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捜査側丸儲けの刑事司法改革/岩村 智文 2014.9

2016年8月17日 水曜日

本年7月9日法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」は、「要綱(骨子)」を発表した。これは来春の通常国会に法律案として上程される予定になっている。3年前に発足した特別部会は、村木、足利、布川、氷見、志布志、東電OL、袴田事件などの数多の証拠捏造・冤罪事件を生み出した警察、検察の取調べ中心の捜査のあり方を根本的に変える方針を打ち出すものと期待されていた。しかし、残念ながら、7月9日の「要綱(骨子)」は、それを裏切るものだった。

 今、世界の流れは、取調べへの弁護士立会い、録音・録画、捜査側証拠のすべての開示、身柄の解放など被疑者・被告人の権利を厚く保障する方向にある。東アジアでも韓国、台湾がその流れの中にある。ところが日本は、人質司法と言われる状況にあり、長期間被疑者を拘束し、密室での取調べが行われている。テレビの警察ものなどでは、それが当然であるかのごとく描かれている。こうした被疑者・被告人の権利をないがしろにする取調べの結果が多くの冤罪事件を生み出している。

◆可視化は2パーセント
 特別部会が打ち出した方針は、期待に反し、これまでの取調べを維持したまま警察がその権力をさらに強めるものとなった。取調べの録音・録画(可視化)は、裁判員事件などに限られ、全刑事裁判の2パーセント(検察が取調べた事件の中では0.15パーセント)にすぎず、ほとんどの事件では録音・録画は義務づけられていない。また、任意同行による任意取調べといった事実上の強制的取調べは録音・録画されない。証拠開示は、公判前手続きに付された事件のみで不十分な証拠の目録が示されるだけで、すべての証拠開示は、当初から議論の対象ともならなかった。新聞各紙は、「冤罪事件置き去りに」(神奈川新聞)といった論調が多く、取り調べ可視化(録音・録画)すべしと国民が望んだ制度改革(録音・録画の義務づけ)が実現しなかったことを憤っている。ところが、こうした情けない「改善」に比べて警察・検察が得たものは大きかった。

◆広がる盗聴
 特別部会は、警察がほとんどの犯罪で盗聴できるようにし、盗聴しやすくする手段を与えた。盗聴は、もともと憲法に違反し、ひとの秘密をのぞき見するものなのだが、盗聴法で何よりも問題なのは、これから起きるであろう「犯罪」を盗聴する仕組みになっていること。捜査は、犯罪が発生してから開始される、これが今の刑事手続きの原則。ところが盗聴法は、犯罪が起きてもいないのに、捜査が始められる。こうした手法を認めると、怪しいということで警察の強制捜査(捜索・差し押さえなど)が行われる世の中になりかねない。また、盗聴はこれまで通信業者の立ち会いが必要だったので、事実上東京でしか行われなかった。それが今回機械化されるので、全国どこの警察署でも盗聴が可能となる。予算や人員も大幅に増えるだろう。警察の丸儲けといわれるゆえんである。

◆危険な司法取引
 警察や検察が得るものはほかにもある。それは、汚職や詐欺などの事件で認められる司法取引だ。逮捕されたAが「事件はBの指示だった」と供述する代わりに、自分を不起訴にしてもらう、こうしたことが可能になる。これは、裏で糸を引く首謀者を暴き出すのに役に立つといわれるが、危険も大きい。自分の刑事責任を軽くしてもらいたい、ということで、嘘を言って無関係の第三者を犯罪者に仕立てるおそれも大いにあるからだ。冤罪事件もここから起きかねない。

 これまで述べてきたとおり、今回の「要綱(骨子)」には、見過ごすのできない問題がある。来春の通常国会に向け、盗聴法の改悪などに反対する動きを強めよう。

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解雇・雇止は無効 資生堂・アンフィニ解雇撤回裁判・横浜地裁判決/藤田 温久 2014.9

2016年8月17日 水曜日

第1 地裁判決の主な内容
① 2014年7月10日、横浜地裁(阿部正幸裁判長)は、資生堂鎌倉工場の口紅製造ラインで非正規労働者として働いてきた池田和代さん達原告5人(第1グループ)の解雇と、齋藤美香さん達原告2人(第2グループ)の雇止めを無効とし、請負元㈱アンフィニとの間に労働契約上の地位があることを認め、未払賃金約3600万円と今後の賃金支払いを同社に命じる判決を言い渡しました。

② 他方、同判決は、原告達と資生堂に労働契約があることは認めませんでした。

第2 資生堂・アンフィニ解雇事件とは
 原告達の有期労働契約は、8年~2年間以上も形式的に更新され続け、所属会社と契約形式は、㈱リライアンス(請負)→ ㈱コラボレート(請負)→ 06年6月 ㈱アンフィニ(派遣)→ 07年1月㈱アンフィニ(請負)と変えられましたが、資生堂の指揮命令の下での労働実態は全く同じでした。

 2009年4月2日に資生堂が従前の発注量を約4割減らす通告をした直後、アンフィニは、労働契約の期間を同年末から5月末日に書き換え、5月17日、第1グループを含む22人を解雇し、5月末日、第2グループに対し期間満了による雇止めを通知しました。原告達7人は、解雇、雇い止めは無効だとして、資生堂と労働契約があること(仮にそれが認められない場合アンフィニと労働契約があること)の確認と未払賃金の支払等を求めて2010年6月に提訴しました。

第3 地裁判決の意義
① 解雇無効=勝利
 先ず、第1グループに対する解雇は、有期労働契約の期間満了前の解雇ですから、「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項) がなければ許されません。

 この点、判決は、受注量が半減したが、『早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破綻しかねないような危機的な状況であったとは認められず高度の人員削減の必要性があったとまではいえない』として「やむを得ない事由」はないので解雇は無効としました。

② 雇い止め無効=勝利、画期的判決
 次に、判決は、原告達のアンフィニとの契約は有期労働契約だが、アンフィニと契約を締結する以前から鎌倉工揚で勤務し契約更新していたこと、アンフィニ参入後も3回更新していること等から、『雇用継続への合理的期待を有していた』と認定し、雇止めには、正社員に対する解雇権濫用法理(客観的合理性と社会通念上の相当性が必要)が類推適用されるとしました。そして、前記①のとおり、高度の人員削減の必要性があったとまではいえない、人員削減回避の措置を尽くしていない、人選の合理性もない、手続の妥当性も欠いている。よって、客観的合理性も社会通念上の相当性もないから雇止めは無効としました。

 リーマンショック以降、「生産計画に変動のない限りの期待権」(いすゞ事件東京地裁判決)「受注量減がない限りでの期待権」(日産事件横浜地裁判決)など有期労働契約の『雇用継続への合理的期待』を極限まで限定し、生産計画の変動があった、受注量減少があったことのみで、雇い止めの必要性を認める判決が相次いでいました。これでは、有期労働契約の雇い止めに正社員に対する解雇権濫用法理を類推適用し、不当な雇い止めから有期従業員を保護しようとした趣旨は全く失われてしまいます。今回の地裁判決は、この不当な判決の流れを変える画期的意義があるものなのです。

③ 資生堂との地位確認を否認
 他方、判決は、形式的な理由(契約書上の雇用主はアンフィニだ等)だけで黙示の合意を否認し、原告らが求めてきた資生堂との間の労働契約上の地位は、認めませんでした。

 前述の通り、資生堂は、所属会社、契約形式を転々とさせながら、一貫して、同社の基幹的恒常的業務(常用労働者が担うべきもの)である口紅製造を自らの指揮命令下で原告らに担わせてきました。そればかりか、アンフィニ参入時には、誰を、どの会社に移籍させるか(化粧水ラインの者はワールドへ、口紅ラインの者はアンフィニへ全員移籍)、賃金・地位などの労働条件全て(全部本人申告により従来通り)を資生堂が決定したことが明らかです。偽装請負から偽装派遣そして再び偽装請負へ、まさに、資生堂が労働者派遣法の根幹である常用代替防止原則(基幹的恒常的業務を常用労働者=正社員ではなく派遣労働者に担わせてはいけない)を組織的・大規模に脱法しようとしたものです。資生堂との黙示の労働契約が認定されるべき事案なのです。地裁判決は不当です。

④ 未払賃金を半額に減額
 また、本判決は、アンフィニとの労働契約上の地位を認めながら、バックペイ及び判決確定までの賃金支払いを平均賃金の半分しか認めませんでした。原告らは時給労働者だから労働時間で賃金は決まる、資生堂からの受注量は解雇・雇い止め後2分の1程になった、よって、解雇・雇い止めされずに原告らが働いていても受け取れた賃金は平均賃金の2分の1だというのです。未だかつてなかった異様かつ不当な認定です。実際には、資生堂は、解雇・雇い止め後数ヶ月以内に、発注量を増やそうとしたが、人員不足を理由にアンフィニが受けなかったというのです。50数人のラインで24人も解雇・雇い止めにしたので受注量が減り続けたのです。しかも、原告らは、契約書上、労働時間も決められており、本判決がいうようにアンフィニが真に独立した請負会社であるならば、原告らの労働時間ないし賃金を確保すべきは当然です。賃金減額は、絶対に認められません。

⑤ 闘いは控訴審へ
 原告達7人は、7月24日、上述①はもちろん、上述②の判例の流れを絶対に維持し、③、④を逆転勝利するため、控訴しました。闘いは、東京高裁へと移ります。「女性に優しい企業」「コンプライアンスNo.1」を表看板とする「万年超黒字企業」資生堂が、更なる利益を求める目的のためだけに、原告達女性労働者を物扱いし続けていることを断罪しなければなりません。常用代替防止原則を脱法する組織的脱法行為を許さず、「誰もが正社員 になれる」社会へ前進する闘いです。皆さんのご支援をお願いします。

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7月10日に、資生堂・アンフィニ裁判の判決がでました ! ! /中瀬 奈都子 2014.7

2016年8月17日 水曜日

7月10日、
資生堂・アンフィニ裁判の判決がでました ! !

「一部勝訴」を勝ち取りました。
(アンフィニの社員としての地位を認めるものです)

資生堂・アンフィニ事件地裁判決のご報告
~解雇・雇止めを無効とする判決がでました!!

1 はじめに
 今年7月10日、横浜地裁第七民事部(阿部正幸裁判長)は、資生堂鎌倉工場で口紅製造に従事してきた女性労働者七名に対する解雇・雇止めは、無効であるとし、現在も請負元会社であるアンフィニの社員たる地位があることを認め、未払い賃金と今後の賃金支払いを命じる判決を言い渡しました。一方で、同判決は、原告らと資生堂との間に労働契約があることを認めませんでした。

2 資生堂・アンフィニ事件とは
 原告らは、長い人では9年もの間、資生堂鎌倉工場口紅製造ラインで働いてきました。
 その間、所属会社と契約形式は、
 リライアンス(請負)→コラボレート(請負)→アンフィニ(派遣)→アンフィニ(請負)
 と替えられてきました。
 もっとも、原告らは、その間一貫して、資生堂の正社員と渾然一体として働き、資生堂の正社員から直接指揮命令を受け続けてきました。
 2009年4月、資生堂が発注量約四割減の減産通告を行った直後、アンフィニは、原告らとの労働契約の期間を、同年末から5月末日に書き換え、5月17日には原告のうち五名を含む22名を期間満了前に整理解雇、5月末に原告のうち2名に対し、雇止めを行いました。
 この解雇・雇止めは無効であるとして、資生堂と直接雇用関係にあること、仮にそれが認められない場合、アンフィニと労働契約があることの確認と、未払い賃金の支払いなどを求めて、2010年6月に提訴したのが、本事件です。

3 解雇は無効
 まず、本判決は、原告ら5名に対する整理解雇について、無効としました。
 そもそも、原告ら5名に対する解雇は、契約期間中のものですから、「やむをえない事由」(労働契約法17条1項)がなければできないものです。
 本判決は、「早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破たんしかねないような危機的な状況であったということはできず、(中略)人員削減の必要性の程度が高度であったとまではいえない」とし、また、原告らに十分な説明のないまま契約期間短縮の合意をさせているなど解雇回避努力義務を尽くしたとは言えず、手続きの妥当性も欠くとして、「やむを得ない事由」は認められないから、解雇は無効であるとしました。

4 雇止めも無効
 次に、雇止めについて、原告らとアンフィニとの有期労働契約は、アンフィニが参入する前後を通じて、更新されつづけていることなどから、「雇用継続への合理的期待を有していた」とし、解雇権濫用法理を類推適用するとしました。その上で、高度の人員削減の必要性があったとまでは言えないなど、上記解雇を無効と判断したのと同様の理由から、雇止めも無効であるとしました。
 リーマンショック以降、いすゞ事件東京地裁判決や日産事件横浜地裁判決など、有期労働契約の「雇用継続への合理的期待」を限定し、生産計画 の変動や、受注量減少があったことのみをもって、雇止めの必要性を認める判決が相次いでいましたが、本判決は、これらの不当な判決の流れを変が相次いでいましたが、本地裁判決は、これらの不当な判決の流れを変える画期的な意義があると考えています。

5 資生堂との地位確認を認めず
 他方で、本判決は、契約書上雇用主となっているのはアンフィニであることや、解雇・雇止めの後、原告らが労働組合をとおして団体交渉を求めたのはアンフィニであることなどといった形式的な理由だけで、資生堂との間の黙示の労働契約の成立を認めず、資生堂との雇用関係を認めませんでした。
 前述したとおり、資生堂は、所属会社・契約形式を転々とさせながら、一貫して、正社員が担うべき基幹的恒常的業務である口紅製造を、自らの指揮命令下で原告らに担わせてきました。
 弁護団は、証人尋問等で、資生堂が作成した「生産日程表」や「標準書」によってベルトの速度、細かい作業手順や時間などを決められ、それに則って口紅製造を行っていたことや、原告らが新製品製造のテストに参加していたこと、資生堂から技術指導を受けていたことなどを立証しました。しかし、判決では、これらの事実を認定しながら、「これらは、生産量及び品質管理等の確保の観点から必要な措置である」から、「労働契約関係があるのと同視することできるような指揮命令をしていたとみることはできない」としたのです。
 資生堂は、このような直接の指揮命令を行っていただけでなく、アンフィニが参入する際には、誰をどの会社に移籍させるかや、賃金などの労働条件などをすべて決定していました。偽装請負から偽装派遣、再び偽装請負へと、資生堂が労働者派遣法の根幹たる常用代替防止原則を組織的に脱法してきたのは明らかですから、原告らと資生堂との間に黙示の労働契約が認定されるべきです。

6 未払い賃金を半額に減額
 さらに、本判決は、バックペイおよび判決確定までの賃金支払いを平均賃金の半分しか認めませんでした。原告らは、時給労働者だから労働時間で賃金が決まる、解雇・雇止め後、受注量が二分の一程度になり、それに伴い、工数も減少しているから、解雇・雇止めされずに働いていても受け取れた賃金は二分の一だ、としているのです。
 契約書上、労働時間が決められており、アンフィニが真に独立した請負会社であるならば、原告らの賃金を確保すべきことは当然です。このような判断は、いまだかつてない異様なものであって、到底許されるべきものではありません。

7 「一瞬も 一生も 美しく」
 原告らは、日本を代表する化粧品メーカーである資生堂で、しかも、主力商品である口紅の製造に従事することに「誇り」を持って働き、高い技術を提供してきました。
 しかし、資生堂は、原告ら女性労働者を切り捨て、そればかりか、2013年1月、鎌倉工場を、「企業の構造改革」のため、2015年に閉鎖すると発表しました。鎌倉工場で働く約700名の労働者(多くは女性)を失業に追い込もうとしているのです。
 資生堂は、「社会と、お客さまと、そしてすべての人が『一瞬も 一生も 美しく』あるように」と、宣言しています。しかしながら、その実態を見れば、「儲けるためには、労働者も地域経済も犠牲になって構わない」という経営姿勢であることは、明らかです。
 現在、全労働者の約4割を派遣労働者、請負労働者などの非正規労働者が占め、そのうち約7割を女性が占めています。神奈川では、女性労働者の約57%が非正規労働者として働いています。この裁判闘争は、女性労働者が、人間としての尊厳や働く誇りを取り戻し、そして、女性労働者を物扱いし、安易に切り捨てる大企業の経営姿勢を断罪し、雇用責任を果たさせる闘いです。
 闘いの場は、東京高裁へうつりますが、引き続きみなさんのご支援をお願い申し上げます。

【弁護団メンバー】
 藤田温久、川口彩子、石井眞紀子、小野通子、中瀬奈都子 ほか

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原発ゼロ市民共同かわさき発電所の活動が、再度新聞に掲載されました /川岸 卓哉 2014.6

2016年8月17日 水曜日

原発ゼロ市民共同かわさき発電所の活動が、
再度新聞に掲載されました。

朝日新聞
2014年 6月17日付
第2神奈川面、【3・11から未来へ】

また、
朝日新聞 インターネット版は、
こちら>>>

NPO法人 原発ゼロ市民共同かわさき発電所のサイトは、
こちら>>>

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元内閣法制局長官 阪田雅裕氏と弁護士 岩村智文氏との対談を踏まえて ~解釈改憲による集団的自衛権の行使の容認を認めない~/山口 毅大 2014.6

2016年8月17日 水曜日

第1 緊急学習会の開催~阪田氏と岩村氏の対談~

1 緊急学習会の概要
  2014年5月15日,川崎市中原区で,「秘密保護法の廃止を目指す川崎市民の会」主催で,解釈改憲による集団的自衛権の行使に関する緊急学習会を行いました。この「秘密保護法の廃止を目指す川崎市民の会」には,当事務所の三嶋健弁護士や川岸卓哉弁護士も参加しております。
  緊急学習会では,元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と当事務所の弁護士で日弁連秘密保護法対策本部副部長の岩村智文弁護士が解釈改憲による集団的自衛権の行使をテーマに対談しました。この学習会に,200名を超す市民が参加しました。

2 三嶋健弁護士による主催者あいさつ
  主催者あいさつとして,当事務所の三嶋健弁護士が「集団的自衛権の行使容認を解釈改憲で認めることは憲法体制の否定であって,決して許されるものではありません。そのことについて,本日,元内閣法制局長官の阪田雅裕氏と日弁連秘密保護法対策本部副部長の岩村智文弁護士の対談があります。ぜひこの機会にこの問題を考えていき,ともに反対していきましょう」と呼びかけました。

3 阪田氏の講演
  阪田氏の講演では,①立法過程の概要,②内閣法制局と憲法,③政府の憲法9条解釈についての説明がありました。
  特に,現在の政府の憲法9条解釈について,正当な法的理論がないこと,9条の空文化・規範性の喪失,国会での議論の積み重ねを経ていないこと,正規の改正手続きの存在を無視するものであることから,解釈変更は許されないと述べました。

4 阪田氏と岩村氏との対談
  対談では,阪田氏は,解釈改憲による「集団的自衛権」の行使容認は,憲法9条を無視するに等しいものであり,立憲主義と法の支配の否定であると述べました。
  岩村氏は,阪田氏に対し,「安保法制懇は,憲法解釈が戦後一貫してきたわけではないと主張していますが,どう見ていますか」と問いかけました。これに対して,阪田氏は,「憲法9条に関しては,戦力を持たず,交戦権を認めないという解釈は戦後の吉田内閣から一貫して全く変わっていない」と述べ,安保法制懇の欺瞞を鋭く指摘しました。
  さらに,阪田氏は,「集団的自衛権」は,他国に対する武力攻撃に対して,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力を行使するものであるところ,憲法9条2項は,他国に攻撃をしかける交戦権を認めておらず,どう解釈しても,合憲とはいえないと述べました。その上で,阪田氏は,「法的理論で説明できない解釈をするなら,法治国家,立憲主義の看板をおろしたほうがいい」と述べ,解釈改憲が立憲主義を破壊すると指摘しました。
  最後に,岩村氏が,「今日の学習会を,集団的自衛権について私達国民が議論し,安倍政権の狙いを打ち破る出発点にしたい」と強いメッセージを述べたところ,阪田氏は,「今,国民みんなの踏ん張りどころです。問題点を周りに訴えて欲しい」とこれに応え,学習会に参加した市民に訴えかけました。

第2 情勢を正しく認識し,解釈改憲を阻止する運動へ

1 正当な憲法の解釈と立法事実の歪曲
  正当な憲法の解釈とは,論理的に首尾一貫していること,誤った事実認識に基づくものでないこと,正当とされる過去の法令や判例を適切に説明しうると同時に,今後起こりうる同種の事件をも適切に解決しうる解釈であること,その時々の社会の多数派の解釈に従うべきことを意味するものではなく,多くの人の納得を得られるような解釈であることが求められます。上記対談でのやりとりからもわかるとおり,安保法制懇は,このような憲法の解釈のイロハを全く理解していないのです。
  特定秘密保護法の成立後,安倍政権はタカ派的色彩を濃くしており,従前の「専守防衛」の理念を放擲し,「積極的平和主義」という欺瞞に満ちたレッテルの下に,中国の軍事的台頭や北朝鮮等の周辺国に対抗するという歪曲された立法事実の下,集団的自衛権の行使を解釈改憲で実現しようとしています。
  ナチスの高官であったヘルマン・ゲーリングは,ニュルンベルク裁判の最中,ギルバート心理分析官に対し,以下のように述べています。
「もちろん,普通の人間は戦争を望まない。(中略)しかし最終的には,政策を決めるのは国の指導者であって,民主主義であれファシスト独裁であれ議会であれ共産主義独裁であれ,国民を戦争に参加させるのは,つねに簡単なことだ。(中略)とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い,平和主義者を愛国心に欠けていると非難し,国を危険にさらしていると主張する以外には,何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ。」

2 メッセージ
  私たちは,今の情勢を正しく認識した上で,集団的自衛権に係る 解釈改憲を絶対に阻止することを目指す必要があります。
  そのために,みなさま,そして,みなさまの身近な方に対して,集団的自衛権の行使を認める解釈改憲が立憲主義に反するもので,私たちの権利を脅かすものであることを伝えてください。
  当事務所の弁護士は,憲法学習会の講演依頼を積極的に引き受けておりますので,お気軽にご依頼ください。

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原発ゼロ市民共同かわさき発電所の活動が、新聞に掲載されました /川岸 卓哉 2014.6

2016年8月17日 水曜日

原発ゼロ市民共同かわさき発電所の活動が、
新聞に掲載されました。

神奈川新聞
2014年 5月18日付
社会面

また、
神奈川新聞 インターネット版
の記事は、こちら>>>

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原発ゼロ市民共同かわさき発電所の取り組み/川岸 卓哉 2014.4

2016年8月17日 水曜日

1 原発ゼロ市民共同かわさき発電所設立に向けた取り組み
太陽光発電所イメージイラスト  昨年の2013年夏から、「原発ゼロへのカウントダウン in かわさき」実行委員会の有志で、「原発ゼロ市民共同かわさき発電所」という団体を立ち上げ、脱原発の両輪としての再生可能エネルギー普及へ向けた取り組みを始めています。その取組の紹介と、意義について紹介します。
  原発ゼロ市民共同かわさき発電所では、これまで、川崎市内での再生可能エネルギー普及運動の方向性を探るため、学習会を重ねてきました。まず、地球温暖化抑制を目的として3.11前から公共施設にソーラーパネルなどを設置するなど、川崎市内で先駆的に再生可能エネルギーの普及を進めている団体からお話を伺い、市内の団体との活動交流を行うことからはじめました。また、行政との関係では、脱原発を掲げて当選した保坂展人世田谷区長をお招きして、川崎のお隣世田谷区で、行政が中心になって行う再エネ普及へ向けた取り組みを学びました。太陽光発電パネル組み立てワークショップも開催、簡易ソーラーパネルの組み立てを小さな子供たちとも体験し、太陽光発電の基礎についても楽しく学びました。さらに、より実践的な先進事例のケーススタディの検討に入り、世田谷市民エネルギー合同会社などから、川崎市と同じ都市型の世田谷区で、市民が自力で、教会の屋根を利用して太陽光発電所を作った際のノウハウや、苦労話を伺うなどしました。
  これらの学習会の中で、参加者メンバーは、再生可能エネルギーの普及に対し日和見態度の川崎市を動かすには、まず、市民が主体となって市民共同発電所を設立し、市民が先導していく必要があるとの認識に達しました。そして、メンバーで、「原発ゼロ市民共同かわさき発電所」の実現へ向けて作戦会議を重ねて、3月30日にキックオフ集会を行いました。キックオフ集会では、技術者などもメンバーに加わり、新築戸建や、複数マンションを所持している方からも協力申し出もあって、市民共同発電所が現実的なものとなりました。団体としては、年内に市民共同発電所第1号の稼働開始を目標にして準備をすすめるとともに、建築関係、経営関係などの技術者、専門家へのメンバーの拡大を進めています。

2 脱原発の両輪としての再生可能エネルギー普及運動
  これらの取り組みは、原発ゼロへのカウントダウン in かわさき実行委員会の参加者が、反原発アクションの風化,マンネリ化により、毎年3月に行っている集会の参加者数が、減少傾向にあったため、実行委員会メンバーの新しいアプローチでの反原発運動の工夫が必要となると考えたことから始まったものです。
  再生可能エネルギーの普及は、すなわち、原発依存度を低下させることになるため,原発立地でない川崎地域からも、市民一人ひとりが実現できる脱原発の方法といえます。また、原発の危険性は,福島原発事故を経験した国民にとって周知の事実ですが、それでも原発推進勢力の延命を国民が止められないのは,世論が原発の(目先に過ぎませんが)エネルギー政策としての経済性を容認していることにあります。そこで、反原発アクションとしても、この経済性の議論についても正面から対峙する必要があると考えました。
  再生可能エネルギーの推進は,脱原発を掲げられなくても、潜在的に脱原発を願っている幅広い国民から共感を得られるもので、脱原発の国民世論はさらに広がる可能性がある。さらに、再生可能エネルギーの推進は、各地域,各自治体で,創意工夫がされながら進められている全国的な動きとになっています。再生可能エネルギーの普及運動は、原発に反対するにとどまらない、脱原発が客観的に十分可能であることを作り出す創造的な活動として、反原発アクションの活性化の契機ともなり得ます。

3 再生可能エネルギー革命へ
  地域で再生可能エネルギーについて取り組む意義は、脱原発の両輪ということだけにとどまりません。再生可能エネルギーは本質的に地域分散型が可能であり、地域でエネルギーを自給できるようになれば、地域に雇用が生まれ、地域にお金が流れるようになり、地域経済の活性化にもつながります。また、地域住民が主体となることによって、環境意識を高めこともできます。その意味で、地域での再生可能エネルギーの活用は、環境面での目的達成にとどまらず、地域の経済と社会をよりよい方向に変革し、環境面、経済面、社会面での持続可能な社会を実現することも可能にするものです。
  再生可能エネルギー普及活動に取り組む意義は、単に発電量を増やすことだけではなく、地域で生み出されるエネルギーについて、時間をかけてお互いの想いを共有していくプロセスの中で、地域の絆を強めるという、地域でのコミュニケーションが重要となっていきます。
  さらに、この再生可能エネルギー普及活動は、エネルギー政策における主導権を自治体・市民へと移すものでなければなりません。
  そのためには、再生可能エネルギーの大型化(メガソーラーなど)ではなく小規模分散型に、「上」から進める大型路線ではなく、「下」から進める地元密着路線である必要があります。また、大規模な資本投入による再生可能エネルギーの拡大ではなく市民・自治体が主役の小規模施設であるべきだと考えられます。
  究極的には、「電力は絶対必要なのだから」と、誰かの命、健康を犠牲にしなければ成り立たないような文化生活であるならば、その文化生活こそ問い直さなければなりません。さもなくば、日本中をソーラーパネルで埋め尽くしても、電力が足りないと言い続ける人は必ず出てきます。再生可能エネルギーが日本で広まってこなかったのは、電力会社、経済界の利権構造、非合理で国益よりも省益を優先する官僚機構、行政や補助金に依存した人々の意識にあります。
  小規模分散型の再生可能エネルギーへのシフトを通じて、脱原発を、さらには、人々が自分のことを自分で決める本当の民主主義を手に入れるため、川崎地域での脱原発を旗印とした市民共同発電所を求めるアクションを発展させていきたいと考えています。ご支援、ご協力をお願いいたします。

[フェイスブックページ] https://www.facebook.com/genpatuzero.hatuden

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3.16「原発ゼロへのカウントダウン in かわさき」集会に ご参加ください!/川岸 卓哉 2014.3

2016年8月17日 水曜日

原発推進勢力の反撃と岐路に立つ脱原発アクション
原発ゼロへのカウントダウン in かわさきチラシ 福島第一原子力発電所事故から、3年が経過しようとしています。
 この間の原発を巡る情勢を概観すると、事故後、日本の全ての原子力発電所が停止し、脱原発の声は国民の過半数を超え、毎週金曜日の官邸前行動に人々は集い、政府を脱原発政策に宣言させました。しかし、大飯原発は再稼働、その後、原子力規制員会及び新規制基準と言う名の新たな安全神話創出制度が作られ、再稼働のレールが引かれました。政府は、エネルギーのベストミックスという使い古されたスローガンの名の下に、原子力は「重要なベースロード電力」と位置づけ、一度は息の根を止めたかに思えた原発推進政策は、再び、息を吹き返そうとしています。のみならず、政府と原発メーカーは結託して、あくなき利潤追求のために、世界中に原発を売りさばこうと必死です。
 これに対し、市民の抵抗は弱体化しています。時の経過とともに原発問題は風化・マンネリ化し勢いを失い、官邸前や集会に集う人は減少傾向にあります。
 福島原発事故から3年目。
 脱原発を求めるアクションは、原発推進勢力を突き崩す有効な闘いが展開できず疲弊し、続々と再稼働をされてく原発を前になすすべなく立ちすく1年になるか、岐路に立っています。

3.16「原発ゼロへのカウントダウン in かわさき」集会
 2014年3月16日(日)、事故後3回目となる原発ゼロへのカウントダウン in かわさき」集会を行います。以上のような情勢に置いて、川崎で大規模集会を成功させ、脱原発を求める声がまだまだ風化しておらず、大きいことを示すことは、歴史的意義があります。
 集会には、メインゲストとして、高桑千恵さん(東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に反対する運動)島昭宏さん(原発メーカー訴訟・弁護士)、上原公子さん(脱原発をめざす首長会議事務局長・元国立市長)村田弘さん(福島原発かながわ訴訟原告団)の4名をお招きしお話しを伺い、原発立地、地方自治体、福島現地、そして国際的な原発を巡る闘いの今があらゆる角度からわかる集会となっています。さらに、日本国内のみならず台湾で反原発活動をしている方もゲスト参加されます。リレートークでは、10組の川崎地域でのさまざまな活動をしている方々から、地域での多様な取り組みを紹介します。集会だけでなく、30のブース出店もあり、展示の他、食べ物の出店や小さな子ども楽しめる活動もしており、お祭りとしても楽しめます。詳細は、チラシデータをご覧下さい。
 是非、多くのかたにご参集お願いいたします。

[フェイスブックページ] https://www.facebook.com/genpatsuzero
[ホームページ] http://www.genpatsu-zero.com/index.html

会場:中原平和公園(川崎市中原区)(最寄り駅・東急東横線・元住吉駅)

タイムテーブル
10:30 集会開始 ひろばOPEN
12:00 文化行事
13:00 メイン集会
14:30 デモ行進

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

特定秘密保護法の成立にあたって/岩村 智文 2014.3

2016年8月17日 水曜日

 「何が秘密か、国民や政治家に知られないまま、官僚が秘密をどんどん増やせる、大きな欠陥を抱えた特定秘密保護法案」(朝日新聞)が強行採決された。世論調査にみられるとおり、国民の多数が反対しているにもかかわらず、政府与党は、数を頼みに法案の成立に猛進した。議事録速報を見ても法案が参院特別委員会で成立したと認めらる記載がない、といった手続的にも疑問の多い国会審議であった。

 法の問題性は、成立直後に現れた。石破発言である。法案審議段階で、国会前での拡声器を使った反対運動をテロ呼ばわりしたことでも時の人となったが、成立後の発言は、法によって知る権利が危うくなったことを如実に示すものとなった。石破茂自民党幹事長は、日本記者クラブなどで「報道することによってわが国の安全が危機に瀕することがあれば、何らかの方法で抑制されることになるだろう」「国の安全に大きな影響があると分かっているのに、報道の自由として報道する。処罰の対象とならない。でも大勢の人が死にました、となればどうなるか」と述べたという。前者の発言は後に訂正したというが、後者はその訂正後の発言である。結局、石破幹事長は、秘密を報道の自由の名の下に報道してはならない、自粛すべし、と報道機関に求めているのである。石破発言は、法が、知る権利に奉仕する報道機関の役割を否定するものであることを示す何よりもの証左となったいえよう。また、石破幹事長は、記者から「かつてニューヨークタイムズが秘密文書ペンタゴンペーパーズを暴露したが、こうした報道も罰せられるのか」と問われ、「最終的には司法の判断だ。内容によるのではないか」と答えたという。報道機関が「秘密」を暴いて報道したとき、それは捜査の対象になり、逮捕、捜索・差押え等が行われることを示唆した、といえよう。「秘密」への接近、取得、暴露等の行為があったときにもっとも重視すべきは、警察による逮捕、捜索・差押え等がなされてしまうことである。後に訴訟において無罪になったとしても、捜査段階で受けた痛手は取り返せるものではないからである。ここからも法の危険性がその裂け目から見えてくる。

 冒頭で触れたとおり、何が秘密かも秘密であり、秘密は増殖する。ここに好個の例がある。かつて那覇市長が自衛隊那覇基地内のASWOC(対潜水艦戦作戦センター)建築図面を市民の求めに応じて公開しようとしたことに対し、国が差し止めと公開処分禁止を求めて裁判となった。私も那覇市長の弁護団の一員となったのだが、那覇地裁は、那覇市長勝訴の判決の中で同建物の秘密性を認めなかった。この建物は、現在、沖縄都市モノレールからも見ることができ、自衛隊第5航空群のホームページでも写真が掲載されている。ところがである。沖縄タイムズ(11月21日付)によれば、同紙がこの建物の撮影を自衛隊に申し入れたところ、「場所を知らせることで第三者にねらわれる可能性がある」との理由で、拒否された、という。第三者に知られないようにとの理由では、秘密は際限なく広がってしまう。基地、ロケット発射地、原発の所在場所、護衛艦等の入出港、等々少し考えただけでもそれは果てしなく広がっていく。とにもかくにも、裁判所が秘密でないと言おうが、モノレールから見えようが、ホームページに掲載されていようが「秘密」は「秘密」なのだ。こうした異様な例は、かつての日本では普通だった。

 1987年4月発行の横浜弁護士会編『資料 国家秘密法』(花伝社)には、戦前の日本の秘密保護法制の適用実態の具体的事例が数多く紹介されている。「広島へ帰る船中で呉軍港内の軍艦を指して、その性能、構造を他の乗客に説明」「三菱重工の従業員が自宅で兄に、爆撃機の発動機が双発であると話した」「土地分譲宣伝のため、印刷物に海軍電気通信所の全景を掲載」「宇佐航空隊格納庫と滑走路の一部を撮影」等々が軍機保護法違反とされた。沖縄タイムスに対する自衛隊の対応を見ると、こうした事例がたんなる戦前の話として聞き流すわけにはいかなくなる。

 特定秘密保護法は、知る権利、報道の自由への侵害法としてだけでなく、日本の安全保障政策に深く関わっている。

 自民党が策定した「防衛を取り戻す 新『防衛計画の大綱策定に係る提言』」(2013年6月4日)は、基本的安全保障政策として次のとおり今後の施策を提起している。
①憲法改正と『国防軍』の設置
②集団的自衛権の容認、国家安全保障基本法の制定
③国家安全保障会議(日本版NSC)の設立
④情報の官邸一元化、「秘密保護法」の制定
⑤国防の基本方針の見直し
⑥防衛省改革

 上記のとおり、特定秘密保護法は、日本のこれからの安全保障政策の一環として位置づけられ、集団的自衛権容認、国防軍設置、憲法改正へ連なり、展開していくものなのである。日本版NSC、特定秘密保護法は成立した。上記のうちの③④が今国会ですでに実現した、ということだ。それに加え、安倍政権は12月11日「新防衛大綱」の基本理念を「統合機動防衛力」とするとともに、武器3原則を見直し、国家安全保障戦略に愛国心を盛り込むとし、12日には今後5年間の防衛費を24兆7000億円へ増額することを決定した。こうして⑤⑥も着実に実施されつつある。残るは①②ということになるが、集団的自衛権については、内閣法制局長官人事、政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」での議論に見られるとおり、憲法9条の解釈変更での実現がねらわれ、国家安全保障法の制定も近いといえよう。これは法による改憲だ。

 「秘密の次は共謀か」と朝日新聞、「内閣支持率の急落もなんのその、安倍晋三首相が『警察国家』『戦争できる国』に向けて一気にアクセルを踏み込んだ」と東京新聞は報じた。「捜査機関による濫用の恐れ」「市民団体等の活動が処罰対象になりかねない」と危惧されているが、特定秘密取得罪等への共謀の罪がより一般化して、事前の話し合いだけで処罰される法ができたなら、それは言論抑圧・社会統制法の役割を果たすことになろう。

 いまや、日本は、憲法秩序と異なる統治システムに変わる分岐点にさしかかっている(同旨青井未帆学習院大教授)。日本国憲法そのものの存在が問われている時代だ。澎湃としてわき起こった秘密保護法反対運動を力に、日本国憲法そのものの存在を守る運動が期待される。

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「ブラック企業と若者の自殺」シンポジウムのご報告/小野 通子 2014.3

2016年8月17日 水曜日

 私が所属している横浜弁護士会の貧困問題対策本部と消費者問題対策委員会とが2011年に共同で立ち上げた自殺問題対策プロジェクトチームは、今年も、神奈川県地域自殺対策緊急強化交付金事業から補助金を受けて自殺対策の取り組みを行なっております。

 昨年は、「就活自殺」をテーマに、相談会、シンポジウムを開催し、多くの市民の方にご参加いただきましたが、今年は、同じ若者の自殺の問題の中でも、正社員として就職できたにもかかわらず自殺に追い込まれてしまう「ブラック企業と若者の自殺」の問題について、2月22日に横浜弁護士会館を会場としてシンポジウムを行いました。

 シンポジウムは、若者からの労働相談を毎年数百件受けているNPO法人POSSEの代表である今野晴貴さんと、当会会員でブラック企業被害対策弁護団でも活躍されている嶋崎量弁護士、ブラック企業に対して現在訴訟準備中の当事者の方をお招きして開催しました。

 シンポジウムでは、現在、急激な成長を遂げるIT、外食、介護、小売といった業界で「ブラック企業」が急激に成長・増加していること、そこに定義さえ不明確な「正社員」という謳い文句に惹かれて急激に若者が取り込まれていっていること、若者の嗜好の変化という問題とブラック企業の問題が混乱して捉えられていることの危険性などが指摘され、被害者の救済の具体的事例のご紹介などもありました。来場された市民の方からは、「ブラック企業の実態のすごさに驚いた」「知人や家族などに話してあげるつもりです」「再度開催を希望します」といったご意見を多数いただきました。

 14年連続で3万人を超えた自殺者数が、近年2年連続で3万人を切ったというニュースはとても喜ばしいですが、20~39歳の各年代の死因の第1位は自殺であるという現状は未だ変わってはいません。シンポジウムの開催は、ブラック企業で使い捨てにされ苦しむ若者を一人でも多く助けたいという決意を新たにする機会となりました。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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