ブログ

ブログ

労働者追い出しに加担するブラック産業医  客観性、中立性を担保する制度導入を(弁護士 川岸卓哉)

2019年5月7日 火曜日

パワハラや過重労働によるメンタル疾患によって休職を余儀なくされる従業員は近年、増加の一途を辿っている。メンタルヘルス問題への対応が、社会的にも重要な課題となっている。
2015年12月より企業で労働者に対するストレスチェック制度が始まり、強いストレスを抱えた労働者の面談指導に関与することなど産業医の果たす役割が重要性を増している。
しかしその職責を裏切り、企業のクビ切りに露骨に加担する「ブラック産業医」の問題がクローズアップされている。

1 ブラック産業医問題とは
産業医の重要な仕事の1つに、職場復帰の支援がある。休職した従業員の復職可否の判断に当たっては産業医の判断が重視されているが、従業員の復職を認めず、休職期間満了で退職に追い込む「クビ切りビジネス」に手を染める産業医も存在する。すなわち、メンタル疾患に罹患する労働者の増加に伴い、産業医に期待される客観的・中立的・専門的立場に反し、専ら会社に迎合して労働者を退職に追い込む「ブラック産業医」が増加している。この問題について、実例とともに厚生労働省申し入れ、その後の法改正について報告する。

2 産業医によって2人が退職に追い込まれた神奈川SR事件
 復職不可の産業医意見を正面から争った事件として、神奈川SR経営労務センター(以下「SR」という)事件をめぐる裁判がある。
SRの職員だったAさんは、職場のパワハラやいじめに悩まされ、うつ症状を発症。2014年5月に休業に入った。その後体調が回復したので、復職を可能とする主治医の診断書を添えて復職を申し出たが、SRは復職を認めなかった。産業医がAさんの復職を否とする意見書を出したからであった。Aさんは2015年6月、休職期間満了で退職扱いにされた。
産業医はAさんと30分ほどの復職面談を1回しただけであった。主治医に対して問い合わせをすることは一度もなく、心理検査もしないで「統合失調症」「混合性人格障害」など、Aさんがこれまで一度も受けたことのない病名をつけて復職不能の進言をした。
同じくSRの職員であるBさんも、この産業医の「復職不可」判断によって2015年、SRから退職させられた。AさんとBさんがSRを相手に提起した地位確認請求訴訟は、一審横浜地裁、二審東京高裁ともAさんBさんが勝訴し、復職が認められた。裁判では、産業医の意見の信用性は完全に否定された(現在、SRが最高裁に上告中)。
その後、AさんとBさんはさらに2018年12月、産業医及びSRに対し①違法な復職妨害②「人格障害」「統合失調症」「自閉症スペクトラム障害」という根拠のない病名を付されたことなどによる名誉棄損に基づく損害賠償を求めて提訴。「ブラック産業医」問題の責任の追及を続けている。

3 ブラック産業医が生まれる温床と厚生労働省申し入れ
医師にとって産業医への参入障壁は低い。医師であれば専門分野を問われず、わずかな時間の講習を受けるだけで産業医の認定を受けることができるからである。
大企業では専属産業医の選任が義務付けられている。しかし専属産業医を選任する義務のない中小企業では、嘱託産業医が多数の企業を掛け持ちすることによって、手軽に高額の報酬を受けることもできる。
産業医の職務については客観性、中立性、専門性を担保する制度が事実上ない。産業医個人の自覚に拠るしかない。こうした現状が、高額な報酬につられて使用者への安易な迎合に走る「ブラック産業医」が生まれる温床になっている。
AさんBさんを始め、主治医の復職可能判断が産業医によってひっくり返され復職を拒否された3人の労働者が2017年4月、厚生労働省や関係機関に対し、産業医の客観性・中立性の担保を求める申し入れを行った。
申し入れたのは、(1)復職の可否について、産業医と主治医の判断が異なる場合、産業医が主治医に十分な意見聴取を行うことを法令で義務化すること、(2)法令による産業医に対する懲戒制度の創設、(3)メンタルが原因による休職の場合、精神科専門医でない産業医が復職の可否を判断できないようにすることなどであった。
厚生労働省への申し入れは、メディアを通じて「ブラック産業医」の存在を広く社会に問題提起するきっかけになった。産業医関連団体へのインパクトは大きく、問い合わせも多く受け、その後の法改正にも影響を与えたようである。

4 労働安全衛生法改正と産業医の在り方
近年、産業医に関する労働安全衛生法の改正が進められている。労働者の健康管理における産業医の義務の強化として、労働安全衛生法第13条と14条で、産業医は知識と能力の維持向上に努め、誠実に職務を行わなければならないという項目が追加された。他方、産業医の権限強化として、事業者は、労働時間に関する情報やそのほか必要な情報を産業医に提供しないといけないこととなった。このほかに産業医の権限を担保するため、産業医の勧告と地位の確保、健康情報管理の構築なども定められた。
かつて労働災害の発生原因は、製造工場などでの危険作業等が主であったが、最近は、オフィスでの長時間労働や人間関係のトラブルが心理的負荷となって精神疾患を発症するという労働災害が急増傾向にある。法改正による産業医の権限の強化は、これらの変化を背景としている。
産業医は、労災予防のため、職場巡視で外見からわかる職場の危険だけでなく、職場の内実に迫り危険性を把握する必要がある。法改正の趣旨に則って産業医の的確な権限行使がなされれば、現代の職場における精神疾患発症を防ぐことに役立つ可能性はある。
しかし残念なことに産業医が十分に機能していないというケースは少なくない。機能していないどころか、職務の客観性、中立性を曲げて、労働者の不当な追い出しに加担する「ブラック産業医」まで散見され、多くの労働者が泣き寝入りせざるを得ないケースも少なくないと考えられる。
本来、産業医には、労働災害を防ぐ「番人」としての役割が期待されている。産業医には、長時間労働の実態など職場状況をしっかりと把握し、会社に対して臆することなく意見を述べ、是正を求める姿勢が求められる。
産業医の職務の中立性は、これまでは職業倫理に支えられてきたものの、それだけでは不十分である。産業医の職務怠慢や会社への不当な迎合を制度的に防ぐため、産業医の客観性・中立性を担保する懲戒制度などを設けることも課題である。                 
(以上は公益社団法人自由人権協会の会報に寄稿した内容です)

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q パワハラ-会社で、上司や同僚から、「仕事だから」と理不尽な仕事を押し付けられて、いじめを受け続けており、うつ病になりました。どのようにしたら良いでしょうか。

2019年5月2日 木曜日

A いじめが業務として行われる(長期間の自宅待機や過大なノルマの押し付け等)は、もちろん、業務以外の理由で発生するいじめ(いわゆる村八分やセクハラ等)であっても、違法性が認定されれば、会社に対して債務不履行責任ないし不法行為責任の損害賠償責任を請求できます。あなたの場合、いじめが業務命令を理由としてなされていますので、違法性については、(1)業務上の必要性、(2)違法目的の有無、(3)労働者の被る不利益を基準にして考えることになります。いじめの実態を把握する必要がありますので、つらい作業になりますが、録音、ビデオテープ、写真、その場その場で日付を書いて詳細なメモをとる等して、いじめの事実をできる限り詳細に集めておくの良いでしょう。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 配転命令-営業職として、東京で10年以上にわたって働いています。会社から、地方に技術職として勤務するように、配転命令を受けました。会社の命令に応じなければならないのでしょうか。

2019年5月1日 水曜日

A 配転命令は、配転を命じる労働契約上の根拠があり、かつ、その配転命令権の範囲内でなければ、無効です。そして、配転命令が有効であるためには、
(1)労働契約上、配転命令権の根拠があり、その範囲内であること、

(2)法令違反等がないこと、

(3)権利濫用でないこと(労働契約法3条5項)、

が必要です。

 (3)の判断要素として、当該人員配置の変更を行う業務上の必要性の有無、人員選択の合理性、配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされているか否か、当該配転が労働者に通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものか、その他上記に準じる特段の事情の有無(配転をめぐるこれまでの経緯、配転の手続)があげられます。あなたの場合、(3)の基準からして、権利濫用により、無効になると考えられますので、配転命令の撤回を求めつつ、会社が撤回しない場合に備えて、労働審判、仮処分、訴訟等の法的手段を検討すべきでしょう。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 離婚した場合、名字はどうなるのですか。また、子の名字はどうなるのですか。

2019年4月8日 月曜日

A
 婚姻によって氏(名字を法律上「氏」といいます。)を変更した場合、婚姻前の氏に戻るのが原則です。婚姻中の氏をそのまま使用したい場合には、通常は離婚届と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しますが、いったん旧姓に戻っても、離婚の日から 3か月以内に市区町村に上記の届出をすれば、婚姻中の氏が使えます。
  お子さんについては、離婚届を提出すると夫婦は別々の戸籍になりますが、お子さんの戸籍は元の戸籍にとどまります。したがってそのままでは名字は変わりません。たとえば、離婚によって母が旧姓に戻り、親権者である子の名字も母の名字(旧姓)と一緒にしたい場合には、子の住所地(この例だと元夫の住所地)の家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申立てをし、審判決定を得て、同決定書を市区町村に届け出ることによって、はじめて子の戸籍が母の下に移り、子の氏が変更されることになります。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 離婚に際して、年金分割の申立てをしたいのですが、どのようにしたら良いのでしょうか。

2019年4月7日 日曜日

A
 離婚時の厚生年金の分割制度とは、離婚をしたときに、相手方の厚生年金・共済年金の標準報酬を当事者間で分割することができる制度です。相手方が国民年金のみの場合には、年金分割の制度はつかえません。年金分割制度には、「離婚時の厚生年金の分割制度」と、平成20年4月1日以降の婚姻期間についての年金を届出によって自動的に分割する「離婚時の第3号被保険者期間についての厚生年金の分割制度」の2種類があります。平成20年4月1日以前の婚姻期間についての分割を求めたいときは、公正証書を作成するか、家庭裁判所に対し年金分割を求める調停の申立てをすることになります。調停を申し立てる際には、家庭裁判所に、「年金分割のための情報通知書」の提出が必要になりますので、社会保険事務所で発行してもらう必要があります。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 離婚に際して子どもを養育することになったのですが、養育費はいくら請求できるのでしょうか。また、相手方が子どもに会いたいと言っているのですがどうしたらよいのでしょうか。

2019年4月6日 土曜日

A
 養育費を支払う期間、金額は法律には規定がありません。養育費は未成年者の子に対して支払われるものなので、子が成人(20歳)になる誕生日の月まで、あるいは子が大学を卒業するまで、月々何万円を支払うという定め方をするのが通常です。また、進学、病気、災害等の緊急の出費の必要が生じた場合には、お二人の協議によって、月々の養育費以上の金額を支払うというような約束をあらかじめしておくことも多くあります。具体的な金額については、当事者双方の収入を基準に養育費算定表を参考にするのがよいでしょう。
  両親が離婚しても、お子さんにとっては、離れて暮らす親も親であることには変わりありません。自分の親がどのような人であるのかは、お子さんにとっても知る権利がありますので、お子さんのためにも面接交渉の機会はできるだけ設けたほうがいいと思います。親権者である相手方から子どもと会うことを拒否された場合には、子を養育しない親が、面接交渉を求める調停ないし審判の申立てをすることになります(家事審判法9条1項乙類4号)。面接交渉が認めれられる場合には、1か月に1回から6カ月に1回の面接交渉が認められることが多いです。しかし、子ども本人や親権者が面接交渉を希望しないことも多く、子の順調な生育に差し支えがあると裁判所が判断する場合は、面接交渉が認められないこともあります。  なお、養育費や面接交渉については、いったん裁判所で決定しても、事情が変われば増額、減額、変更の調停または審判の申立てができ、変更される場合もあります。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 離婚に際して、相手方に財産分与を請求したいのですが、どのくらい請求できるのでしょうか。

2019年4月5日 金曜日

A
 民法768条3項は、財産分与請求権について、「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与させるべきか並びに分与の額及び方法を定める」と定めています。婚姻中の夫婦財産の清算として、不動産、預貯金、株式、貴金属、家具などが、財産分与の対象になります。遺産は、当事者一方の固有財産となるので、財産分与の対象にはなりません。財産分与の額を決めるにあたっては、

【1】婚姻中夫婦の一方が負担した生活費の清算、

【2】離婚後の一方の他方に対する扶養、

【3】離婚慰謝料の要素等

が加味されて、当事者一方の割合が増えることも減ることもありますが、原則としては、誰の名義になっているかを問わず2分の1ずつの平等となります。また、別居後に大きく財産が変動する場合もありますが、原則は別居時を基準として財産分与の額を算定します。まずは分かる範囲でお二人の間にどのような財産があるのかを把握しましょう。離婚成立までに、財産隠しをされてしまうおそれがあるときは、仮差押え等の保全処分をとることができる場合もありますので、心配な方はご相談ください。なお、財産分与請求権には時効があり、その期間は離婚が成立したときから2年ですので注意しましょう。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 離婚に際して相手に慰謝料を請求したいのですが、どのくらい請求できるのでしょうか。

2019年4月5日 金曜日

A
 慰謝料は、不貞(浮気)、暴行、虐待、侮辱など、相手方から受けた不法行為による精神的苦痛に対して支払われる損害賠償です。通常は離婚前に、協議、調停、裁判の場で慰謝料の話し合いをします。請求できる慰謝料の金額、いわゆる相場についてはケースバイケースです。不法行為の程度、婚姻期間等が考慮要素になりますが、相手方に支払能力があるのかないのかが、一番大きなポイントです。なお、慰謝料請求権には時効があり、離婚が成立した時から3年経つと請求ができなくなりますので(民法724条)注意しましょう。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 夫(妻)との離婚を希望しており別居しているのですが、相手が生活費を渡してくれません。どうしたらよいのでしょうか。

2019年4月4日 木曜日

A
 夫婦は、その財産、収入、その他いっさいの事情を考慮して、生活費を分担する義務を負います(民法752条)。これを婚姻費用といいます。婚姻費用は、通常、収入が多い方が少ない方の負担をすることになります。その際、金額の目安となるのが、婚姻費用の算定表です。当事者間で協議しても相手が生活費を渡してくれないままのときは、家庭裁判所に、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てましょう。相手方が調停で調停委員会の解決案に応じない場合は、調停は不成立となりますが、自動的に審判に移行して、家庭裁判所が当事者双方の収入を見て、審判によって婚姻費用を決定することになります。離婚調停の申立てと同時に婚姻費用分担の調停を申し立て、離婚が成立するまで婚姻費用を受け取りながら離婚手続を進めることもよくあります。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

Q 調停では相手方が離婚に応じてくれず調停不成立となりました。その後の手続はどうしたら良いのでしょうか。

2019年4月3日 水曜日

A
  裁判に移行して離婚の判決を得るしかありません。相手方が離婚を拒否しているにもかかわらず、判決で強制的に離婚を成立させるものであるため、お二人の間に法律の定める離婚原因があることが必要です。民法770条1項は離婚原因として、
【1】不貞行為(浮気)、
【2】悪意の遺棄(勝手に出ていく等)、
【3】(相手方の)3年以上の生死不明、
【4】(相手方の)回復の見込みのない強度の精神病、
【5】その他婚姻を継続し難い重大な事由を規定しています。
 あなたの考える離婚原因が、法律上の離婚原因に該当するかどうかは、別居期間等も考慮した具体的事情によって判断することになります。あなたのご事情を弁護士にご相談ください。

投稿者 川崎合同法律事務所 | 記事URL

カテゴリ一覧

月別アーカイブ

まずはお電話でお話してみませんか

まずはお電話でお話してみませんか

まずはお電話で
お話してみませんか