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民法・不動産登記法等の改正等 その2(弁護士 山口毅大)
2023年2月28日 火曜日
民法・不動産登記法等の改正等 その2 ~共有物の管理の範囲の拡大・明確化~改正民法等の施行が迫っています。共有物の管理等でお困りごとがございましたら、ぜひ弁護士にご相談ください。
1 はじめに
2021年4月21日、民法・不動産登記法等の改正等がなされました。この改正等の内容は、多くの市民の方に影響を与える大改正です。ただ、その改正点等の内容は、多岐にわたります。そこで、今回は、民法の共有物の管理の範囲の拡大・明確化されたことについて、解説いたします。
2 義務の明確化
⑴ 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
現行民法では、単独で占有権原がない共有者が共有物を占有した場合、他の共有者に対し、いかなる義務を負うのかについて、明確になっていませんでした。
今回の改正では、不必要な紛争を防止するために、この義務の内容を明確にしました。
⑵ 改正民法では、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除いて、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うということになりました(新民法249条2項)。
さらに、共有物を使用している共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならないことが明記されました(新民法249条3項)。遺産共有の場合も、相続の承認をした共同相続人は、遺産を使用するに際して、善良な管理者の注意義務を負うことになりました。なお、熟慮期間中は、従前のとおり、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理すれば足ります(新民法918条)。
3 管理行為の範囲に関する改正
⑴ 現行民法は、共有物に変更を加える場合、共有者全員の同意が必要とされていました。ですが、これを全てに適用すると、実質的には、共有者に与える影響が小さい場合であっても、反対者がいれば変更ができなくなり、円滑な共有物の利用、管理に支障が生じる場合がありました。
そこで、改正民法では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない変更(以下「軽微変更03」といいます。)は、各共有者の持分の価格の過半数で決することができるものと規定されました(新民法251条1項、252条4項)。「形状の変更」とは、その外観、構造等の変更を、「効用の変更」とは、その機能や用途の変更のことをいいます。いかなる場合に、軽微変更にあたるのかについては、変更箇所及び範囲、変更行為の態様及び程度等を総合して判断されます。具体的に、舗装行為や大規模修繕工事は、原則として、軽微行為にあたると考えられます。
⑵ また、現行民法のもとでは、共有物に対する賃借権その他の使用を目的とする権利(以下「賃借権等」といいます。)の設定は、原則として、管理行為であり、持分の価格の過半数で決することができるとする判例がありました(最判昭和39年1月23日集民71号275頁)。ですが、これでは、長期間の賃借権等の設定がなされた場合、共有者による共有物の使用、収益等が制約されるので、全員の同意が必要であると考えられていましたが、その区別の基準が不明確でした。
そこで、改正民法では、一定の期間を超えない短期賃借権等の設定を除く、賃借権の設定等は、共有者全員の同意が必要になるとされました(新民法252条4項)。具体的に一定の期間を超えない短期賃借権等の設定とは、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等については10年、それ以外の土地の賃貸借等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6ヶ月を超えないものがその対象となります。ここで注意しなければならないこととして、建物所有目的の土地賃借権等の設定、建物賃借権の設定が挙げられます。まず、建物所有目的の土地賃借権等の設定は、仮に、契約で存続期間を5年以内と定めても借地借家法により、存続期間が30年となってしまうので、一時使用目的である場合を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法3条、25条)。また、建物賃借権の設定も、仮に、契約で存続期間を3年以内と定めても、借地借家法により、正当の事由があると認められない限り、契約の更新をしない旨の通知をすることができない以上、不更新条項付定期建物賃貸借、取り壊し予定の建物賃貸借、一時使用目的の建物賃貸借を除き、全員の同意が必要となります(借地借家法28条、38条1項、39条1項、40条)。
4 施行日と経過措置
今回の民法等の改正は、改正された部分との関係で施行日が異なりますので、注意が必要です。なお、不動産登記法の改正に関する部分を除く民法の改正部分については、2023年5月1日から施行されます。
それ以外にも、今回の民法等改正において、個別に経過措置が定められていますので、個別具体的に、改正された民法等が適用されるかどうかについて、確認する必要があります。基本的な考え方は、施行日以後は、既に生じている権利関係についても改正後の規定が適用されることを前提にして、経過措置を講ずべき規定が個別に定められています。
5 ご不明な点があれば、ご相談へ
以上のとおり、共有物の管理に関する基本的な改正事項に絞って、解説してまいりましたが、これまでの現行法の考え方を踏まえる必要や他にも留意すべき改正点がございますので、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
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突然、夫(妻)や子どもが逮捕に!?何をしたら良いの?家族ができることは?(弁護士 長谷川拓也)
2023年2月3日 金曜日
長谷川拓也弁護士については、こちらをご覧下さい。
ある人について、「逮捕」になった旨のニュースを聞いたとき、どういった印象を抱くでしょうか。
・きっと悪いことをしたのだろう
・自分は真面目に生活しているので関係がないことだ
逮捕(勾留)という言葉のみを聞いた時、多くの方は、自身には無縁のこととして捉えているように思います。
しかし、一方で、弊所で受けるご相談の中には、
・警察官が任意の事情聴取だと言って夫(妻)を連行したのですが、1日経っても帰ってきません。
・子どもが事件を起こしてしまったようで、○○警察に捕まっているとの連絡を警察官より受けました。助けてあげたいのですが、何ができるでしょうか。
といったご相談が少なくありません。
多くの刑事事件では、逮捕(勾留)は、家族にとって、突然のでき事です。家族は、本人と話して本人の状況や事件の内容を知ることすらできず、心配や不安の中で、本人のために何かできることはしたいものの、何ができるか分からず、適時適切に行動することができなくなってしまうことは当然です。
家族が本人のためにできることは多種多様です。
しかし、多くの方にとっては、刑事事件は、冒頭で述べたとおり、あまり馴染みの深いものではありません。そのため、突然の逮捕(勾留)に適時適切に対応のうえ、結果として、本人の処遇を良くするためには、家族のみの力では困難です。
そのため、本人のため、専門家である弁護士と家族が連携をとっていくことは、必要不可欠です。
刑事事件では、経済的に弁護士に依頼することが難しい場合においても、国が国の負担で弁護人を付けることとなっています(国選)。
もっとも、すべての刑事事件に国選の弁護人が付くものではありません。
例えば、詳細は割愛いたしますが、逮捕段階(勾留前)は、国選の対象外であり、逮捕(勾留)の罪名によっては、そもそも、国選が付く対象ではないこともあります。
更には、国選は、裁判所や弁護士会等の複数の機関を通じ、個別の担当弁護士に打診・連絡をするという制度の都合上、本人と弁護士の接触は、逮捕時より起算して、3~4日以上を過ぎた頃です。
その上、国選の場合、弁護士は、本人との接触以前には、家族の連絡先はおろか、本人に家族がいるかも知りません。また、固定電話を持たずに、まして、LINE等が主流の昨今においては、家族の電話番号を覚えていないことも少なくありませんので、弁護士が家族との連絡を容易に取り合うことができない場合もあります。
刑事事件は、帰結によっては、本人の人生を左右するものであり、初期段階での対応が極めて重要です。
弊所では、半世紀以上の歴史の中で、多くの刑事事件を取り扱ってきましたが、早期の段階でご依頼をいただいたため、適時適切に初動対応を図ることができ、結果として、本人の処遇をより良いものにすることができた例は少なくありません。
突然、夫(妻)や子ども等の家族が逮捕になった際には、家族のみで抱え込んでしまい、何をしたら良いのか慌てず、まずは、早期の段階で弊所にご相談にお越しいただけますと幸いです。
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保育の「質」及び保育労働者の就労環境の向上をめざして―川崎市保育問題交流会の調査から(弁護士 川岸卓哉)
2023年1月20日 金曜日
弁護士 川岸卓哉(川崎市保育問題交流会代表)
川崎市保育問題交流会は、保育関係の経営者・労働組合・研究者・法律家などが集まり、「保育の質」の向上をテーマに活動してきました。2019年は、関東学院大学中西新太郎教授と共同で、川崎市内の全認可保育所を対象としたアンケート調査を実施しました。調査結果からは、特に、株式会社立保育職員の場合、20代、30代の回答者が多く、年収250万円未満の数が半数(51.1%、法人立職員では35.4%)、75%が300万円未満の結果となり、株式会社立保育所の若年層職員が深刻な低賃金状態にあり,「この給料では、子どもも育てられません。安心して結婚もできません」と賃金の低さに対する不満,不安が訴えられていました。そこで、川崎市に対して、認可保育園の収支計算分析表の情報開示請求を行い、社会福祉法人立保育所(75園)、株式会社立保育所(67園)計142園のそれぞれの人件費率を算出しました。
調査結果からは、株式会社立保育所の人件費率は法人立保育所とくらべ低いことが明らかとなりました。株式会社立では人件費率60%台が34園と半数を占め最大のヴォリュウムゾーンとなっているのに対し、法人立では70%台の32園(42.6%)が最大となりました。のみならず、株式会社立19園(28.3%)が人件費率50%台以下となっています。株式会社立保育所の人件費率の低さは低い処遇実態を反映していると考えられます。
人件費率にこのようなバラツキが生まれたのは、保育分野への株式会社の参入にともない「委託費の弾力運用」を国が認めたことによります。この結果、たとえ委託費の設定時点で処遇改善を行ったとしても、それが実際の処遇向上につながる保障はありません。個々の保育所の弾力運用によって、想定される処遇改善を削ることが可能になっています。したがって、行政として、株式会社立保育職員の適正な処遇を実現するよう、一定の人件費比率以下の園には指導をする等が望まれます。川崎市保育問題交流会では、この間の調査結果を踏まえて、国及び川崎市に対して、保育所職員の処遇の改善のため、
① 国基準の保育士の賃金水準を引き上げ、川崎市公契約条例の対象に認可保育園の業務委託に加えるなどによって、すべての保育所職員の賃金を最低生活費を担保するため最低限時間給1500円以上にすること
② 保育所職員の賃金を全ての年齢層で全産業平均賃金以上の賃金水準とすること
等を要求しています。保育分野では、待機児童が社会問題化した後、現在は保育士の低処遇の問題を顕在化し、国としても改善する方向に進んでいますが、根本解決にはほど遠いものです。大人のための「保育の量」追及の結果「保育の質」が蔑ろにされる政策によって、最も犠牲になるのは「子どもの権利」です。「子どもの権利」を中心に、保育士、保護者が連携した運動を引き続き追及していきます。
(自治体問題研究所「住民と自治」2022年7月号に寄稿した内容です)
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2023年講演会「2023年統一地方選に向け杉並の取組みに学ぶ 民主主義と地方自治の再生へ」(講師 アジア太平洋資料センタ-共同代表 内田聖子さん) 2023年2月22日18:30~中原市民館
2022年12月28日 水曜日


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相続登記義務化迫る!未登記の相続土地はありませんか! 処理にお困りの方は弁護士にご相談ください。 (弁護士 星野文紀)
2022年12月27日 火曜日
2023年2月16日(木)10:30~くらしの法律講座でわかりやすくお話しします。詳細は、こちらの頁をご覧下さい。
1 日本の「所有者不明土地」は九州よりも広い?
最近、「所有者不明土地」が各地で社会問題になっています。「所有者不明土地」とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。
「所有者不明土地」は日本各地で増加しており、その面積を合わせると、九州よりも広く、国土の約22%(平成29年度国土交通省調べ)におよぶというのです。そして今後も、所有者不明土地は、さらに増えていくと予想されています。
2 「所有者不明土地」はこうして増える
所有者不明土地が生じる主な原因としては、
① ①土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと
② ②所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと
などがあげられます。相続放棄も関係しているとも言われています。これらのことにより、登記簿からは所有者がだれかわからなくなるのです。
3 「所有者不明土地」があると、土地が売れない。地域社会の妨げになる。
所有者を登記簿上特定することができないと、いろいろな不具合が生じます。
まず、生きている所有者の登記がなければ、土地を売ったりすることはできません。また、隣地の所有者が不明だと、境界の確認も困難になり、周辺の土地の売却や利用も困難になっていきます。結果、地域全体に使えない土地がどんどん増えていくことになります。
4 相続登記の放置・先延ばしは危険
相続登記は、時間が経てば経つほど困難になります。
具体的に見ていきましょう。相続登記をしないまま祖父母名義の土地に住んでいた父が亡くなって、長男が家を引き継いだとします。長男からすると、曾祖父名義の土地を引き継いだことになります。この土地の相続登記をするとなると、長男から見て、祖父母の兄弟姉妹やその子供(つまり親のいとこ達)と遺産分割協議をしなければなりません。話もしたことのない場合や、会ったことさえないことも多いでしょう。仮に、祖父がその土地を相続するという口頭での合意があったと聞いていましてもその話を知らない人に通用せず、土地を均等に分けなければいけなくなるかもしれません。相続人の1人の行方がわからないかもしれません。結果、相続登記ができないことも考えられます。
このように関係する人が増えることと互いの関係性が遠くなることで話合いが極めて困難になるのです。相続登記の放置は大変危険です。
5 相続登記の義務化。罰則あり
また、前述のとおり、未登記土地が社会問題となっていることから、相続登記を義務化するため、2021年4月21日に民法や不動産登記法などの改正法が成立し、相続登記が義務づけられることになりました。
正当な理由なく、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請をしなかった場合には、10万円以下の過料に処されます。
この改正法は、2024年4月から施行される予定です。
改正法施行後は、速やかに相続登記を行わないと処罰される可能性も出てくるのです。
6 放置されている相続は弁護士にご相談を
相続の手続きは、先送りにすると非常に困難になるという特性があります。自身の将来や将来世代に負担を掛けないように、早めに、相続の処理をされることをおすすめします。処理に問題がある場合や、どうしていいのかわからない場合は、弁護士がお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。
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情報公開請求-口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーン- (弁護士 小林展大)
2022年12月10日 土曜日
第1 はじめに
情報公開請求の審査請求手続においては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述があります。
審査請求手続は,原則書面審理なのですが,書面とは異なる事実発見の重要な機会を審理手続において設ける等の趣旨から,口頭意見陳述の機会が設けられています。
私が行っている口頭意見陳述やっちゃうぞキャンペーンとは,情報公開請求の審査請求手続において,必ず行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と情報公開個人情報保護審査会(または行政不服審査会)における口頭意見陳述の両方を申立て,とにかく必ず口頭意見陳述を行う,とにかく口頭意見陳述を行えばそれでいい,というものです。実際には,各口頭意見陳述を行う目的,狙い,理由等はあるのですが,それを書き始めるとそれだけで記事の内容が長くなってしまうので,あえて書かないことにします。
第2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述
1 行政不服審査法31条の規定
⑴ 1項
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
⑵ 2項
前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。
⑶ 3項
口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
⑷ 4項
口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
⑸ 5項
口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。
2 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行ってみて
⑴ 私が行っている,地方自治体に対する情報公開請求の審査請求手続において,地方自治体によっては,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述の案内がありましたが,案内がなかった自治体もありました。
⑵ 次に,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述は,申し立てをしないと実施されませんでした。
また,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会への諮問前に行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を行った自治体と諮問後に行った自治体がありました。
また,必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
⑶ 私が行った行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,質問事項を作成して事前に提出し,同口頭意見陳述においてその回答を求めるようにしています。
⑷ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述については,記録の送付があった自治体と記録の送付がなかった自治体がありました。
⑸ 意見陳述を実施してみての感想としては,審査請求で対象文書の追加特定を求めている場合,既に開示された資料を読み込んでおく,他の地方自治体で特定,開示された文書,記録等を参考にする等の事前準備をしておくと,実施機関,処分庁において存在すると考えられる文書,記録を推測しやすいことがありました。
また,対象文書の追加特定を求める場合,質問の仕方に工夫を要することがありました。
一方,不開示処分の取り消しを求めている場合,意見陳述で効果的な質問をすることはかなり難しいと思います。不開示事由該当性について質問をしても,抽象的な回答に終始することが多かったです。
さらに,審理員審理の場合,審理員が意見陳述の進行,指揮を適切に行うことで充実した意見陳述の実現につながったこともありましたし,審査請求人側で,類似事例との比較,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較等をすることにより,意見陳述を形骸化させず,充実した意見陳述を実現する努力をする必要があるのではないかと考えられます。
第3 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述
1 根拠規定
情報公開条例,情報公開・個人情報保護審査会条例,情報公開・個人情報保護審査会設置条例,情報公開・個人情報保護審査会設置法等に規定があります。
2 手続の主な流れ
⑴ 地方自治体によっては,審査会の口頭意見陳述の案内がありました。
⑵ 必要に応じて補佐人帯同申請をすることができます。
3 口頭意見陳述の進行
審査会の口頭意見陳述の説明,注意事項伝達,審査請求人(及び補佐人)の意見陳述,審査会委員との質疑応答という進行が多いと思います。
私が申し立てた情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述は,今のところいずれも実施されていますが,審査会の口頭意見陳述の根拠規定については,義務規定もあれば,裁量規定もあり,申立をしても口頭意見陳述が実施されない場合もあります。
4 資料について
私は,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述で言及する資料は,事前に提出しています。
5 口頭意見陳述の記録の送付の有無
情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述の記録の送付はありませんでした。
6 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を実施してみて
⑴ 情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述には,実施機関,処分庁の職員は出席しません。
⑵ 行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述と異なり,質問事項に沿って質疑応答という流れではありません。
⑶ 対象文書の特定,不開示事由該当性等,審査請求手続における争点を意識して口頭意見陳述を組み立てることが必要ではないかと考えられます。
⑷ 類似事例,他の地方自治体,行政機関等の対応との比較を踏まえたり,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述を踏まえたりして,情報公開個人情報保護審査会または行政不服審査会における口頭意見陳述を充実化させる努力が必要ではないかと考えられます。
⑸ 補佐人帯同する場合には,事前に審査請求人と補佐人とで役割分担しておく方が現場での混乱が少ないように思います。
第4 終わりに
情報公開請求の審査請求手続においては,口頭意見陳述も積極的に行い,我らが日本国憲法により保障されている知る権利の具現化を今後もはかりたいと思います。
以上
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安倍元首相の国葬に対する住民監査請求(弁護士 藤田温久)
2022年12月1日 木曜日
1 2022年7月8日、同月10日投票の参議院選挙の街頭応援演説をしていた安倍 晋三元首相が銃撃を受け死亡し、同月22日、岸田首相は国葬(故安倍晋三国葬儀、 以下「本国葬」)を行うことを閣議決定しました。
慣例的に行われてきた「内閣・自由民主党合同葬」ではなく「国葬」とする理由は、①首相在籍期間が憲政史上最長、②日本経済再生や外交に大きな実績、③ 外国首脳ら国際社会から高い評価がある等とされました。
2 住民監査請求
しかし、本国葬は、明らかに違憲・違法であるため、9月15日、私達弁護士は県民・市民とともに、地方自治法に基づき、神奈川県、横浜市、川崎市の各監査委員に対し、知事、各市長、各議会議長が参列のために使用する公金(旅費・日当・宿泊費)の支出差し止め(支出後は返還請求)を求めて住民監査請求を行いました。
3 何故、本国葬が違憲・違法なのでしょうか。
(1)戦前の天皇制下では「国葬令」により、「國家ニ偉功アル者」の葬儀は、天皇の「思召」をもって、天皇の命令により実施されました。「国葬」は、国家が特定の「功臣」の死を政治的な狙いで利用するものだったのです。
(2)国葬令は、1947年に日本国憲法の基本原理と両立しないものとして法律により失効しました。現在の日本において、国を挙げて行なう公葬を規定する法律(皇室典範以外)は存在しません。
(3)本国葬の違憲性・違法性
先ず、国民は平等であり(憲法14条)国は天皇以外を当然に特別扱いできません。本国葬は、法的根拠なく安倍氏を特別扱いして国費で葬儀をするものであり憲法14条に反します。また、故人に追悼の念を抱くか否かは個人的な営為であり個人の歴史観や世界観、政治信条に深く根ざした行為です。本国葬は、その追悼を、有形無形の圧力により国民に強いるという意味で、思想良心の自由を保障した憲法19条に反するものです。更に、本国葬は政教分離原則(憲法20条・89条)、表現の自由(憲法21条)にも反するものです。
次に、本国葬は、法律に基づかないものです。岸田首相は、内閣府設置法に内閣府の所掌事務として「国の儀式」が挙げられているから「法的根拠」はあると言いますが詭弁です。行政は「法律を誠実に執行する」(憲法73条1号)ものであり、行政権の執行には、法律を執行するための機関を作る根拠となる「行政組織法」と、具体的に行政活動を営む際の手続や要件、活動の内容や効果に関する「行政作用法」が必要です。しかし、内閣府設置法は「行政組織法」=ハードウエアにすぎず、国葬に関する「行政作用法」=ソフトウエアは存在しないからです。本国葬は「法律に基づく行政の原理」に反しているのです。重大な違法行為です。
4 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの違法性
地方自治法は、普通地方公共団体は、「地域における事務及びその他の事務」で「法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」を処理するとしています。
しかし、知事らが本件国葬に出席するために公金を支出する根拠となる法律も政令も存在せず、その他の根拠もないため、公金支出は違法です。
5 知事らが本国葬に出席するために公金を支出することの不当性
住民監査請求では、違憲・違法性だけではなく不当性も監査対象になります。仮に百歩譲って、本国葬が違憲・違法ではないとしても、本国葬は著しく不当であり出席のために公金を支出ことも不当であり許されないのです。
つまり、安倍元首相は、
①「アベノミクス」により、日本経済の競争力を奪い、国民の格差と貧困を拡大し、
②「モリ」「カケ」「サクラ」問題など権力の私物化を進め、
③ 教育基本法の改悪や、安保法制・集団的自衛権行使等の違憲行為により
「民主主義」と「憲法秩序」を破壊してきました。このような安倍元首相を国葬にして評価することは、著しく不当だからです。
6 本国葬の強行
岸田政権は、国民の多数が反対する中で(直近の主な全国10の世論調査全てで反対が賛成を大きく上回っていました)本国葬を2022年9月27日に強行しました。
7 意見陳述会と請求の却下
横浜市は10月20日、神奈川県は翌21日、川崎市は27日に請求人と関係職員の意見陳述会を開催し、短時間ですが監査委員との質疑応答も行われました。当事務所の藤田、畑両弁護士も陳述を行いました。
ところが、 横浜市は11月4日、神奈川県は11月11日、川崎市は11月11日にそれぞれ請求を却下しました。却下の理由は、判で押したように、閣議決定に基づき国から招待状が来て出席することは社会通念上相当と認められる社交儀礼上の行為であり国との信頼関係維持増進に資するものであるから地方公共団体の事務に含まれるというものでした。
結局、各監査委員は、県や市の公費支出に法令上の根拠がないこと国葬が違憲違法であることにつき全く検討しないまま、監査請求を棄却したものであり、極めて不当です。
8 監査請求の成果
しかし、本監査委請求を含む国民の本国葬に対する反対の運動は、無駄ではありませんでした。本国葬には、招待者の4割は参列せず、県知事4名、政令市市長1名が欠席し、全国のほとんどの市町村・学校において弔意を表することもされませんでした。また、G7諸国及び国連常任理事国の現役首脳の参加はゼロであり、岸田政権が本件国葬の意義として掲げた「弔問外交」も外交以前に破綻してしまいました。
自民党二階氏は「国葬は当たり前だ。やらなかったらバカだ」「国葬が終わったら反対していた人も良かったと思うはず。日本人なら」等と発言していました。しかし、そうはなりませんでした。世論調査の結果は、本件国葬を評価しない人が評価する人を大きく上回っています。本住民監査請求の請求人も当初は37人でしたが、国葬後も続々と増え、217人の方が請求人となりました。 本国葬に対する市民の反対の意思の表れといえるでしょう。このまま国葬問題に蓋をすることは許されません。このような違憲違法な公費支出をした県知事、川崎市長に対して4月の一斉地方選挙で責任を問いましょう。
以上
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労働者の権利348号(2022年11月発行)に掲載されました(弁護士 川口彩子)
2022年11月28日 月曜日
日本労働弁護団 季刊紙 労働者の権利348号(2022年11月発行)に、川口彩子弁護士の「地位・関係性を利用した継続的な性行為強要型セクハラ事件逆転勝訴判決のご報告」が掲載されました。
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ペットに関するトラブル~離婚時の我が子の引き取り問題を中心に~(弁護士 畑福生)
2022年11月21日 月曜日
こんにちは!弁護士の畑 福生です。保護猫と暮らしています。

我が家ではお猫様が世界の中心となっていますが、 一緒に暮らしてみると改めて「ペット」というより「家族」なのだと実感します。
この記事では分かりやすさのために「ペット」と書きますが、家族ともいうべきペットにまつわるトラブルについて、離婚時の引き取りの問題にも触れながら紹介したいと思います。
1 ペットにまつわるトラブルについて
ペットに関するトラブルとしては、次のように様々なものが挙げられます。
・ペットが被害者となる場合
例えば、交通事故や動物病院、ペットホテル、トリミングショップでのミスによってケガをした等
・ペットが加害者となる場合
例えば、ペットが噛んだり引っかいたりして怪我をさせた、物を壊した、野良猫や野鳥への餌やりで隣家に糞尿被害が出た等
・それ以外の契約に関する問題
例えば、ペットショップとの契約問題、 賃貸住宅でのペットの飼育トラブル、ペットの葬儀に関するトラブル、ペットに財産を残したいという意向を遺産分割協議に反映させること、動物保護団体を装った里親詐欺等
2 ペットの引き取り問題
このように様々なトラブルが生じ得るところですが、今回は、特に離婚の際にペットを誰が引き取るかという問題についてまとめたいと思います。
⑴ ペットは「物」として扱われる
大事な大事な我が子、この世に二つとない大切な命ではありますが、民法上はペットは「物」として扱われてしまいます(民法85条)。
そのため、民法上は、ペット自身は権利を持たず、むしろ所有権の対象として、すなわち誰かの所有物として取り扱われます。
⑵ ペットは財産分与の対象となりうる
「物」として所有権の対象となることから、 結婚生活の中で、夫婦の家計からペットを購入したような場合には、ペットは夫婦の共有財産となります。他方で、 結婚前からどちらかが飼っていたなどの特別な事情がある場合はその方のみの財産となります、
夫婦の子どもについては、離婚時にどちらが親権を得るかが問題となりますが、残念ながらペットには親権は存在しません。
そのため、共有財産として扱われたペットは、夫婦の離婚時に財産分与(=夫婦が協力して築き上げた財産を公平に分配する手続き)の対象となります。
⑶ 一般的な財産分与の方法
ア 現金、預貯金など
財産分与において、現金や預貯金など分けやすいものであれば、夫婦が半分ずつ取得するというように計算することが多いです。
イ 不動産など
また、不動産などそのままでは二つに分けられないものは、
①売却して売上げを夫婦で分ける方法や、
②その物の財産的な価値(売却価格など)の2分の1を夫婦のどちらかが他方に支払って、その方が所有権を得る(片方は所有権を得る、もう片方が相当額のお金を得る)という方法がメジャーです。
その他にも、③(土地であれば)分筆して二つの土地にしてしまうことや、④分けずに共有として残しておくということもあり得ますが、様々なリスクから③④はおススメしないことが多いです。
⑷ ペットの 財産分与の方法は?
このような方法を踏まえると、ペットの財産分与はどのように考えればよいでしょうか。
まず、当然ながらペットは物理的に分けられないので、上記「ア」や「イ」の③の分けてしまうという方法はとれません。
また、大事な我が子を売るなんてとんでもない。上記「イ」のうちの①方法 (売却) もできませんよね。
そうすると、上記「イ」の③(お金を払うなどしてどちらかが取得)が残ります。
ただ、裁判例において、夫婦共有財産としてのペルシャ猫の価値が15万円として主張された事案において、裁判所は「 通常、ペットの猫の飼育には、相当の費用が必要となること、また、ペットの猫が病気等に罹患することも稀ではなく、相当高額の治療費を必要とする場合もあることに照らせば、ペットを財産的価値があるものとして扱い、財産分与の対象財産とすることは相当でないというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。」( 横浜家庭裁判所相模原支部 平成29年10月30日判決・ D1-Law.com判例体系:28261791)とされている点には注意が必要です。
そのため、現状では離婚時のペットの引き取りについては、無償でどちらか一方がペットを引き取るとなることも多いかと思います。
⑸ じゃあ、どちらが引き取るかはどう決めるの?
ア 話合い
まずは、話し合いで、どちらが引き取るのがペットにとって幸せかを踏まえて、どちらが引き取るべきかを決めることとなります。
イ 調停
話合いでもまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では裁判所(調停委員会)を介して、合意を目指します。離婚調停の中で財産分与について話し合うこともできますし、財産分与を目的とした調停を起こすこともできます。
ウ 審判・離婚裁判
調停でもまとまらない場合は、裁判所が審判によってまたは離婚裁判の中で、当事者の主張を踏まえて、判断を下します。
審判や裁判において、裁判所がどういった事情を踏まえて判断をするのかは明確に示されてはいません。
ただ、ペットが人間の子ども同様に愛情をもって取り扱われるべき存在であることからすれば、
・離婚までにどちらが主にペットの世話をしていたか
・どちらによりなついているか
・離婚後の飼育環境や経済状況など、客観的にみて夫婦どちらに飼育されるのがペットの幸福につながるか
などの事情の総合考慮の上で、判断がなされることになると考えられます。
ですので、審判や裁判においてはその点を踏まえた主張・立証が欠かせません。
⑹ その他、ペットの養育費は?ペットの面会交流は?
既に述べたとおり、残念ながら、ペットは人間の子どもとは異なり所有物として扱われてしまうので、ペットの所有権を取得した方から、他方に対して法律に基づいて養育費を請求することはできません。また面会交流を求める権利も法律で定められてはいません。
ただ、愛する我が子に会いたい、我が子の健康な生活に貢献したいという気持ちは大切にされなくてはなりません。
例えば、ペットをどちらが引き取るかを話し合いで決める際に、「あなたにこの子を託すから、その代わり月に何回かは合わせてほしい」、「この子のご飯代や医療費を払うから合わせてほしい」といった条件をつけて交渉し、少しでもお気持ちを叶える方向で合意をするということも考えられます。
審判や裁判で最終的に裁判所が判断するとなると、どちらが所有権を取得するかという話にしかなりませんが、話合い(調停含む)であれば、柔軟な解決も可能です。
特にペットについては医療費の負担が高額となりやすいことから、相手方に医療費の支払いなどのメリットを提示しつつ、面会交流などこちらの希望を一定程度叶えるということも考えられます。
川崎合同法律事務所には、弁護士、事務員含め愛するペットと暮らす所員も多く在席しています。
ペットの財産分与の問題含め、離婚の問題について皆様のご相談に多くお答えしております。
お困りの際は是非ご相談ください。
≪離婚・男女問題特設ページはこちら≫
https://www.kawagou.org/divorce/
≪2025年5月30日追記≫
この度依頼者様よりペットの面会交流事件に関するご感想をお寄せいただきました。以下紹介いたします。
子供のいなかった私にとってR(ペットの名前)は家族同様の存在でした。
離婚後、ペットの扱いについては、奪ったもの勝ちの側面が否めません。 悩んだ末、Rに会いたい一心で、畑弁護士に依頼する事を選び、結果として、相手への連絡、交渉によってRと再会する事ができました。
弁護士が関与してプラスに働いた点としては、以下の点が挙げられます。
- ・相手方を交渉のテーブルにつかせることができた。
- ・交渉を行う過程で、弁護士に冷静な判断をしてもらえた。
- ・弁護士に依頼する事で、多少なりとも、最後に自分の中で納得感を持つことができた。
他人から見れば、ペットに会うためだけに、少なくない費用・時間をかける事は馬鹿らしく見えるかもしれませんが、Rは私の息子のような存在で突然息子を奪われる苦しみは計り知れません。
願わくば日本でも海外の一部事例のような、共同親権が出来る事を期待したいです。
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