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原発の光景/神奈川支部 渡辺 登代美 2013.9

2016年8月17日 水曜日

【双葉郡楢葉町】
 避難指示解除準備区域。宿泊は制限されているが、昼間は自由に行くことができる。但し、店もなく、人もいない。
 地震で屋根瓦が落ちたままの母屋は、雨水が入り放題。玄関を開けると、畳を突き破って丈高い草が生え、立派なキノコが成長していた。
 すぐ隣に新築した長男家族の家は、避難時の生活を残したまま無傷である。しかし、幼い子のいる長男一家は、もうこの家に戻ってこない。

【骨】
 数日だろうと、とにかく避難した。牛舎につながれ、取り残された牛。今は、大量の骨。骨は臭わない。肉と皮が腐っていたときの臭いは、想像を絶する。
 生き残った牛たちは、放射能に汚染された餌を食べた場合の影響を調査するために、わざわざ、さまざまな程度に汚染された餌を与えられて、生かされている。

【帰還困難区域】
 国道6号線が開通。沿道の民家の前は金属製の矢来で塞がれ、側道にも防御柵が。
 許可を得て防御柵内に入る。帰途。脇道までよく知った地元の道であるのに、人のいる防御柵をみつけなければ6号線に戻れない。どこが塞がれており、どこに人がいるのか、帰宅する住民には何も知らされていない。

【除染】
 除去された土壌など、放射性汚染物質は一立米くらいの黒いごみ袋様のものに入れられている。それらは、数百個単位で、元は水田だった、今はセイタカアワダチソウの群生地のそこここに野積みされている。

【海】
 よく釣りをした堤防は地震で数メートル沈下し、コンクリートが割れて海に没している。もう釣りはできない。津波の際、放置されたままの車。山積みされた船の残骸。祭りももうない。

【街】
 2年半前から、時間が止まっている。地震で壊れた家並。倒れたままのブロック塀。親しかった人たちの家。今は、誰もいない。

【帰宅】
 自分の家に帰るだけなのに、許可申請をし、防護服を着て、検問で身分証明書を提示する。
 元は自家菜園だった草地からたくさんの雉が飛び立つ。庭に散らばる小さな骨々は、これらの鳥が小獣に捕食されたものだろう。

【放射能】
 さまざまな種類の測定器をもち込み、帰宅する度に線量を測る。ほとんど下がっていない。

【双葉町】
 帽子、マスク、手袋。35度を超える猛暑の中、全身白づくめの防護服を着て、汗びっしょりになって除草剤を撒き、墓前に手を合わせる。

【生業を返せ、地域を返せ!】
 原発で利益を得ただろうという人たちもいる。しかし、全財産を、全人生を失っても良いほどのものではあり得ない。怒り。こんなことは、二度とあってはならない。

投稿者 川崎合同法律事務所

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