ではないでしょうから、場合によっては、こうした説明に納得せず、貸金返還請求訴訟などを起こしてくることもあるでしょう。
 そこで、上記のケースにおいては、小難しい話になってしまいますが、国際私法上の公序(通則法42条)により、相続放棄制度を有しないフィリピン法の適用を排除し、日本法により、相続放棄を認めるべきであることを裁判所に説明、説得し、例外的な取り扱い

として、日本法による相続放棄を認めてもらうことができました。
 以上のとおり、日本に住むフィリピン人がなくなったとき、相続放棄はできるの?というタイトルの答えは、原則不可、ただし、例外的にできる場合があるということになります。もっとも、この例外的な場合を認めてもらうには、ハードルがありますから、フィリピン人のご家族がなくなった際には、ぜひ、弊所にご相談いただくことをお勧めいたします。

 

 

 

When there are no Filipinos living in Japan, can I give up my inheritance?

Lawyer Takuya Hasegawa
When a person disappears, various procedures are required, but among them,
inheritance abandonment is surprisingly difficult.
When your family disappears, it is good if you have useful property, but you can choose
not to inherit not only debts but also de facto negative assets that are difficult to dispose of,
such as mountains and forests.
At this time, what is surprisingly not known is that inheritance renunciation requires
procedures through the family court. Moreover, as a general rule, this procedure for
renunciation of inheritance is done when you know that the inheritance has started (most of
them are when you know that your family is gone). After this period, you may not be able to
renounce your inheritance.
By the way, there may be people in your family who are not Japan nationals. When such
people are gone, can I give up my inheritance?
If there is no longer a person other than Japan nationality, the law of the country where
the inheritance is no longer available may be a problem. Inheritance is not necessarily the
same as in Japan.
For example, in the Philippines, Article 16, Paragraph 2 of the Philippine Civil Code
stipulates that the home law of the Philippines is the governing law regarding inheritance,
so even if a Filipino who has lived in Japan for a long time disappears, Philippine law will be
the governing law.
Now, in the Philippines, unlike Japan, there is no concept of inheritance renunciation. In
the first place, there is no concept of inheriting negative property in the Philippines, and
inevitably there is no abandonment of inheritance itself.
Therefore, based on the above premise, in principle, when there are no Filipinos living in
Japan, it is not possible to renounce inheritance in Japan.
However, this consequence sometimes leads to various problems. For example, in a
case where I was consulted, there was a case where a Filipino spouse was gone, and he
wanted to request an abandonment of his inheritance. When I listened to the client's story,
he said that the deceased spouse had a debt in Japan and had received a reminder from
the client, who was the heir, so he wanted to give up the inheritance somehow. The client
filed a petition with the court in an attempt to proceed with the inheritance renunciation
procedure on his own, but the court was in trouble because the inheritance renunciation
was a complicated procedure through the court, and in principle, it was not possible to
renounce the inheritance for Filipino nationals.
Now, in this case, if the inheritance cannot be renounced, the client must tell the credit
card company and other companies to whom the debt is addressed, that the spouse is a
Filipino citizen, and that the inheritance procedure is subject to the Philippine Civil Code,
not Japan law, and that the debt is not subject to inheritance, and in principle, in Japan, the
inheritance cannot be waived. You will explain that you have not inherited the inheritance
itself, so you have not inherited your spouse's debts and that you have no obligation to pay.
However, credit card companies and other companies may not necessarily have an
understanding of the Philippine Civil Code, so in some cases, they may not be satisfied
with this explanation and file a lawsuit to claim the return of the loan.
Therefore, in the above case, although it is a bit difficult, we were able to explain and
persuade the court that the application of Philippine law, which does not have an
inheritance renunciation system, should be excluded by public order under private
international law (Article 42 of the General Clauses Act), and that the Japan law should
allow the renunciation of inheritance under Japan law.
As mentioned above, can I renounce my inheritance when there are no Filipinos living in
Japan? The answer to the title is that in principle, it is not possible, but it may be possible in
exceptional cases. However, there are hurdles to be recognized in this exceptional case, so
if you lose a Filipino family member, we recommend that you consult with us.

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

離婚事件を通して知り合った女性の話(弁護士 三嶋 健)

2025年8月27日 水曜日

三嶋健弁護士については、こちらから

mishima

 

1 専門は何ですか                          

専門は何ですかと、よく人から問かれます。多分、交通事故とか、離婚とかという回答を期待されていると思いますが、私は「法律」と答えることにしています。

特殊領域でも、専門知識は勉強すれば得られますし、事件の帰趨を左右するのは、やはり法的センスですので、専門は何かと聞かれれば、法律ということになります。

 

2 様々な人との出会い

弁護士の仕事をしながら、たくさの人と出会いました。様々な人生があり、そこで培われた人柄に接して感銘をうけました。

今回、皆様に紹介するのは、離婚訴訟で出会い、専業主婦でありながら、子ども連れて離婚するという過酷な経験を乗り越えて、自分の人生を取り戻した女性の姿です。

 

3 区役所の相談

その人との出会いは、区役所の法律相談でした。可憐な雰囲気で、幸せな家族に恵まれた健気な主婦という印象でしたが、相談の内容は、深刻でした。

夫の言葉による暴力がひどく、子どもにも向かうので、子供らを守りたい。そのためには、二人の子どもを連れて離婚するしかないというのです。

夫は頭が良くて議論しても負けるので、たとえ裁判をしても勝てないかもしれないと不安を訴えました。それを聞いて、その人は、離婚を決意した後も、なお夫の呪縛に囚われていると感じました。

区役所の相談は30分と限られています。手続の概略を説明し、別居し、収入を確保するなどの準備が必要だとアドバイスしたところで制限時間がきてしまいました。

 

4 電話

相当の時を経て、突然、その人から電話がありました。離婚の準備を終えたので、手続き始めたいと言ってきたのです。

相談が終わるとそのとたんに相談者のことは忘れますが、相談の内容は覚えています。電話の内容から、すぐに、区役所の相談者だとわかりました。

相談時は専業主婦でしたが、今は医療事務の仕事を得て、その収入でアパートを借りて、子どもを連れて別居していました。

別居するときは、トラブルを避けるために、夫の不在中に、置き手紙をして出ることを勧めるのですが、その人は、夫に対し、まず離婚を求め、同意は得られなかったが別居の承諾を得て家を出たと報告しました。

その報告に接して、<怖くても正面から向き合う>というその人の姿勢を感じました。

 

5 家庭内の出来事の立証

離婚訴訟は、離婚の原因となる出来事は閉ざされた家庭内で起こるので、目撃者はいません。その立証が問題となります。

ただ、相手が巧妙に嘘をついても、依頼者が記憶している事実を詳細に聞き取れば、ほころびが見え、書面や尋問での応酬を通じて相手の主張を崩すことができます。

そのためには、事実を詳細に聞きとる必要があります。しかし、離婚にいたる経緯は依頼者にとって辛く忘れたい記憶であり、その掘り起こしは、苦痛のはずです。しかし、その人は私の質問を通して真摯に過去と向き合い、私と共に、事件の本質を解き明かす努力をしてくれました。

裁判は、夫の抵抗はありましたが、終始有利に進行し、離婚することができました。

 

6 離婚して

婚姻中、夫の助けを得られず、苦しくてうずくまり泣いている姿を、子どもらが見て、近所に助けを呼ぶということがありました。その人が囚われている婚姻の過酷さを示すエピソードです。しかし、そのような夫婦関係であっても、子ども連れて、夫から自立することは、不安であり決意のいることだったとその人はいいます。ただ、別居後、仕事・家事に疲れて畳の上に横たわるとき、それをとがめる夫の視線がないので、安心して微睡むことができると語り、不毛な婚姻から自立して得た幸せを伝えてくれました。

 

7 久々の再会

先日、その人と会う機会がありました。小学生だった二人の子どもは大学に進学していました。未だ、正規の職が得られないと悩みを語っていました。非正規であるがゆえに人間関係に気を遣い、いやな目にもあったと言っていました。

それでも、非正規なりにキャリアを積み、収入も伸び、いつかは夫の年収を超えるかもしれないと微笑んでいました。ただ、子どもを現に育てているにもかかわらず、離婚した夫が養育費を支払っているため、扶養控除を受けられない理不尽を指摘し、それを是正したいと言っていました。

深刻な病気にも見舞われましたが、将来を共に歩めそうな人との出会いもあったと報告してくれました。

 

8 その人の半生をみて

その人の歩みを見ると、専業主婦の離婚の困難、女性の自立の難しさ、能力があっても正当に評価されない非正規労働者への差別を感じます。社会が未だに自立する女性に対して冷淡であることを思い知らされます。

その人は、世間の理不尽を自らの意志で乗り越えてきたのであり、そこに感銘します。そして、その人の自立の第1歩を、弁護士として法的知識で支えることができたことは嬉しかったし、誇りに思いました。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

「事実婚のままでは相続できない!?」 ~大切なパートナーに財産を遺すために遺言書を作りましょう~(弁護士 前田ちひろ)

2025年7月31日 木曜日

前田ちひろ弁護士については、こちらをご覧下さい。 

kawagishi  

事実婚のパートナーに財産を遺したい方へ、遺言書が必要な理由をやさしく解説します

最近は、戸籍上の結婚にこだわらない「事実婚」を選ぶカップルも増えています。
生活スタイルは結婚と何ら変わらなくても、法律の上では違いがあり、その違いは相続の場面で大きな問題となります。

この記事では、事実婚の方に向けて、以下のポイントに着目しつつ、遺言書を作っておくことがいかに大切か、解説していきます。

・法定相続人ってだれ?

・法律婚と事実婚のちがい

・パートナーに財産を遺すには?(遺言書の役割)

 

■ 相続人って決まってるの?~「法定相続人」について

人が亡くなると、その人が持っていた財産(不動産や預貯金など)は、一般的にはそのご家族が相続します。誰が相続をするかについて、法律には定めがあり、ここに定められているのが「法定相続人」です。

法定相続人として、まずは「配偶者」が定められ、その他には、亡くなった方の子ども、親、兄弟姉妹などが順番に定められています。そこで、法律婚をしている場合には、結婚相手は、配偶者として相続人になることができます。

 

■ 同じ夫婦でも違う?~法律婚と事実婚のちがい

ところが、事実婚の場合には、パートナーは法律上の「配偶者」には含まれていません。そこで、たとえどれだけ長く一緒に暮らしていても、法定相続人となることができないのです。

法律婚(入籍している夫婦)の場合には、たとえば子どもがいる場合でも、配偶者には財産の半分を相続する権利があります。一方、事実婚の場合は、亡くなった方に子どもや兄弟姉妹などの法定相続人がいると、それらの法定相続人が相続をすることになり、パートナーは財産を一切もらえなくなってしまう可能性があります。

では、そのような事態を回避するためには、どうしたら良いのでしょうか。答えは、「パートナーにも相続させる」という意思を、生前にしっかりと残しておくことです。

その方法として、遺言書の作成をおすすめします。

 

■ パートナーに財産を遺すには?~遺言書の役割

遺言書には、「誰に」「どの財産を」「どのくらい」渡すかについて、自分の意思を書いておくことができます。

特に、事実婚のパートナーのように、法律で相続人とされていない相手に財産を渡したい場合には、遺言書がなければ相続をすることはできませんので、遺言書の作成がとても重要になります。

遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言」もありますが、法律に決められた形式を守っていないと無効になってしまうこともあります。確実にパートナーへ財産を遺したいとお考えであれば、弁護士に相談し、法的に問題のない遺言書を作成するのが安心です。

 

■ まとめ~大切な人のために、準備をしましょう

事実婚は、お互いを尊重した自由な生き方を実現するための一つの方法です。しかし、法律上の保障が不十分な部分があることを理解し、特に相続については、きちんと対策をしておくことが大切です。

「自分がいなくなったあとも、パートナーが安心して生活できるようにしておきたい」
そう思う方は、遺言書の作成を前向きに検討してみてください。

当事務所では、遺言書の作成や相続のご相談を丁寧にサポートしています。初めての方にも分かりやすくご説明いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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2025年5月30日 金曜日

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