トピックス
インボイス制度の問題点(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月13日 木曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として、「インボイス制度」が導入されることとなっている。これに対し、漫画家・アニメーション・声優・俳優の4つの団体が共同で反対の声明を発表するなど、多くの業界団体が反対の声明を発表している。インボイス制度は何が問題なのか。
1 インボイス制度の仕組み
インボイス制度では、仕入れ税額控除を行うために、取引事業者から登録番号が記載されたインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要がある。インボイスを発行するためには税務署に登録し、課税事業者にならなくてはならず、課税売上高が1千万円以下の免税事業者、いわゆる小規模事業者が事実上取引から排除されるなどの不利益を被る可能性がある。コロナ禍で困難を極めた小規模事業者にとって、取引先を失うことは死活問題である。取引を得るために適格請求書発行事業者となれば、免税とならずに生活が圧迫され、逆に免税事業者であり続ける選択をすれば取引が減少する可能性があり、同じく生活が圧迫される。
2 インボイス制度は広く影響が及ぶ
インボイス制度による影響を受ける業種は、建設業の一人親方、独立系SE、フリーライター、個人タクシーの運転手、フードデリバリーの配達員、漫画家、声優、アニメーター等々、幅広い職業に及び、その中には低所得でやりくりをしてきた者も多いことから、事業者団体が反対の声明を上げる状況となっているのである。
その影響は、売上高が1000万円以上の既に納税を行っている課税事業者にとっても無縁のものではない。冒頭で紹介した漫画家・アニメーション・声優・俳優4団体の記者会見では、課税事業者にとって多大な事務負担が生じること、作画作業にアシスタントを活用する漫画家にとってはアシスタントに登録を強いるのか自らが仕入税額控除を断念するのかという選択を強いられるうえ、インボイス制度の導入により2~3割の事業者が廃業を検討しており作業の担い手を失いかねないことなど、多くの懸念が表明された。
3 消費税のインボイス制度は税負担の実質的な負担の公平に反する
そもそも、消費税は、所得の過多によらず国民に一律の税負担を強いるもので、低所得者ほど負担割合が高くなる「不公平税」として、導入時点においても大きな反対があった。1988年の竹下内閣で税収を社会保障に用いるとしたうえで消費税法が成立したものの、零細事業者に対する影響が重大なものとなることから、消費税の取り扱いについては、年間の課税売上高が3000万円以下の事業者であれば、消費税の納税義務が免除されることとされた。その後1000万円以下の事業者へと改悪され、零細事業者への負担が引き上げられるに至っている。インボイス制度の導入は、免税事業者からの適切な納税を進める公平な税負担を標榜していると言われることもあるが、小規模事業者の免税は所得税の基礎控除などと同様に税負担の実質的な公平に資するものである。
4 世界の流れに逆行するインボイス制度
新型コロナ禍や円安、物価の高騰など生活への課題が山積し、フリーランスや個人事業者が大打撃を受ける現状において、世界では消費税の減税が進められる中、日本では、インボイス制度の導入による増税は、さらなる生活困窮へと追い詰められる者が増大する可能性がある。日本の対応は世界の流れに逆行するものと言わざるを得ない。インボイス制度は、国民の大半を占める零細事業者・個人事業主へのさらなる負担やプライバシー侵害を押し付ける「弱い者いじめ」にほかならず、直ちに中止・廃止されるべきものである。
いつの時代も為政者による税負担に対し生活のために抵抗してきたのが人民の歴史であり、我々も声をあげなければならない。
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|第12回「原発ゼロへのカウントダウンinかわさき」集会開催される(弁護士 三嶋 健)
2023年3月31日 金曜日
三嶋健弁護士については、こちらから。
2023年3月12日(日)、川崎市中原平和公園で、第12回、原発ゼロへのカウントダウンinかわさき集会を開催しました。
この間、新型コロナの流行のために、オンライン集会とせざるを得ず、4年ぶりの屋外での開催となりました。
4年間の空白を超えて、どれだけの皆さんが参加していただけるのか、主催者一同、不安でたまりませんでしたが、800名を超える皆さんが参加して下さいました。
10時30分のの開場とともに、おでんや、カレー、お弁当、飲み物を販売する模擬店や、種展示ブースが店開きし、たくさんの人が立ち寄りました。
私達の事務所は、子ども達を対象に、景品付きの輪投げを提供しました。輪投げに訪れる人が絶えず、保護者のお父さんも熱心に輪投げに興じるなど人気を博しました。
11時には、今回の集会のメインゲストである、経済学者であり金子勝先生を囲む「金子勝トークライブ」のブースも盛況で、先生を一目見ようと会場となったテントは大混雑でした。
11時50分から、メイン集会会場の舞台で、ハンドパンという新し楽器の演奏、バルーンアート、和太鼓にトランペット演奏、合唱団の歌声、優雅な沖縄舞踏に腹話術と多様な出し物が出て、参加の皆さんは大いに楽しんでいました。
13時からメイン集会が始まりました。特別報告として311子ども甲状腺がん裁判の北村弁護士から、福島第一原発事故によって発症した甲状腺がんに苦しめられた、福島の若者7人の勇気ある裁判の報告がありました。
続いて、金子勝さんが登壇し、世界では、クリーンで安価の自然エレルギーへの転換に向かった居る仲で、高額で危険な原発に固執する日本の姿を明らかにし、日本は、原発に巣くう権益集団から、早急に取り戻さないと滅びてしまうと警鐘を鳴らしました。
集会宣言採択のあと、武蔵小杉駅まで、「原発なくそう 未来のために」「再生エネルギーへ 転換はかれ」と元気にデモ行進しました。
岸田政権が原発回帰に舵を切った直後の集会が成功したことは意義が大きかったと思います。
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|法律問題がテーマのボードゲーム会を開催いたしました(弁護士 畑福生)
2023年3月17日 金曜日
弁護士の畑福生です。私の趣味はボードゲームです。カードやサイコロ、駒を使って駆け引きを楽しんだり、戦略を試したりすることが魅力です。
そんなボードゲームの中には法律問題がテーマのものもあります。
とっつきにくい法律問題も、ボードゲームで身近に感じれば理解しやすくなるのではないかと思っています。
こんなことを考えていたところ、この度ご縁あって、川崎若者就労・生活自立支援センター「ブリュッケ」にて、法律がテーマのボードゲーム会を開催させていただきました。
ボードゲームを遊びながら、刑事、離婚、相続といった法律問題についての解説を行いました。
こんな素敵なポスターも作っていただきました。
以下遊んだボードゲームをテーマごとに紹介します。
≪刑事事件がテーマのゲーム≫
刑事事件は、簡単に言えば、罪を犯してしまった方の適正な刑罰が何かを考えるものです。
刑罰は、国が、個人を閉じ込めたり、お金を奪ったり、一番重い場合は命をも奪うもので、個人の権利の制約を伴うものです。
そのため、刑罰は慎重に、行き過ぎないように適用されなくてはならないと考えられています。
刑事事件については、
①「刑法ポーカー」(考案:そらいと、発行:つきのふね)と②「ミクロマクロ:クライムシティ フルハウス」(デザインSystem:Johannes Sich、Art:Daniel Goll・出版:Spielwiese・販売:ホビージャパン・発売:2021年11月)
というゲームを遊びました。
①「刑法ポーカー」は、構成要件という犯罪が成立するための要件が書かれたカードを揃えて、出来るだけ刑罰の重い罪を作ろうというものです。解説として、上記のとおり慎重に刑罰が用いられなくてはならないことの一端として、構成要件を充たさなければ犯罪は成立しないということをお話ししました。
②「ミクロマクロ:クライムシティ フルハウス」は、机いっぱいに広がるほどの大きな紙に様々な犯罪に関連する場面が書かれていて、その中からお題(例えば、宝石を盗んだ犯人はどこ?、犯人たちはどこで作戦を練った?、どこで誰に宝石を売った?といったもの)に沿った内容の場面を探し出す協力ゲームです。
お題の中には共犯に関するものもあることから、解説の中では犯罪の実行犯じゃない人も同じように処罰されるの?といった話を特殊詐欺の受け子等の問題とも絡めながらお話しました。
≪離婚事件がテーマのゲーム≫
離婚は、当事者の話し合いでの協議離婚と裁判所を絡めた調停離婚、裁判離婚などがありますが、話し合いでまとまらない場合、離婚事由があるか否かが問題となります。
その他離婚に関しては親権や面会交流、養育費、財産分与等々考えることも多いですが、離婚事由に関係するものとして③「離婚届にサインしてッ!!」(ゲーム設計:ひろかわなみ・アートワーク:ひろかわなみ・イラスト:はるのイロ・制作:つながらぼひとりとひとり・2019年)を遊びました。
このゲームは、離婚に際してどのような証拠が必要となるのかをゲーム形式で学べるもので、証拠カード(異性と親密なやり取りをしているメール画面など)を集めたり、捨てたりしながら麻雀のように、役(不貞や暴力など)を揃えていち早くあがり(離婚)を目指すというものです。
ちなみにこのゲームについては私が法律監修をさせていただいております(詳しくはこちらにも記載されています。 https://www.kanaben.or.jp/profile/column/2020/02/post-184.html )
≪相続事件がテーマのゲーム≫
人が亡くなり相続が発生し、どのように遺産を分けるかが問題となり得ますが、相続人同士で話がまとまらない場合は、裁判所を絡めて調停・審判等を申し立てることとなりますが、その際には法定相続分を基礎として分割内容が決められます。
そんな相続事件をテーマにしたゲームとして④「愛人に私の財産の半分を遺贈する」(ゲームデザイン:わん・アートワーク:イチガキ・出版:WILDCARDS、2022年)を遊びました。
このゲームは各プレイヤーが配偶者や子、親、きょうだい、愛人などの身分になって、時には相続放棄をしたり、時には相続排除の遺言を見つけたり、親子関係不存在を主張したりしながら、債務を引き取らないようにしつつ、多くの財産を得ようとするものです。最終的には法定相続分で財産を分かち合います。
相続に関する難しい法律用語や法定相続分の計算も自然と身につくゲームとなっています。
今回遊ぶことができたのは以上のゲームでしたが、その他にも憲法問題がテーマのゲームや労働問題がテーマのゲームもあり、ボードゲームを通じて学習をしてもらう取り組みをもっと広められたらと思いました。
川崎合同法律事務所においては様々な法律問題に関する学習会を企画・講師派遣を行っておりますが、このようなゲームを用いた変わった取り組みも行っております。
学習会の講師派遣について、常時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先
住所 〒210-8544 川崎市川崎区砂子1-10-2 ソシオ砂子ビル7階 川崎合同法律事務所
電話番号 044-211-0121
メールアドレス hata☆kawagou.org (担当:畑福生弁護士)※「☆」は「@」に置き換えて送信ください。
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|山際大志郎議員に対する刑事告発のご報告とご参加のお願い(弁護士 長谷川拓也)
2023年3月10日 金曜日
1 はじめに
2022年6月8日、弊所の藤田温久弁護士、川岸卓哉弁護士、長谷川拓也弁護士らを中心として、神戸学院大学の憲法学の教授である上脇博之氏の協力の下、山際大志郎衆議院議員(前経済再生担当大臣)ほかに対し、刑事告発を行いました。
2 政治資金パーティー名目の寄附・違法な企業献金
2020年12月23日、衆議院選挙神奈川18区選出の山際氏の資金管理団体である「21世紀の政治経済を考える会」が憲政会館で開催した政治資金パーティー「衆議院山際大志郎政経セミナー」につき、山際氏及び会計責任者である吉野哲平氏がその参加券の販売収益を収支報告書に不実記載・虚偽記載したことが政治資金規正法違反に当たるとして、当該選挙区の住民を中心に、刑事告発し、先般、横浜地検特別刑事部が受理、捜査を進めています。告発人は、現在、353名に上っており(追加告発前の人数を含む。)、今尚、運動を広げているところです。
告発の内容は、端的に言えば、政治資金パーティーの参加券の販売名目で、実際には対価性がなく、実質的には「寄附」にあたる参加券を大量に販売し、収支報告書において、「寄附」ではなく、当該政治資金パーティーの「売上」として計上したことが収支報告書への不実記載・虚偽記載であるといったものです。
即ち、パーティー会場である憲政記念館の席数は、固定席で496席であるのに対し、販売したパーティーの参加券の枚数は870枚に上っており、実際には、374人もの参加券の購入者は、参加券を購入・保有していたとしても、パーティーに参加すること自体出来ません。すると、かかる参加券の売り上げは、もはやパーティーとの対価性はなく、単なる「寄附」に過ぎませんから、本来、収支報告書上、「寄附」として記載する必要があったのです。政治資金規正法上、一定の収益が寄附にあたる場合には、別途厳しい規律を受けますが、上記不実記載・虚偽記載は、かかる規律を潜脱するものであり、断じて、許容しがたいものです。
そのうえ、政治資金規正法は、資金管理団体が会社等の団体に対し、寄附を勧誘、要求し、受けることを禁止しています。しかし、前政治資金パーティーにおいては、20万円以上の大口購入先として、各会社あたり、購入額100万円(参加者50人分)、購入額50万円(参加者25人分)及び購入額30万円(参加者15人分)の記録が収支報告書に残っています。実際には、山際側及び会社側双方が全員参加を前提としているとは到底考え難く、とくに本件では、固定席の定員を大幅に超えた分の参加券を販売している状況に鑑みて、双方共、対価性を欠くことの認識は明白であるとしか言いようがありません。結局、本件は、政治資金パーティーの名を借りた違法な寄附の勧誘及び受領に他ならないのであり、この点に関しては、告発後に意見書を追加提出しており、厳重な捜査を求めているところです。
現代社会では、こと大企業・経団連の如き業界団体は、個人と桁違いの巨大な資金力を有しています。そうした中、企業献金は、政治に対し、企業の利益のために巨大な影響力を行使することになる可能性が極めて高いものであり、個人の参政権・政治活動の自由を侵害しないように厳しい規制を受けています。
しかし、本件のように、政治資金パーティーの参加券の購入代金であっても、対価性なくしては、もはや寄附そのものに他なりません。
本件告発は、「政治資金パーティーの参加券の購入」との名目で、法の規制を潜脱した違法な企業献金、収支報告書への不実・虚偽記載を断罪すると共に、国民主権ないし参政権を侵害する違法な企業献金が横行する現状に対し、警鐘を鳴らす意義を有するものです。
3 家賃名目の違法な寄附
更には、山際氏が支部長を務める「自由民主党神奈川県第18選挙区支部」では、毎月40万円を超える家賃(年間520万円前後)を選挙区内の「21世紀(株)」に支払っている旨、政治資金収支報告書に記載していました。
しかし、当該家賃に関し、相場では20万円前後であり、20万円を超える分(年間280万円前後、3年間で847万円超)は、寄附に他なりません。
そして、選挙区内の者に寄附することは、公職選挙法に違反するため、前記同様、選挙区の住民が集まり、前同様、刑事告発を行いました(受理済み)。現時点での告発人は、202人です(追加告発前の人数を含む。)。
山際氏は「21世紀(株)」の株を全株保有しているばかりか(当初の資産として未報告であり、大臣規範違反です。)、同社の代表者は、山際氏の私設秘書であるうえ、多くの被害者を出してきた反社会的団体たる統一協会の信者であるとの報道すら出ている人物であり、その点でも、告発の意義は、大きいものと言えます。
4 最後に
山際氏の上記不正は、あくまで表沙汰になっている一部に過ぎません。
そのうえ、形骸化した政治資金パーティーを通じた実質寄附の勧誘・受領は、山際氏に限らず、広く政界に横行しており、大多数の議員は、異常な利益率で販売益(「売上」)を得、政治資金規正法の趣旨を没却する事態となっている始末です。
そういう点では、本件告発は、氷山の一角をあぶり出すものに過ぎませんが、今後、公正な捜査・起訴がされるように、引き続き告発人を集めて迫っていく予定です。
もし、私達の活動にご興味・ご関心を持っていただき、刑事告発に参加していただけるとのことでしたら、お気軽に弊所までお問合せをいただきますようお願い申し上げます(参加に際して、特段費用はかかりません。)
以上
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|突然、夫(妻)や子どもが逮捕に!?何をしたら良いの?家族ができることは?(弁護士 長谷川拓也)
2023年2月3日 金曜日
長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。
ある人について、「逮捕」になった旨のニュースを聞いたとき、どういった印象を抱くでしょうか。
・きっと悪いことをしたのだろう
・自分は真面目に生活しているので関係がないことだ
逮捕(勾留)という言葉のみを聞いた時、多くの方は、自身には無縁のこととして捉えているように思います。
しかし、一方で、弊所で受けるご相談の中には、
・警察官が任意の事情聴取だと言って夫(妻)を連行したのですが、1日経っても帰ってきません。
・子どもが事件を起こしてしまったようで、○○警察に捕まっているとの連絡を警察官より受けました。助けてあげたいのですが、何ができるでしょうか。
といったご相談が少なくありません。
多くの刑事事件では、逮捕(勾留)は、家族にとって、突然のでき事です。家族は、本人と話して本人の状況や事件の内容を知ることすらできず、心配や不安の中で、本人のために何かできることはしたいものの、何ができるか分からず、適時適切に行動することができなくなってしまうことは当然です。
家族が本人のためにできることは多種多様です。
しかし、多くの方にとっては、刑事事件は、冒頭で述べたとおり、あまり馴染みの深いものではありません。そのため、突然の逮捕(勾留)に適時適切に対応のうえ、結果として、本人の処遇を良くするためには、家族のみの力では困難です。
そのため、本人のため、専門家である弁護士と家族が連携をとっていくことは、必要不可欠です。
刑事事件では、経済的に弁護士に依頼することが難しい場合においても、国が国の負担で弁護人を付けることとなっています(国選)。
もっとも、すべての刑事事件に国選の弁護人が付くものではありません。
例えば、詳細は割愛いたしますが、逮捕段階(勾留前)は、国選の対象外であり、逮捕(勾留)の罪名によっては、そもそも、国選が付く対象ではないこともあります。
更には、国選は、裁判所や弁護士会等の複数の機関を通じ、個別の担当弁護士に打診・連絡をするという制度の都合上、本人と弁護士の接触は、逮捕時より起算して、3~4日以上を過ぎた頃です。
その上、国選の場合、弁護士は、本人との接触以前には、家族の連絡先はおろか、本人に家族がいるかも知りません。また、固定電話を持たずに、まして、LINE等が主流の昨今においては、家族の電話番号を覚えていないことも少なくありませんので、弁護士が家族との連絡を容易に取り合うことができない場合もあります。
刑事事件は、帰結によっては、本人の人生を左右するものであり、初期段階での対応が極めて重要です。
弊所では、半世紀以上の歴史の中で、多くの刑事事件を取り扱ってきましたが、早期の段階でご依頼をいただいたため、適時適切に初動対応を図ることができ、結果として、本人の処遇をより良いものにすることができた例は少なくありません。
突然、夫(妻)や子ども等の家族が逮捕になった際には、家族のみで抱え込んでしまい、何をしたら良いのか慌てず、まずは、早期の段階で弊所にご相談にお越しいただけますと幸いです。
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|保育の「質」及び保育労働者の就労環境の向上をめざして―川崎市保育問題交流会の調査から(弁護士 川岸卓哉)
2023年1月20日 金曜日
弁護士 川岸卓哉(川崎市保育問題交流会代表)
川崎市保育問題交流会は、保育関係の経営者・労働組合・研究者・法律家などが集まり、「保育の質」の向上をテーマに活動してきました。2019年は、関東学院大学中西新太郎教授と共同で、川崎市内の全認可保育所を対象としたアンケート調査を実施しました。調査結果からは、特に、株式会社立保育職員の場合、20代、30代の回答者が多く、年収250万円未満の数が半数(51.1%、法人立職員では35.4%)、75%が300万円未満の結果となり、株式会社立保育所の若年層職員が深刻な低賃金状態にあり,「この給料では、子どもも育てられません。安心して結婚もできません」と賃金の低さに対する不満,不安が訴えられていました。そこで、川崎市に対して、認可保育園の収支計算分析表の情報開示請求を行い、社会福祉法人立保育所(75園)、株式会社立保育所(67園)計142園のそれぞれの人件費率を算出しました。
調査結果からは、株式会社立保育所の人件費率は法人立保育所とくらべ低いことが明らかとなりました。株式会社立では人件費率60%台が34園と半数を占め最大のヴォリュウムゾーンとなっているのに対し、法人立では70%台の32園(42.6%)が最大となりました。のみならず、株式会社立19園(28.3%)が人件費率50%台以下となっています。株式会社立保育所の人件費率の低さは低い処遇実態を反映していると考えられます。
人件費率にこのようなバラツキが生まれたのは、保育分野への株式会社の参入にともない「委託費の弾力運用」を国が認めたことによります。この結果、たとえ委託費の設定時点で処遇改善を行ったとしても、それが実際の処遇向上につながる保障はありません。個々の保育所の弾力運用によって、想定される処遇改善を削ることが可能になっています。したがって、行政として、株式会社立保育職員の適正な処遇を実現するよう、一定の人件費比率以下の園には指導をする等が望まれます。川崎市保育問題交流会では、この間の調査結果を踏まえて、国及び川崎市に対して、保育所職員の処遇の改善のため、
① 国基準の保育士の賃金水準を引き上げ、川崎市公契約条例の対象に認可保育園の業務委託に加えるなどによって、すべての保育所職員の賃金を最低生活費を担保するため最低限時間給1500円以上にすること
② 保育所職員の賃金を全ての年齢層で全産業平均賃金以上の賃金水準とすること
等を要求しています。保育分野では、待機児童が社会問題化した後、現在は保育士の低処遇の問題を顕在化し、国としても改善する方向に進んでいますが、根本解決にはほど遠いものです。大人のための「保育の量」追及の結果「保育の質」が蔑ろにされる政策によって、最も犠牲になるのは「子どもの権利」です。「子どもの権利」を中心に、保育士、保護者が連携した運動を引き続き追及していきます。
(自治体問題研究所「住民と自治」2022年7月号に寄稿した内容です)
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|相続登記義務化迫る!未登記の相続土地はありませんか! 処理にお困りの方は弁護士にご相談ください。 (弁護士 星野文紀)
2022年12月27日 火曜日
2023年2月16日(木)10:30~くらしの法律講座でわかりやすくお話しします。詳細は、こちらの頁をご覧下さい。
1 日本の「所有者不明土地」は九州よりも広い?
最近、「所有者不明土地」が各地で社会問題になっています。「所有者不明土地」とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。
「所有者不明土地」は日本各地で増加しており、その面積を合わせると、九州よりも広く、国土の約22%(平成29年度国土交通省調べ)におよぶというのです。そして今後も、所有者不明土地は、さらに増えていくと予想されています。
2 「所有者不明土地」はこうして増える
所有者不明土地が生じる主な原因としては、
① ①土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと
② ②所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと
などがあげられます。相続放棄も関係しているとも言われています。これらのことにより、登記簿からは所有者がだれかわからなくなるのです。
3 「所有者不明土地」があると、土地が売れない。地域社会の妨げになる。
所有者を登記簿上特定することができないと、いろいろな不具合が生じます。
まず、生きている所有者の登記がなければ、土地を売ったりすることはできません。また、隣地の所有者が不明だと、境界の確認も困難になり、周辺の土地の売却や利用も困難になっていきます。結果、地域全体に使えない土地がどんどん増えていくことになります。
4 相続登記の放置・先延ばしは危険
相続登記は、時間が経てば経つほど困難になります。
具体的に見ていきましょう。相続登記をしないまま祖父母名義の土地に住んでいた父が亡くなって、長男が家を引き継いだとします。長男からすると、曾祖父名義の土地を引き継いだことになります。この土地の相続登記をするとなると、長男から見て、祖父母の兄弟姉妹やその子供(つまり親のいとこ達)と遺産分割協議をしなければなりません。話もしたことのない場合や、会ったことさえないことも多いでしょう。仮に、祖父がその土地を相続するという口頭での合意があったと聞いていましてもその話を知らない人に通用せず、土地を均等に分けなければいけなくなるかもしれません。相続人の1人の行方がわからないかもしれません。結果、相続登記ができないことも考えられます。
このように関係する人が増えることと互いの関係性が遠くなることで話合いが極めて困難になるのです。相続登記の放置は大変危険です。
5 相続登記の義務化。罰則あり
また、前述のとおり、未登記土地が社会問題となっていることから、相続登記を義務化するため、2021年4月21日に民法や不動産登記法などの改正法が成立し、相続登記が義務づけられることになりました。
正当な理由なく、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請をしなかった場合には、10万円以下の過料に処されます。
この改正法は、2024年4月から施行される予定です。
改正法施行後は、速やかに相続登記を行わないと処罰される可能性も出てくるのです。
6 放置されている相続は弁護士にご相談を
相続の手続きは、先送りにすると非常に困難になるという特性があります。自身の将来や将来世代に負担を掛けないように、早めに、相続の処理をされることをおすすめします。処理に問題がある場合や、どうしていいのかわからない場合は、弁護士がお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。
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|情報公開請求-口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーン- (弁護士 小林展大)
2022年12月10日 土曜日
第1 はじめに
情報公開請求の審査請求手続においては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述があります。
審査請求手続は,原則書面審理なのですが,書面とは異なる事実発見の重要な機会を審理手続において設ける等の趣旨から,口頭意見陳述の機会が設けられています。
私が行っている口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーンとは,情報公開請求の審査請求手続において,必ず行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述の両方を申立て,とにかく必ず口頭意見陳述を行う,とにかく口頭意見陳述を行えばそれでいい,というものです。実際には,各口頭意見陳述を行う目的,狙い,理由等はあるのですが,それを書き始めるとそれだけで記事の内容が長くなってしまうので,あえて書かないことにします。
第2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述
1 行政不服審査法31条の規定
⑴ 1項
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
⑵ 2項
前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。
⑶ 3項
口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
⑷ 4項
口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
⑸ 5項
口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。
2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行ってみて
⑴ 私が行っている,地方自治体に対する情報公開請求の審査請求手続において,地方自治体によっては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述の案内がありましたが,案内がなかった自治体もありました。
⑵ 次に,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述は,申し立てをしないと実施されませんでした。
また,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会への諮問前に行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行った自治体と諮問後に行った自治体がありました。
また,必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
⑶ 私が行った行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,質問事項を作成して事前に提出し,同口頭意見陳述においてその回答を求めるようにしています。
⑷ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,記録の送付があった自治体と記録の送付がなかった自治体がありました。
⑸ 意見陳述を実施してみての感想としては,審査請求で対象文書の追加特定を求めている場合,既に開示された資料を読み込んでおく,他の地方自治体で特定,開示された文書,記録等を参考にする等の事前準備をしておくと,実施機関,処分庁において存在すると考えられる文書,記録を推測しやすいことがありました。
また,対象文書の追加特定を求める場合,質問の仕方に工夫を要することがありました。
一方,不開示処分の取り消しを求めている場合,意見陳述で効果的な質問をすることはかなり難しいと思います。不開示事由該当性について質問をしても,抽象的な回答に終始することが多かったです。
さらに,審理員審理の場合,審理員が意見陳述の進行,指揮を適切に行うことで充実した意見陳述の実現につながったこともありましたし,審査請求人側で,類似事例との比較,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較等をすることにより,意見陳述を形骸化させず,充実した意見陳述を実現する努力をする必要があるのではないかと考えられます。
第3 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述
1 根拠規定
情報公開条例,情報公開・個人情報保護審査会条例,情報公開・個人情報保護審査会設置条例,情報公開・個人情報保護審査会設置法等に規定があります。
2 手続の主な流れ
⑴ 地方自治体によっては,審査会の口頭意見陳述の案内がありました。
⑵ 必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
3 口頭意見陳述の進行
審査会の口頭意見陳述の説明,注意事項伝達,審査請求人(及び補佐人)の意見陳述,審査会委員との質疑応答という進行が多いと思います。
私が申し立てた情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述は,今のところいずれも実施されていますが,審査会の口頭意見陳述の根拠規定については,義務規定もあれば,裁量規定もあり,申立をしても口頭意見陳述が実施されない場合もあります。
4 資料について
私は,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述で言及する資料は,事前に提出しています。
5 口頭意見陳述の記録の送付の有無
情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述の記録の送付はありませんでした。
6 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を実施してみて
⑴ 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述には,実施機関,処分庁の職員は出席しません。
⑵ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と異なり,質問事項に沿って質疑応答という流れではありません。
⑶ 対象文書の特定,不開示事由該当性等,審査請求手続における争点を意識して口頭意見陳述を組み立てることが必要ではないかと考えられます。
⑷ 類似事例,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較を踏まえたり,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を踏まえたりして,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を充実化させる努力が必要ではないかと考えられます。
⑸ 補佐人帯同する場合には,事前に審査請求人と補佐人とで役割分担しておく方が現場での混乱が少ないように思います。
第4 終わりに
情報公開請求の審査請求手続においては,口頭意見陳述も積極的に行い,我らが日本国憲法により保障されている知る権利の具現化を今後もはかりたいと思います。
以上
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|安倍元首相の国葬に対する住民監査請求(弁護士 藤田温久)
2022年12月1日 木曜日
1 2022年7月8日、同月10日投票の参議院選挙の街頭応援演説をしていた安倍 晋三元首相が銃撃を受け死亡し、同月22日、岸田首相は国葬(故安倍晋三国葬儀、 以下「本国葬」)を行うことを閣議決定しました。
慣例的に行われてきた「内閣・自由民主党合同葬」ではなく「国葬」とする理由は、①首相在籍期間が憲政史上最長、②日本経済再生や外交に大きな実績、③ 外国首脳ら国際社会から高い評価がある等とされました。
2 住民監査請求
しかし、本国葬は、明らかに違憲・違法であるため、9月15日、私達弁護士は県民・市民とともに、地方自治法に基づき、神奈川県、横浜市、川崎市の各監査委員に対し、知事、各市長、各議会議長が参列のために使用する公金(旅費・日当・宿泊費)の支出差し止め(支出後は返還請求)を求めて住民監査請求を行いました。
3 何故、本国葬が違憲・違法なのでしょうか。
(1)戦前の天皇制下では「国葬令」により、「國家ニ偉功アル者」の葬儀は、天皇の「思召」をもって、天皇の命令により実施されました。「国葬」は、国家が特定の「功臣」の死を政治的な狙いで利用するものだったのです。
(2)国葬令は、1947年に日本国憲法の基本原理と両立しないものとして法律により失効しました。現在の日本において、国を挙げて行なう公葬を規定する法律(皇室典範以外)は存在しません。
(3)本国葬の違憲性・違法性
先ず、国民は平等であり(憲法14条)国は天皇以外を当然に特別扱いできません。本国葬は、法的根拠なく安倍氏を特別扱いして国費で葬儀をするものであり憲法14条に反します。また、故人に追悼の念を抱くか否かは個人的な営為であり個人の歴史観や世界観、政治信条に深く根ざした行為です。本国葬は、その追悼を、有形無形の圧力により国民に強いるという意味で、思想良心の自由を保障した憲法19条に反するものです。更に、本国葬は政教分離原則(憲法20条・89条)、表現の自由(憲法21条)にも反するものです。
次に、本国葬は、法律に基づかないものです。岸田首相は、内閣府設置法に内閣府の所掌事務として「国の儀式」が挙げられているから「法的根拠」はあると言いますが詭弁です。行政は「法律を誠実に執行する」(憲法73条1号)ものであり、行政権の執行には、法律を執行するための機関を作る根拠となる「行政組織法」と、具体的に行政活動を営む際の手続や要件、活動の内容や効果に関する「行政作用法」が必要です。しかし、内閣府設置法は「行政組織法」=ハードウエアにすぎず、国葬に関する「行政作用法」=ソフトウエアは存在しないからです。本国葬は「法律に基づく行政の原理」に反しているのです。重大な違法行為です。
4 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの違法性
地方自治法は、普通地方公共団体は、「地域における事務及びその他の事務」で「法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」を処理するとしています。
しかし、知事らが本件国葬に出席するために公金を支出する根拠となる法律も政令も存在せず、その他の根拠もないため、公金支出は違法です。
5 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの不当性
住民監査請求では、違憲・違法性だけではなく不当性も監査対象になります。仮に百歩譲って、本国葬が違憲・違法ではないとしても、本国葬は著しく不当であり出席のために公金を支出ことも不当であり許されないのです。
つまり、安倍元首相は、
①「アベノミクス」により、日本経済の競争力を奪い、国民の格差と貧困を拡大し、
②「モリ」「カケ」「サクラ」問題など権力の私物化を進め、
③ 教育基本法の改悪や、安保法制・集団的自衛権行使等の違憲行為により
「民主主義」と「憲法秩序」を破壊してきました。このような安倍元首相を国葬にして評価することは、著しく不当だからです。
6 本国葬の強行
岸田政権は、国民の多数が反対する中で(直近の主な全国10の世論調査全てで反対が賛成を大きく上回っていました)本国葬を2022年9月27日に強行しました。
7 意見陳述会と請求の却下
横浜市は10月20日、神奈川県は翌21日、川崎市は27日に請求人と関係職員の意見陳述会を開催し、短時間ですが監査委員との質疑応答も行われました。当事務所の藤田、畑両弁護士も陳述を行いました。
ところが、 横浜市は11月4日、神奈川県は11月11日、川崎市は11月11日にそれぞれ請求を却下しました。却下の理由は、判で押したように、閣議決定に基づき国から招待状が来て出席することは社会通念上相当と認められる社交儀礼上の行為であり国との信頼関係維持増進に資するものであるから地方公共団体の事務に含まれるというものでした。
結局、各監査委員は、県や市の公費支出に法令上の根拠がないこと国葬が違憲違法であることにつき全く検討しないまま、監査請求を棄却したものであり、極めて不当です。
8 監査請求の成果
しかし、本監査委請求を含む国民の本国葬に対する反対の運動は、無駄ではありませんでした。本国葬には、招待者の4割は参列せず、県知事4名、政令市市長1名が欠席し、全国のほとんどの市町村・学校において弔意を表することもされませんでした。また、G7諸国及び国連常任理事国の現役首脳の参加はゼロであり、岸田政権が本件国葬の意義として掲げた「弔問外交」も外交以前に破綻してしまいました。
自民党二階氏は「国葬は当たり前だ。やらなかったらバカだ」「国葬が終わったら反対していた人も良かったと思うはず。日本人なら」等と発言していました。しかし、そうはなりませんでした。世論調査の結果は、本件国葬を評価しない人が評価する人を大きく上回っています。本住民監査請求の請求人も当初は37人でしたが、国葬後も続々と増え、217人の方が請求人となりました。 本国葬に対する市民の反対の意思の表れといえるでしょう。このまま国葬問題に蓋をすることは許されません。このような違憲違法な公費支出をした県知事、川崎市長に対して4月の一斉地方選挙で責任を問いましょう。
以上
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