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全国原爆症集団認定訴訟 /渡辺登代美 2007.12.12

2016年8月17日 水曜日

広島、長崎に原爆が投下されてから60年。全国に被爆者健康手帳をもつ者は約285,000人いる。このうち、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(援護法)」に基づいて認定を受け、医療特別手当を受給しているのはわずか2100名、全被爆者の0.76%にすぎない。認定者の実数は、この20年、2000人前後で推移している。被爆者の救済よりも、予算の枠によって認定制度が運用されている。被爆者はこの認定制度を、被爆者切捨てのための制度であると考えている。

  原爆症の認定を求めた裁判は過去6件ある。うち1件は敗訴したものの、3件は勝訴確定、2004年3月31日には、東京地裁で東裁判が勝訴した。松谷裁判では最高裁で勝訴判決が確定したが、国はその政策を変える姿勢を一向に示さないばかりか、むしろ認定基準を一層厳しく運用し始めている。

  個別訴訟では国の政策を変えられない。国の原爆症認定行政の根本的な転換を求めることを直接の目的として、集団認定申請・集団訴訟運動が取組まれた。

  2003年4月、札幌、名古屋、長崎地裁の合計7名で始まった集団提訴運動は、続いて東京(30名)、千葉、大阪、広島(40名)、長崎(30名)、熊本(20名)、仙台、静岡、鹿児島と続々と提訴がなされた。2005年7月末現在、17都道府県12地裁で、167名が闘っている。

  横浜は、2004年9月30日提訴。全国で一番遅い。原告は7名。6回弁論を行なったが、まだ被爆の実態や現行認定制度の誤りに関する総論準備書面を闘わせている段階で、証人尋問等の立証が始まるのは春~夏ころと予想される。
  2005年12月に大阪が結審し、続いて東京と名古屋も今年度中に結審の予定。近いうちに判決が見込まれるため、横浜の裁判所はそれを見てからゆっくりと考えているのだろう、特に進行を急ぐことは全くない。

  全国の運動的には、「このまま個別地裁で判決を積み重ねても、現行認定制度の改善にはつながらない。もう一度全国的に集団認定運動を取り組み、集団提訴をしよう。」ということになっている。しかし、現段階でも、被爆者の中にあってさえも、集団訴訟の意義が浸透して被爆者全体の運動になるまでになっていない。個別の被爆者の救済訴訟だと考えている人たちが少なくない。ほんとうに再度の集団認定運動に取組むことができるのかも訴訟と並ぶ大きな課題である。

投稿者 川崎合同法律事務所

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