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川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件・逆転勝利和解!(弁護士 藤田温久)
2023年5月31日 水曜日
藤田温久弁護士については、こちらをご覧下さい。
川崎市市民ミュージアム副館長濱崎さん(以下「H氏」)雇止め事件につき、2022年12月13日に東京高等裁判所で「勝訴に匹敵する」逆転勝利和解が成立しました。
1 事件の概要
川崎市市民ミュージアムは川崎市が100%出資する川崎市生涯学習財団(以下「財団」)が運営していましたが、2017年4月に川崎市が指定管理者制度を導入し、2022年3月までの5年間、アクティオ・東急コミュニティ共同事業体が指定管理者に選定されました。
H氏は財団に採用され29年間にわたって、川崎市市民ミュージアムの映像担当の学芸員として勤務してきましたが、2017年4月指定管理者制度の導入に伴いやむなくアクティオの社員となりました。アクティオにおける待遇は、1年の契約社員(更新有り)、給料は従来の3割程度でした。但し、アクティオは原則として更新する旨を口頭では述べ、契約書には更新可否の判断基準が列挙され、H氏は2年間以上継続することを予定する業務をいくつも担当していました。
ところが、2018年2月、アクティオはH氏のみを同年3月末をもって雇止めにすると通告しました。H氏は、全川崎地域労組に加入し、同年8月、横浜地方裁判所川崎支部に雇止め無効・雇用契約上の地位確認、バックペイ等を求める訴訟を提起しました。
2 争点について
「雇止め」が有効か否かは、形式的には1年間の「期間の定めのある労働契約」であるアクティオとH氏の労働契約が
(1)「契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」(労働契約法19条2号)か否か、
(2)「「使用者が更新申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」(労働契約法19条柱書後段)に該当するか否か
で判断されます。
3 横浜地方裁判所川崎支部の不当判決
17回の口頭弁論期日を経て、2021年12月21日 言い渡された判決(以下「原判決」)はH氏の全部敗訴でした。
原判決は、争点 (1)について、労働契約書に契約期間が1年と書かれていること等の形式的理由と、アクティオ側証人のみを偏波に信用し、労契法19条2号の要件の判断は、客観的・制度的事情をふまえないおよそ粗雑な判断により「更新の期待に合理性はない」と決めつけ、争点(2)は判断するまでもないとしました。
4 控訴審の闘い
H氏は2022年1月4日に控訴を提起しました。控訴理由書は81頁に及び、原判決が争点(1) について、労働契約を有期雇用とした「意図・目的の合理性」を全く検討していないことを全面的に批判し、H氏の学芸員業務が高度の知識、長期にわたる経験の蓄積、恒常的対応が求められる業務であり、市民ミュージアムが博物館・美術館としての機能を発揮していく上で不可欠な恒常的・常用的業務であることを期待権を裏付ける様々な証拠・証言によって整理・立証することに力点を置きました。争点(2)については、アクティオが主張する ①無断遅刻、②能力不足、③就業規則違反等について原審でことごとく虚偽・存在しないことが立証されている点を整理しました。
これにより、控訴審は第1回(2022年6月)から原判決逆転の心証を前提とした訴訟指揮を行い、9月の結審後、和解手続が繰り返され2022年12月13日に「アクティオがH氏に本件解決金として1500万円を支払う等の和解が成立しました。
5 和解の成立と和解の意義
(1)1500万円という解決金の金額は、雇止め後の残指定管理期間4年間分のH氏の賃金額全額にほぼ相当します。東京高裁の説得もありアクティオは口外禁止条項を求めないとしました。H氏は、本件雇止めが不当・違法であったことをアクティオが事実上認めた、すなわち本件労働契約に「更新の期待権がある」(19条2号)こと及び「更新拒絶は客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められない」(19条柱書後段)ことが事実上認められたと評価し得る水準及び内容と評価しかつ紛争の早期終結の見地から和解に至りました。
(2)1年の有期契約で1回も更新のないH氏に対する雇止めに対する事案において「更新の期待権がある」ことが事実上認められたこと、その前提として、本件労働契約を有期労働契約とした「目的の合理性」がないと控訴審が判断したと考えられることは、本件学芸員のような職種にまで無制限に有期労働契約を拡大する不当性を弾劾する意義を有するものと評価するべきです。
(3)このような違法な雇止めを強行した責任、その前提として学芸員まで有期労働契約としたアクティオの責任、指定管理により目先の利益のみのアクティオに市民ミュージアムの経営を任せた川崎市の責任を問う和解と評価するべきです。
(4)2019年10月の台風で収蔵品が重大な被害を受けたこと、レスキュ―が進まないことの原因も、指定管理に移行したことにあることと同根の問題が断罪されたということもできると評価しうると考えます。
6 H氏・弁護団
弁護士・川口彩子、藤田温久(川崎合同法律事務所)
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|第94回川崎メーデーに参加しました
2023年5月1日 月曜日
2023年5月1日(月)中原平和公園であいの広場で開催された、第94回川崎メーデーに参加しました。
藤田温久弁護士
三嶋健弁護士
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|山際大志郎議員政治資金規正法違反等事件 検察審査会へ申立をしました(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月28日 金曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
衆議院選挙神奈川18区選出(川崎市宮前区・高津区・中原区)の山際大志郎衆議院議員の政治資金規正法違反等の2つの事件について、多くの市民が横浜地方検察庁に刑事告発をし、受理され捜査が進められていましたが、横浜地方検察庁は嫌疑不十分として不起訴処分としたことに対して、2023年4月28日、検察審査会への申立てを行いました。
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/246702
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20230428/ddl/k14/010/128000c
神奈川新聞 https://www.kanaloco.jp/news/social/article-985884.html
第1 山際大志郎元大臣の相次いだ政治資金規正法違反等に対する刑事告発の内容
1 事件① 違法政治資金パーティー事件
2020年12月23日、出山際大志郎衆議院議員及びその資金管理団体である「21世紀の政治経済を考える会」の会計責任者が、憲政会館で開催した、政治資金パーティー「衆議院山際大志郎政経セミナー」では、県政記念館の席数は着席496席であるのに対し、山際大志郎大臣が販売したパーティー券の枚数は870枚と、参加可能人数の1.7倍も販売していることが、政治資金規正法違反に当たるとして、2022年6月、選挙区の住民を中心に合計約350名が刑事告発をし、7月19日、横浜地方検察庁特別刑事部が受理しされました。
2 事件② 家賃名目寄付事件
また、山際大志郎氏が支部長の「自由民主党神奈川県第18選挙区支部」(「県第18選挙区支部」)は、毎月40万円を超える家賃(年間520万円前後)を選挙区内の会社「21世紀(株)」に支払っていると政治資金収支報告書に記載していました。しかし、相場では20万円前後であり、20万円を超える分(年間280万円前後、3年間で847万円超)は寄附になり、選挙区内にある者に寄附することは公職選挙法に違反します。そのうえ、山際氏は「21世紀(株)」の株を全株もっていました。また、同社社長は山際氏の私設秘書であり、多くの被害者を出してきた反社会的団体である統一協会の信者であると報道されている人物でした。以上のことが発覚しないようにするために寄附分を上乗せして高額な「家賃」を支払っていると政治資金収支報告書に記載していたことは、政治資金規正法違反です。2022年10月6日、約200名の住民が刑事告発をし、同年12月15日に同じく受理され、捜査が進められていました。
第2 横浜地方検察庁の「嫌疑不十分」の不起訴処分に対する170名を超える市民が検察審査会へ申立
上記2つの事件について、2023年3月8日付で、横浜地方検察庁は、嫌疑不十分としてまとめて不起訴処分としました。
しかしながら、2つの事件は、いずれも、根拠のない刑事告発ではないことは、処分理由が「嫌疑なし」の処分ではないことからも明らかです。それにもかかわらず、横浜地方検察庁が、「嫌疑不十分」を理由に不起訴処分としたことは、政府に忖度をし、結論ありきで捜査・立件を怠ったと考えざるを得ません。
日本で,名ばかりの政治資金パーティーの開催により,異常な利益率の下,実質的には寄附金の受領が横行しているのが現状であります(事件①)。さらには、山際氏は、政治資金を私物化するようなことまで行っています(事件②)。それにも関わらず、検察庁はこれを是認するもので、到底受け入れられない処分であり、検察審査会へ申立をすることとなりました。
事件①については176人、事件②110名もの多くの市民が検察審査会へ申立をしました。
検察審査会が、起訴相当または不起訴不当と判断すれば、あらためて捜査が再開されることになります。選挙権を有する国民の中から選ばれた検察審査員が、市民の目線で、権力に忖度した検察官が不起訴処分の不当性を明らかにし、政治献金による金権政治を正し、市民のための政治を取り戻すことを求めていきます。
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|インボイス制度の問題点(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月13日 木曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として、「インボイス制度」が導入されることとなっている。これに対し、漫画家・アニメーション・声優・俳優の4つの団体が共同で反対の声明を発表するなど、多くの業界団体が反対の声明を発表している。インボイス制度は何が問題なのか。
1 インボイス制度の仕組み
インボイス制度では、仕入れ税額控除を行うために、取引事業者から登録番号が記載されたインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要がある。インボイスを発行するためには税務署に登録し、課税事業者にならなくてはならず、課税売上高が1千万円以下の免税事業者、いわゆる小規模事業者が事実上取引から排除されるなどの不利益を被る可能性がある。コロナ禍で困難を極めた小規模事業者にとって、取引先を失うことは死活問題である。取引を得るために適格請求書発行事業者となれば、免税とならずに生活が圧迫され、逆に免税事業者であり続ける選択をすれば取引が減少する可能性があり、同じく生活が圧迫される。
2 インボイス制度は広く影響が及ぶ
インボイス制度による影響を受ける業種は、建設業の一人親方、独立系SE、フリーライター、個人タクシーの運転手、フードデリバリーの配達員、漫画家、声優、アニメーター等々、幅広い職業に及び、その中には低所得でやりくりをしてきた者も多いことから、事業者団体が反対の声明を上げる状況となっているのである。
その影響は、売上高が1000万円以上の既に納税を行っている課税事業者にとっても無縁のものではない。冒頭で紹介した漫画家・アニメーション・声優・俳優4団体の記者会見では、課税事業者にとって多大な事務負担が生じること、作画作業にアシスタントを活用する漫画家にとってはアシスタントに登録を強いるのか自らが仕入税額控除を断念するのかという選択を強いられるうえ、インボイス制度の導入により2~3割の事業者が廃業を検討しており作業の担い手を失いかねないことなど、多くの懸念が表明された。
3 消費税のインボイス制度は税負担の実質的な負担の公平に反する
そもそも、消費税は、所得の過多によらず国民に一律の税負担を強いるもので、低所得者ほど負担割合が高くなる「不公平税」として、導入時点においても大きな反対があった。1988年の竹下内閣で税収を社会保障に用いるとしたうえで消費税法が成立したものの、零細事業者に対する影響が重大なものとなることから、消費税の取り扱いについては、年間の課税売上高が3000万円以下の事業者であれば、消費税の納税義務が免除されることとされた。その後1000万円以下の事業者へと改悪され、零細事業者への負担が引き上げられるに至っている。インボイス制度の導入は、免税事業者からの適切な納税を進める公平な税負担を標榜していると言われることもあるが、小規模事業者の免税は所得税の基礎控除などと同様に税負担の実質的な公平に資するものである。
4 世界の流れに逆行するインボイス制度
新型コロナ禍や円安、物価の高騰など生活への課題が山積し、フリーランスや個人事業者が大打撃を受ける現状において、世界では消費税の減税が進められる中、日本では、インボイス制度の導入による増税は、さらなる生活困窮へと追い詰められる者が増大する可能性がある。日本の対応は世界の流れに逆行するものと言わざるを得ない。インボイス制度は、国民の大半を占める零細事業者・個人事業主へのさらなる負担やプライバシー侵害を押し付ける「弱い者いじめ」にほかならず、直ちに中止・廃止されるべきものである。
いつの時代も為政者による税負担に対し生活のために抵抗してきたのが人民の歴史であり、我々も声をあげなければならない。
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|第12回「原発ゼロへのカウントダウンinかわさき」集会開催される(弁護士 三嶋 健)
2023年3月31日 金曜日
三嶋健弁護士については、こちらから。
2023年3月12日(日)、川崎市中原平和公園で、第12回、原発ゼロへのカウントダウンinかわさき集会を開催しました。
この間、新型コロナの流行のために、オンライン集会とせざるを得ず、4年ぶりの屋外での開催となりました。
4年間の空白を超えて、どれだけの皆さんが参加していただけるのか、主催者一同、不安でたまりませんでしたが、800名を超える皆さんが参加して下さいました。
10時30分のの開場とともに、おでんや、カレー、お弁当、飲み物を販売する模擬店や、種展示ブースが店開きし、たくさんの人が立ち寄りました。
私達の事務所は、子ども達を対象に、景品付きの輪投げを提供しました。輪投げに訪れる人が絶えず、保護者のお父さんも熱心に輪投げに興じるなど人気を博しました。
11時には、今回の集会のメインゲストである、経済学者であり金子勝先生を囲む「金子勝トークライブ」のブースも盛況で、先生を一目見ようと会場となったテントは大混雑でした。
11時50分から、メイン集会会場の舞台で、ハンドパンという新し楽器の演奏、バルーンアート、和太鼓にトランペット演奏、合唱団の歌声、優雅な沖縄舞踏に腹話術と多様な出し物が出て、参加の皆さんは大いに楽しんでいました。
13時からメイン集会が始まりました。特別報告として311子ども甲状腺がん裁判の北村弁護士から、福島第一原発事故によって発症した甲状腺がんに苦しめられた、福島の若者7人の勇気ある裁判の報告がありました。
続いて、金子勝さんが登壇し、世界では、クリーンで安価の自然エレルギーへの転換に向かった居る仲で、高額で危険な原発に固執する日本の姿を明らかにし、日本は、原発に巣くう権益集団から、早急に取り戻さないと滅びてしまうと警鐘を鳴らしました。
集会宣言採択のあと、武蔵小杉駅まで、「原発なくそう 未来のために」「再生エネルギーへ 転換はかれ」と元気にデモ行進しました。
岸田政権が原発回帰に舵を切った直後の集会が成功したことは意義が大きかったと思います。
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|法律問題がテーマのボードゲーム会を開催いたしました(弁護士 畑福生)
2023年3月17日 金曜日
弁護士の畑福生です。私の趣味はボードゲームです。カードやサイコロ、駒を使って駆け引きを楽しんだり、戦略を試したりすることが魅力です。
そんなボードゲームの中には法律問題がテーマのものもあります。
とっつきにくい法律問題も、ボードゲームで身近に感じれば理解しやすくなるのではないかと思っています。
こんなことを考えていたところ、この度ご縁あって、川崎若者就労・生活自立支援センター「ブリュッケ」にて、法律がテーマのボードゲーム会を開催させていただきました。
ボードゲームを遊びながら、刑事、離婚、相続といった法律問題についての解説を行いました。
こんな素敵なポスターも作っていただきました。
以下遊んだボードゲームをテーマごとに紹介します。
≪刑事事件がテーマのゲーム≫
刑事事件は、簡単に言えば、罪を犯してしまった方の適正な刑罰が何かを考えるものです。
刑罰は、国が、個人を閉じ込めたり、お金を奪ったり、一番重い場合は命をも奪うもので、個人の権利の制約を伴うものです。
そのため、刑罰は慎重に、行き過ぎないように適用されなくてはならないと考えられています。
刑事事件については、
①「刑法ポーカー」(考案:そらいと、発行:つきのふね)と②「ミクロマクロ:クライムシティ フルハウス」(デザインSystem:Johannes Sich、Art:Daniel Goll・出版:Spielwiese・販売:ホビージャパン・発売:2021年11月)
というゲームを遊びました。
①「刑法ポーカー」は、構成要件という犯罪が成立するための要件が書かれたカードを揃えて、出来るだけ刑罰の重い罪を作ろうというものです。解説として、上記のとおり慎重に刑罰が用いられなくてはならないことの一端として、構成要件を充たさなければ犯罪は成立しないということをお話ししました。
②「ミクロマクロ:クライムシティ フルハウス」は、机いっぱいに広がるほどの大きな紙に様々な犯罪に関連する場面が書かれていて、その中からお題(例えば、宝石を盗んだ犯人はどこ?、犯人たちはどこで作戦を練った?、どこで誰に宝石を売った?といったもの)に沿った内容の場面を探し出す協力ゲームです。
お題の中には共犯に関するものもあることから、解説の中では犯罪の実行犯じゃない人も同じように処罰されるの?といった話を特殊詐欺の受け子等の問題とも絡めながらお話しました。
≪離婚事件がテーマのゲーム≫
離婚は、当事者の話し合いでの協議離婚と裁判所を絡めた調停離婚、裁判離婚などがありますが、話し合いでまとまらない場合、離婚事由があるか否かが問題となります。
その他離婚に関しては親権や面会交流、養育費、財産分与等々考えることも多いですが、離婚事由に関係するものとして③「離婚届にサインしてッ!!」(ゲーム設計:ひろかわなみ・アートワーク:ひろかわなみ・イラスト:はるのイロ・制作:つながらぼひとりとひとり・2019年)を遊びました。
このゲームは、離婚に際してどのような証拠が必要となるのかをゲーム形式で学べるもので、証拠カード(異性と親密なやり取りをしているメール画面など)を集めたり、捨てたりしながら麻雀のように、役(不貞や暴力など)を揃えていち早くあがり(離婚)を目指すというものです。
ちなみにこのゲームについては私が法律監修をさせていただいております(詳しくはこちらにも記載されています。 https://www.kanaben.or.jp/profile/column/2020/02/post-184.html )
≪相続事件がテーマのゲーム≫
人が亡くなり相続が発生し、どのように遺産を分けるかが問題となり得ますが、相続人同士で話がまとまらない場合は、裁判所を絡めて調停・審判等を申し立てることとなりますが、その際には法定相続分を基礎として分割内容が決められます。
そんな相続事件をテーマにしたゲームとして④「愛人に私の財産の半分を遺贈する」(ゲームデザイン:わん・アートワーク:イチガキ・出版:WILDCARDS、2022年)を遊びました。
このゲームは各プレイヤーが配偶者や子、親、きょうだい、愛人などの身分になって、時には相続放棄をしたり、時には相続排除の遺言を見つけたり、親子関係不存在を主張したりしながら、債務を引き取らないようにしつつ、多くの財産を得ようとするものです。最終的には法定相続分で財産を分かち合います。
相続に関する難しい法律用語や法定相続分の計算も自然と身につくゲームとなっています。
今回遊ぶことができたのは以上のゲームでしたが、その他にも憲法問題がテーマのゲームや労働問題がテーマのゲームもあり、ボードゲームを通じて学習をしてもらう取り組みをもっと広められたらと思いました。
川崎合同法律事務所においては様々な法律問題に関する学習会を企画・講師派遣を行っておりますが、このようなゲームを用いた変わった取り組みも行っております。
学習会の講師派遣について、常時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先
住所 〒210-8544 川崎市川崎区砂子1-10-2 ソシオ砂子ビル7階 川崎合同法律事務所
電話番号 044-211-0121
メールアドレス hata☆kawagou.org (担当:畑福生弁護士)※「☆」は「@」に置き換えて送信ください。
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|山際大志郎議員に対する刑事告発のご報告とご参加のお願い(弁護士 長谷川拓也)
2023年3月10日 金曜日
1 はじめに
2022年6月8日、弊所の藤田温久弁護士、川岸卓哉弁護士、長谷川拓也弁護士らを中心として、神戸学院大学の憲法学の教授である上脇博之氏の協力の下、山際大志郎衆議院議員(前経済再生担当大臣)ほかに対し、刑事告発を行いました。
2 政治資金パーティー名目の寄附・違法な企業献金
2020年12月23日、衆議院選挙神奈川18区選出の山際氏の資金管理団体である「21世紀の政治経済を考える会」が憲政会館で開催した政治資金パーティー「衆議院山際大志郎政経セミナー」につき、山際氏及び会計責任者である吉野哲平氏がその参加券の販売収益を収支報告書に不実記載・虚偽記載したことが政治資金規正法違反に当たるとして、当該選挙区の住民を中心に、刑事告発し、先般、横浜地検特別刑事部が受理、捜査を進めています。告発人は、現在、353名に上っており(追加告発前の人数を含む。)、今尚、運動を広げているところです。
告発の内容は、端的に言えば、政治資金パーティーの参加券の販売名目で、実際には対価性がなく、実質的には「寄附」にあたる参加券を大量に販売し、収支報告書において、「寄附」ではなく、当該政治資金パーティーの「売上」として計上したことが収支報告書への不実記載・虚偽記載であるといったものです。
即ち、パーティー会場である憲政記念館の席数は、固定席で496席であるのに対し、販売したパーティーの参加券の枚数は870枚に上っており、実際には、374人もの参加券の購入者は、参加券を購入・保有していたとしても、パーティーに参加すること自体出来ません。すると、かかる参加券の売り上げは、もはやパーティーとの対価性はなく、単なる「寄附」に過ぎませんから、本来、収支報告書上、「寄附」として記載する必要があったのです。政治資金規正法上、一定の収益が寄附にあたる場合には、別途厳しい規律を受けますが、上記不実記載・虚偽記載は、かかる規律を潜脱するものであり、断じて、許容しがたいものです。
そのうえ、政治資金規正法は、資金管理団体が会社等の団体に対し、寄附を勧誘、要求し、受けることを禁止しています。しかし、前政治資金パーティーにおいては、20万円以上の大口購入先として、各会社あたり、購入額100万円(参加者50人分)、購入額50万円(参加者25人分)及び購入額30万円(参加者15人分)の記録が収支報告書に残っています。実際には、山際側及び会社側双方が全員参加を前提としているとは到底考え難く、とくに本件では、固定席の定員を大幅に超えた分の参加券を販売している状況に鑑みて、双方共、対価性を欠くことの認識は明白であるとしか言いようがありません。結局、本件は、政治資金パーティーの名を借りた違法な寄附の勧誘及び受領に他ならないのであり、この点に関しては、告発後に意見書を追加提出しており、厳重な捜査を求めているところです。
現代社会では、こと大企業・経団連の如き業界団体は、個人と桁違いの巨大な資金力を有しています。そうした中、企業献金は、政治に対し、企業の利益のために巨大な影響力を行使することになる可能性が極めて高いものであり、個人の参政権・政治活動の自由を侵害しないように厳しい規制を受けています。
しかし、本件のように、政治資金パーティーの参加券の購入代金であっても、対価性なくしては、もはや寄附そのものに他なりません。
本件告発は、「政治資金パーティーの参加券の購入」との名目で、法の規制を潜脱した違法な企業献金、収支報告書への不実・虚偽記載を断罪すると共に、国民主権ないし参政権を侵害する違法な企業献金が横行する現状に対し、警鐘を鳴らす意義を有するものです。
3 家賃名目の違法な寄附
更には、山際氏が支部長を務める「自由民主党神奈川県第18選挙区支部」では、毎月40万円を超える家賃(年間520万円前後)を選挙区内の「21世紀(株)」に支払っている旨、政治資金収支報告書に記載していました。
しかし、当該家賃に関し、相場では20万円前後であり、20万円を超える分(年間280万円前後、3年間で847万円超)は、寄附に他なりません。
そして、選挙区内の者に寄附することは、公職選挙法に違反するため、前記同様、選挙区の住民が集まり、前同様、刑事告発を行いました(受理済み)。現時点での告発人は、202人です(追加告発前の人数を含む。)。
山際氏は「21世紀(株)」の株を全株保有しているばかりか(当初の資産として未報告であり、大臣規範違反です。)、同社の代表者は、山際氏の私設秘書であるうえ、多くの被害者を出してきた反社会的団体たる統一協会の信者であるとの報道すら出ている人物であり、その点でも、告発の意義は、大きいものと言えます。
4 最後に
山際氏の上記不正は、あくまで表沙汰になっている一部に過ぎません。
そのうえ、形骸化した政治資金パーティーを通じた実質寄附の勧誘・受領は、山際氏に限らず、広く政界に横行しており、大多数の議員は、異常な利益率で販売益(「売上」)を得、政治資金規正法の趣旨を没却する事態となっている始末です。
そういう点では、本件告発は、氷山の一角をあぶり出すものに過ぎませんが、今後、公正な捜査・起訴がされるように、引き続き告発人を集めて迫っていく予定です。
もし、私達の活動にご興味・ご関心を持っていただき、刑事告発に参加していただけるとのことでしたら、お気軽に弊所までお問合せをいただきますようお願い申し上げます(参加に際して、特段費用はかかりません。)
以上
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|突然、夫(妻)や子どもが逮捕に!?何をしたら良いの?家族ができることは?(弁護士 長谷川拓也)
2023年2月3日 金曜日
長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。
ある人について、「逮捕」になった旨のニュースを聞いたとき、どういった印象を抱くでしょうか。
・きっと悪いことをしたのだろう
・自分は真面目に生活しているので関係がないことだ
逮捕(勾留)という言葉のみを聞いた時、多くの方は、自身には無縁のこととして捉えているように思います。
しかし、一方で、弊所で受けるご相談の中には、
・警察官が任意の事情聴取だと言って夫(妻)を連行したのですが、1日経っても帰ってきません。
・子どもが事件を起こしてしまったようで、○○警察に捕まっているとの連絡を警察官より受けました。助けてあげたいのですが、何ができるでしょうか。
といったご相談が少なくありません。
多くの刑事事件では、逮捕(勾留)は、家族にとって、突然のでき事です。家族は、本人と話して本人の状況や事件の内容を知ることすらできず、心配や不安の中で、本人のために何かできることはしたいものの、何ができるか分からず、適時適切に行動することができなくなってしまうことは当然です。
家族が本人のためにできることは多種多様です。
しかし、多くの方にとっては、刑事事件は、冒頭で述べたとおり、あまり馴染みの深いものではありません。そのため、突然の逮捕(勾留)に適時適切に対応のうえ、結果として、本人の処遇を良くするためには、家族のみの力では困難です。
そのため、本人のため、専門家である弁護士と家族が連携をとっていくことは、必要不可欠です。
刑事事件では、経済的に弁護士に依頼することが難しい場合においても、国が国の負担で弁護人を付けることとなっています(国選)。
もっとも、すべての刑事事件に国選の弁護人が付くものではありません。
例えば、詳細は割愛いたしますが、逮捕段階(勾留前)は、国選の対象外であり、逮捕(勾留)の罪名によっては、そもそも、国選が付く対象ではないこともあります。
更には、国選は、裁判所や弁護士会等の複数の機関を通じ、個別の担当弁護士に打診・連絡をするという制度の都合上、本人と弁護士の接触は、逮捕時より起算して、3~4日以上を過ぎた頃です。
その上、国選の場合、弁護士は、本人との接触以前には、家族の連絡先はおろか、本人に家族がいるかも知りません。また、固定電話を持たずに、まして、LINE等が主流の昨今においては、家族の電話番号を覚えていないことも少なくありませんので、弁護士が家族との連絡を容易に取り合うことができない場合もあります。
刑事事件は、帰結によっては、本人の人生を左右するものであり、初期段階での対応が極めて重要です。
弊所では、半世紀以上の歴史の中で、多くの刑事事件を取り扱ってきましたが、早期の段階でご依頼をいただいたため、適時適切に初動対応を図ることができ、結果として、本人の処遇をより良いものにすることができた例は少なくありません。
突然、夫(妻)や子ども等の家族が逮捕になった際には、家族のみで抱え込んでしまい、何をしたら良いのか慌てず、まずは、早期の段階で弊所にご相談にお越しいただけますと幸いです。
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|保育の「質」及び保育労働者の就労環境の向上をめざして―川崎市保育問題交流会の調査から(弁護士 川岸卓哉)
2023年1月20日 金曜日
弁護士 川岸卓哉(川崎市保育問題交流会代表)
川崎市保育問題交流会は、保育関係の経営者・労働組合・研究者・法律家などが集まり、「保育の質」の向上をテーマに活動してきました。2019年は、関東学院大学中西新太郎教授と共同で、川崎市内の全認可保育所を対象としたアンケート調査を実施しました。調査結果からは、特に、株式会社立保育職員の場合、20代、30代の回答者が多く、年収250万円未満の数が半数(51.1%、法人立職員では35.4%)、75%が300万円未満の結果となり、株式会社立保育所の若年層職員が深刻な低賃金状態にあり,「この給料では、子どもも育てられません。安心して結婚もできません」と賃金の低さに対する不満,不安が訴えられていました。そこで、川崎市に対して、認可保育園の収支計算分析表の情報開示請求を行い、社会福祉法人立保育所(75園)、株式会社立保育所(67園)計142園のそれぞれの人件費率を算出しました。
調査結果からは、株式会社立保育所の人件費率は法人立保育所とくらべ低いことが明らかとなりました。株式会社立では人件費率60%台が34園と半数を占め最大のヴォリュウムゾーンとなっているのに対し、法人立では70%台の32園(42.6%)が最大となりました。のみならず、株式会社立19園(28.3%)が人件費率50%台以下となっています。株式会社立保育所の人件費率の低さは低い処遇実態を反映していると考えられます。
人件費率にこのようなバラツキが生まれたのは、保育分野への株式会社の参入にともない「委託費の弾力運用」を国が認めたことによります。この結果、たとえ委託費の設定時点で処遇改善を行ったとしても、それが実際の処遇向上につながる保障はありません。個々の保育所の弾力運用によって、想定される処遇改善を削ることが可能になっています。したがって、行政として、株式会社立保育職員の適正な処遇を実現するよう、一定の人件費比率以下の園には指導をする等が望まれます。川崎市保育問題交流会では、この間の調査結果を踏まえて、国及び川崎市に対して、保育所職員の処遇の改善のため、
① 国基準の保育士の賃金水準を引き上げ、川崎市公契約条例の対象に認可保育園の業務委託に加えるなどによって、すべての保育所職員の賃金を最低生活費を担保するため最低限時間給1500円以上にすること
② 保育所職員の賃金を全ての年齢層で全産業平均賃金以上の賃金水準とすること
等を要求しています。保育分野では、待機児童が社会問題化した後、現在は保育士の低処遇の問題を顕在化し、国としても改善する方向に進んでいますが、根本解決にはほど遠いものです。大人のための「保育の量」追及の結果「保育の質」が蔑ろにされる政策によって、最も犠牲になるのは「子どもの権利」です。「子どもの権利」を中心に、保育士、保護者が連携した運動を引き続き追及していきます。
(自治体問題研究所「住民と自治」2022年7月号に寄稿した内容です)
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