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台風19号多摩川水害 被害の回復求め集団訴訟を呼び掛けるキックオフ集会を開催(弁護士 川岸卓哉)
2020年10月14日 水曜日
2019年台風19号による水害から一年。一周年にあたる本年10月12日、「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」主催で、「台風19号多摩川水害 被害の回復求め集団訴訟を呼び掛けるキックオフ集会」を、200名近い参加で開催しました。
1 100年前に川崎で起きた「アミガサ事件」の教訓
集会では、最初に、中原区在住の落語家、寝床屋道楽師匠が、100年前の多摩川の水害にまつある「アミガサ事件」の落語を披露しました。古来より、多摩川は暴れ川といわれており、川崎の住民は水害に苦しんできました。他方で、住民たちは命や生活を守るため、声を上げて、水害を防ぐ対策を行政に対し求め、実施させてきた歴史があります。大正時代には、御幸村(現在の中原区平間)の住民が、多摩川の水害に耐えかねて、200名以上が編み笠をかぶって蜂起、横浜の神奈川県庁へ押し寄せ対策を直訴した事件がありました。結果、神奈川県知事を動かしてて堤防「有吉堤」(当時の有吉忠一知事から命名)をつくらさせました。この100年前の話は、水害をなくすためには「市民が声を上げ、行動をしなければならない」という、今にも通じる貴重な教訓になるものです。
2 多摩川は安全か
次に、国土交通省職員OBの中山幸男さんから、現在の多摩川の治水対策の現状について、報告がありました。近年、地球温暖化の影響によって豪雨が顕著に増加傾向にあるなかですが、多摩川の洪水対策は、計画より大幅に遅れ、深刻な洪水とは背中合わせの状態にあります。仮に、多摩川が決壊した場合には、川崎市の注南部地区全域の浸水被害が想定されており、川崎で住み、働く私たちにとって、多摩川の万全の治水対策なくて平穏な生活はありません。中山さんは、国の多摩川の治水対策を前進させるためにも、今回の裁判を通じて、市民が水害対策を求める声を上げ続けることが大切だと訴えました。
3 政策形成訴訟を通じて求める全体救済と再発防止
当事務所の西村隆雄弁護士は、台風19号多摩川水害訴訟弁護団長として、川崎市の責任が明らかであり、裁判を通じて、川崎市に責任を認めさせ謝罪させるとともに、被災者の生活再建と、再発防止を求めていく重要性を訴えました。特に、西村弁護士は、本件が、裁判の原告のみならず、被災者全員の救済と再発防止策を行政に求める政策訴訟と位置付けました。西村弁護士が関わった川崎公害訴訟、東京大気訴訟、さらには現在最高裁で争っている建設アスベスト訴訟等の歩みに学び、裁判と運動の両輪で短期での決着を図り、川崎市を動かして、全体救済と再発防止の政策の実施を求めていく必要性を訴えました。
最後に、集会を主催した「台風19号多摩川水害を考える川崎の会」からは訴えがありました。最大の被災地上丸子山王町の被災者である川崎晶子さんからは、原告になることを呼びかけました。また、同じく被災地の宮内地区で被災を免れた長谷川淳さんからは、原告になれない方も、裁判の支援と再発防止の運動を広めるため、支援の会への参加を訴えました。
4 水害なく安心してくらせる川崎にするために
原告申込者は集会時点で、約50名に達しました。しかし、2600世帯以上の被災者のなかでは、まだまだ少数です。提訴へ向けて、被災者が誰一人泣き寝入りしないためにも、原告団をさらに大きくしていかなければなりません。
当事務所からは、西村隆雄弁護士をはじめ、多くの弁護士が弁護団に加わっています。この裁判に勝利し、被災者を救済するとともに、多摩川の水害と隣り合わせの川崎が安心して暮らせる街とするための政策を前進させるため、闘い抜く決意です。
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