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口約束は裁判で通用するか -契約のはなし、あれこれ-(弁護士 三嶋健)

2026年8月25日 火曜日

三嶋健弁護士については、こちらをご覧下さい。 

1 社会は契約で成り立っている

社会には、契約が溢れています。契約無しには、私達の生活は成り立ちません。遠方に行くのに電車を利用しますが、電車に乗れるのは、鉄道会社と運送契約をしているからです。仕事をして報酬をもらいますが、それは相手と請負契約をしているからです。私が稼いだ報酬の大半を妻がとりあげますが、それは婚姻契約の結果です。
市民社会は、契約で成り立っているといえます。

2 口約束と契約の成立、契約書

契約は、申込をして承諾があれば成立します。たとえ、口先だけの約束でも、契約は成立します。相手が約束を守らなければ、裁判を起こし、国の力で、約束の実行を強制することも可能となります。
しかし、重要な契約には、契約書の作成が奨励されています。契約は口先の約束だけで成立しますが、契約書を作っておかないと、何を約束したかもはっきりせず、時を経れば、内容はさらに曖昧になり、終には約束したかどうかすら、わからなくなります。
「口約束はあてにならない」と言いますが、今言った事情があるからです。

3 それでも、世間は口約束が圧倒的

契約書の重要性は今述べた通りですが、世間に存在する契約の数からすれば、口約束が圧倒的多数です。スーパーで惣菜を買えば、売買契約が成立しますが、契約書は作成しません。代金と引き換えに惣菜を受け取れば取引は終了し、契約は目的を達成して用済みとなり、契約書を残す必要など無いからです。
デートの約束も、その履行は、当事者間の信頼関係が担保するので、契約書の作成など思いもよりません。デートをする間柄だと、金の貸し借りすら、相手を信頼して契約書を作成しない場合が多いでしょう。

4 口約束から10年以上、口約束を裁判で問えるか

契約書が証拠として威力を発揮するのは、時の経過が人の記憶を奪い、当事者の関係も含めて、契約時と、事情ががらりと変わってしまったときです。
それでは、口約束の後、10年以上の月日が流れ、約束した相手すら死んでしまった場合、「契約書なしの口約束は、裁判で通用しないか」といえば、そうでもありません。
契約書のない約束の存在を裁判で争ったことがありますので、その紹介をします。

(1) 亡き父との口約束
依頼者は、その夫が建物を新築するときに、父の所有地を敷地として利用しました。父が、娘への愛情から、ぜひ使って欲しいと頼んだからです。無料使用は、甘えすぎなので、賃料を支払いましたが、賃貸借契約書は作りませんでした。
その父が死亡して、妹と依頼者が相続したところ、事情を知らない妹は、賃貸借を否定し、長く土地を無償使用した以上、土地を明渡すか、底地を高額で買い取れと主張し、裁判をしてきました。土地の賃借は重大な財産の処分なので、親子でも契約書を作るはずだから、契約書がないこと自体、無償で借りた証拠だとも主張しました。

(2) 送金の記録
依頼を受けた私は、父への送金を記録した通帳を探し出してもらい、証拠として提出しました。そして、契約書こそないが、家を建てた時期から、送金が始まっているので、送金が敷地の利用料の支払であることは間違いなく、賃貸借契約が成立しているのは明らかだと主張したのです。
この主張に対して、妹は、送金は両親の生活費の援助だと反論しました。長女が賃料を払ったのは、これまで育ててもらった恩返しの気持ちもあったので、その反論も、全くのデタラメではなく、事実の一面を反映しています。
しかし、①父は裕福で娘の仕送りを宛てにする必要はなかったし、②送金した金額は、親孝行の趣旨にしては多額だったので、賃料の支払であることは明らかでした。私は勝訴を確信しました。

(3) まさかの敗訴
結果は、まさかの敗訴でした。
依頼者の夫が長期の海外出張をし、依頼者も含めて家族全員が海外で生活をした時期がありました。裁判官はそこに着目したのです。
海外滞在中、一家は家を利用していない。それにもかかわらず、その間も送金をしている。利用に関係なく送金している以上、その送金は利用の対価である賃料の支払ではなく、生活費の仕送りだとしたのです。

(4) 猿も木から落ちる
私は、敗訴の結論を聞いて驚き、次いで、敗訴の理由を読み、愕然としました。
確かに、海外出張の間、家を利用していないのは事実です。しかし問題になっているのは、借地契約であり、借家契約ではありません。海外滞在中も家は父の土地上にある以上、賃料の支払義務を免れません。
海外滞在中も送金しているから、その送金は賃料ではなく、生活費だというのは、とんでもない間違いです。
私は控訴し、一審判決は取り消されました。優秀な裁判官も時には間違う、猿も木から落ちると言う希少な事態を目の当たりにした経験でした。

5 現実問題は一筋縄ではいかない

信頼しあう人同士でも、人の心は変わるので、契約書を作っておくのが無難です。しかし、信頼で結ばれた人間関係で、後日の裏切りを想定した契約書を作るのが難しいともいえます。他方、契約書が勝訴に不可欠かといえば、そうでもありません。
現実問題の解決は、一筋縄ではいかないということです。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

離婚で問題となる財産分与のこと(弁護士 小野通子)

2026年8月20日 木曜日

小野通子弁護士については、こちらをご覧下さい。 

離婚に関するお金の相談で尋ねられることが多いのは、相手方が不貞を行ったから、相手方からこんなモラハラをされたから、いくら慰謝料をもらえますか、ということです。
もちろん、慰謝料も大切ですが、慰謝料よりも財産分与の方が大きい額になることが多く、
離婚後の生活設計のためにも、財産分与についてもっとお話しさせて頂きたいな、と思うことが多いです。
そこで今回は、財産分与について、これまでお受けした事案などで問題となったこと等を書いてみます。

1 財産分与とは

そもそも財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に取得した財産を衡平に分けることです。
婚姻期間中に取得した財産は、夫婦の協力があったからこそ取得できたとの考え方の下、夫婦どちらの収入が多かった等の事情とは無関係に2分の1ずつ分割するのが通常です。
従って、どちらの名義にしてあるかは問題にならず、婚姻期間中に取得した財産を夫婦双方が衡平に得られるよう、多い方から、少ない方へと財産を引き渡すことになります。
このような制度ですので、夫婦の協力によって得られたのではない相続財産などは財産分与の対象とはなりませんし、婚姻前からもっていた財産も除かれます。

2 基準時

まず、いつの時点であった財産を分けるのかが問題となりますが、通常は、夫婦の協力がなくなった時点として、別居時が基準時とされることが多いです。
家庭内別居の場合、夫婦の経済的な協力関係がなくなったと言えるのかが問題となり、家庭内別居となってもその時点を直ちに基準時とはできない場合も多いと思われます。
これと似たような概念で問題となるのは、財産評価の基準時です。
財産分与の基準時は、いつあった財産を財産分与の対象とするのかという範囲についての問題ですが、財産評価の基準時は、いつの時点での財産の評価額を用いて計算するのかという問題です。
別居時に離婚するのであれば問題とはなりませんが、別居から長期間経って離婚にいたる場合、最近では、不動産や株式などは大きく値上がりしていたりすることも多く、大きな問題となります。
結論としては、不動産や株式などの値上がりは、通常、夫婦どちらかの努力等とは無関係なものですから、実際に分割する時点での評価額を用いるというのが裁判所における扱いです。

3 問題となりやすい財産

●法人名義の財産
配偶者が会社の代表者だという場合、会社の財産も財産分与の対象となるのではないかと聞かれることがありますが、会社の株式や持分権は対象の財産となりますが、
通常、会社の財産自体が直接財産分与の対象財産となるものではありません。
ただし、会社名義ではあるものの、実質的に配偶者の個人財産と同視できるような事情がある場合には、衡平の見地から対象財産に含めるとの考え方もあります。

●交通事故の賠償金
交通事故を原因として支払われた財産がある場合、その原因によって財産分与の対象となるか否か結論が異なります。
治療費や修繕費等については、治療費や修繕費等として使用されなければ夫婦の共有財産として残っていたものと考えられるますので、財産分与の対象となります。
休業損害として支払われたものについては、給与の代わりとして支払われたものですので、財産分与の対象となります。
一方、慰謝料については、夫婦の協力とは無関係と考えられますので、財産分与の対象とはなりません。

●子名義の財産
お年玉やお小遣いなどでお子さんが自由に使えるものとして渡されたお金は、お子さんの財産であり、財産分与の対象とはならないと考えられますが、
お子さんの将来の学費等に充てるためにご両親が蓄えたお子さん名義の預貯金は実質的には夫婦の共有財産ですので、財産分与の対象になると考えられます。

●宝石や時計など
夫婦のどちらかが身につける宝石や時計などは、通常は夫婦いずれかの専用の財産であるとして、財産分与の対象とされることは少ないです。
ただし、特に高価なものについては財産分与の対象となるとされた裁判例もありますし、投資目的で購入されたものについては当然財産分与の対象となります。

●退職金
退職金が既に支払われており、預金として残っていれば当然財産分与の対象となりますが、将来支払われる予定のものについても、退職金は賃金の後払いであるとの考え方から、財産分与の対象となります。
解雇されたり、会社が倒産する等して支払われないかもしれない等ということも考えられますが、その蓋然性が特に高い場合でない限り、特に考慮されません。
ただし、会社に勤務していた期間が、婚姻期間より長い場合が多いため、婚姻期間と婚姻期間外の期間に分けて、財産分与の対象となる退職金の額を計算します。

●保険の解約返戻金
生命保険や学資保険などは、解約返戻金の額を財産分与の対象とします。
よく、保険を解約しなきゃいけないのですか、と聞かれることがありますが、単に計算上のものですので、実際に保険を解約する必要はないことが殆どです。

●ローン付きの不動産
不動産の時価から残ローンを控除したものを財産分与の対象とすると考えることが最も簡単な考え方です。
夫婦の財産が、オーバーローンとなっている不動産しか無い場合は、財産分与はプラスの財産を分ける制度であるとの考え方の下、財産分与の裁判所への申立がそもそも認められません。
オーバーローンの不動産の他にも財産がある場合、説は分かれていますが、他の財産と通算して分割するのが衡平と考えられます。

4 最後に

たくさんのケースがあり、書き切れなかったケースがたくさんあります。
また、個々のご相談で事情が異なり、通常とは異なる解決となることもたくさんあります。
財産分与は、離婚後の生活を支える非常に大切なものです。
離婚後に、あの時もっと考えていればよかったと後悔されないように、私達に一緒に考えさせてください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

マッチングアプリで知り合った人にお金をだまし取られた!お金を取り戻したい!どうしたらいいの!?(弁護士 長谷川拓也)

2026年8月10日 月曜日

長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。 

今回は、
【解決事例】マッチングアプリで知り合った女性に数百万円をだまし取られた事案で、刑事告訴・示談交渉を経て被害金全額と弁護士費用の一部を回収した事例
のご紹介です。

◯ご相談内容

依頼者の男性は、マッチングアプリで知り合った女性と親しくなり、将来を見据えた真剣な交際をしていました。

そうした中で、女性は、依頼者に対し、「難病を患っており、高額な治療費が必要である」「入院のため学費を支払うことができず、このままでは大学を退学しなければならない」「大学を辞めれば将来の夢や希望している職業を諦めなければならない」などと繰り返し説明し、学費や生活費の援助を求めてきました。

依頼者は、信頼していた女性の話を信じ、「夢を諦めてほしくない」「力になりたい」という思いから、複数回にわたり送金を行い、その総額は数百万円に及びました。

しかし、その後、依頼者は、女性とは突然連絡が取れなくなり、女性が説明していた病気や大学生活などの重要な事実の多くが虚偽である可能性がうかがわれました。

依頼者は、直ちに警察へ相談しましたが、「金銭の貸し借りであれば民事上の問題ではないか」との説明を受け、民事不介入を盾に、十分な対応を受けることができませんでした。

一方で、依頼者は「自分がだまされたことが恥ずかしい」「自分にも落ち度があったのではないか」と強い自責の念を抱いており、誰にも相談できず、一人で悩み続けていました。

そのような状況の中で、このたび、ご縁があり、当事務所へご相談をいただきました。

◯弁護士の対応

まず、依頼者から詳細な事情を丁寧に伺い、LINE等のやり取りや送金記録などの証拠を一つひとつ確認しました。

恋愛感情を利用して金銭をだまし取る、いわゆるロマンス詐欺や恋愛詐欺では、相手方が偽名や匿名でマッチングアプリやSNSを利用していることが多く、実際の氏名や住所が分からないため、責任追及そのものが困難なケースも少なくありません。

しかし、本件では、幸い、依頼者が女性の氏名と電話番号を把握していたため、それらの情報を基に住民票等の調査を行い、現在の所在を確認しました。

その結果、女性は依頼者と連絡を絶った後に、住所を変更し、さらに姓も変更していました。その理由は明らかではありませんが、責任追及を免れようとしていることがうかがわれる状況でした。

また、依頼者からうかがった女性が在籍しているという大学に対し、女性の在籍確認の照会をしたところ、やはり、女性が在籍している事実は確認できませんでした。

そこで、当職は、収集した資料をもとに、女性に対し、内容証明郵便により返還請求を行いました。

しかし、女性は、内容証明郵便を無視し、何ら回答を行いませんでした。

もっとも、事前に、このような対応も想定していたため、当初から、民事手続だけではなく刑事手続も視野に入れて準備を進めていました。

具体的には、金銭の交付に至る経緯などの証拠を法的観点から整理・分析し、詐欺罪の成立を基礎付ける資料を整えたうえで、刑事告訴を行いました。

冒頭のとおり、依頼者が最初に警察へ相談した際には、十分な対応が得られませんでしたが、証拠を体系的に整理し、事案の全体像を明らかにした資料を提出した結果、警察は捜査を開始することとなりました。

刑事告訴後も、依頼者は、何度も警察で事情聴取を受けることになりました。

もっとも、警察官から求められる説明や資料は、専門的であり、「何を説明すべきか」「どの証拠が重要なのか」を被害者自身が理解することは容易ではありません。

また、事情聴取では、限られた時間の中で話が進むため、警察官から十分な説明を受けられないことも少なくありません。

そこで当職は、警察がどの点を重視しているのかを法的観点から分析し、依頼者に分かりやすく説明するとともに、事情聴取に向けた助言や追加証拠の収集・整理を行いました。

◯解決結果

刑事告訴後、女性は、依頼者の件とは別の同種詐欺事件で起訴され、その後、依頼者の件でも起訴されました。

起訴後には、女性に代理人弁護士が選任されました。
代理人弁護士からは、依頼者が支払った金額全額を被害弁償として返還したいとの提案がありました。

しかし、依頼者は、だまし取られた金銭を取り戻すために弁護士へ依頼し、各種調査に始まり、内容証明郵便の発送、刑事告訴など、多大な時間と費用を要していました。

そこで当職は、単に当初支払った金額を返還するだけでは依頼者の損害は回復されないと主張し、女性の代理人弁護士との間で粘り強く示談交渉を重ねました。

その結果、女性は、当方の主張を受け入れ、依頼者は、だまし取られた数百万円全額の返還を受けることに加え、その回収のために要した弁護士費用等についても一部補填を受ける内容で示談が成立しました。

依頼者は経済的な損害を大きく回復できただけでなく、「泣き寝入りせず最後まで戦ってよかった」と大変安心された様子でした。

◯弁護士からのコメント

マッチングアプリやSNSを利用した恋愛感情につけ込む詐欺は、近年急増しています。

このような事件では、「だまされた自分が悪いのではないか」と自分を責めてしまい、誰にも相談できない方が少なくありません。また、警察へ相談しても、「民事上の問題ではないか」と判断され、十分な対応がなされないケースもあります。

しかし、相手方が最初から虚偽の事実を述べ、金銭をだまし取る意思を有していたのであれば、民事上の返還請求だけでなく、刑事上の責任追及が可能となる場合があります。

もっとも、そのためには、詐欺罪等の犯罪の成立を基礎付ける証拠を適切に収集・整理し、事案を法的な観点から構成していくことが重要です。

また、相手方の所在調査や証拠の収集、内容証明郵便の送付、刑事告訴、示談交渉など、それぞれの段階で適切な対応が求められます。

もちろん、すべての事案で本件と同様の結果が得られるわけではありません。相手方の所在や資力、証拠関係などによっては回収が困難となるケースもあります。

しかし、早い段階で適切な対応を行うことによって、解決の可能性を大きく高めることができる場合も少なくありません。

当事務所では、マッチングアプリやSNSを利用したロマンス詐欺、恋愛詐欺についても、民事・刑事の双方の観点から最適な解決方法を検討し、被害回復に向けて全力でサポートしています。

「警察に相談したが取り合ってもらえなかった」「相手と連絡が取れず、どうしたらいいか分からない」「だまされたかもしれないが、誰にも相談できない」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

大きな声では言えない話(弁護士 川口彩子)

2026年8月3日 月曜日

川口弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

5月中旬、グーグルで表示された広告から、シャツ、カーディガンなどを購入した。スマホからセール品を何点も見比べ、行ったり来たりしながら選んだ品だった。最近は店頭よりもネットで購入することが多く、通常なら1週間もしないで届くはずだった。しかし…来ない。もしかして、カートに入れて注文し忘れたんだっけ?と思ってメールを確認したが、ちゃんと注文されている。
 約2週間後、ショップからメールが届いた。注文した品の1つが在庫切れになってしまったので、①別商品に交換か(お詫びとして500円引きにしてくれる)、②実額の1.2倍のクーポンを発行するとのこと。詳しい内容はカスタマーセンターまで。品切れの商品を除き、他の商品は先に発送しますので、ご安心くださいませとと書いてあった。
 まあ欠品もあり得るかと思ったが、他の商品は先に発送しますというのでそのままにしていたが、数日待っても他の商品が届かない。
 さすがにこれは…と思い始め、そう考えると、クーポンだとか500円引きだとか、ショップに連絡させようとしていること自体おかしい気がしてきた。あまり考えたくなかったが、「○○(ブランド名) 届かない」で検索したところ、そのような事例が多数見受けられる。正規のショップかどうかは、公式ページから注文履歴を確認するのがよいと書かれた記事を見つけたので、公式ページに行ってみた。そしてやはり注文履歴はなかった…。詐欺である。詐欺にひっかかった…。
 数日は誰にも言えなかった。お金もショックだし、詐欺にひっかかったこともショックだけれども、その偽のショップに会員登録し、メールアドレスやパスワードを入力してしまったことが、今後の不安として大きかった。けれど、詐欺にひっかかったらあきらめるしかないと思っていた。

 そのような中、川崎市消費者行政センターの相談員さんたちとの懇親会の機会があり、「実は詐欺にひっかかってしまったんです」という話をした。相談員さんたちは目を輝かせて弁護士が詐欺にひっかかった話を聞いてくれて「カード決済なら全然大丈夫ですよ」とアドバイスしてくれた。そうか。抗弁権の接続か。

 とはいえ、自分のこととなるとなかなか腰が重い。そこから2週間して、ようやくカード会社に連絡をした。最近はすぐにオペレーターにはつないでくれず、HPから該当箇所をクリックしていったり、電話をかけても自動音声システムでなかなか進まない。挙句の果てには、一度、自分でショップと交渉し、ダメだった場合だけオペ―レーターとつないでくれるという。また騙されるのが嫌だったので、ショップに連絡も取りたくなかったが、メールを送ったところ、簡単に「このアドレスは不明」として、メールが届かなかった通知がきた。これで一安心(?)。
 あらためて、音声案内をやりなおし、オペレーターさんとつながった。本人確認の後、「チャージバックをお願いしたい」と伝えた。オペレーターさんから「何日のお買い上げですか」と聞かれ、日にちを答えたところ、「●●円のお買い上げですかね」と言われた。この日、いくつかカードで買物をしていたが、いかにも怪しい決済だったのだろう。自分でも確認したときも、「AST* GBASES利用国GB」と書いてあり、まあ、怪しいですよね。また、商品購入からの日数も聞かれたので1か月以上前だと答えたところ、「ああ、それならだいぶたってますね」との返答であった。1週間前の注文なら、もう少し様子をみなさいということなのでしょう。
 オペレーターさんの話では、今から送るURLにアクセスをして、「注文した商品が届かない」というページから、詳細な状況を入力し、送信してほしいとのことであった。その後、審査をし、不正な取引の認定ができれば、返金されるとのこと。返金については、後日のカードの利用料金との相殺になるか、別の方法を言われた気がするが、忘れてしまった。また、場合によっては、現在使っているカードを停止することになるかもしれないとのこと。消費者行政センターの相談員さんたちからのアドバイスで、それも覚悟していたので、カードが停止する可能性があることも了解した。
 審査には2か月ほどかかる可能性があるとのことで、現在はその審査待ちである。ただ、「現時点ではカードを止める必要はなさそうです」とのメールは届いたので一安心。現在は、それ以上の被害には発展していない。

 今回の教訓は、「必ず公式ページから注文すること」。もう二度とひっかかりたくない。そして、「クレジットカード決済だからたすかった」ということ。

 弁護士のコラムなので、「抗弁権の接続」について解説しておくと、これは「支払停止の抗弁」のことで、クレジット契約で商品を購入した場合に、、ショップ側に欠陥品、未着、契約解除などの問題点があれば、クレジット会社からの支払請求を拒絶できるという権利である(割賦販売法第30条の4)。私の場合は、現在ショップの問題点について審査中であり、結論は出ていないが、現在に至るも商品は届いていないので、やはり詐欺なのだろう。法律上は、「支払いを拒絶できる」となっているが、もう引落しはされてしまったので、「チャージバック」という形で返金してもらえることになりそうだ。
 最近、ロマンス詐欺、投資詐欺など、なかなか解決が難しいご相談ばかりだったので、詐欺にあったらあきらめるしかないとのマインドになってしまっていた。反省。皆様もどうかご注意を。そして、くれぐれも公式ページからのご注文を。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

2026年司法修習生(予定者)・経験弁護士向け学習会・事務所説明会のご案内

2026年7月22日 水曜日

当事務所では、司法修習生(予定者)・経験弁護士向けの学習会兼事務所説明会を開催しており、2026年では、以下の日程及び内容での開催を企画しております。各回とも、事務所見学や懇親会も含めて予定しておりますので、事務所や弁護士の雰囲気を知る良い機会となっております。ご興味のある方は、ぜひ、ご参加くださいますようお願いいたします。

2026年8月6日(木)18:30~
警備員感電死訴訟 学習会 ~息子の死、無駄にしないで~
講師:山口 毅大 弁護士
警備員感電死訴訟 学習会 ~息子の死、無駄にしないで~

2026年9月14日(月)18:30~
若手弁護士が考える刑事事件と社会課題
~孤立出産・窃盗症・性依存・DV~
講師:長谷川 拓也 弁護士
若手弁護士が考える刑事事件と社会課題~孤立出産・窃盗症・性依存・DV~

2026年12月17日(木)18:30~
子どもに関わる法律実務
講師:前田 ちひろ 弁護士
子どもに関わる法律実務

【お申し込み】
グーグルフォームからのお申込みをお願いしております。
https://forms.gle/4n5TbikV3gCDnh4R6

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

AIに訴状を書かせるのは危険? AI頼みの本人訴訟で損害賠償を請求される法的リスクと「ワークスロップ」の落とし穴(弁護士 山口毅大)

2026年6月4日 木曜日

山口弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

昨今、法務の分野においてもAIを利用されることが増えています。諸外国では、代理人弁護士に依頼せずに提訴して訴訟を行う、いわゆる、本人訴訟が増えているとの報道もあります。

確かに、現在のAIの能力には、目を見張るものがあり、簡単な文書作成において、ある程度のクオリティの生成物ができる場合もあり、弁護士の中には、訴状、準備書面等の書面のたたき台をAIに作らせる人も出てきています。

しかし、注意しなければならないことは、それでも、AIに作らせた書面をそのまま利用してはならず、専門知識を有する弁護士がチェックすることが必要である、ということです。すなわち、現在のAIにおいても、その仕組みや能力等からすれば、生成した文章にハルシネーションが生じている危険性があります。そのため、その出典や論拠を明らかにさせた上で、その出典や論拠を確認する必要があります。特に、昨今の文章は、その形式や論理において、もっともらしく作成されますので、専門知識を有する弁護士でなければ、条文、判例、法理論の正しさやそれらを踏まえた上での訴訟戦術の有効性について、妥当性を判断することが困難となっております。例えば、利用者に有利な判例を引用している文書が生成された場合において、実は、その判例法理は全くのでたらめで、そもそもその判例が存在しない、ということがあります。また、証拠として提出しようとする文書に、利用者に有利になるような具体的な記載がないにもかかわらず、あたかも、利用者に有利な記述があるかのように、AIが主張書面を作成することもあります。

このような場合に、通常人であれば、AIで作成された内容が事実に反する、または、根拠がないことを容易に知り得たにもかかわらず、提訴した場合には、訴権の濫用として不法行為責任を問われる危険性があります。

ここで、訴権の濫用について、説明しますと、訴えの提起は、憲法32条で保障された裁判を受ける権利に基づく正当な行為ですから、提訴者本人に高度な調査義務や検討義務を課し過ぎることはないようにする必要があります。とはいえ、不当な訴えの提起は、訴えられた者に応訴の負担を強いることになります。そこで、判例では、提訴者が自らの権利主張が事実的・法律的根拠を欠くことを知りながら、または、通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起した場合など、「訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに」訴えの提起が違法となるものとしています(最判昭和63年1月26日民集42巻1号1頁)。

訴権の濫用が認められるハードルが高いといえども、AIを利用して、事実に反する主張書面や証拠を大量に提出し、被告に応訴の負担を与え、打撃を与えようとするような目的で訴訟を強行されたと評価された場合には、「訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」に該当し、訴えの提起が違法となり、本人訴訟をした本人が不法行為責任を負う危険性があります。

さらに、裁判例において、主張書面等の表現が、相応の根拠もないまま、訴訟追行上の必要性を超えて、著しく不合理な表現で主張し、被告の名誉を毀損した場合には、不法行為責任を負うとしたものがあります(水戸地判平成13年9月26日判例時報1786号106頁)。
 この裁判例の考え方は、AIで作成した文書表現にも当てはまると考えられますので、たとえAIで生成した文書表現であっても、相応の根拠もないまま、訴訟追行上の必要性を超えて、著しく不合理な表現で主張し、被告の名誉を毀損した場合には、不法行為責任を負う危険性があります。

現状、このような法的判断を正しく行うためには、弁護士といった専門家でなければ、なかなか難しいと思われます。

では、AIを利用して作成した文章を弁護士に相談して、確認してもらえば大丈夫なのかといえば、一概にそうとはいえず、ワークスロップ(workslop)という状態を引き起こします。これは、2025年9月にハーバード・ビジネス・レビューで発表された概念であり、AIで生成した物があたかも整っているかのように見えるものの、実質的には、内容がない、不十分である状態のことです。

AIが作ったもっともらしい文章(ワークスロップ)を修正して法的に通用するものにするのは、ゼロから専門家が構築するよりも時間と費用がかかってしまうことが多く、結果的に依頼者様の不利益に繋がります。最初から弁護士にお任せいただくことも一案かと存じます。

AIの能力が著しく向上したとはいえ、ある専門性の高い領域においてAIを適切に利用するためには、その領域における専門的な知識を有することが重要となっています。これまで述べてきましたとおり、そのことは、法務分野でも同様であるということがいえると思われます。

ですので、AI時代だからこそ、専門家である弁護士にご相談ください。弊所では、専門家である弁護士が適切にAIを利活用することによって、より迅速かつ質の高い法務サービスを提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

 

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

nakase

 

 離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
 しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
 では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。 

 

◆財産分与とは?
 財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
 婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
 財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
 財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。

 基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
 ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。

 

◆別居前にできること
 そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
 通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
 もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。

 

◆裁判所を通して行う財産調査
 では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。

1.調査嘱託の申立て
夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
 そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
 調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
 調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
 ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
 例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
 その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
 私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。

2.【2026年4月~新制度】相手方に対する情報開示命令
2026年 4月に施行される改正家事事件手続法と人事訴訟法で、新たに当事者に対する情報開示命令という制度が導入されます。
この制度の対象となっているのは、財産分与に関する調停・審判事件や離婚調停、財産分与を求める内容の申立てがなされた離婚訴訟事件の他、婚姻費用や養育費、扶養料に関する調停・審判事件です。
これらの事件において、裁判所が必要があると認めるときに、当事者に対し、収入や資産の状況に関する情報開示命令を出すことができることになります。そして、開示を命じられた当事者が、正当な理由なく開示をしなかったり、虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処することができるという制裁まで導入されました。
情報開示命令は当事者に対して出されるものですので、第三者だけが持っていて、当事者が入手できないような情報については調査嘱託、第三者が持っているけれど当事者が入手可能な場合は、調査嘱託と情報開示命令の両方が選択肢となりえます。一般的には、第三者に対する調査嘱託の方が実効的な場合が多いと考えられますが、守秘義務を理由に回答しない第三者もいるため、状況に応じて手段を選択していくことになると考えられます。

 

◆別居前にある程度把握しておこう
裁判所における手続きをスムーズに進めるためには、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。

 弁護士 中瀬奈都子

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

離婚後にどれくらい養育費をもらえるか知りたい ~養育費について~ (弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

nakase

 

離婚したい!となったときに、一番に頭に浮かぶのはお金の問題ではないでしょうか。
別居期間中の生活費、養育費、財産分与、年金分割、不貞行為やDVなどの慰謝料・・・後悔することがないよう、相手方としっかり話し合い、納得のいく合意を形成する必要があります。
今回は、養育費について取り上げます。

 

■「養育費」とは?

 

未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。
離婚後、子どもと一緒に暮らしていない親も、子どもの親である以上は、扶養義務があり(民法877条1項)、離婚をしても養育費を分担する義務があります。
その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として「養育費」を請求することができますが、通常は、子どもを育てている親が他方に対して、「養育費」の支払いを求めます。

【ポイント】
・離婚をしても、親であることはかわらないので、監護者でない親も養育費を分担しなければならない。

 

■「養育費」はいくらもらえるものなの?金額のほかに決めるべきことは?

●それでは、離婚後、私が子育てをするとして、相手方にどれくらい「養育費」を支払ってもらえるでしょうか。
基本的には、「婚姻費用」を決める場合と同じです。
いくらにするかは、夫婦で自由に決められます。
まずは、夫婦間で話し合いをし、協議で決まらなければ、調停の手続の中で、金額や支払方法を話し合うことになります。通常は、離婚条件を決めるにあたって「養育費」についても話し合うため、離婚調停を申し立てて、その中で話し合うことが多いです(養育費を決めずに離婚をして、後で養育費分担の調停を申し立てることもできます)。
もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、離婚訴訟の中で(あるいは養育費分担の審判手続の中で)、裁判官に決めてもらうことになります。
調停、審判、訴訟といった裁判所の手続きを利用する場合、「養育費」は、裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用算定表」をもとにして、計算することになります。
そのため、夫婦間で話し合う際にも、合意に至らず裁判所の手続きにうつることを想定して、「算定表」をもとに決めることが多いです。

 

●「養育費・婚姻費用算定表」が2019年12月23日に改定されました!
2019年12月23日に新しい「養育費・婚姻費用算定表」が公表されました。
最新の統計資料に基づいて更新されたもので、従前の「算定表」よりも、一般的には増額されています!
★新しい「算定表」はこちら!

 

●新しい「算定表」を見てみましょう
「算定表」の見方は、まず子どもの人数と年齢に合った表を選び、義務者(支払う側の配偶者)の年収欄と権利者(支払われる側の配偶者)の年収欄が交差する点を確認します。そこに書いてある金額が、標準的な「養育費」の額です。
なお、年収については、給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見ることになります。

例:会社員の夫 年収400万円  パートの妻 年収 75万円 
  子ども 6歳 離婚後、妻が親権者として子育てする場合

→ まず、表11を見ます。

縦軸(義務者の年収/万円と記載されている軸)の左側の数字で「400」のところから右方向に線をのばします。横軸(権利者の年収/万円と記載されている軸)の下側の数字で「75」のところから上に線をのばします。この二つの線が交差する、「4~6万円」が、義務者が負担すべき婚姻費用の標準的な月額を示しています。

 

●いつまで支払ってもらうか(成人まで、と諦めないで)
 「婚姻費用」と違って、「養育費」の場合、支払いの終期を決める必要があります(「婚姻費用」はその概念からおのずと、終期は「別居又は婚姻関係を解消する時」と決まります)。
 養育費分担義務の対象である子どもとは、未成熟子、つまり、自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいうとされています。
 一般的には、成人して働く能力があれば未成熟子とは言えませんが、心身の障害によって働けない場合は成年に達していても未成熟子と言えますし、夫婦の収入や学歴、社会的地位から子どもが大学に進学してしかるべき場合は大学生も未成熟子と言えます。
 夫婦双方が大学を卒業しており、離婚時の子どもの年齢からして進路がある程度明確になっているケースの場合、大学に進学することを前提に終期を決めるケースが多いです。
 その場合、「子どもが大学を卒業するまで」という決め方ですと、浪人や留年等によって卒業する年がのび、終期をめぐる争いが生じかねません(また、不特定な文言にすると、強制執行する際に問題になり、強制執行できないということもありえます)。そのため、「22歳に達した後に到来する3月末日まで」などと明確に決めておくことをおすすめします。
 子どもの心身の状況や就学状況はまちまちです。その子に応じた終期を決めることをおすすめします。終期をどう決めるかや、後に争いにならない文言の定め方は、お子さんのことだからこそ、とても重要です。是非、弁護士にご相談ください。
【ポイント】
・養育費の支払終期は、必ず成人までというわけではない。
・子どもの心身の状況や就学状況、親の学歴等によって、成人時を超えた終期を決めることも可能。
・後に争いにならないような文言にしておくことも重要。弁護士にご相談を!

 

 川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。     
 女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
 ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

 

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【2026年4月施行】不払いを許さない!養育費の新ルール(弁護士 中瀬奈都子)

2026年5月15日 金曜日

中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。

nakase

 

未成熟の子どもが生活するために必要な費用(衣食住にかかる費用、教育費、医療費など)を「養育費」といいます。その内容は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務ではなく、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務(生活保持義務)です。この生活保持義務について、改正法第817条の12第1項に明記されました。
子どもは親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができますが、通常は、離婚後に子どもを育てている親が、他方の親に対して、養育費の支払いを求めます。
しかし、養育費が支払われている割合は決して高くはありません。厚生労働省が実施した調査によれば(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)、「現在も養育費を受け取っている」と回答した世帯は、母子世帯で28.1%、父子世帯ではわずか8.7%にとどまっています。つまり、7割以上の母子世帯、9割以上の父子世帯が養育費を受け取れていないのが現実です。
このような状況の中、養育費がきちんと支払われる仕組みを強化する目的で法改正が行われました。改正法が施行される2026年4月から、養育費の支払いを確保するための制度が導入されます。具体的に見ていきましょう。

1.「法定養育費」の創設
(1)「法定養育費」とは?
これまでは、離婚時に養育費の金額を取り決めていない場合、調停や審判といった裁判所の手続きを経なければならず、養育費が支払われるまで空白期間が生じていました。
今後は、離婚時に合意がなくても、離婚届けを出した時点から即座に暫定的な養育費として、子ども一人あたり月額2万円の支払いを請求できるようになります。
1人あたり月2万円は「少なすぎる」と感じる方も多いかと思います。このような意見に対して、法務省は、法定養育費は、親の間で取り決めがされるまでの間の暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めがない場合でも、法律に基づき直ちに一定額の請求権を発生させることで、離婚直後の子の生活が不安定になるのを防ぐことが目的と説明しています。つまり、法定養育費は、暫定的なものなのです。

(2)「算定表」との使い分けが重要
ここが混乱しやすいポイントなのですが、「2万円しかもらえない」というわけではありません。
改正法は、話合いや裁判所の手続きによって、双方の収入や生活水準にあわせた、生活保持義務の履践として適切な額を決定することを前提としています(法定養育費は、それまでの「つなぎ」なのです。)。
なお、裁判所の手続きの中で、どのように、その適切な額を決めているかは、こちらのコラムをご覧下さい。
整理すると、養育費について合意できないまま2026年4月1日以降に離婚した場合に、まずは法定養育費の制度を利用しつつ、家庭裁判所の調停手続などで適切な養育費を決める、という二段構えで進めていくことができるようになるのです。
【注意!】法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚するケースが対象です。ご注意ください。

2. 先取特権の付与
これが実務上、最もインパクトのある変更だと言われています。
これまで、相手が支払わない場合、差し押さえをするには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、裁判所が作成した特別な書類(調停調書、審判書や判決書)が必要でした。今回の改正で養育費請求権に先取特権が付与されたことで、法定養育費の規定に基づき、あるいは、公正証書になっていない合意文書に基づいて、相手の給与などを差し押さえられるようになります。
但し、先取特権が付与される額は、子ども1人あたり月8万円とされていることに注意が必要です。

3. 財産に関する情報開示命令(改正家事事件手続法第152条の2)
適切な養育費の額を決めようと、養育費の調停を申立てても、相手が給与明細や源泉徴収票といった収入情報を明らかにしないことがあります。勤務先が分かっていれば、勤務先に対して調査嘱託の申立てをして対応することができましたが、今般、家事事件手続法の改正によって、裁判所が必要があると認めるときに、申立て又は職権で、当事者に、収入・資産の情報を開示することを命じることができるようになります。そして、この命令に正当な理由なく背き、情報を開示しなかったり、嘘の情報を開示したりしたときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができるという制裁も導入されます。

4.強制執行手続きのワンストップ化
養育費が支払われていない場合、相手の給与を差押えるということを検討される方も多いかと思います。もっとも、相手がどこで働いているかわからない場合、給与を差押えることができません。そのような場合に勤務先を把握するための手続きとして、民事執行法は、財産開示手続や給与債権についての第三者からの情報取得手続を定めています。もっとも、差押えなどの強制執行、財産開示手続、第三者からの情報取得手続きは、別個の手続きであるため、債権者は、その都度、申立てをしなければなりませんでした。
今回、民事執行法が改正され、養育費や婚姻費用については、財産開示手続きや第三者からの情報開示手続きを申し立てた場合、これらの手続きで分かった給与に対して差押えの申立てをしたとみなされるようになります。つまり、裁判所への1度の申立てで、勤務先の特定、給与の差押さえまでを連続して行える仕組みが整えられました。

5.補足:共同親権になると養育費はどうなる?
よくある誤解に「共同親権になれば、お互い親なのだから養育費は払わなくていいのでは?」というものがありますが、これは間違いです。
親権のかたちに関わらず、親には子どもに自分と同程度の生活を保障する「生活保持義務」があります。 共同親権であっても、基本的には、子どもと一緒に暮らして直接養育している親(監護者)に対し、他方の親が支払う形は変わりません。
(ただし、父母が一定の期間ごとに子どもを交代で監護する場合(監護の「期間の分掌」)、その内容によっては実態を考慮して金額が調整されるケースも出てきうると思われます。)

6.まとめ
今回の法改正で、養育費が支払われるようにするための方策が増えます。養育費について揉めている、養育費が支払われず困っているという方は、諦めず、弁護士にご相談ください。
川崎合同法律事務所では、年間150人を超える方々から、離婚・男女トラブル・子どもに関するご相談をいただいております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策を立てることができます。
女性弁護士が多数在籍していることも当事務所の大きな特徴です。
ご家庭の問題で悩みを抱えたときには、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。

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藤田温久弁護士が新かながわ(2026年5月3日・10日号)に寄稿しました

2026年5月15日 金曜日

藤田温久弁護士については、こちらをご覧下さい。

kawagishi

憲法記念日にあたって
川崎合同法律事務所弁護士 藤田温久(寄稿)

憲法実現の道こそ
世界平和への道

5月3日は、憲法記念日です。改憲の危険性などについて、川崎合同法律事務所の藤田温久弁護士に寄稿してもらいました。

■明文改憲の「危機」
今年1月の総選挙の結果、再び、明文改憲の危険が大きく浮上した。
自民・維新、国民民主、参政などの改憲賛成派の衆議院における議席数が改憲発議に必要な3分の2をはるかに超えただけではない。

高市首相は、自民を右からあおってきた維新との連立合意に改憲を盛り込み、4月12日の自民党定期大会では、自衛隊法すら無視し制服着用の現役女性自衛官に君が代を歌わせ、「(憲法改正の)時は来た」と叫び、憲法審査会の動きを加速しているのである。

■何のための改憲か
安倍内閣以降、改憲派は世界情勢の悪化により急速な防衛力の強化が求められているとし、その足かせとなっている憲法9条を変えねばならないと主張してきた。

「世界情勢の悪化」は、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル、中国の台湾政策などを口実に、バイデンらが唱えてきた「権威主義国VS民主主義国」の対決の時代となった。日本は同盟国、同志国とともに「権威主義国」と闘える体制を築かねばならないというわけだ。

■崩壊した改憲の根拠
しかし、第2次大戦後、国連憲章において、集団的安全保障による軍事的措置、自衛権の行使以外の戦争は原則として不法法化された。その結果、ベトナム戦争など多くの戦争は「自衛権」行使なので国連憲章違反ではない等と「弁明」されてきた。

ところが、今年1月4日、米国はベネズエラに対し一方的軍事攻撃を敢行し大統領夫妻を拉致した。トランプ大統領は、政権転覆、石油利権獲得が目的であったことを微塵もなく語り、国際的非難に対し、「私の行動を決めるのは私の道徳心だけだ」と国際法に拘束されないことを公言するに至った。つまり、米国自ら「ならず者国家」であることを自認したのだ!

次いで、2月28日、米国とイスラエルはイランに対し、大規模な一方的武力攻撃を開始し最高指導者ハメネイ師など政権要人多数を殺害した。その後も攻撃はエスカレートし女子小学生ら175人、現在3000人を超す市民が爆殺され2万6000人以上が負傷している。

トランプ大統領は、「米国の意図を持つ邪悪な体制の転換」を目的とする「予防的攻撃」「先制攻撃」であることを自認している。いずれも、国連憲章・国際法を一顧だにしない攻撃の自認である。

まさに、70年以上国連決議に反しガザなどを不法占拠し、パレスチナ人へのジェノサイドを続けてきた折り紙付きの「ならず者国家」イスラエルとの共演である。

高市首相は、相次ぐ米国の暴挙に対し全く批判することができない。しかし、「ならず者国家」を「同志国」として共に戦争する国になることは、日本も「ならず者国家」になることだ。日本は戦後国際法秩序の中では、もはや、改憲の目的は崩壊したことは明白である。

■日本が目指すべき道
イラン攻撃は、国際法違反だけでなく世界経済、世界の人々の生活と安全を危機に落とし込めるものである。世界で、日本で戦争の停止を求める市民の声が広がっている。

このため、3月訪米しトランプにへつらった米国一辺倒の高市首相ですら「日本にはできることとできないことがある」と説明しイランへの派兵要請にすぐに応じることはできなかった。「できないこと」の根拠は憲法9条だったという。

まさに、憲法9条の戦争を止める力=実効性が示されたのだ。前述の通り、改憲の根拠は崩壊した。

今こそ、日本国憲法の理想、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」の市民と共に闘うときが来たと思う。改憲ではなく、憲法の理想の実現のために!

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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