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「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故現状回復請求訴訟控訴審結審(弁護士 渡辺登代美)
2020年2月7日 金曜日
1 生業訴訟結審
2017年10月10日、福島地方裁判所で言渡された判決に対して、原告ら、被告国、同東電ともに控訴し、舞台は仙台高等裁判所に移っていた。
2019年中に原告15名の本人尋問と、浜通りの現地進行協議を実施し、2020年2月20日、結審を迎える予定だ。1月末に最終準備書面を提出し、4000名の控訴委任状を取り付け、50名の死亡原告の承継手続きを行なった。
2 判決は如何に
生業訴訟の原告は、大多数が福島市・郡山市等の滞在者である。滞在者の被害は、区域外避難者の避難の合理性と裏腹の関係にある。生業訴訟は、国の責任を追及することにがっぷり取組み、一審では、全国に先駆けて国の責任を断罪する役割を果たした。が、損害認定には課題を残した。
控訴審においては、避難指示区域の原告本人尋問に重点を置き、損害立証にも力を入れた。
判決は、2020年夏頃か。
3 避難指示は解除されても復興とは程遠い
現地進行協議に際しては、東京電力から、「富岡町は復興しているのだ!」を立証趣旨として、さくらモールとみおか、富岡町小中学校、県立ふたば医療センター付属病院の申請がなされた。いずれも立派な建物が完成しており、東電は移動過程で外観を確認することを求めた。
しかし、東電の思うとおりにはさせないのが生業弁護団である。外観は立派であっても、その内実は復興とは程遠いことを示さなければならない。
さくらモールとみおかには、ヨークベニマルやダイユーエイトがあり、フードコートも充実している。ショッピングセンターのフードコートといえば、家族連れや友達どうしの子どもたちで賑わう様子が目に浮かぶだろう。ところがさくらモールとみおかは、昼食前後の時間帯だけ、車で続々とやってくる作業着姿の男性たちで大賑わいという異様さ。フードコートもそのためにあり、午後3時には閉まってしまう。現場指示は、当然、昼の時間帯だ。
富岡小中学校は、広々とした立派な校舎内の教室に、ぽつんと机が2つ3つ置かれている。複式学級にしても、そのくらいの生徒数しかいないのだ。弁護団は、事前に校長先生に会いに行き、校舎内に立ち入る許可を求めた。
4 ふるさとに戻ってはみたものの
南相馬市小高区で70年暮らし、避難指示解除を待ち切れずに戻った原告は、本人尋問において、以下のように語った。
「朝、目が覚めたときは、放射能ということから始まって、それで、自分は汚れた空気の中のお魚ではないか、みたいな、そんな感じで毎日います。」
「解除になって帰った年に、うちの夫は、やぶの中にコシアブラとタラの芽が一杯あったので、喜んで、こんなに採れたぞって抱えてきて。それで、自ら区役所に検査に行ってもらったら、コゴミは1900いくらベクレル、タラの芽は600何ぼあったので、もう、それからは、山に入ることはしなくなりました。もう、食べられないと思っています。」
5 今年は、続々と高裁判決が
3月12日に、仙台高裁で浜通り避難者訴訟の、3月17日には、東京高裁で小高に生きる訴訟の判決言渡しが予定されている。両高裁判決が、避難指示区域からの避難者に関する慰藉料の金額について、一定程度の基準となる可能性がある。
生業の後は、千葉・群馬訴訟の東京高裁判決が続くだろう。本年は、原発被害者訴訟における大きな節目になりそうだ。
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