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裁判所の覚醒を!/藤田 温久 2012.9
2016年8月17日 水曜日
1. 2009年12月の松下PDP事件最高裁判決(以下「PDP最判」)以降、裁判所は、大企業が強行した違法な解雇、雇止めを擁護・免罪し、非正規労働者の救済に背を向け続けています。
2. 派遣労働者については、PDP最判の「論理」に盲従し、偽装請負等の派遣法違反を認定しがら、行政取締法規違反に過ぎないから、派遣契約の効力に影響を与えないとして、派遣先企業の直接雇用責任を否定してきました。更に、2011年9月の日本トムソン事件大阪高裁は、派遣先会社の悪質な派遣法違反につき「労働者派遣法は労働者保護ではなく」「労働者に対して就労の場を提供する機能を果たしていることも軽視できない」なと驚くべき「認識」を示して、一審判決の不法行為の成立、慰謝料支払いをも取消しました。
3. 有期契約社員についても、2012年4月のいすゞ東京地裁判決は、「不況等の事情の変化による生産計画の変更に伴う要員計画に変更がない限り、契約更新により少なくとも2年11か月までは雇用が継続される合理的期待を有していた」と、契約更新に対する「合理的期待」を限定し、期間内の雇止めなので「解雇権濫用法理が類推適用される」として、雇止めの「合理性」を検討するとしましたが、「期間従業員全員について剰員が生じた」、「商用車受注の急激かつ大幅な減少がいつまで続くのか的確に予測することは困難であった」ことだけで雇止めに「客観的合理性」を認めました。こんな論理で「要員計画の変更」の合理性が認められ雇用継続の合理的期待権の範囲外とされるならば、それはトートロジーですから、常に、有期契約社員の雇い止めは合理的ということになってしまいます。これは、「有期契約社員といえども契約更新が繰り返された場合解雇権濫用法理の類推適用がある」という確立した最高裁判例法理を事実上骨抜きにするものです。
4. 一方で、最高裁判例に盲従し、他方で、最高裁判例法理すら骨抜きにする。そこに共通するのは非正規労働者を景気の調整弁として利用するという使用者側の願望をそのまま認める姿勢だけです。上記大阪高裁の「認識」が自白するように、財界とマスコミが作り上げた「新自由主義改革」「非正規労働が日本を支えている」という幻想こそが裁判官のもつ「偏見」の正体なのです。
5. しかし、経団連の指示に従い、自公政権、民主党政権が雇用破壊を続けた結果、日本の労働者の35%が非正規労働者となり、大学を卒業しても就職できない結婚もできない子供も産めないという異常な状態を作り出し、10年にわたり賃金が上昇せず国民の購買力が低下し、更に賃金切り下げと非正規化が強行されるという悪循環に陥っているのが現実です。
今こそ、法廷内外の闘いにより、裁判所を「幻想」から覚醒させ、日本国憲法の三権分立制下で司法が担う人権保障機能を発揮させなければなりません。我が事務所の弁護士が弁護団に参加している「いすゞ」「日産」「資生堂・アンフィニ」各非正規切り訴訟事件は、今年後半から来年にかけて山場を迎えます。裁判所を覚醒させる突破口とするべく奮闘中です。ご支援を宜しくお願いします。
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