トピックス
日本通運川崎支店-無期転換逃れ地位確認訴訟(弁護士 川岸卓哉)
2020年1月23日 木曜日
1 事案の概要
本件は、労働契約法18条「無期転換ルール」逃れに対する裁判である。原告は、日本通運川崎支店で派遣社員の事務職を経て、2013年より、日本通運株式会社に、1年契約更新の有期労働契約で直接雇用された。その後、契約更新は4回されましたが、無期転換申込権が発生する通算契約期間5年のわずか1日前、2018年6月末日をもって、期間満了による雇止めされた。これに対し、雇い止め無効を主張し、横浜地方裁判所川崎支部に提訴した。
無期転換ルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として、立法されたものであるが、本件雇止めは、無期転換ルールの法の趣旨を真正面から否定し無期転換を阻止することに目的がある。
2 雇止め法理の形成・発展に逆行する不更新条項
本件雇用契約書には、派遣を経て最初の直接雇用契約当初から「当社における最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない」という、いわゆる不更新条項が挿入されていた。そもそも、労契法19条において制度化された雇止め法理は、有期労働契約は合意された期間の満了によって当然に終了するという契約法理に対して、解雇権濫用法理という重要な労働法理を尊重して法定更新制度を設けたものである。つまり、合意原則よりは雇用関係の存続保護という要請を重視して、形成された法制度であり、それについて不更新条項による潜脱を認めることは、雇い止め法理の形成・発展に逆行することになる。
本件訴訟の3つの争点①そもそも更新上限規定が労働契約法18条を逸脱し公序良俗に反して無効②更新上限規定への同意が自由な意思に基づくものではなく無効、以上の論点を前提に、③本件件雇い止めが、雇い止めの無効について定めた労働契約法19条に反して無効であるかである。
特に、争点①については、国会答弁で示されてきた労働契約法18条の立法趣旨を法解釈に斟酌すれば、使用者が、有期雇用契約に5年以内の更新上限を付して利用することについて、公序良俗違反といえる場合には、更新上限は違法無効と解釈される。意見書をお願いした立正大学准教授高橋賢治先生は、労働契約法は、5年以内の有期労働契約の利用はいずれの場合も許されるという趣旨で濫用防止規定があえて設けなかったのではなく、「解釈は後の判例により論理的に決せざるを得なくなる」と指摘している。
3 契約書の形式的文言を突破する必要
2018年以降、全国で、本件と同様の無期転換逃れを争う裁判が提訴・係争され、今後、各地の裁判所の判断により、労働契約法18条に関する、新たな労働法理が創出されていくなか、本件裁判の帰趨も、日通のみならず広く非正規労働者の将来も左右する結果となる。非正規労働事件の運動展開は困難があるが、全川崎地域労働組合及び国民救援会神奈川支部を中心に支援共闘会議が結成され、署名5000筆を裁判所に提出するなど、運動を広げている。
本件のように、当初より不更新条項が契約書に記載されていた内容でも、立場の弱い労働者は契約締結せざるを得ない労働者は潜在的に多数存在する。契約書の形式的契約文言の壁を事実と道理に基づく主張で突破してきた歴史が、有期契約の労働者を救済する判例法理形成の歴史である。これにならい、労働契約法18条の趣旨に適った新たな判例法理を作り出すため、全力を尽くす決意である。
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|電気リストラと日立製作所における退職強要・不当査定事件(弁護士 川岸卓哉)
2020年1月22日 水曜日
本件は、2018年4月、日立製作所の課長職であった原告に対する面談による退職強要、それを拒否した原告に対する退職強要終了後のパワハラ行為、及び査定差別に対し損害賠償をもとめ横浜地方裁判所に提訴した事件であり、本年3月24日に判決日を迎える。
1 電気リストラと日立製作所における退職強要・査定差別
日本の電機産業は、輸出競争力を低下させ,事業の撤退や縮小海外資本への売却が目立つようになった。また、残った事業分野においても、今後の成長は不確かとなっている。このような中で、2008年のリーマンショック以降、2017年3月1日までに、公表されただけでも36万378人が人員整理の対象となった。しかも、これらの人員削減は、実態は労働者への押しつけであるものの、希望退職という形式を取って行われるため、社会問題化しにくく、殆どの国民の知らないところで大量のリストラが敢行されている。
赤字や倒産の危機を理由にリストラをしていた企業が、経営危機を脱して、黒字に反転した後も、リストラを継続し続けているというのが実態である。これは、日本の大手電機メーカーが、多角的に事業展開する企業複合体(コングロマリット)から、事業の選択と集中により、少数の事業に注力するという方針に変化し、少なくない事業から、次々に撤退していることに伴って生じているものである。
日立製作所は、高い利益目標をかかげ、それを達成するために「常時リストラ」「黒字リストラ」とでもいうべき政策を強引に進めている。日立製作所の原告に対する退職強要も、全社的な組織的意思決定に基づいて行われた脱法的なリストラである。原告が電機情報ユニオン労働組合に加入して抗議したことにより、日立製作所は、原告に対する退職強要面談は終了させたものの、その後も、原告に対して業務遂行に対する注意を、晒し者状態で行うなどパワハラ行為を行ったり、さらには、一時金査定において低評価を行い続けて、原告に転職を決意させようとし続けている。
2 違法な退職強要
本件退職面談は、面談の機会に、圧倒的な労使の力関係の下で、労働者の権利を否定し、労働者保護法体系に明らかに反する不合理な考え方を一方的に押しつけて、原告に退職を迫ったパワハラ行為が行われている。すなわち、侮辱的言辞・仕事の取り上げ・名誉感情の不当な侵害、退職表明を行うまで継続される絶望的な繰り返しの面談等、様々なパワハラ的手法を重畳的に用いた退職(転職)の強要が行われた。
3 退職強要としての査定差別
日立の人事評価制度であるGPM面談及びキャリア面談の名もの下行われた退職面談を境に、同じ原告に対する評価が、明らかに大きく下がっている。
GPM評価制度は、成果目標と行動目標から構成され、いずれも、上司と共に予め設定した目標に対する達成具合の主観的評価で賃金・一時金査定が行われるものである。それは、自己評価を前提としているとはいえ、最終的・実質的には、上司の主観的評価に依拠するものとなっている。そして、客観的検証が困難な、抽象的評価のため、上司の恣意的評価の余地が大とならざるをえない。原告自身は、一貫して、同様に仕事をしているのであり、本件面談における退職強要を拒否した以外には、本件面談の前後で、他に大きく評価が下がる合理的理由がない。
そして、本件面談における退職強要の拒否は、日立製作所会社を含む電機産業が業界ぐるみで行っている電機リストラに対する抵抗を意味することになる。したがって、日立製作所会社にとってはあってはならない事態であり、だからこそ、原告が、本件面談による退職強要に必死に抵抗し、屈しなかった時点を境として、判りやすく、本件査定が極端に下げられている。したがって、本件減額査定は、不当な退職強要の中止を訴えて、会社に残ることになった原告に対し、形を変えた「退職強要」が行われていというべきである。
4 変容する日本型雇用に対する抵抗
日立製作所出身の日本経団連中西宏明会長は、「終身雇用は制度的疲労している」等度々発言し、2020年の経団連春闘方針でも、既存の日本型雇用の見直しを示している。この経団連の示す方針の意味するところが、企業を雇用責任から免れさせ、無法図なリストラを許容し、労働者の権利を侵害する方向であることは、本件においてすでに日立製作所が行っていることからも明らかではないか。
判決を機に、社会に対して電気リストラの実態を明るみにし、雇用の破壊に対する歯止めとしたい。
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|公害調停-全国の大気汚染被害者の救済を目指して-(弁護士 篠原義仁)
2020年1月16日 木曜日
1 2019年2月18日、前日に公害調停申請人団の結団式を文京区民センターで開催し、全国公害患者の全連合会と東京、神奈川(川崎、横浜)、千葉、埼玉、名古屋、大阪のぜん息患者90人が、環境省と自動車メーカー7社(トヨタ、日産外)を相手方として、総務省の下に設置されている公害等調停委員会に公害調停の申立を行った(その後、第2次の申立が行われ、現在、申請人団は104名)。
申立の趣旨は、①国は、大気汚染公害医療費救済制度を創設すること ②自動車メーカー7社は、前記制度につき相応の財政負担をすること、ということで医療費救済の制度創設を本来的要求とし、これに加えて ③国と自動車メーカー7社は申請人らに対し、各100万円を支払え、というものである。すなわち、せめて医療費救済を、ということで、要求をしぼった形で申請を行った。
2 従前の制度としては、固定発生原(工場排煙)中心の大気汚染(SO2、NO2、SPM外)を念頭において、1970年2月1日から医療費救済の特別措置法が施行され(当時、環境省は存在せず厚生省管轄)、1973年9月には、1972年7月24日の四日市ぜん息判決を基礎に公害健康被害補償法が成立し、74年9月1日から、医療費救済はもとより、生活補償や健康回復事業を含め被害者を全面的に救済することを目的として同法が施行された。
同法の財源は、固定発生源が8割、国(自動車重量税から拠出)が2割で、当時は工場排煙を中心として制度設計がなされたため、自動車排ガス(移動発生源)をも視野に入れた制度とはならず、 自動車メーカー及びその関連企業(石油関連会社外)からの財源拠出はなかった。
まさに、固定発生源中心の大気汚染に対応しての救済制度の発足となった。
3 その後、オイルショック等の発生で、前記救済制度は経団連や加害企業からたびたび制度の縮小や廃止の策動にさらされてきたが、患者会の圧倒的運動の展開の下で、これを阻止し、制度を維持、発展させてきた。
しかし、加害企業の財源拠出が年額1000億を超える頃から、経団連・加害企業からの攻撃は激しさを増し、他方、東京、川崎、大阪等々の革新時自体の下での大気汚染物資の総量規制の実施、公害被害者の要求に押されての加害企業の公害対策の前進の結果、SO2汚染については、環境基準を達成する状況となるに至った(しかし、NO2、SPM汚染は、未だ深刻な状況であった)。
加害企業は、SO2汚染のみの改善に焦点をあて、政府、環境省に対し、公害補償法の骨抜きを図るため、全国41に及び大気汚染系の公害病認定地域の指定地域解除の画策(既認定患者の救済は存続させるが、新規認定患者の認定を行わないという画策)を進めるに至った。
その結果、政府は中曽根内閣の下で臨調行革路線の一環として、補償法についてこれを改悪して指定地域を解除することとし(97年9月国会)、1988年3月1日から補償法に基づく新規認定患者の認定打切りを強行した(当時の認定患者は、約10万人で毎年、9600人が新たに認定申請)。
4 SO2汚染の一定の改善はみられたものの、NO2、SPM汚染の改善がないなかで、新規発生の患者は長期にわたって未救済のまま放置された。
しかし、この指定地域解除が誤りであったことは環境庁自らの施策の展開ですぐに明らかとなった。
88年12月21日、環境庁は「環境白書」を公表した。マスコミは一斉に「大気汚染、10年前に逆戻り」とし、NOX、SPMは一向に改善のきざしを見せていないことを報道した。環境庁は、87年の「環境白書」でも、依然、大気汚染が進行していると認めたが、その要因は、「気象現象の変化」にあると強弁した。しかし、87年、88年と2年つづいた大気汚染の悪化を前に環境庁も,自動車公害対策等で抜本的な公害対策を考慮せざるをえないとした。
すなわち、環境庁は88年3月に「大気汚染改善論」を振りかざして指定地域を解除したのにもかかわらず、88年10月には、大気汚染の悪化という深刻な事態に直面して、すなわち、87年度の三大都市地域のNO2 環境基準未達成局が91%と過去最悪を記録したことに関連して、従来、固定発生源を対象として東京、神奈川、大阪の三大都市地域で実施していたNOX の総量規制対策に、移動発生源の自動車を加える方針を確認した。
補償法の財源との関係で固定発生源を念頭におき、そして、SO2 汚染の改善に着目して指定地域の解除に踏み切った環境庁が、移動発生源をも総量規制の対象にして大気汚染の軽減化と被害の防止に踏み出すことになったのである。
そうだとすると、補償法の制度の枠組みは維持した上で移動発生源、すなわち自動車メーカー等にも財源の拠出を求め、PPPの原則に基づいて、88年以降の新規患者等についてもその救済が図られるべきことは当然のことである。
5 公害調停で、被害者が求める医療費救済制度は、環境省がこの歴史的誤りを猛省して、88年以降の大気汚染の実態とこれに起因して毎年数千人規模で発生している新規患者等について、せめて医療費救済制度を創設せよと求めるものである。
指定地域解除後、90年代から2000年代にかけて、NO2 、SPMそしてPM2.5に係る深刻な大気汚染は継続し、必然的に気管支ぜん息をはじめとする新規患者は発生しつづけた。
指定地域解除後に斗われた自動車排ガスに係る道路公害裁判は、
95年7月5日 西淀川二次~四次判決
国・公団の道路公害の責任を認める
98年8月5日 川崎二次~四次判決
国・公団の道路公害の責任を断罪し、大気汚染と被害の発生が「現在進行形」であることを認める。
00年1月31日 尼崎判決
国・公団の責任を認め、大気汚染被害が「現在進行形」で自動車排ガスの排出は直ちに差止めるべき深刻な 事態となっていると断罪し、差止認容の判決
00年11月27日 名古屋南部判決
尼崎判決と同様に差止認容。
という内容の判決を勝ちとった。
一連の判決、とりわけ、尼崎・名古屋の2つつづけての差止認容判決は、国と自動車排ガスの責任主体、自動車メーカーに速やかな公害防止対策と緊急な被害救済を要求した。それは、補償法水準の救済制度の創設を要求した。同時に「公害は終った」と喧伝する政・官・財に対する、司法を土俵としての痛烈な継続的反撃となった。
いずれにしても、裁判制度に基づく反撃は、国として、道路公害=自動車公害に対応する新たな被害者救済制度の創設を行うこと、そのためにも自動車メーカー等に財源拠出を含めた関与を強く要求するものとなっている。
他方、02年10月29日の東京の1次判決とその後の和解の成立によって、少なくとも医療費救済制度に係る国と自動車メーカーの責任関与の枠組みは、すでに示されるところとなっている。
6 今回の、公害調停は、以上の経緯をふまえて申立てられた。
以来、すでに公害調停は4回開催された。相手方となった国の対応は、一見誠実な態度を示しつつも、救済制度の必要性と重要性につき、きちんとこれを理解し、制度設計に向けて真摯に向き合うという体制に至っていない。国としてもっと積極的にイニシアティブを取り、制度の早期達成をめざすという姿勢に欠けている。
申請人団としては、国への働きかけを強める必要がある。
他方、自動車メーカーに至っては、もっと後向きの姿勢に終始している。自動車メーカーは ① 立法に関わる要求は、公害調停の土俵外 ② 制度内容につき国からの働きかけがなく不明。したがって、調停の土俵に乗れない ③ 財源は、国の外、自動車メーカー、石油業界、運輸、物販業界と(申請人は)言いながら、自動車メーカーのみを被申請人とするのは論外 ④ 東京大気訴訟で自動車メーカーは勝訴している(責任なし)。そのなかで高裁和解には一定の財源を拠出し、協力している、と主張し、さらには法的責任の枠組みは置いておくとして、医療費救済で「社会的責任」を果せと言われても、自動車メーカーは低公害車の開発で社会的責任は果している、として開き直りの対応を示し、公害調停は早期に打ち切り、調停不調にしろと、公調委に迫っている。
7 公調委は、被申請人、とりわけ、自動車メーカーの強硬な開き直り姿勢のなかで、申請人側からみて、若干、自動車メーカーに迎合的という姿勢を示しつづけていたが、第4回調停(11月27日)において、調停を早期に打ち切れという自動車メーカーの「言い分」を拒絶し、年明け以降の調停期日では大気汚染とぜん息等の発病・増悪の因果関係、いわゆる一般的因果関係につき、申請人側のプレゼンテーションをうけるとして、調停内容に一歩踏み出すことを宣明した。
申請人としては、これにつづき、公調委がまだ乗り気を示していない責任論(国との関係では、規制権限不行使論、自動車メーカーの関係では、不法行為に係る過失論)について、申請人主張の認否、反論を迫り、一気に調停手続を軌道に乗せたいと考えている。
また、公調委として大気汚染の現場、申請人の生活の場を直接見分する必要があるとして、東京(2ヵ所)、名古屋、大阪の「現場検証」申請につき、早期に採用すべきであると迫っている。
いずれにしても、調停手続き自体、裁判と異なり、そう長期にわたるものではなく、本年度がまさにそのヤマ場、正念場となっている。
(2020.1.15記)
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|台風19号 多摩川水害を考える川崎の会 学習会のお知らせ(川岸卓哉)
2020年1月9日 木曜日
当事務所の川岸卓哉弁護士も呼びかけ人である台風19号 多摩川水害を考える川崎の会が、台風19号による多摩川流域の被害について、学習会を開催します。
川崎市内における台風19号水害の原因と責任を明らかにし、被災者の生活再建を目指し、水害の不安に脅かさることなく安心して暮らせるまちにするために、一緒に学びませんか。
日時 : 2020年1月15日(水)19時より
場所 : 川崎市総合自治会館ホール(1階)
川崎市中原区小杉町3-1 (JR南武線・東急東横線武蔵小杉駅 徒歩7分)
第 1 部 講演 小森次郎 さ ん( 帝京平成大学 准教授)
小森先生は溝の口にお住いで、日頃から温暖化による環境変化や災害の調査・研究をされています。
このたびの台風19号被害でも、市内の実態調査を行っており、直近の日本学術会議公開シンポジウム「令和元年台風第19号に関する緊急報告会」(2019/12/24)においても報告をされたばかりです。今回、台風19号による川崎市内の」被害について、科学的、客観的な視点からお話いただきます。
第2部 意見交流と今後の対策について
他の専門分野からの助言・報告
各地域での被害状況と意見交流
「多摩川水害を考える川崎の会」としての今後の活動について
水害の原因究明・賠償・再発防止の新たな「請願署名」にもご協力をお願いします。
ご連絡・お問合せ先
Mail:suigai.no@gmail.com
〒210-8544 川崎市川崎区砂子1-10-2
ソシオ砂子ビル7階 川崎合同法律事務所内
TEL 044 211 0121
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|日産非正規切り事件が全面解決しました!10年間にわたるご支援ありがとうございました。(弁護士 藤田温久)
2019年12月10日 火曜日
1 日産非正規切り事件とは
2009年2月、日産のカルロス・ゴーンCEOが、リーマンショックによる「経営不況」を理由に約2万5000人の人員削減を発表。国内約8000人もの非正規労働者(派遣労働者・契約社員等)を契約解除・雇止めにしました。その中に本事件の申立人5人(日産自動車に派遣されていたデザイナーA氏、B氏,期間工C氏、日産車体の期間工D氏、E氏)もいたのです。
5人は同種の正社員と全く同じかそれ以上の仕事をしていましたが、契約の形式が正社員ではないというだけの理由で物のように切り捨てられたのです。しかも、「経営不況」とは名ばかりで日産は同年5月には一部増産に転じた程です。正社員ならば絶対に解雇できない場合でした。「非正規労働者」とは、「正社員」ならば法律上解雇することができない場合にも会社の勝手な都合で解雇できるように契約形式だけを擬装したものに過ぎなかったのです。5人はそれぞれ日産自動車と日産車体へ地位確認を求め提訴しました。しかし、裁判所は日産が労働者派遣法等に違反している事実をいくつも認めたにも拘わらず5人の訴えを退けました。
2 県労委が日産をA氏B氏の「使用者」と認める画期的命令!
訴訟と並行して、5名の加入するJMITU(日本金属製造情報通信労働組合)は、日産自動車及び日産車体に本件解決を求めて団体交渉(「団交」)を申入ました。しかし、日産自動車は、A氏、B氏は派遣社員であり自社と雇用関係にないから自らは「使用者」(労組法7条)に該当しないとして団交を拒否しました。また、C氏については団交には応じましたが「裁判で解決済」と繰り返すだけの形式団交に終始しました。日産車体のD氏、E氏に対する対応も同じでした。そこで、JMITUは、日産自動車・日産車体を相手に、両社の行為が不当労働行為に該当するとして、誠実に団交に応じよとの命令を求めて、神奈川県労働委員会(県労委)に救済を申立てました。
2018年1月、県労委は,「日産自動車は派遣元によるA、Bの採用及び雇用の終了につき、事実上、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定していた」「日産自動車は、A、Bの復職を巡る労使紛争を解決できる地位と権限がある、組合との団交によって紛争を自主的に解決すべき当事者性も有する」として日産自動車は労組法7条2号の「使用者」に当たると判断し、団交に応じるよう命令しました。また、Cについては「組合の要求」は裁判とは異なるものでしたが、「裁判と同様であると決めつけて誠実な対応行わず」「実は組合の要求など一切まともに検討していない」として不誠実な団交であったことを認め誠実に団交せよと命令しました。
3 和解=全面解決
県労委命令に続き中央労働委員会の審議は1年以上続きましたが、和解勧告を受けて協議し、2019年8月19日、JMITU神奈川地本と日産自動車・日産車体との間で和解が成立し、10年以上にわたって続いた日産非正規切り事件が全面解決しました。
4 リーマンショック後の非正規切り闘争の意義
リーマンショック後、全国で数十件の非正規切り争議が闘われてきたが、本日産非正規切り争議の全面解決によってほぼ全事件が収束した。
私は、いすゞ、資生堂・アンフィニ、ラデイアホールデイングス、日産・日産車体等、この10年間非正規切りに対する派遣先・注文先あるいは有期契約先大企業の雇用者責任を追及し続けてきました。今、10年の闘いを振り返って、大きな成果があったと考えています。先ず、リーマンショック以前には非正規労働者で権利闘争に立ち上がる人はほとんどいませんでした。何故なら、非正規労働者には闘いに立ち上がるための労働組合活動の経験もなければ最低限の蓄えもなかったからです。しかし、それが、リーマンショック後、全国でわき起こった派遣村や非正規切りに対する怒りの世論の後押しを受け初めて労働組合に入り、生活を維持しながら闘う術を確立し闘うことができたのです。そして、資生堂・アンフィニ事件を始め相当額の解決金や謝罪より大企業に明確に雇用者責任をとらせる大きな勝利的解決を導き、非正規労働者を物として扱ってきた大企業にと対し(正社員は「人事部」が扱い、派遣社員は「購買部」が扱う等)何をしても許される物ではなく非正規労働者も人なのだということを示したことが大きな意義があったと思います。
次に、この闘いにより、労働組合、学者、文化人、国民の中に非正規問題を持ち込み、それぞれの立場から様々な方法で事件を支援し、運動が広範に広がったことが重要でした。それは世論を変え、不当に雇用者責任を免れようとする大企業の策動に一定の規制をかけることにつながりました。相当数の大企業が非正規の正規化に着手しました。
また、立法闘争に立法事実を与え続ける根拠となり、労働者派遣法や労働者契約法に非正規に対する不当な差別的取扱を止めさせる、まだ全く不十分ですが雇用者責任を一定程度果たさせる法改正につながりましました。
最後を飾った日産争議において、前述の通り、県労委命令により派遣先である日産自 動車が団交の「使用者」であることが認められ、その命令が覆されなかったことも重要 です。今後、派遣労働者が派遣先と団交し闘う基礎となり得るものです。
まさに、10年の闘いは大きな成果を上げてきたのです。
しかし、なお、大企業との傀儡である政府は非正規労働者の増大を画策し、その権利を制限し、雇用責任を一層逃れる策動を続けています。今、「無期雇用転換」逃れの雇い止めや、労働者の請負化の推進など枚挙に暇がありません。安倍「働き方改革」もその指向性は明白です。 私は、引き続き望めば誰もが正社員として働ける社会、裏返せば、労働者を使用して利益を上げる者は雇用者責任を果たす社会実現のために闘ってゆく決意です。
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|西村隆雄 写真展-ローカル鉄道の四季-開催のお知らせ
2019年12月6日 金曜日
当事務所の弁護士 西村隆雄の写真展が開催されます。是非、お運び頂ければ幸いです。
日時:2019年12月9日(月)~23日(月) (火・水休み)
10:30~16:00(初日12:00~、最終日~14:00)
会場:カフェギャラリーBOJO(八王子市南大沢2-220-5)
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|生活にご不安はありませんか?高齢者の財産管理、一緒に考えます(弁護士 小野通子)
2019年11月22日 金曜日
皆さんは、ご自身やご両親の現在、将来の生活にご不安はありませんか?川崎合同法律事務所では、高齢者の財産管理について、以下のような制度をご案内しております。
豆知識
成年後見制度
ご本人の判断能力が低下した以降に、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理等をするもの。
見まもり財産管理契約(ホームロイヤー契約)
定期の安否確認・法的助言に加え、通帳等を預かり、代理人としてご本人の財産を管理するもの。
家族信託
ご本人が、預貯金や不動産を親族(受任者)に移転し、その親族がご本人に代わって当該財産を管理するとともに、ご本人に生活費等を定期的に交付等するもの(法律上、弁護士が受託者とはなれません)。
任意後見制度
ご本人の判断能力に問題がない時点で、ご本人の判断能力が低下した時に備えて、財産管理を委任しておく契約で、ご本人の判断能力が低下した時に、家庭裁判所の判断を経て効力が発生するもの。
死後事務委任
ご本人が事故の死後の事務(葬儀や施設利用料の支払い等)について委任するもの。パソコンや携帯のデータの削除や、ペットを施設に預けたりする手続を依頼する等も考えられます。
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|2019ひとり親家庭応援フェスタ!!atサン・ライヴの法律相談を川口彩子弁護士が担当します
2019年11月21日 木曜日
2019年12月1日(日)に、川崎市母子・父子福祉センターサン・ライヴで開催される、2019ひとり親家庭応援フェスタ!!の法律相談を、当事務所の川口彩子弁護士が担当します。
主催:川崎市母子・父子福祉センターサン・ライヴ、一般財団法人川崎市母子寡婦福祉協議会、川崎市
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|台風19号 多摩川水害を考える川崎有志の会(仮称) 学習会のお知らせ
2019年11月18日 月曜日
日時:12月4日(水)19時より 場所:川崎市総合自治会館ホール
川崎市中原区小杉町3-1 (JR南武線・東急東横線武蔵小杉駅 徒歩7分)https://www.jichizaidan.or.jp
台風19号は、川崎市民にも大きな被害をもたらしました。
特に、川崎市の管理する多摩川の4か所の排水樋管(山王、宮内、諏訪、宇奈根)の水門が閉じられなかったため、多摩川から逆流した水は、周辺地域を襲い、住民の命と住居、生活を脅かしました。
そもそも、水門管理者は住民を水害から守ることを第一に考える立場にありますが、川崎市は、マニュアルに従った「総合判断」だったと説明します。
しかし、報道では、専門家からも逆流が予想される状況で閉門をしなかったことに疑問が呈されているところです。川崎市には今回の水害の責任はないのでしょうか。
被災地域の有志で、今回の水害の原因を考える学習会を緊急開催することになりました。今回の被害の責任を明らかにし、被災者の生活再建を目指すとともに、二度と水害の不安に脅かされることなく安心して暮らせる川崎の街にするために、一緒に考えませんか
〈学習会の発言予定者〉
〇坂内 亮さん 国土交通省関東地方整備局 元職員
〇川岸卓哉さん 川崎合同法律事務所 弁護士
【台風19号 多摩川水害を考える川崎有志の会(仮称)準備会】
ご連絡・お問い合わせ先 Mail:suigai.no@gmail.com
●川崎(山王町)090-6702-6925
●長谷川(宮内)044-755-0007
●川岸(川崎合同法律事務所)044-211-0121
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|川崎市内や多摩川周辺で台風被害(浸水被害,土砂災害,洪水被害等)に遭われたみなさまへ(弁護士 山口毅大)
2019年11月7日 木曜日
台風19号の被害に遭われたみなさまに対して,お見舞い申し上げます。
台風被害に遭われて,各種の支払等で苦慮されてお困りの方も多いと思います。
被害の状況によっては,各種税金,社会保険料が減免,猶予される場合があります。
また,任意保険によって,損害が填補される場合もあります。
さらに,台風による大雨,暴風が一因であっても,第三者が適切な行為をしなかったり,第三者が管理する物によって,損害が生じた場合,その第三者に対して,損害賠償請求することができる場合もあります。
当事務所には,かつての多摩川水害訴訟(最高裁で破棄差戻となり,差戻控訴審で勝訴)において,住民側の弁護団に加わった弁護士もおり,その時の知識と経験が当事務所内で共有されています。
川崎市,川崎市に隣接する世田谷区等で台風被害に遭われた市民のみなさまの力になりたいと思っております。
おひとりで悩まれることなく,ぜひ一度ご相談ください。
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