トピックス
NHKサービスセンター雇用継続不当拒否・セクハラカスハラ事件訴訟不当判決に関するご報告及び声明
2021年12月10日 金曜日
2021年11月30日、横浜地方裁判所川崎支部は、一般財団法人NHKサービスセンター(以下「法人」といいます。)の行った原告の雇用継続拒否を有効として、原告の労働者としての地位の確認を認めず、かつ法人が原告に対する安全配慮義務を怠ったとはいえない旨の不当判決を言い渡しました。
1 提訴に至る経緯
原告は、2002年4月から、1年契約更新で、法人の運営するNHK視聴者コールセンター(現NHKふれあいセンター(放送))において視聴者対応を行うコミュニケータとして採用されました。その後、原告は16回にわたる契約更新を経て、2019年には無期雇用へと転換するに至りました。
もっとも、原告は、無期転換を果たしたその年、2019年末をもって定年退職となり、その後の雇用継続を拒否されました。また、同コールセンターでは、視聴者からの問合せに名を借りた暴言やわいせつ発言を内容とする電話が多く寄せられ、原告を含むコミュニケータは精神的負担を抱えていたものの、法人は、そのような迷惑電話に対しても、切断したりせずに丁寧に対応することをコミュニケータに求め、コミュニケータの精神的負担を減らす措置を十分に講じてはきませんでした。これに対し、原告は、労働者としての地位の確認及び安全配慮義務違反を主張し、本件訴訟を起こしました。
2 今般下された不当判決の内容
しかしながら本判決は、地位確認について、雇用継続の拒否に客観的合理的理由及び社会的相当性があるとして、本件雇用継続拒否を有効と判示しました。
原告は16回も更新されるほどに真面目に業務に取り組んで来たにもかかわらず、本判決は、原告の視聴者対応について、一つを取れば些細なものと見得る余地があるとしながらも、法人の主張を前提に原告の職場からの排除を容認しました。
また、本件コールセンターにおいて、わいせつ発言や暴言を内容とする迷惑電話が横行している職場環境には背を向けて、法人の安全配慮義務を認めず、労働者を捨て駒のように扱う法人の姿勢を追認する判断を行いました。
3 社会的にもセクハラ・カスハラへの対策の検討が進められていること
昨今ハラスメントへの意識は向上しており、厚労省もセクハラ、パワハラ等に対する指針を発出しており、いわゆるパワハラ防止法が成立・施行されるに至っており、これに加えて、2021年1月21日からは、国において、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」が設置され、カスハラに対する対策の検討が進められています。
近年、我が国において、セクハラ・カスタマ―ハラスメント(カスハラ)等のハラスメントを防ぐべき社会規範が現在進行形で形成されているなか、本判決はコミュニケータも人格を持つ個人として尊重されることは当然であるとしながらも、社会の流れに逆行し、接客業にあることを理由にハラスメントを受忍すべき判断をしたものであり、セクハラやカスハラに苦しむ多くの労働者を見放すきわめて不当な判決です。
また、法人は、迷惑電話に対する法的措置を怠った理由としてNHKの最終的な判断に基づくものである旨述べていました。公共放送であるNHKの対応は、法人によるセクハラ・カスハラ放置の原因となっていたのであって、決して許されてはなりません。
4 おわりに
原告・弁護団・全川崎地域労働組合は、本判決の重要な意義を大きな力とし、最終的な原告の救済、ひいては高年齢者の雇用を守り、職場におけるハラスメントに対する適切な対処が行われるよう、今後も闘いぬく決意です。ご支援お願いいたします。
弁護団は当事務所の川岸卓哉弁護士、畑 福生弁護士です。
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川崎市人事委員会措置要求判定取消訴訟勝訴の報告(弁護士 川岸卓哉)
2021年12月9日 木曜日
2021年9月27日、横浜地方裁判所において、川崎市立小学校に勤務する学校事務職員2名が原告となって、川崎市人事委員会の措置要求判定の取り消しを求めた訴訟で、勝訴判決を得ました。
1 憲法の労働基本権の代償措置としての地方公務員の措置要求制度
民間企業の勤労者の労働条件は、憲法25条で保障された労働基本権の3つの権利、団結権・団体交渉権・団体行動権(ストライキ)が保障され、労働条件の維持改善を図ることが可能です。他方、地方公務員には、労働組合法の適用を排除し、団体協約を締結、争議行為をなすことを禁じ、労働委員会に対する救済申立の途を閉ざしています。そのかわりに、行政に設置された人事委員会(公平委員会)への措置要求を申し立て、労働条件の維持改善を求める制度が認められています。したがって、地方公務員の措置要求制度は、日本国憲法28条において保障された労働基本権の代償措置として、重要な意義を有します。しかし、中立公平な機関であることが責務である人事委員会ですが、実際は行政の一内部機関に堕し、行政判断追従がほとんどで、措置要求制度が十分に機能してきたとはいえないのが実態でした。
2 提訴の経緯 川崎市人事委員会の門前払い判定
今回の裁判も、人事委員会の機能不全がきっかけとなっています。従来、義務教育にかかる教職員の給与費は神奈川県が負担していましたが、地方分権の観点から法改正があり、平成29年度より,政令指定都市の川崎市への税源移譲されることになりました。この際、川崎市は、市給与条例を改正し、学校事務職員について,既存の川崎市の行政職の給料表に位置付けましたが、神奈川県と川崎市では給料表の体系が異なるため、特に平成22年度採用の原告ら県2級の職員が不利益を受けることになりました。そこで、原告らは,職員団体「2級の集い」を結成し,教育委員会と交渉を重ねましたが改善されなかったため、公平な判断を求め、川崎市人事委員会に対し、措置要求の申立てをしました。しかし、人事委員会は、原告らの措置要求に正面から向き合わず、実質的に門前払いをする判定を下しました。これに対して、原告らは、公平な判断を求め、裁判所へ訴訟提起しました。
3 司法の鉄槌により措置要求制度の門が開かれる
横浜地裁は、判決で、川崎市人事委員会の門前払いの判定は、市給与条例の内容の適否について判断すべきではないという誤った判断に基づき、原告らの要求事項を判断対象から除外し、原告らが要求していない事項について判断したものであるというほかなく、適法な手続きにより判定を受けることを要求し得る権利を侵害するものとして違法と判断しました。そして、原告らに不利益・不均衡が生じていることを看過しているとして、人事委員会の判定を取り消しました。人事委員会の判定は、自らの責務を忘れた公平性を欠く教育委員会の判断追従のもので、取り消しは免れないものでした。本判決は、憲法の代償措置である人事委員会への措置要求制度を無意味なものとせず、鉄槌を下した意義を有します。
この判決を機に、地方公務員にも憲法の光が及び、措置要求制度の門が正しく開かれ、全国の地方公務員が、措置要求制度を活用して労働条件を維持・改善する道が拓かれればと考えています。
川崎市は控訴を断念し、判決は確定しました。川崎市人事委員会は、判決を受けて、あらためて、原告らの不利益・不均衡について、是正の可否及び方法を判断することになります。原告らと支援の全川崎地域労働組合及び川崎市教職員連絡会は、原告らの不利益を解消する完全解決まで、闘い抜く決意です。ご支援お願いいたします。
弁護団は、川口彩子弁護士と私です。
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篠原義仁弁護士が、2021年8月26日永眠しました。
2021年9月27日 月曜日
当事務所の所員である篠原義仁弁護士が2021年8月26日、永眠いたしました(享年77歳)。これまで篠原弁護士と親交いただいたご依頼者の皆様と関係者の皆様に、生前のご厚誼に深く感謝するとともに、謹んでご報告申し上げます。
篠原弁護士は当事務所を草創期から支えながら、川崎公害裁判で事務局長として裁判闘争の中心的役割を果たし、今日まで、川崎から公害をなくすため、まちづくりに関わり続けてきました。公害根絶への情熱は全国にも及び、全国公害弁護団連絡会議の結成以来、事務局長、幹事長を歴任して全国的な公害被害者運動の団結と統一のために活躍しました。
その他にも、日本鋼管、東京電力両人権裁判をはじめとした大企業相手の労働事件や、市民オンブズマンや9条かながわの会など市民的分野での活動など、その足跡は一言では語り尽くせません。
所員一同、長年にわたって、国や大企業に対峙し、弱者救済と社会正義の実現に尽力してきた故人の遺志を受け継ぎ、執務に邁進して参る所存です。
2021年9月
川崎合同法律事務所
【略歴】
1970年4月 弁護士登録(神奈川県弁護士会)
1972年1月 全国公害弁護団連絡会議結成以来、事務局次長、事務局長、副幹事長、幹事長などを歴任
この間、大気汚染公害裁判原告団・弁護団全国連絡会議事務局長に就任
2004年3月 全国公害弁護団会議代表委員に就任
1977年5月 かながわ市民オンブズマン代表幹事(~2001年5月)
1998年8月 かわさき市民オンブズマン代表幹事(~2012年6月)
2000年10月 自由法曹団幹事長(2000年10月~2001年10月)
この間、自由法曹団神奈川支部幹事長に5期就任
2011年10月 自由法曹団団長(~2014年10月)
篠原弁護士の葬儀に際し、写真家の小池汪様が、篠原弁護士が環境庁(当時)の前で演説する様子を撮影した動画をYouTubeにアップロードしてくださいました。小池様に感謝申し上げるとともに、皆様にも、在りし日の篠原弁護士の姿をご覧頂きたく、ご紹介します。
↓こちらからご覧下さい。
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「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟を含む原発事故の被害救済を求める訴訟について、最高裁に対する公正な判決を求めるオンライン署名にご協力をお願いします!
2021年9月9日 木曜日
渡辺、川岸、中瀬が弁護団員として活動している「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟を含む原発事故の被害救済を求める訴訟について、最高裁に対する公正な判決を求めるオンライン署名を開始しました。
↑
ぜひ署名&拡散のご協力をよろしくお願いいたします。
◇◇◇
福島原発事故の被害者が、国と東京電力を被告として、原発事故の責任を問い、被害救済を求めている3つの裁判が、最高裁判所第2小法廷に係属しています(「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟、原子力損害賠償群馬訴訟、福島第一原発事故損害賠償千葉訴訟)。
高等裁判所では、2つの裁判で国に責任があるとの判決が出され、1つの裁判では国には責任がないとされました。そうしたことから、最高裁では、原発事故の責任が、東京電力についてはもちろん、国にあるのかが大きな争点となっています。
原発事故前に、大地震が起き、それによる津波が福島第一原発の敷地内に襲来する危険性を予測しえたのか、予測しえたとして対策を採っていれば事故を回避することができたのかが判断のポイントとなります。国の責任を認めた判決は、いずれも事故前に予測できたとし、対策を採っていれば事故を回避できたと判断しています。
そして、事故前に予測できたどうかを評価するにあたっては、人々の生命や健康が、企業の経済活動の利益よりも優先されるという風に考えるかどうかが、判断の分かれ目となります。
最高裁で、国と東京電力に責任があると判断されると、以下のような可能性が出てきます。
① 原告が救済されるだけではなく、原告になっていない被害者の方々にも、救済立法がなされるなどによって、救済策が広がる可能性が出てきます。
② 国に原発事故についての責任があることが確定し、現在の原発に対する規制のありかたや原発政策の見直しにつながる可能性が出てきます。
私たちは、人々の生命や健康と企業の経済活動の利益が天秤にかけられることがあってはならないと考えています。そして、最高裁が私たちと同じような価値観に立つことを求めています。
そのため、最高裁に対して、公正な判決を求める署名を取り組むことにいたしました。以下が、要請文となります。また、応援メッセージもいただきましたので、要請文に続けて掲載しています。そちらもぜひご覧ください!
署名にご協力ください!!
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根本孔衛弁護士が、2021年1月8日永眠しました。
2021年8月1日 日曜日
2021年1月8日、当事務所の創設者のひとりである根本孔衛弁護士が95歳で亡くなりました。これまで根本弁護士と親交のあった依頼者と関係者の皆様にご報告申し上げます。
根本弁護士は、「地域に根ざした活動」を合言葉に、1968年4月に当事務所を開設しました。以来、当事務所は、「自由・人権・統一」の理念の実現をめざして奮闘し、2018年4月には開設50周年を迎えることができました。
根本弁護士の活動は、多岐にわたり、その取組みそのものは、現代に脈々とつながっています。川崎民商弾圧事件は、今の倉敷民商弾圧事件や重税反対運動に、東芝臨時工解雇事件は、今の非正規のたたかい、その立法闘争に、新島ミサイル射爆場事件は、全国各地の基地反対運動に、そして、沖縄違憲訴訟は、辺野古、高江の反基地運動や「沖縄差別」撤廃闘争に、それぞれ連なり、今もって色あせずに今日的課題となっています。
最後に。根本さん、本当におつかれさまでした。ゆっくりとお休みください。そして、好きな本をじっくりとお読みください。
2021年8月
川崎合同法律事務所
略歴
1925年3月 千葉県五井生まれ
1959年 弁護士登録 第一法律事務所入所
全林野東北の刑事事件、安保6・4事件、新島ミサイル射爆場反対、入会権訴訟等を担当
1965年10月~1967年10月 自由法曹団事務局長
1968年4月 川崎合同法律事務所を本永寛昭弁護士と共に設立
1974年10月~1976年10月 自由法曹団幹事長
1979年4月 横浜弁護士会副会長
この間、沖縄違憲訴訟、川崎民商弾圧事件、東芝臨時工事件、川崎公害裁判、日本鋼管人権裁判、日本ゼオン配転解雇事件や借地借家事件、民商関連事件等数々の事件を担当。そのほか、自由法曹団神奈川支部支部長、日本弁護士会連合会米軍地位協定小委員会委員長などを歴任。
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アトーニーズマガジン(2021.07.01vol.76-77合併号)事務所探訪に掲載されました
2021年7月8日 木曜日
アトーニーズマガジン(2021.07.01vol.76-77合併号)事務所探訪に掲載されました。
是非、下記オンライン記事をご覧下さい。
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行政不服審査法シンポジウム-5年後見直しの課題-のご報告 (弁護士 小林展大)
2021年6月29日 火曜日

1 2021年5月17日(月),日本弁護士連合会主催の「行政不服審査法シンポジウム-5年後見直しの課題-」にパネリストとして登壇し,情報公開の分野における審査請求の問題点について報告するとともに,パネルディスカッションもしてきました。
2 この情報公開請求は,マイナンバー違憲訴訟の中で判明したものですが,マイナンバーを取扱う業務については,委託元の許諾を得なければ再委託してはならないこととなっているにもかかわらず(番号法10条1項),委託元の許諾を得ずにマイナンバーを取扱う業務を再委託して,マイナンバーが大量漏えいするという事故が続発したことから,その事故について事実関係を確認するために行っていたものです(現在もまだ情報公開請求の手続は続いています。)。
3 情報公開請求の分野における審査請求の問題点については,主に地方自治体における審査請求手続の問題点を報告しました。具体的には,審査庁において,弁明,反論という形で一通り主張させてから情報公開・個人情報保護審査会もしくは行政不服審査会に諮問している自治体もあれば,弁明書が提出されるとすぐに審査会に諮問してしまい,審査会において反論をさせている自治体があるという手続上のばらつき,行政不服審査法31条1項に基づく口頭意見陳述及び審査会での口頭意見陳述の案内をしている自治体もあれば,同案内をしていない自治体もあるという問題,審査会への諮問後に意見書等の提出の機会を与えている自治体とそうでない自治体があるという手続のばらつき,審査会で口頭意見陳述をしたときの審査会の委員の姿勢の違い等を報告しました。
また,地方自治体の情報公開請求の審査請求手続については,情報公開条例により,2014年の法改正で導入された審理員による審理制度を適用除外としている自治体が多いですが,審理員による審理制度がなされた自治体については,その審理の経過も報告しました。
そのほか,審査会の答申と裁決の傾向,審査請求手続における対象文書の追加特定についての問題点,当初不存在とされた文書が実は存在していて後に部分公開決定がなされたという実例等も報告しました。
4 パネルディスカッションにおいては,行政不服審査における論点をいくつかピックアップして,その各論点につき,ディスカッションをしました。
具体的には,弁明書・理由説明書の記載が不十分ではないかと考えられること,処分庁の主張を基礎付けるような証拠,資料等があまり提出されず,物件提出要求申立(行政不服審査法33条)をすることになることもあること,口頭意見陳述の実情,口頭意見陳述の活発化等といった各論点について,コーディネーター及びパネリストでディスカッションをしました。
5 シンポジウムに向けた準備をするために,自分自身で行っていた情報公開請求及び審査請求を振り返ってみて,手続の相異として興味深い点もあれば,改善が必要ではないかと思う点も見つかり,行政不服審査の実務上の問題点を見つめ直す良い機会となりました。
特に,口頭意見陳述の活発化,口頭意見陳述を有意義,有益なものとするための努力は,制度を利用する者としての今後の重要課題であろうと考えられます。
以上
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首都圏建設アスベスト神奈川1陣訴訟、最高裁で勝訴しました!!(弁護士山口毅大)
2021年5月18日 火曜日
2021年5月17日、首都圏建設アスベスト訴訟(神奈川訴訟1陣)において、最高裁判所で、国と建材メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認める勝利判決を勝ち取りました。
首都圏建設アスベスト訴訟は、建築現場における作業を通じて石綿粉じんに曝露し、中皮腫や肺ガンなどの石綿関連疾患を発症した被災者及びその遺族が、国と建材メーカーを相手に訴えた訴訟です。当事務所からは、神奈川訴訟の弁護団団長である西村隆雄弁護士、藤田温久弁護士、小野通子弁護士、星野文紀弁護士、川岸卓哉弁護士、中瀬奈都子弁護士、山口毅大弁護士、小林展大弁護士、畑福生弁護士が弁護団に加わっています。
2008年、国と建材メーカーに損害賠償を求める首都圏建設アスベスト訴訟(東京・神奈川)を提起し、これ続き、2011年には北海道、京都、大阪、福岡の全国各地で、同様の訴訟が提起されました。
原告は、大工・保温工・電工・左官・配管工・解体工などの建設作業に従事し、肺がん・中皮腫・石綿肺などの石綿関連疾患に罹った被害者であり、被告は、国及び石綿含有建材を製造販売した40数社の企業です。
いずれの訴訟においても、国に対しては、石綿の危険性を知りながら、防じんマスクの着用義務付けや製造・使用禁止措置などの規制を怠ったこと、建材メーカーに対しては、危険な石綿建材を製造販売し続け、製造販売にあたり適切な警告表示を行わなかったことなどの責任を追及してきました。
国、メーカーの責任、更に一人親方等の救済を認めた最高裁での勝利判決は、建設アスベスト訴訟の被害補償基金制度の創設に向けて大きな武器となりました。特に、一人親方等についても、国の責任を認めたという点で、世論、政治に訴える力は極めて大きいものです。
テレビ、新聞等、各メディアで大きく報道されました。
提訴してからすでに13年が経過しました。この間、全国各地で建設アスベスト集団訴訟が提起され、原告の総数は、今回最高裁判決を受けた4事件を含め、被災者単位で900名を超えていますが、そのうち7割を超える者が亡くなっております。もはやこれ以上の解決の引き延ばしは許されません。
2020年12月14日、東京1陣訴訟における最高裁判所第一小法廷の上告受理決定により国の法的責任が確定し、同年12月23日、田村憲久厚生労働大臣は、原告代表者を大臣室に招いて謝罪するとともに被災者救済のための協議の場を設けるとの考えを示しました。
国は本最高裁判決を真摯に受け止め、全国の建設アスベスト訴訟を速やかに和解によって解決すべきです。
また、建材メーカーらも徒に訴訟を引き延ばすことなく、早期解決のため、和解のテーブルに着くべきです。
さらに、アスベスト関連疾患による労災認定者はこれまでに約1万8000人に上り、建設業がその半数を占め、石綿救済法で認定された被害者の中にも相当数の建築作業従事者が含まれています。また建設アスベスト被害者が今後も毎年500~600人ずつ発生することが予測されています。
そこで、これらの被害者が裁判などしなくとも早期に救済されるよう、「建設アスベスト被害者補償基金」を創設することが喫緊の課題となっています。現在、与党建設アスベスト対策PTにおいて協議が進められていますが、国及び建材メーカーは、与党PTと連携し、基金創設に向け最大限の努力をすべきです。
私たちは、「建設アスベスト被害者補償基金」の創設まで、全力を尽くして参ります。
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台風19号多摩川水害川崎訴訟 提訴の報告(弁護士 川岸卓哉)
2021年4月23日 金曜日
1 提訴の概要
2019(令和元)年10月12日、多摩川流域に台風19号が襲来した。同台風は、日本各地に大雨をもたらし、多摩川の河川水位も、大雨により大きく上昇した。市内の住家被害は、全壊38件、半壊941件、一部損壊167件、床上浸水1198件、床下浸水379件に及んだ。市内の浸水被害の多くは、市内から多摩川へ注ぐ5か所の排水樋管のゲートが閉じられなかったため、多摩川から市街地へ逆流した泥水が原因で、110haもの広範な地域を浸水させた。
2021年3月9日、横浜地方裁判所川崎支部へ、川崎市を被告として、原告72名が、慰謝料共通100万円、家屋、家財、休業損害等の損害賠償合計約2億7000万円を求めて提訴した。
2 水害の実相
雨が降りしきる中、自宅や職場の周囲に濁った泥水が迫り、あっという間に建物内への浸水が始まった。停電による暗闇の中、水に浸かって、あるいは救助隊のボートに乗って、命からがら避難した者。一晩中、自宅が倒壊して流されるのではないかという不安を抱えながら自宅内にとどまった者。いずれも、生命身体への危険に直面し、恐怖した。水が引いた後も、平穏な日常生活に戻るまでに長期間を要した。
大量の泥水による悪臭の中、室内から泥をかき出し、水没した家財を処分しなければならなかった。その一つ一つに家族の歴史や思い出が刻まれていた。
一時避難した者は、公民館や体育館などの避難所や仮住まいで不便な生活を強いられ、自宅にとどまった者も、トイレや風呂を利用できない、食事や寝る場所を充分に確保できない、衣類が水没して着るものもままならないといった衣食住にかかる不便に耐えねばならなかった。このように、本件水害は、原告らの財産のみならず、生活環境、家庭生活や職業生活を含む生活基盤を毀損した。憲法13条で保障されている人格権の一内容である、平穏生活権を侵害したのである。
3 川崎市の責任
川崎市は、「ゲートの「操作手順」に従って、決められた水位の時点では降雨のおそれがあり、ゲートを閉めた場合には住宅地の雨水、汚水が氾濫する可能性があったため、閉めなかった」と説明していた。
そもそも、台風19号は、事前から、その勢力が相当強いものとして警戒呼びかけられていた。当日12日は早くから洪水警報、大雨警報が発令、多摩川上流の小河内ダムも放流が繰り返され、多摩川の氾濫注意情報も発表されたいた。多摩川の水位が度上昇し、ゲート周辺の地盤高に達し、逆流の危険性があることは予測可能の状況であった。
川崎市の各排水樋管ゲートの「操作手順書」には、ゲートの閉鎖を総合的判断すること、「適宜河川水位を観測し、総合的にゲート開閉を判断する」と明記された。水位が周辺地盤高に達すると逆流の危険性が高まるので、そのような水位に至った場合には、「操作手順」に従って、ゲートを閉めるべきであった。さらにはその後刻々と変化する多摩川の水位と具体的な溢水の状況に応じて、ゲートを閉めるべきであった。にもかかわらず、川崎市当局は、ゲート閉鎖による内水氾濫を恐れるあまり、多摩川の水位の上昇という重大な事実を考慮せず、甚大な被害が拡大したのである。
他方、同じ多摩川の対岸の東京側の自治体、狛江市、世田谷区、大田区などでは、ゲートを閉めており、川崎市のみゲートを閉めなかった判断のおかしさが浮き彫りになっている。川崎市の新たな操作手順書案も周辺地盤高に達した時点でゲート閉める旨の記載に変更され、「逆流による被害をなくすため、管内水位が付近最低地盤高に達した時点で、排水樋管ゲートを全閉とする」となったことは、責任を自ら認めているに等しい。川崎市の責任は免れない。
4 本件の意義
多摩川は、古来から「あばれ川」であり、周辺地域は水害に見舞われてきた。
1914年には、多摩川・川崎側の無堤防地帯での度重なる洪水に耐えかねて、住民数百名が「編み笠」をかぶって神奈川県庁に大挙して押し寄せ、当時の神奈川県知事に直談判をした「アミガサ」事件が起こった。この事件を発端に、住民は、神奈川県、さらには国をも動かし、多摩川築堤が進んでいった。
多摩川堤防の整備が進む一方、堤防より低い地域では、内水氾濫の被害を受けるようになった。1960年代の急激な都市化とともに、川崎の上丸子山王町地区では、「雨が3粒降れば水たまりができる」と言われるほど氾濫が頻発していた。住民は、地域一体となって運動をおこして川崎市を動かし、1964年に設置されたのが、本件排水樋管の一つ、山王排水樋管であった。設置後、山王排水樋管は、地元の消防団がゲートの開閉をおこない、台風が来る度に多摩川からの逆流を防ぐ役目を全うした。やがて、排水樋管のゲート操作は地元住民から川崎市へ、その責任の所在を移していった。多摩川に沿って広がる川崎市にとって、治水は、市民の生命身体、財産を守るための、最も重大な責務であるにも関わらず、これを怠り、本件水害は引き起こされた。
多摩川周辺に住む者にとって、治水は、平穏な生活を営むための基礎的な願いであり、要求であり続けてきた。本件訴訟も、原告ら被災者が、「川崎を水害なく安心して暮らせる街」とするため、川崎市の責任を明らかにし、被災者の生活再建と、再発防止を求め提訴したものである。
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