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Q 寄与分、特別受益-相続分の割合が増えたり、減ったりする場合があるのですか。

2018年6月11日 月曜日

 A
 被相続人の生前に同居や介護などをし、相続財産の維持や増加に貢献した相続人に対し、その貢献を評価して、貢献に相当する額の財産を得ることを認める制度を寄与分といいます。寄与分が認められれば、その相続人の相続分の割合が増えます。
共同相続人中に、亡くなった被相続人から遺言で贈与を受けたり、婚姻、養子縁組のためあるいは生計の資本として生前に贈与を受けた相続人を、特別受益者といいます。その相続人は、相続分の前渡しを受けたものとして、相続人間の公平を図るため、遺産分割の際にその相続分を減らされます。

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グリーンディスプレイ青年過労事故死事件画期的勝利和解-通勤帰宅途上の過労事故死にも会社に安全配慮義務違反を認める(弁護士 川岸卓哉)

2018年6月5日 火曜日

グリーンディスプレイ

1 過労運転を原因とする通勤災害に安全配慮義務違反を認める

 2014年4月24日、株式会社グリーディスプレイで就労していた渡辺航太さん(死亡当時24歳)が、長時間不規則労働と22時間勤務の末に帰宅途中に単独バイク事故を起こし死亡したことは安全配慮義務違反であったとして、横浜地方裁判所川崎支部に損害賠償請求を提訴した事件で、本年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部は、勤途上の過労運転事故を防ぐ安全配慮義務を認定したうえで、約7600万円の賠償、謝罪をし、、会社は再発防止策として、11時間の勤務間インターバルを就業規則に明記すること、男女別仮眠室の設置・深夜タクシーチケットの導入など模範となる内容を約束しました。

 裁判所は、被害者が長時間労働、深夜早朝の不規則勤務による過重な業務によって、疲労が過度に蓄積し顕著な睡眠不足の状態に陥っていたことが原因で、居眠り状態に陥って、事故死するに至ったことと、会社が原付バイクによる出勤を指示・容認していたことを認定しました。その上で、裁判所は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務やそのための通勤の方法等の業務内容及び態様を定めてこれを指揮監督するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積したり、極度の睡眠不足に陥るなどして、労働者の心身の健康を損ない、あるいは労働者の生命・身体を害する事故が生じることのないよう注意する義務(安全配慮義務)を負うものと解するのが相当である」と判断しました。これまで、通勤帰宅途上の交通事故は、事業者の業務指揮命令外で労働者の自己責任の範囲とされ、事業者の安全配慮義務違反が問われることはほとんどありませんでした。労災認定上も、「通勤災害」は通勤経路であれば労災認定されますが、事故の背景にある過労実態について調査されることはなく、事業者も対策を怠ってきました。本件は、通勤の方法についても、事業者の安全配慮義務の範囲を明確に拡張した点で意義があります。今後、過労死、過労自殺に加えて、潜在する過労事故についても、過労死の一類型として対策が進むことが求められます。

  

2 「働き方改革」のなかで過労死対策を裁判所が宣言

本件は、裁判長が公開法廷で30分以上にわたり、和解勧告を読み上げるという異例の対応がされました。以下一部引用します。

「現在、あらためて「過労死」に関する社会の関心が高まっており、「過労死」の撲滅は、我が国において喫緊に解決すべき重要な課題であり、「過労死のない社会」は、企業の指揮命令に服する立場の従業員や、その家族、ひいては社会全体の悲願であるといえよう。これを達成するためには、「過労死」の防止の法的及び社会的責任を担うそれぞれの企業において、「働く人の立場・視点に立った『働き方改革』を推進して、長時間労働の削減と労働環境の誠意に努めることが求められていると思われ、そのような社会的機運の高まりがあると認められる」「本件の悲惨さと、大学卒業後に未来を絶たれた被害者の亡航太の無念さ、その遺族である原告らの悲痛な心情と極度の落胆と喪失感に思いを致すとき、社会的な意義をも有する民事訴訟を担当することのある裁判所においても、無視することは許されないと思われるのであり、当裁判所は、本件事故に係る本件訴訟の解決の在りようについて、真摯に、深甚に、熟慮すべきであると考えるところである」「亡航太の地球より重い生命を代償とする貴重な教訓として」「被告が、むしろ、本件を契機に、多数の従業員を擁する企業として、「過労死」を撲滅することを約し、二度と「過労事故」を生じさせないことを宣言して、社会的責任を果たしていく、在るべき企業の範たるものとなり、その先駆けとして、今後も、被告における長時間労働を削減し、労働環境の整備を実行し、これらを継続していくことが望まれるのであり、期待される」「亡航太の遺志に沿うもように思われるところであり、慰霊のための何よりの策となると考えられるのである。」

裁判所の読み上げたこの和解勧告は「働き方改革」のなかで司法として過労死対策を宣言したといえるものです。「働き方改革」と、航太さんの命の重みから、責務を自覚する司法。法的責任を明らかにするだけでなく、謝罪、賠償、再発防止による社会規範化により、慰霊をする決意を示したものです。

裁判所決定全文はこちらからご覧になれます→http://bit.ly/2JzpO4P

 

3  厚生労働省へ過労運転事故対策を求める申し入れ

今回の和解を踏まえて、3月1日、原告・弁護団と支援者は、厚生労働省へ過労運転事故対策を求め、①通院災害が過労運転が原因となっていないかの実態調査②勤務間インターバル規制の法制化③事業者に対して過労運転防止策の指導徹底を申し入れました。

EU(欧州連合)は、労働時間指令「労働時間の編成の一定の側面に関する欧州会議及び閣僚理事会の指令」(2003/88/EC)において、労働者の健康と安全を確保するため、労働時間(休憩時間)に関して、24時間につき最低連続11時間の休息を取ると、定めています。EUの勤務間インターバル規制では、週休1日と合わせれば時間外労働の上限は月78時間となり、日本の厚生労働省過労死基準の時間外労働月80時間を下回り、ほとんどの過労死はなくせると言われています。

他方、国会で審議予定の「働き方改革一括法案」は、労働時間等設定法を改正し勤務間インターバルを導入しますが、努力義務にとどまり、実効性は期待できません。過労死の撲滅のためには、EUの最低基準である11時間の勤務間インターバルの速やかな法規制化が不可欠です。 

 

4 最後に 司法を覚醒させたものはなにか

本件の裁判所の気概ある和解決定を機に、過労事故がメディアでも多数報道され、社会問題として広がりつつあります。「司法の良心」を覚醒させたものはなにかについて、触れたいと思います。

  先ず何よりも、短くも生涯を閉じた航太さんを想う母、遺族原告の渡辺淳子さんの魂を削った訴えが、多くの市民やメディアを突き動かしてきました。提訴以来、多数のメディアで報道され、毎回の裁判所期日では、支援者によって傍聴席を埋められてきました。さらに、非公開和解期日も多数の傍聴人が駆け付け調停室を包囲していました。これらの支援者の声は、全国から合計1万5000筆以上の署名となり、毎月裁判所に提出されました。このような多くの声に応え、裁判長は、和解期日で、「私にも航太さんと同じ年の息子がいる。我がことと考えて書いた」と今回の和解決定を出す決断を後押しし、裁判官を官僚から人へ変えることができたのだと思います。原告の必死の訴え、多くの支援者の運動、過労死の撲滅を願い二度と被害者を繰り返してはならないと願う広汎な世論の力、そして人権救済の砦としての責務を深く自覚した司法の良心が一体となり、実現したものと考えています。

最後に、和解決定を受けての声明の結文をご紹介します。

「本件が勝利和解によって終結しても、航太さんが淳子さんと共に暮らした家に帰ってくることは二度とありません。航太さんの短い生涯と引き替えに残されたこの和解が、地球よりも重い一人ひとりの命を大事にする社会を創る希望となることを願うものです。」

 

以上

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Q 相続人の範囲、相続遺産はどのような割合で相続人に分配されるのですか。

2018年6月1日 金曜日

A
相続人の範囲、相続分の割合は民法の規定によって、決まっています。

1 被相続人の配偶者(夫、妻)は、常に相続人になります。

 ただし、法律上の婚姻関係があることが必要(婚姻届を提出していること)なので、内縁の配偶者は含まれません。配偶者の相続する割合は、
【1】 子と相続する場合、2分の1
【2】直系尊属(父母、祖父母)と相続する場合、3分の2
【3】兄弟姉妹と相続する場合、4分の3
【4】他の相続人がいない場合、全部
となります。

2 被相続人の子も、常に相続人です。

 実子と養子、氏(名字)、戸籍の異同は問題になりません。子の相続する割合は、
【1】被相続人の配偶者と相続する場合、2分の1
【2】被相続人の配偶者がいない場合、全部
となります。被相続人の子が死亡している場合でも、直系卑属(孫、ひ孫)がいる場合には、死亡した子に代わって相続することになります(代襲相続といいます)。子が複数いる場合には、原則として、相続分を子の数で平等に分けることになります。

3 被相続人の直系尊属は、被相続人の子がおらず、代襲相続人もない場合に、相続人となります。

 直系尊属の相続する割合は、
【1】被相続人の配偶者がいる場合、3分の1
【2】被相続人の配偶者がいない場合、全部
となります。

4 被相続人に子及び代襲相続人がおらず、直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

 兄弟姉妹の相続する割合は、
【1】被相続人の配偶者がいる場合、4分の1
【2】被相続人の配偶者がいない場合、全部
となります。兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の数で、相続分を平等に分けることになります。すでに死亡している兄弟姉妹については、その子が代襲相続することになります。

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Q 相続とは、どのように発生するのですか。

2018年5月31日 木曜日

A
 相続とは、自然人の死亡後に、その人が有した遺産(借金などの債務も含む)を、特定の人に承継させることをいいます。 亡くなった人を「被相続人」、権利義務を承継する人を「相続人」といいます。相続は、自然人の死亡による財産の承継ですから、会社などの法人に相続は発生しません。

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黒字リストラの横行する日立製作所における退職強要・パワハラ・不当査定 損害賠償請求提訴しました(弁護士 川岸卓哉)

2018年5月25日 金曜日

 2018年4月4日、(株)日立製作所戸塚事業所においてソフトウェア関係の業務に従事している課長職50代の男性原告が、会社から退職強要、パワーハラスメント、不当査定を受けたことに対して、横浜地方裁判所に対して、慰謝料等合計224万円の損害賠償を求める提訴をしました。事件の概要の本件の意義をお知らせします。 

 

第1 事件の概要

1 退職強要

  2016年8月頃から、原告の所属していた事業所において黒字リストラが開始され、担当部長との個別面談が行われることになりました。2016年末には、原告が課長として担当していた部署の仕事から外され、面談の際にも「仕事をやりたいなら、今の課長から仕事を奪え。彼らより仕事ができることを証明しろ」「私に君の仕事を探すミッションはない。自分で仕事を探してこい」「課長職の仕事ぶりではない。若手、新人クラスだ」「日立にこだわっているから答えがないのだ。制約を外せ」「制約を外すまで面談は続ける」などと迫り、違法に退職強要を行いました。

 

2 パワーハラスメント

  2017年1月に、原告が個人加盟ユニオンに加入した以降、部長による退職強要の面談は行われなくなりました。しかし、これにかわり、同年7月、部長より、原告に対して、執拗に業務内容についてあげつらうパワーハラスメントが行われることになりました。以下、例を挙げます。

 

①  原告が司会を務めた会議について、部長はあえて、会議参加者約30名全てを同報としたメールで、原告の会議運営上の課題について、公然と原告を非難するなど、原告の名誉を損なう形で指導を行いました。原告が部長の指示を受けて再報告したものに対してもアドバイスをせずに会議の席上で公然と原告の非難することを伝えました。

 

②  部長の指示にしたがって作成した業務シートについてメールで「もしかして初めてWBSを書きましたか?」「WBSとは何か知っていますか?」「WBS=Work Breakdown Structure」と言うことくらい知っていると思いますが」などと、原告が当然知っていることを侮辱にするメールを送りました。

 

  以上の行為は、職場内の力関係を背景にした、侮辱、名誉毀損に該当するものであり、厚生労働省のパワーハラスメント類型の「精神的な攻撃」に該当するもので、被告としてパワーハラスメントを防ぐ就業環境保持義務に反するものです。

 

3 不当査定

   上記退職強要及びパワーハラスメントを受けた以降の期間、一時金査定及び給与査定について、従来に比べて明らかに不当な低評価を行いました。 

 

第2 本件の意義 日本を代表する企業日立製作所において横行する「黒字リストラ

 

 日立製作所は、高い利益目標をかかげ、それを達成するために「常時リストラ」「黒字リストラ」とでもいうべき政策を強引に進めています。多くの中小零細企業が、売上の減少と赤字に苦しめられながら、それでも、一度雇い入れた労働者との雇用契約を遵守し、好調時に蓄えた内部留保を切り崩したり、将来の利益による返済を約束して運転資金を調達する等して、必死で経営を続けています。にもかかわらず、日本を代表する被告が、巨大な内部留保を蓄え、それどころか、巨大な黒字を生み出す経営を続けているにもかかわらず、より一層の利益を獲得するために、雇い入れた労働者に、被告からの退職を迫るというのは、企業の社会的責任を忘れたあまりに身勝手な行為といわざるを得ません。ところが、そのように身勝手な退職の要求についても、被告のほとんどの労働者は、会社にはあなたが働く場はないといわれ、他に途がないといわれ、抗うことも出来ずに退職をさせられているのが現実です。本件は、勇気ある労働者がこれを告発する意義を持ちます。

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川崎医療生協2018年5月1日号に掲載されました 弁護士 山口毅大

2018年5月17日 木曜日

 川崎医療生協(2018年5月1日号)労働相談事件簿に、NPOワーカーズネットかわさきで活動している、山口毅大弁護士のマタハラ解雇と労働審判の記事が掲載されました。

医療生協5/1

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「原発ゼロへのカウントダウンinかわさき2018」に参加しました!

2018年5月8日 火曜日

 原発ゼロへのカウントダウンinかわさきは,東日本大震災による悲惨な原発事故をきっかけに,原子力発電所をなくしたいと願う川崎の市民によって開催されてきた集会で,今年で開催7回目を迎えます。当事務所の三嶋健弁護士が実行委員会の共同代表を務めております。今年は,3月11日(日)に,中原平和公園にて,開催され,1100人を超す参加者が集まりました。

 

  当事務所はお菓子のつかみ取りのお店を出店するとともに,無料の法律相談を行いました。当事務所からは,西村隆雄弁護士,藤田温久弁護士,川口彩子弁護士,山下芳織弁護士,中瀬奈都子弁護士,川岸卓哉弁護士,山口毅大弁護士,小林展大弁護士,畑福生弁護士など多くの所員が参加しました。お菓子のつかみ取りには多くの子どもが参加し,参加していた他団体とともにイベントの盛り上がりに一役買うことができました。

 

 イベントにおいては,文化行事として太鼓や合唱,合奏,憲法漫才などが,披露されました。

 

 また,メイン集会においては,当事務所の畑福生弁護士が司会を務めました。メイン集会では,①福島県北農民連事務局長の服部崇さんが「福島県における農業被害の現状」というテーマで講演され,事故から7年が経過した現在でも,多くの農業従事者の方が苦しんでおられるという現実を伝え,②原発ゼロ自然エネルギー推進連盟幹事の三上元さんが「浜岡原発の危険性・原発のコストの問題」というテーマで講演され,原発に関わる政治の不透明性などについてお話されていました。

 

 その後は川崎で様々な活動をされている団体によるリレートークが行われ,川崎の力強さを改めて感じることができました。 

 

 閉会後は,中原平和公園から武蔵小杉駅までサウンドデモが行われました。デモには当事務所の弁護士も参加し,「原発なくそう 未来のために 原発やめよう 子どものために」といった未来に向けた明るい内容を軽快な曲とともにコールをし,原発ゼロに向けた思いを市民の皆様に伝えました。

3.11

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国民投票法の問題点についての記事が掲載されました(弁護士 山口毅大)

2018年5月2日 水曜日

新かながわ2018年4月15日第2447号に掲載されました。

国民投票法

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川崎合同法律事務所50周年レセプションを開催します

2018年4月1日 日曜日

     2018年4月13日(金)開場 午後6時、開会 午後6時30分
    川崎日航ホテル「鳳凰の間」      

JR川崎駅東口から徒歩3分

川崎日航ホテル・交通アクセス

 当事務所は来年4月に開設50周年を迎えます。これもひとえに当事務所をこれまで育み支持して下さった皆様のお陰です。当事務所は「地域に根ざした法律事務所」を合い言葉に、市民の皆様の法律的需要に応え様々な事件を全力で解決すると共に「憲法と人権」「平和と民主主義」の理念を実践的に追及することを共通の目標に歩んできました。

 ところで、「祝う会」呼びかけ人の皆様の呼びかけにより、レセプション「川崎合同法律事務所創立50周年を祝う会」を開催していただけることになりました。同「祝う会」は、50周年実行委員会の皆様に御準備いただいております。当日は、当事務所の50年の歩みをご紹介する映像や、皆様にお楽しみいただける演奏やダンス等の企画も予定されております。お食事とお酒を楽しみながら(もちろんノンアルコール飲料もあります)ご一緒に語らえれば望外の幸せです。

  

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ある派遣労働者の労災事件(弁護士 三嶋 健)

2018年3月25日 日曜日

1  事件の概要
  この事件は、派遣労働者の被災事件でした。
  事故があったのは、2001(平成22)年12月16日の午前です。依頼者は、山中で急な斜面を、重量物を天秤棒にぶら下げて二人で運んでいたときに、足を滑らせて被災しました。足を滑らせたのは、依頼者は上背があるにもかかわらず、会社が背の低い人と組ませた結果、天秤棒が傾き、吊った重量物が安定しなかったためです。

2  派遣労働者の置かれた立場
    会社は、依頼者を派遣労働者として見下したのか、作業服も靴も支給せず、被災後も、苦しむ依頼者を医師に診せませんでした。労災なので、十分に補償すべきなのですが、対応は冷淡でした。依頼者の正当な補償請求に、言いがかりをつけられたかのような対応をしました。
    依頼者は、そのような会社の対応に非常に傷ついていました。

3  必勝の体制で法廷に臨む
    依頼者の相談を受けたのは、当時新人だった川岸卓哉弁護士でした。同弁護士は、これはぜひ救済しなければばらないと決意し、必勝を期すために、私を誘い、複数体制で裁判に臨みました。

4  裁判所の対応と逆転
    私達は、裁判官が、「不当請求だ」と自信満々の会社の態度に幻惑されたのか、原告に対する対応が冷たいように思いました。
    私達は、当事者の生の声を直接裁判官に届けて、事件の本質を理解してもらおうと考え、尋問に勝負をかけました。私達は、依頼者と用意周到に打ち合わせをして、詳細に事実を聞き取り、会社側の主張の矛盾点を探りました。依頼者にとっては、事実に迫るためとはいえ、私達から厳しく質問されるので、過酷な打ち合わせだったと思います。しかし不平もいわず協力してくれました。
    尋問当日、依頼者は、主尋問に対し事実を生々しく語り、詳細に事件を再現してみせました。他方で、私たちは、落ち度はないと開き直る会社側の証人を厳しく問い質して真実に迫りました。依頼者は悔しい思いをしていたためが、私たちの尋問に満足し、尋問終了後握手を求めてきました。
    裁判所も、尋問をきっかけとして、理解を示して下さり、最終的に依頼者勝訴の判決を下しました。

5  私たちの決意
    ただ、意外だったのは、判決は、依頼者にも落ち度があったとして、賠償額を減らしたことです。天秤棒を担いで、危ないと思った時点で、その作業を止めなかった点に過失があるとしました。
    派遣労働者は、会社から睨まれれば、いつもで排除されます。「危ない」と思っても、会社の指示に逆らえる訳がありません。
    裁判所は、起きた事態は理解をしましたが、派遣労働者の弱い立場への理解は不十分でした。
    私たちは、裁判終了後、今後も、裁判と社会運動を通じて、派遣労働者の実態を訴えその権利を守りたいと、新たに決意を固めなおした次第です。                       

以上

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