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子どもが自分で弁護士をつけられる!~子どもに対する法律援助について~(弁護士 畑 福生)

2021年1月25日 月曜日

 親から辛い目にあわされてやっとの思いで家から逃げてきた。代わりに親と話してほしいけど、お金がないから弁護士なんて頼めないよね?

 そんなことはありません。

 「子どもに対する法律援助」という制度があります。
(※以下結論をいち早く知りたい方は「☆」の付いた太字の部分だけでも読んでみてください。)

 

1 「子どもに対する法律援助」とは

 日本弁護士連合会という日本の全ての弁護士が登録している組織が、人権救済のために、弁護士から徴収した会費を主な財源とし、法テラスによる民事法律扶助制度や国選弁護制度等でカバーされていない方を対象として弁護士費用等を援助する法律援助事業を行っています。日弁連は、総合法律支援法に基づき、この事業を2007年10月1日から法テラスに委託して実施しています(日弁連委託援助業務)。
 この事業の中に「子どもに対する法律援助」があります。
 なお、日弁連は「子どもに対する法律援助」以外にも様々な法律援助事業を委託しています。こちらをご参照ください。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/justice/houterasu/hourituenjyojigyou.html

 

☆ 要は、子どもが自分で弁護士をつけるための費用を出してもらえる制度があるということです。

 

2 「子どもに対する法律援助」でできること

 援助の対象となる活動は以下のとおりです。

⑴ 行政手続代理等

・ 行政機関(特に児童相談所)、児童養護施設等の施設との交渉の代理
・ シェルターその他の施設等への入所へ向けた支援、入所中の支援、施設等から自立的生活への移行へ向けた支援
・ 虐待等を行う親との交渉に関する代理、親との関係調整活動
・ 児童虐待事件に関する刑事告訴手続の代理、刑事手続で証人として出廷する子どもの援助
・ 学校等において体罰、いじめ等の人権侵害を受けているが、保護者が解決しようとしない事件についての交渉代理
・ 少年法第6条の2第1項の調査に関する付添人活動

 

⑵ 訴訟代理等(⑶以外)

・虐待する養親との離縁訴訟、扶養を求める調停や審判手続等の法的手続の代理(親権者の協力が得られないため、民事法律扶助の申込みができない場合)及びこれに関わる法的手続の代理

⑶ 子どもの手続代理人

・ 家事調停手続、家事審判手続、ハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の手続及び即時抗告の手続(ただし、除外事項あり)における手続代理又は当事者参加申出、利害関係参加申出、利害関係参加許可申立て及びハーグ条約実施法に基づく子の返還申立事件の手続への参加申出の手続代理並びにそれらの支援

⑷ 以上に関わる法律相談

 

☆ これらの中でもとりわけ、親との交渉や裁判手続のために弁護士をつけられるのがこの制度の良い所です。

 

3 「子どもに対する法律援助」を利用するために

利用するためには以下の3つの要件を満たす必要があります。

① 虐待や体罰、いじめ等により人権救済を必要としている子ども(20歳未満)等の対象者に該当すること(※貧困、遺棄、無関心、敵対その他の理由により、その子どもの親等各申立権のある親族から協力を得られない場合に限られます)。

② 資力要件(例えば手取り月収が単身者で20万1,000円以下であることなど)。

③ 事件について弁護士に依頼する必要性・相当性があること。

 

☆ 以上の要件はありますが、親などから辛い目にあわされている子はこの要件を満たす場合が多いです。利用に当たっては弁護士を通じての申込みが必要となりますので、お気軽にご相談ください。

 原則として「子どもに対する法律援助」利用にかかる相談は、法テラスを利用して無料にて承ることができます。

 

4 よくある質問

Q1:本当に無料なの?

A1:原則として無料で、援助を受けた報酬、費用について、申込者の負担はありません(法テラスから担当弁護士に支払われます)。ただし、現実に利益が得られた場合などについて例外もあります。(詳細は次の法テラスウェブサイト参照。https://www.houterasu.or.jp/higaishashien/seido/kodomo_houritsuenjo/index.html

 

Q2:弁護士をつけるのに親の同意はいらないの?

A2:子どもに対する法律援助の利用に当たって、親などの法定代理人の同意を得る必要はありません。
 弁護士に事件を依頼する委任契約などの「契約」は、通常、民法5条1項本文及び同2項に基づいて、親権者の同意がない限り、取り消すことができます。しかし、親などの法定代理人を相手に交渉などを行う場合に、親などの法定代理人が、弁護士と子どもとの間の委任契約を取り消せるとしてしまうと、子どもは弁護士をつけられず、子どもに対する法律援助の意義がなくなってしまいます。そこで、子どもに対する法律援助では、子どもの金銭的な負担をなくすことによって、民法5条但し書き(「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」)に基づき、委任契約の取消しを防いでいます。子どもは負担なく単に法律サービスを受けるだけという扱いです。

 

5 最後に

☆ 川崎合同法律事務所では、子どもが 「自分のことは自分で決める」ことを応援します。困っている場合はすぐにご相談ください。
 辛い立場に置かれた子どもを支援されている方も、子どもに対する法律援助の利用含めて、その子のために何ができるか一緒に考えて行けたらと思いますので、お気軽にご相談ください。
 原則として「子どもに対する法律援助」利用にかかる相談は、法テラスを利用して無料にて承ることができます。

 

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

知る権利と情報公開請求(弁護士 小林展大)

2021年1月25日 月曜日

小林展大弁護士については、こちらをご覧下さい。

 

第1 知る権利

 憲法21条1項は,「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。」と規定していて,これは表現の自由を保障したものです。表現の自由は,個人が言論活動によって自己の人格を形成・発展させる自己実現の価値,言論活動によって国民が政治的意思決定過程に関与するという自己統治の価値があるので,極めて重要な基本的人権とされています。
 表現の自由は,思想・情報等の伝達の自由ですが,一方では思想・情報等の受け手を前提としているから,高度に情報化され,大多数の国民が情報の受け手に固定化されている現代社会においては,情報の受け手側から表現の自由を構成すべく,知る権利が保障されているのです。

 

第2 情報公開請求

1 知る権利を具体化するものとして,情報公開制度があります。

 国の行政機関に対する請求は,行政機関情報公開法,独立行政法人に対する請求は独立行政法人情報公開法,地方自治体に対する請求は地方自治体の情報公開条例に基づいて請求することになります。
 なお,裁判所については,行政機関情報公開法の適用はありませんが,司法行政文書開示申出という制度があります。

2 情報公開請求をするにあたり,請求書の書式をホームページ等に掲載している地方自治体,行政機関もありますので,案内にしたがって,請求書の必要事項を記入することとなります。
 請求する情報,文書の名称等の欄には,どのような文書の開示を受けたいかを書くことになります(場合によって,問合せがあったり,補正を求められたりすることもあります。)。
 請求書に必要事項を記入したら,手数料分の印紙を貼付して郵送すれば手続ができます(FAX送信を受け付けているところもあります。)。
3 請求後は,一定の期間内に請求者に開示・部分開示・不開示の決定がなされます(決定が延長されることもあります。)。
  開示の実施の方法は,閲覧,写しの交付等の方法があります(コピー代等の費用負担を求められます。)。

4 開示・部分開示・不開示決定につき,不服がある場合には,一定期間内に不服申立をすることができます。

  ⑴ 審査請求という不服申立をする場合には,審査請求書という書面を提出して,不開示処分の取消しを求めたり,対象文書の追加特定を求めたりします。
    行政機関,地方自治体からは,弁明書,理由説明書等の書面が提出されることがあり,それに対して,請求者は反論書,意見書等の書面を提出することがあります。
    そして,情報公開・個人情報保護審査会,行政不服審査会に諮問され,その後,情報公開・個人情報保護審査会,行政不服審査会が答申を取りまとめて提出すると,これを受けて諮問庁が裁決することとなります。

  ⑵ 不服申立として訴訟をする場合には,不開示処分等の取消しの訴え等を提起することとなります。そして,裁判所で審理がなされます。

 

第3 マイナンバー違憲訴訟と情報公開請求

 マイナンバー違憲訴訟が進行するにつれて,次々とマイナンバーが漏え いする事故が発生しています。
 マイナンバーを取扱う業務については,委託元の許諾を得なければ再委託してはならないこととなっています(番号法10条1項)。しかし,委託元の許諾を得ずにマイナンバーを取扱う業務を再委託して,マイナンバーが大量漏えいするという事故が続発したことから,マイナンバー違憲訴訟弁護団は,知る権利を行使して,その事故が発生した地方自治体,行政機関に対し,情報公開請求及び審査請求をして,口頭意見陳述も行って攻勢をかけています。
 マイナンバー違憲訴訟は,このようにして情報公開請求を駆使して,知る権利運動を展開しているのです。

以 上

 

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

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