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交通事故被害では、あきらめずに弁護士に相談を(弁護士 西村隆雄)
2017年4月26日 水曜日
1、相談のきっかけ
相談者の息子さん(40歳)は、暮の深夜2時すぎ、片側2車線の道路を原付バイクで走行中、駐車していた大型トラックの後部に激突してお亡くなりになりました。
夜間の事故でお酒も入っていたことから、相談者は、息子の不手際の事故で補償を求めることはおよそ無理だろうとあきらめておられました。
しかし、この相談者の息子さんの件で過去に受任したことがあり、その後事務所のニュースをお送りするなどしておつきあいがあったことで、たまたま私がお電話し、「その後、息子さんはお元気でやってますか」とお聞きしたところ、「実は・・・」との話になったのが相談のきっかけでした。
お父さん(相談者)は、半信半疑でおみえになって、「息子の自殺行為ですから」との言葉から始まった相談でしたが、駐車車両を加害車両としての交通事故として検討していくことになりました。
2、「交通事故は現場へ」
まず、「交通事故は現場へ」が鉄則です。現場に行ってみると、工場地帯にあるコンビニ前の道路が事故現場で、コンビニには大型車が10数台駐車できる大規模な駐車スペースが併設されていました。おまけに路上駐車は危険であるので避けるようにとの「ハリ紙」が、トイレに貼ってもありました。しかし現場は直線のそれなりに広い道路で、見通しは良好かのようにも見えました。
それでも、なお「交通事故は現場へ」の鉄則に従って、深夜の事故ですから、同時刻にもう一度現場へ。すると、街灯はあるものの現場は予想外に暗く、原付バイクでは遠くまで照らせないので、直近まで気づかない可能性があることが判明しました。
これとあわせて、最寄の警察署の担当刑事への聴き取りも重ねた結果、事故直後の目撃証人がいることが分かり、運転手がコンビニに買物に行っている間の追突事故であったことも明らかになってきました。
3、過失割合について
以上から本件事故は、大型トラックの一定時間にわたる駐車にも起因するものということになって、次には、交通事故でしばしば問題となる「過失割合」が争点となってきます。
すなわち、駐車車両に対するバイクの追突事故についての基準過失割合は、バイクが100でトラックは0。これに対し修正要素として、バイク側には飲酒運転の著しい過失で10~20%の加算。一方トラック側には、夜間で暗く見通しが悪かったことから視認不良で20%の加算、さらにコンビニの駐車場を利用せず路上駐車した点で駐車方法不適切で10~20%加算ということになって、結局過失割合はバイク80%、トラック20%といったことになります。
4、任意保険か自賠責保険か
さてここから先が、また重要です。普通、交通事故では加害者側が任意保険に入っているケースが大半で、その場合その保険会社と連絡をとって示談交渉を行っていくのが常で、例外的に任意保険に入っていない場合に、やむなく強制保険(自賠責保険)の請求を行うというのがルーティーンです。
しかし本件のような、被害者側の過失が大きい場合は、自賠責保険によった方が有利な場合があるのです。
すなわち、本件のケースでいえば、現実の過失割合(任意保険の場合)は80%のところ、自賠責保険では過失割合30%と有利に扱われることになります。
さらに、逸失利益(死亡しなければ得ることのできた収入補償)算定の基礎となる給与額も、任意保険の場合、事故前の現実の給与額(課税証明の額)となりますが、自賠責保険では事故前の給与と死亡時の年齢に対応する年齢別平均給与額のいずれか高い額によることとなっています。この点で本件の息子さんの場合、実際の年収は約325万円に対し、年齢別平均給与は約578万円で、後者の方が圧倒的に有利です。
以上のことから任意保険基準で計算すると、本件では過失割合80%で結論的には1000万円弱という結果となってしまいます。
5、解決へ
以上をふまえて、本件はあえて任意保険での示談交渉ではなく、強制保険の請求手続を行うこととしたうえで、自賠責の調査事務所との間で、先に述べた事実関係、および過失割合についての資料提出と交渉を重ね、その結果、自賠責の死亡上限の3000万円に過失割合の30%を減じた70%を乗じた2100万円(プラス傷害分)を支払わせることができ、ご遺族の相談者からも大変に喜んでいただくことができました。
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|川崎市建築局職員の公務災害認定を勝ち取りました(弁護士 篠原義仁)
2017年4月25日 火曜日
市営住宅及び小中学校校舎の建築に当り、設計、施工、監督業務で建築現場に立合った川崎市職員が、認定申請後、約1年半の審査を経て、公務災害の認定を受けるに至った解決事例をご紹介します。
1 アスベスト被害で死亡
平成25年3月24日に川崎市建築局職員(主幹、建築対策室長経験の幹部職員)が死亡し、相続人間の遺産分割協議が整わず、同年10月にその遺産分割協議の調停事件を担当することとなりました。
その調停手続の過程で、その幹部職員は昭和23年から昭和57年まで建築畑一筋に勤務していたことがわかりました。住宅課時代は市営住宅の新築、建替業務に、営繕第1課、第2課時代には、川崎市立の主に小中学校の新築、建替業務に、そののち、再び住宅課、街区建築課で建物建替業務に従事していました。そして、退職後30年余を経過して、平成25年2月に呼吸困難に襲われ、同年2月14日に初診、3月14日に死亡したという経緯がわかりました。病名を尋ねたところ、「中皮腫」と診断されたということでした。
この公務災害について、認定申請実務、地方公務員災害補償基金川崎支部への申入、交渉へ協力して、認定作業のお手伝いをすることになりました。
認定請求は、諸資料の収集等の準備手続を経て、平成26年9月12日にこれを行い、平成28年4月8日に至り、公務災害の認定を受けるに至ったのです。
2 アスベスト被害を示唆する診断書
平成26年7月9日に公務災害申請用の診断書を取りましたが、診断書の記載は、次のようになっていました。
問診所見としては「労作時呼吸困難と咳嚇」が認められ、検査所見としては「右胸水貯留。胸膜肥厚。CTガイド下胸膜生検で悪性胸膜中皮腫」と所見され、傷病名は「悪性胸膜中皮腫」と診断されました。
災害発生日は「不詳」で、症状、治療の経過としては、診断日が2月14日で、「平成25年2月18日から2月20日まで入院し、胸水の検査を行い、悪性胸水が疑われた。平成25年2月27日再入院し、CTガイド下胸膜生検を行って、悪性胸膜中皮腫と診断した。高齢であるため胸水トレーナーで緩和的に治療した」が、「3月24日に永眠した」というものです。
つまり、建築現場での業務に長年従事したのち、退職し、長期間経過した時点で高齢発症し(但し、発症時期は不明)、自覚症状を訴えて治療を開始したが、初診時からみて極めて短期のうちに死亡するに至った事例となっているのです。
そして、診断書は「石綿の曝露歴があれば、本症と関連があると考えられる」と発症原因を記載し、アスベスト被害を示唆しました。
3 職歴とアスベスト曝露
これをうけて、次に、アスベストの曝露歴、すなわち職歴が問題となりました。しかし、申請人(相続人)は、被災者(被相続人)が川崎市の建築局に長年勤めていたことは知っていたものの、詳しい職歴は知らず、その職歴のなかで建築現場や建築解体現場でアスベストに曝露されていたか全くわからず、建築局の元幹部であったことを基礎に川崎市当局にその職歴紹介を行いました。
その職歴は、さすが行政というか、昭和23年以降の職歴(経歴)が明示され、同年以降昭和45年までの間、「市営住宅及び分譲住宅の建築工事の設計、施行、監督業務」、「計画建売住宅」や「住宅地区改良事業」とか、「学校建築工事」の「設計、施行、監督業務」を行い、各種建築現場の業務に従事していたことが把握されました。
また、昭和45年から昭和48年については、学校の営繕や住宅の建設業務に関わっていたことまでは抽象的に把握できましたが、設計、施行、監督業務といった具体的な業務内容の把握は、川崎市当局の調査でも不明でした。
昭和48年以降の業務は、デスクワーク中心なのか、現場業務に関わったのか、詳細は不明で、但し、市街地再開発事業、旧防災建築街区造成法関連の業務、川崎市耐火建築助成業務等に関わったことまでは把握できたのですが、それ以上の詳細は不明でした。
4 川崎市基金支部との交渉、そして認定へ
以上をふまえて、川崎市基金支部と交渉を進め、被災者は、市の職員で通常の社会生活、日常生活でアスベストに曝露される環境にはなく、前述した職歴のなかで、すなわち建築現場の業務に従事したなかで、アスベストに曝露した以外にその曝露歴は考えようもなく、従って、速やかに公務災害の認定を行うこと、あるいは、それ以上具体的な曝露歴を要求するのであれば、基金支部として川崎市建築局(現在はまちづくり局)に調査依頼し、川崎市としては、川崎市の市営住宅の建築年度(建替を含む)、市立学校の建築年度(同)については、調査可能であり、それと被災者の職歴を対応させ、具体的に建築現場を特定し、アスベスト曝露の可能性を照合すべきであると要請しました。
そうして、その後、基金支部に対し、その調査はどうなった、どうなったとつめつづけてきましたが、1年余たった(この間の基金支部の回答は「詳細は言えないが、本部にあげて意見調整中」「稟議にあげているところ」というもの)、平成28年4月8日、「災害発生年月日 平成25年2月18日」「傷病名 悪性胸膜中皮腫」ということで、「公務上の災害」として認定通知を得ることができました。
被災者遺族(相続人)の真相究明の真摯な取組みが、この認定に連なってゆきました。
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|新しい老後の備え「家族信託」とは何ですか。無料学習会に是非おいで下さい。 弁護士 星野文紀
2017年4月10日 月曜日
2017年4月14日14:00~川崎合同法律事務所では家族信託学習会を行います。
近年、「家族信託」は、遺言相続、後見等にかわる便利な制度として期待されています。しかし、「家族信託」とはなんでしょうか。
「家族信託」とは、信託の一種です。
信託とは委託者の財産から特定の財産を分離することで財産を管理する制度です。具体的には、委託者の財産を受託者に目的を定めて渡してしまう事になります。特定の人(受託者)を「信じて」財産を「託す」から「信託」と言うと思っていただければわかり易いとおもいます。
財産を受託者に渡してしまうといっても、完全に受託者の財産になってしまうわけではなく、受託者は信託の目的に従った管理処分しかできません。
つまり、信託された財産は、頼んだ人(委託者)からも頼まれた人(受託者)からも切り離された、信託の目的のための独立した財産になるというイメージです。
この信託の内、家族間で行うものを家族信託といいます。
では、家族信託を使うと何ができるのでしょうか。自分の財産を自分で管理できなくなるとき、自分の大切な人に財産を残したいが、その人が財産管理出来るか不安なときに問題解決に役立ちます。
まず、自分が高齢、認知症で動けなくなったときに、信託することによって自分の予め考えていたように財産を利用できます。
例えば、高齢、認知症の家族(自分を含む)の生活費や医療費、施設利用費の管理を、他の親族に信託する方法が考えられます。成年後見では、被後見人の為の財産保全に主眼が置かれていたのと比べると柔軟に運用可能です。
また、単純な相続より、必要に合った財産管理が可能になります。
例えば、自分が死亡した後や、動けなくなった後に、知的障害や、脳機能障害を持つ家族等に代わり財産管理を行うことや、浪費癖の強い家族の生活費の確保なども考えられます。
さらに、自分が生きている間と死んだ後で連続した財産管理が可能です。
例えば、第三者に財産を信託し、生きている間は、自分が受益者(信託財産から利益を得る人)、自分が死んだ後は指定した受益者が給付を受けることも考えられます。委託者の意思通りに、次々と後を継ぐ人を決めることが出来るのです(まだ生まれていない、孫や、甥姪を受益者にすることも可能です。)。
家族・親族に管理を託すので、専門家のように高額な報酬は発生しません。また、親族間で財産の管理を明らかにすることで将来の争いが回避できる効用もあります。
家族信託は、資産家のためのものでなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みです。ただし、家族の実情にあった制度づくりが必要ですので、今回の学習会でイメージを作った後に、専門家に相談の上で、利用を考えてみてはいかがでしょうか。
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