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解雇・雇止は無効 資生堂・アンフィニ解雇撤回裁判・横浜地裁判決/藤田 温久 2014.9
2016年8月17日 水曜日
第1 地裁判決の主な内容
① 2014年7月10日、横浜地裁(阿部正幸裁判長)は、資生堂鎌倉工場の口紅製造ラインで非正規労働者として働いてきた池田和代さん達原告5人(第1グループ)の解雇と、齋藤美香さん達原告2人(第2グループ)の雇止めを無効とし、請負元㈱アンフィニとの間に労働契約上の地位があることを認め、未払賃金約3600万円と今後の賃金支払いを同社に命じる判決を言い渡しました。
② 他方、同判決は、原告達と資生堂に労働契約があることは認めませんでした。
第2 資生堂・アンフィニ解雇事件とは
原告達の有期労働契約は、8年~2年間以上も形式的に更新され続け、所属会社と契約形式は、㈱リライアンス(請負)→ ㈱コラボレート(請負)→ 06年6月 ㈱アンフィニ(派遣)→ 07年1月㈱アンフィニ(請負)と変えられましたが、資生堂の指揮命令の下での労働実態は全く同じでした。
2009年4月2日に資生堂が従前の発注量を約4割減らす通告をした直後、アンフィニは、労働契約の期間を同年末から5月末日に書き換え、5月17日、第1グループを含む22人を解雇し、5月末日、第2グループに対し期間満了による雇止めを通知しました。原告達7人は、解雇、雇い止めは無効だとして、資生堂と労働契約があること(仮にそれが認められない場合アンフィニと労働契約があること)の確認と未払賃金の支払等を求めて2010年6月に提訴しました。
第3 地裁判決の意義
① 解雇無効=勝利
先ず、第1グループに対する解雇は、有期労働契約の期間満了前の解雇ですから、「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項) がなければ許されません。
この点、判決は、受注量が半減したが、『早急に人員を削減しないと会社全体の経営が破綻しかねないような危機的な状況であったとは認められず高度の人員削減の必要性があったとまではいえない』として「やむを得ない事由」はないので解雇は無効としました。
② 雇い止め無効=勝利、画期的判決
次に、判決は、原告達のアンフィニとの契約は有期労働契約だが、アンフィニと契約を締結する以前から鎌倉工揚で勤務し契約更新していたこと、アンフィニ参入後も3回更新していること等から、『雇用継続への合理的期待を有していた』と認定し、雇止めには、正社員に対する解雇権濫用法理(客観的合理性と社会通念上の相当性が必要)が類推適用されるとしました。そして、前記①のとおり、高度の人員削減の必要性があったとまではいえない、人員削減回避の措置を尽くしていない、人選の合理性もない、手続の妥当性も欠いている。よって、客観的合理性も社会通念上の相当性もないから雇止めは無効としました。
リーマンショック以降、「生産計画に変動のない限りの期待権」(いすゞ事件東京地裁判決)「受注量減がない限りでの期待権」(日産事件横浜地裁判決)など有期労働契約の『雇用継続への合理的期待』を極限まで限定し、生産計画の変動があった、受注量減少があったことのみで、雇い止めの必要性を認める判決が相次いでいました。これでは、有期労働契約の雇い止めに正社員に対する解雇権濫用法理を類推適用し、不当な雇い止めから有期従業員を保護しようとした趣旨は全く失われてしまいます。今回の地裁判決は、この不当な判決の流れを変える画期的意義があるものなのです。
③ 資生堂との地位確認を否認
他方、判決は、形式的な理由(契約書上の雇用主はアンフィニだ等)だけで黙示の合意を否認し、原告らが求めてきた資生堂との間の労働契約上の地位は、認めませんでした。
前述の通り、資生堂は、所属会社、契約形式を転々とさせながら、一貫して、同社の基幹的恒常的業務(常用労働者が担うべきもの)である口紅製造を自らの指揮命令下で原告らに担わせてきました。そればかりか、アンフィニ参入時には、誰を、どの会社に移籍させるか(化粧水ラインの者はワールドへ、口紅ラインの者はアンフィニへ全員移籍)、賃金・地位などの労働条件全て(全部本人申告により従来通り)を資生堂が決定したことが明らかです。偽装請負から偽装派遣そして再び偽装請負へ、まさに、資生堂が労働者派遣法の根幹である常用代替防止原則(基幹的恒常的業務を常用労働者=正社員ではなく派遣労働者に担わせてはいけない)を組織的・大規模に脱法しようとしたものです。資生堂との黙示の労働契約が認定されるべき事案なのです。地裁判決は不当です。
④ 未払賃金を半額に減額
また、本判決は、アンフィニとの労働契約上の地位を認めながら、バックペイ及び判決確定までの賃金支払いを平均賃金の半分しか認めませんでした。原告らは時給労働者だから労働時間で賃金は決まる、資生堂からの受注量は解雇・雇い止め後2分の1程になった、よって、解雇・雇い止めされずに原告らが働いていても受け取れた賃金は平均賃金の2分の1だというのです。未だかつてなかった異様かつ不当な認定です。実際には、資生堂は、解雇・雇い止め後数ヶ月以内に、発注量を増やそうとしたが、人員不足を理由にアンフィニが受けなかったというのです。50数人のラインで24人も解雇・雇い止めにしたので受注量が減り続けたのです。しかも、原告らは、契約書上、労働時間も決められており、本判決がいうようにアンフィニが真に独立した請負会社であるならば、原告らの労働時間ないし賃金を確保すべきは当然です。賃金減額は、絶対に認められません。
⑤ 闘いは控訴審へ
原告達7人は、7月24日、上述①はもちろん、上述②の判例の流れを絶対に維持し、③、④を逆転勝利するため、控訴しました。闘いは、東京高裁へと移ります。「女性に優しい企業」「コンプライアンスNo.1」を表看板とする「万年超黒字企業」資生堂が、更なる利益を求める目的のためだけに、原告達女性労働者を物扱いし続けていることを断罪しなければなりません。常用代替防止原則を脱法する組織的脱法行為を許さず、「誰もが正社員 になれる」社会へ前進する闘いです。皆さんのご支援をお願いします。
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