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追突事故の後遺障害につき、後遺障害等級12級該当として解決した事例(弁護士 小林展大)
2023年10月3日 火曜日
小林展大弁護士については、下記をご覧下さい。
1 受任に至る経緯
依頼者は、自動車を運転して一時停止している時に、後方から追突される交通事故(以下「本件事故」といいます。)に遭いました。依頼者は、すぐに病院に行って診察、治療を受け、その後も継続して通院し、治療を受けていました。そのような経過の中、依頼者から相談を受け、受任することとなりました。
2 受任後から後遺障害等級の認定の申請までの動き
依頼者に交通事故証明を取得してもらうと、人身事故になっていましたので、警察署及び検察庁に問い合わせをして、刑事記録の一部を謄写しました。また、依頼者の傷害は、いわゆるむち打ち症でしたので、被害者請求により後遺障害等級の認定の申請を行うこととし、後遺障害診断書等の必要書類を取得しました。
必要書類の準備ができたところで、後遺障害等級の認定の申請をしました。
3 異議申し立て
しかし、結果は後遺障害等級非該当でした。
そこで、依頼者と協議し、この結果に対して、異議申し立てをすることとしました。依頼者には通院していた医療機関からカルテ開示をしてもらい、協力してもらえる医師(以下「協力医」といいます。)を探しました。
そして、協力医が見つかり、後遺障害診断書、意見書等の書類を作成してもらいました。このような追加資料を準備した上で、異議申し立てを行いました。
その結果、依頼者は後遺障害等級14級に認定されました。
4 さらなる異議申し立て
しかしながら、従前から依頼者のカルテ一式等の資料を検討していると、依頼者については後遺障害等級12級に該当する可能性があるのではないかと考えられました。
そこで、さらに追加の医証を準備した上で、さらに異議申し立てをしました。
しかし、その結果は、前回の異議申し立てにより認定された後遺障害等級14級のままでした。
5 訴訟提起
ここで、2回の異議申し立ての結果に記載された理由、依頼者に取得していただいた診療記録一式、謄写した刑事記録、協力医から今後得られそうな協力等を踏まえて、依頼者とその後の方針について協議しました。
訴訟であれば、被害者請求により認定された後遺障害等級に拘束されるわけではないものの、一般的にむち打ち症で後遺障害等級12級に認定されることは少ないこと等も踏まえて、依頼者と協議した結果、訴訟提起することとしました。
訴訟では、後遺障害等級については、証拠として提出した診療記録一式、CT・MRI等の画像資料、医師意見書、後遺障害診断書等をもとに立証していきました。加えて、医療過誤事件と同様に医学文献の収集につとめ、医学文献も証拠として提出していきました。
また、損害については、逸失利益につき、いくつか対応が必要な問題点があったことから、その都度、依頼者に証拠資料の有無を確認し、援用できそうな証拠資料の準備をお願いして、立証につとめました。
そして、裁判所の考えが開示され、後遺障害等級については12級該当を認めてもらうことができました。その後は、裁判所の考えをもとに、少し交渉をした上で、解決に至ることができました。
6 最後に
本件は、むち打ち症につき、当初は後遺障害等級非該当との判断がされたものの、異議申し立てにより後遺障害等級14級該当が認められ、訴訟では後遺障害等級12級該当が認められて解決に至ったものです。
診療記録に、依頼者の主張を裏付ける記載があっただけでなく、協力医の適切なサポートがあったこと、依頼者が迅速に証拠資料の収集、確保につとめたことも良い結果につながった要因ではないかと考えられます。
以上
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|77期修習生他 事務所訪問 & 学習会企画
2023年9月26日 火曜日
●事務所訪問 & 学習会企画●
➀ 2023年11月24日(金) 18:30-20:00
学習会テーマ
『上司からの性暴力に対する損害賠償請求事件』
講師 川口彩子弁護士(55期)
② 2023年12月1日(金) 18:30-20:00
学習会テーマ
『非正規労働者の雇用を守る闘いの歴史と展望』
講師 藤田温久弁護士(42期) 川岸卓哉弁護士(64期)
③ 2023年12月15日(金) 18:30-20:00
学習会テーマ
『若手弁護士の子どもの権利とのかかわり』
講師 畑 福生弁護士(70期)
事務所訪問&学習会企画にご参加の方は、長谷川(hasegawa☆kawagou.org)までメール、または事務所あてに電話(044-211-0121)の上お申し込みください。
メールの際は、「☆」を「@」に変えて送信いただきますようお願いいたします。
いずれも学習会後、懇親会を予定しています。皆様のご参加お待ちしております。
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|神奈川県弁護士会川崎支部のホームページに掲載されました(弁護士 畑福生)
2023年7月24日 月曜日
畑福生弁護士については、こちらをご覧下さい。
神奈川県弁護士会川崎支部のホームページに、畑福生弁護士の弁護士コラム「ボードゲームで法律問題を学びましょう!」が掲載されました。
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|夫(妻)が通帳や保険証券を見せてくれない。どうしたらいい?~ちゃんと財産分与を受けるために今できること~ (弁護士 中瀬奈都子)
2023年7月3日 月曜日
中瀬奈都子弁護士については、こちらをご覧下さい。
離婚において財産分与をする際に、まず、夫婦共有財産の内容を確定する必要があります。
しかし、夫婦共有財産内容については、夫婦双方がしっかりと把握しているとは限りません。
「配偶者が一切の財産を管理しているため、自分は、まったく財産内容がわからない。」
「配偶者はそれなりに収入があるから、もっと預金があると思ったのに・・・。」
というご相談も極めて多いのです。
では、このように、共有財産がわからない場合、財産分与はどのように行えばよいのでしょうか。
◆財産分与とは?
財産分与とは、婚姻期間中に、夫婦が協力して形成した財産を分けることをいいます。
婚姻期間中に協力して築いた財産は、その財産の名義が夫婦のどちらかであるかは問わず、原則2分の1ずつ分けるというのが基本的な考え方です。
財産分与については、いつの時点の財産を分与の対象とするのか、どの財産が分与の対象になるか、その財産の評価額がいくらかといったことをめぐって争われることが多いです。
財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分けることであるため、財産形成に向けた夫婦の協力関係が終了したときが財産分与の基準時となります。実務では、夫婦が離婚に向けて別居を開始した時点、同居のままだった場合は離婚時点を基準とするのが一般的です。
基準時点における財産を双方が開示しあって、それを合算したものを2分の1ずつ分けるというのが、財産分与の基本的な考え方です。
ところが、いざ開示された財産を見てみると、「思っていたよりも少ない」ということがあります。
◆別居前にできること
そうならないように、今から、別居することをご検討されている方は、別居前に、自分でできるかぎり、共有財産の内容を調べることをおすすめします。
通帳や保険証券などは、自宅内の決まった場所に保管されていることが多いでしょうから探して、コピーや写真をとっておきましょう。これらが見つからない場合は、たとえば銀行や保険会社、証券会社などから届いている郵便物などがないか、探してみてください。
もちろん、ご自身名義の通帳や保険証券については、別居時に持ち出すことをお忘れなく。また、配偶者に自分の名義の預金や保険証券などを隠されている場合は、ご自身名義の預金や保険であれば、銀行や保険会社などに問い合わせれば、自分の口座の履歴や、保険契約の明細を書面でとりつけることが可能です。
◆裁判所を通して行う財産調査
では、別居前にできる限り財産を調査したけれど、不十分だなという場合、どうすればいいでしょうか。
夫婦であったとしても、他人名義の財産については、名義人である本人の承諾がない限り、銀行や保険会社などは開示してくれません。
そこで、離婚調停や財産分与調停(審判)、離婚訴訟などの手続を行っている場合は、明らかになっていない財産を探す最終手段として、裁判所を通して財産を調査する「調査嘱託」という手続を利用することが考えられます。
調査嘱託は、裁判所に対して、調査を希望する当事者が調査嘱託の申立てを行い、裁判所がこれを認めた場合に認められる手続です。
調停段階では認められないケースもありますが、私の経験では、最近では調停段階でも調査嘱託が認められるケースが増えています。
ただし、家庭裁判所は探索的な(財産があるかどうかもわからない関係先に対してやみくもに申し立てる)調査嘱託は認めてくれません。調査嘱託を申し立てる関係先に財産があることの手がかりを、裁判所に示す必要があります。
例えば、銀行に対して相手方名義の預貯金の口座について調査嘱託してもらうのであれば、事前に通帳の写しや銀行からの郵送物を家庭裁判所に提出します。
その上で、A銀行B支店に対して、相手方名義の口座が存在するか、口座が存在する場合には、別居時点から過去1年分の履歴を提出するように調査嘱託をしてください、という申し立てを行います。
私は、ご依頼者様が相手方の財産を把握していないようなケースは、預金については別居前1年分の履歴について調査嘱託の申立てを行うことが多いです。預金取引履歴から、例えば保険料の支払いや財形年金貯蓄の受給など、他の財産の存在が判明することがあるからです。その場合、見つかった財産についてさらに調査嘱託の申立てをして、その財産の評価額など具体的な内容を開示させていきます。
◆別居前にある程度把握しておこう
このように裁判所に調査嘱託を認めてもらうためにも、別居前にできるかぎりの資料を収集しておくことがとても大切です。とはいえ、あまり資料を集められなかった・・・と諦めないで下さい。お話しをさせていただく中で、「こういう資料もあった!」、「これをきっかけに調査嘱託ができそう!」などの気づきがあることも多々あります。
川崎合同法律事務所は、年間150名を超える方々から、離婚・男女トラブル・お子さんにご相談をいただいております。財産分与が争点となっている事件も多数取り扱っております。たくさんの事例を経験しているからこそ、依頼者のみなさまそれぞれのご事情に応じた解決策をたてることができます。
財産分与を含め、離婚やご家庭の問題に悩みを抱えたときには、是非、お気軽にご相談にいらしてください。
弁護士 中瀬奈都子
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|労働判例(2023年7月1日号)に掲載されました(弁護士 藤田温久)
2023年6月28日 水曜日
藤田温久弁護士については、こちらから。
労働判例(2023年7月1日号) の遊筆(労働問題に寄せて)に、藤田温久弁護士の「メンタル疾患充満の元凶方」が掲載されました。
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|季刊「人間と教育」118号(2023夏号)に掲載されました(弁護士 畑 福生)
2023年6月12日 月曜日
畑弁護士については、こちらをご覧下さい。
民主教育研究所発行 季刊「人間と教育」118号(2023夏号)に、畑福生弁護士の「法案に盛り込まれなかった子どもコミッショナー/オンブズパーソン制度とは」が掲載されました。
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|空き家問題の対処法(弁護士 星野文紀)
2023年6月1日 木曜日
星野文紀弁護士については、こちらをご覧下さい。
1 空き家がどれくらいあるか
全国に848万9千戸が空き家があり、空き家率13.6%(平成30年 総務省統計局)となっている。
川崎市の空き家は7万3800戸で空き家率9.5%(平成30年 川崎市)で空き家率とほぼ横ばいである。もっとも、空き家の内、67.3%は業者等によって管理されている。長期不在などの管理されていない可能性の高い空き家は、空き家の内の32.2%と近年急増している。川崎市では、多摩区、中原区、川崎区の順に空き家数が多い。
2 空き家・空地の何が問題か
管理が行き届かないことによる、近隣・地域への悪影響
(家屋の倒壊、草木・雑草の繁茂、害虫・猫・ネズミ等の繁殖、不審者のたまり場になる、放火の危険、ゴミ屋敷、悪臭、不衛生、景観悪化、近隣不動産価値の低下)
3 空き家増加の原因
① 核家族化による住宅の増加に加えての少子高齢化
② 新築志向からくる新築住宅の大量供給
③ 空き家を取り壊した時の負担増
数百万円の解体費用、小規模住宅用地の特例除外による固定資産税の増加(約6倍)
第2 問題が起きた場合はどうする?
1 だれに請求するか(権利関係の確認)
空き家・空地等によって被害を受けた場合は、空き家の所有者等に必要な処置を請求することになる。しかし、誰に請求すればいいのか、どうやって調べるのか。
(1)登記名義人を調べる
法務局で登記事項証明書を取得し調査する。
未登記建物については、市町村から固定資産評価証明書を取得することも考えられる(ただし、一般的には入手できない)
(2)登記名義人が死亡している場合
住民票の除票や戸籍全部事項証明書を使って相続人を調査する。ただし、自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要があること説明する必要有り。
相続人を調査し全員に請求する。
(3)空き家の相続人がいない場合
利害関係を有する者なら相続財産管理人の選任を申立てることができる。相続財産管理人が空き家を管理し場合によっては取り壊すことができる。
ただし、相続財産管理人は、家庭裁判所が候補者にとらわれず選任し、申立人に予納金を納付させる(20万円~100万円くらい)。申立人や関係者が相続財産管理人になる場合は、報酬を予め放棄することが多い。
相続財産管理人の選任までは必要ないものの、相続放棄によって裁判をする必要がある場合には特別代理人の選任を申し立てることも考えられる(こちらの方が予納金は安め)。
(4)土地と建物の所有者が異なる場合
建物を管理している人が一般的には土地の管理を行っている。したがって、通常は建物の管理者が相手になる。
(5)空き家が賃貸の場合
1次的には、空き家の占有者である賃借人、しかし、朽ちた空き家を放置しているなど場合は空き家の所有者たる賃貸人にも責任がある場合もある。
(6)空き家の所有者の判断能力に問題がある場合
①成年後見人の選任をしてもらう。
②親族から管理の委任を受ける
③事務管理(緊急時に他人の財産の管理をする)
(7)所有者が行方不明の場合
不在者財産管理人の選任を申し立てる。やはり、家庭裁判所が候補者にとらわれず選任し、申立人に予納金を納付させる(数十万円~100万円くらい)。
不在者財産管理人の選任までは必要ないものの、相続放棄によって裁判をする必要がある場合には特別代理人の選任を申し立てることも考えられる(こちらの方が予納金は安め)。
2 何を請求するか
(1)隣地との境界を確認したい
①当事者間の協議。民事調停、②筆界特定制度、③境界確定の訴え、④所有権確認訴訟
(2)空き家がこちらの敷地にはみ出している
所有権に基づく妨害排除請求権として撤去を求める。ただし、時効取得。権利濫用。
(3)隣の家が傾いてきた
所有権に基づく妨害排除請求権としての傾斜防止措置を求める。仮処分も。
著しい傾斜(20分の1超)等があれば、空き家対策特別措置法に基づく処置を促すことも
(4)隣との間に塀を作りたい
共同の費用で塀を設けることができる。話会いが整わない場合は、板塀又は竹垣その他これに類する材料で高さ2mのものとすると規定されている。
したがって、どうしても話し合いがまとまらないときは、自分の敷地に自分の費用で塀を建てるか、隣の所有者に対して設置協力を求める裁判を提起することになる。
(5)隣から枝や根が越境してきている
枝は、切除させることができる。根は切り取ることができる。ただし、普通は撤去を要求することになる。
(6)隣の空き地の下にガス管・水道管を埋設したい
基本的には所有権は地下にも及ぶ。しかし、下水道法11条1項で他人の土地を使用しなければ、下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは下水管については承諾不要とされている。これは、下水以外の配管について類推適用される。
(7)空き地・空き家からのごみに困っている
基本、土地をどのように使うのかは自由。何も請求出来ないことが多い。ただし、隣の敷地にゴミがはみ出して来ているような状態で、所有者がなんらの対策もとらない場合は、不法行為により損害賠償請求出来る場合がある。
(8)空き家からの火事
漏電等については空き家の所有者に請求できる。ただし、失火責任法の適用がある場合もある。
第三者による放火の場合は、基本的に空き家の所有者に請求出来ない。しかし、施錠していない、燃えやすい物を放置するなどしていた場合は空き家の所有者の責任も考えられる。
(9)空き家に不審者が出入り
法的処置は難しいが、管理をお願いする。管理の委任を受ける。警察に通報するなどの方法が考えられる。
(10)空き家による不動産価値の下落
多く主張されるがほとんど認められない。ただし、受任限度をこえる不利益が生じ、住宅価格が相当下落した場合に下落相当額の損害賠償を認められる場合も考えられる。
第3 空家対策特別措置法
何ができるようになったか
① 空き家等の調査・立ち入り
② 固定資産税情報の利用
③ 特定空家等の所有者に対する助言指導
④ 特定空家等の所有者に対する勧告(固定資産税の特例がなくなる)
⑤ 特定空家等の所有者に対する命令(50万円以下の過料)
⑥ 特定空家等の所有者に対する行政代執行
⑦ 特定空家等の所有者等が不明な場合の行政代執行(略式代執行)
※「特定空家等」
①そのまま放置すると、倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態のもの
②そのまま放置すると、衛生上著しく有害となるおそれのある状態のもの
③適切な管理が行われていないことで、著しく景観を損なっている状態のもの
④その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態のもの
以上
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|川崎市市民ミュージアム副館長雇止め事件・逆転勝利和解!(弁護士 藤田温久)
2023年5月31日 水曜日
藤田温久弁護士については、こちらをご覧下さい。
川崎市市民ミュージアム副館長濱崎さん(以下「H氏」)雇止め事件につき、2022年12月13日に東京高等裁判所で「勝訴に匹敵する」逆転勝利和解が成立しました。
1 事件の概要
川崎市市民ミュージアムは川崎市が100%出資する川崎市生涯学習財団(以下「財団」)が運営していましたが、2017年4月に川崎市が指定管理者制度を導入し、2022年3月までの5年間、アクティオ・東急コミュニティ共同事業体が指定管理者に選定されました。
H氏は財団に採用され29年間にわたって、川崎市市民ミュージアムの映像担当の学芸員として勤務してきましたが、2017年4月指定管理者制度の導入に伴いやむなくアクティオの社員となりました。アクティオにおける待遇は、1年の契約社員(更新有り)、給料は従来の3割程度でした。但し、アクティオは原則として更新する旨を口頭では述べ、契約書には更新可否の判断基準が列挙され、H氏は2年間以上継続することを予定する業務をいくつも担当していました。
ところが、2018年2月、アクティオはH氏のみを同年3月末をもって雇止めにすると通告しました。H氏は、全川崎地域労組に加入し、同年8月、横浜地方裁判所川崎支部に雇止め無効・雇用契約上の地位確認、バックペイ等を求める訴訟を提起しました。
2 争点について
「雇止め」が有効か否かは、形式的には1年間の「期間の定めのある労働契約」であるアクティオとH氏の労働契約が
(1)「契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」(労働契約法19条2号)か否か、
(2)「「使用者が更新申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」(労働契約法19条柱書後段)に該当するか否か
で判断されます。
3 横浜地方裁判所川崎支部の不当判決
17回の口頭弁論期日を経て、2021年12月21日 言い渡された判決(以下「原判決」)はH氏の全部敗訴でした。
原判決は、争点 (1)について、労働契約書に契約期間が1年と書かれていること等の形式的理由と、アクティオ側証人のみを偏波に信用し、労契法19条2号の要件の判断は、客観的・制度的事情をふまえないおよそ粗雑な判断により「更新の期待に合理性はない」と決めつけ、争点(2)は判断するまでもないとしました。
4 控訴審の闘い
H氏は2022年1月4日に控訴を提起しました。控訴理由書は81頁に及び、原判決が争点(1) について、労働契約を有期雇用とした「意図・目的の合理性」を全く検討していないことを全面的に批判し、H氏の学芸員業務が高度の知識、長期にわたる経験の蓄積、恒常的対応が求められる業務であり、市民ミュージアムが博物館・美術館としての機能を発揮していく上で不可欠な恒常的・常用的業務であることを期待権を裏付ける様々な証拠・証言によって整理・立証することに力点を置きました。争点(2)については、アクティオが主張する ①無断遅刻、②能力不足、③就業規則違反等について原審でことごとく虚偽・存在しないことが立証されている点を整理しました。
これにより、控訴審は第1回(2022年6月)から原判決逆転の心証を前提とした訴訟指揮を行い、9月の結審後、和解手続が繰り返され2022年12月13日に「アクティオがH氏に本件解決金として1500万円を支払う等の和解が成立しました。
5 和解の成立と和解の意義
(1)1500万円という解決金の金額は、雇止め後の残指定管理期間4年間分のH氏の賃金額全額にほぼ相当します。東京高裁の説得もありアクティオは口外禁止条項を求めないとしました。H氏は、本件雇止めが不当・違法であったことをアクティオが事実上認めた、すなわち本件労働契約に「更新の期待権がある」(19条2号)こと及び「更新拒絶は客観的に合理的理由を欠き社会通念上相当であると認められない」(19条柱書後段)ことが事実上認められたと評価し得る水準及び内容と評価しかつ紛争の早期終結の見地から和解に至りました。
(2)1年の有期契約で1回も更新のないH氏に対する雇止めに対する事案において「更新の期待権がある」ことが事実上認められたこと、その前提として、本件労働契約を有期労働契約とした「目的の合理性」がないと控訴審が判断したと考えられることは、本件学芸員のような職種にまで無制限に有期労働契約を拡大する不当性を弾劾する意義を有するものと評価するべきです。
(3)このような違法な雇止めを強行した責任、その前提として学芸員まで有期労働契約としたアクティオの責任、指定管理により目先の利益のみのアクティオに市民ミュージアムの経営を任せた川崎市の責任を問う和解と評価するべきです。
(4)2019年10月の台風で収蔵品が重大な被害を受けたこと、レスキュ―が進まないことの原因も、指定管理に移行したことにあることと同根の問題が断罪されたということもできると評価しうると考えます。
6 H氏・弁護団
弁護士・川口彩子、藤田温久(川崎合同法律事務所)
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|第94回川崎メーデーに参加しました
2023年5月1日 月曜日
2023年5月1日(月)中原平和公園であいの広場で開催された、第94回川崎メーデーに参加しました。
藤田温久弁護士
三嶋健弁護士
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|山際大志郎議員政治資金規正法違反等事件 検察審査会へ申立をしました(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月28日 金曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
衆議院選挙神奈川18区選出(川崎市宮前区・高津区・中原区)の山際大志郎衆議院議員の政治資金規正法違反等の2つの事件について、多くの市民が横浜地方検察庁に刑事告発をし、受理され捜査が進められていましたが、横浜地方検察庁は嫌疑不十分として不起訴処分としたことに対して、2023年4月28日、検察審査会への申立てを行いました。
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/246702
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20230428/ddl/k14/010/128000c
神奈川新聞 https://www.kanaloco.jp/news/social/article-985884.html
第1 山際大志郎元大臣の相次いだ政治資金規正法違反等に対する刑事告発の内容
1 事件① 違法政治資金パーティー事件
2020年12月23日、出山際大志郎衆議院議員及びその資金管理団体である「21世紀の政治経済を考える会」の会計責任者が、憲政会館で開催した、政治資金パーティー「衆議院山際大志郎政経セミナー」では、県政記念館の席数は着席496席であるのに対し、山際大志郎大臣が販売したパーティー券の枚数は870枚と、参加可能人数の1.7倍も販売していることが、政治資金規正法違反に当たるとして、2022年6月、選挙区の住民を中心に合計約350名が刑事告発をし、7月19日、横浜地方検察庁特別刑事部が受理しされました。
2 事件② 家賃名目寄付事件
また、山際大志郎氏が支部長の「自由民主党神奈川県第18選挙区支部」(「県第18選挙区支部」)は、毎月40万円を超える家賃(年間520万円前後)を選挙区内の会社「21世紀(株)」に支払っていると政治資金収支報告書に記載していました。しかし、相場では20万円前後であり、20万円を超える分(年間280万円前後、3年間で847万円超)は寄附になり、選挙区内にある者に寄附することは公職選挙法に違反します。そのうえ、山際氏は「21世紀(株)」の株を全株もっていました。また、同社社長は山際氏の私設秘書であり、多くの被害者を出してきた反社会的団体である統一協会の信者であると報道されている人物でした。以上のことが発覚しないようにするために寄附分を上乗せして高額な「家賃」を支払っていると政治資金収支報告書に記載していたことは、政治資金規正法違反です。2022年10月6日、約200名の住民が刑事告発をし、同年12月15日に同じく受理され、捜査が進められていました。
第2 横浜地方検察庁の「嫌疑不十分」の不起訴処分に対する170名を超える市民が検察審査会へ申立
上記2つの事件について、2023年3月8日付で、横浜地方検察庁は、嫌疑不十分としてまとめて不起訴処分としました。
しかしながら、2つの事件は、いずれも、根拠のない刑事告発ではないことは、処分理由が「嫌疑なし」の処分ではないことからも明らかです。それにもかかわらず、横浜地方検察庁が、「嫌疑不十分」を理由に不起訴処分としたことは、政府に忖度をし、結論ありきで捜査・立件を怠ったと考えざるを得ません。
日本で,名ばかりの政治資金パーティーの開催により,異常な利益率の下,実質的には寄附金の受領が横行しているのが現状であります(事件①)。さらには、山際氏は、政治資金を私物化するようなことまで行っています(事件②)。それにも関わらず、検察庁はこれを是認するもので、到底受け入れられない処分であり、検察審査会へ申立をすることとなりました。
事件①については176人、事件②110名もの多くの市民が検察審査会へ申立をしました。
検察審査会が、起訴相当または不起訴不当と判断すれば、あらためて捜査が再開されることになります。選挙権を有する国民の中から選ばれた検察審査員が、市民の目線で、権力に忖度した検察官が不起訴処分の不当性を明らかにし、政治献金による金権政治を正し、市民のための政治を取り戻すことを求めていきます。
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