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山際大志郎議員政治資金規正法違反等事件 検察審査会へ申立をしました(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月28日 金曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
衆議院選挙神奈川18区選出(川崎市宮前区・高津区・中原区)の山際大志郎衆議院議員の政治資金規正法違反等の2つの事件について、多くの市民が横浜地方検察庁に刑事告発をし、受理され捜査が進められていましたが、横浜地方検察庁は嫌疑不十分として不起訴処分としたことに対して、2023年4月28日、検察審査会への申立てを行いました。
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/246702
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20230428/ddl/k14/010/128000c
神奈川新聞 https://www.kanaloco.jp/news/social/article-985884.html
第1 山際大志郎元大臣の相次いだ政治資金規正法違反等に対する刑事告発の内容
1 事件① 違法政治資金パーティー事件
2020年12月23日、出山際大志郎衆議院議員及びその資金管理団体である「21世紀の政治経済を考える会」の会計責任者が、憲政会館で開催した、政治資金パーティー「衆議院山際大志郎政経セミナー」では、県政記念館の席数は着席496席であるのに対し、山際大志郎大臣が販売したパーティー券の枚数は870枚と、参加可能人数の1.7倍も販売していることが、政治資金規正法違反に当たるとして、2022年6月、選挙区の住民を中心に合計約350名が刑事告発をし、7月19日、横浜地方検察庁特別刑事部が受理しされました。
2 事件② 家賃名目寄付事件
また、山際大志郎氏が支部長の「自由民主党神奈川県第18選挙区支部」(「県第18選挙区支部」)は、毎月40万円を超える家賃(年間520万円前後)を選挙区内の会社「21世紀(株)」に支払っていると政治資金収支報告書に記載していました。しかし、相場では20万円前後であり、20万円を超える分(年間280万円前後、3年間で847万円超)は寄附になり、選挙区内にある者に寄附することは公職選挙法に違反します。そのうえ、山際氏は「21世紀(株)」の株を全株もっていました。また、同社社長は山際氏の私設秘書であり、多くの被害者を出してきた反社会的団体である統一協会の信者であると報道されている人物でした。以上のことが発覚しないようにするために寄附分を上乗せして高額な「家賃」を支払っていると政治資金収支報告書に記載していたことは、政治資金規正法違反です。2022年10月6日、約200名の住民が刑事告発をし、同年12月15日に同じく受理され、捜査が進められていました。
第2 横浜地方検察庁の「嫌疑不十分」の不起訴処分に対する170名を超える市民が検察審査会へ申立
上記2つの事件について、2023年3月8日付で、横浜地方検察庁は、嫌疑不十分としてまとめて不起訴処分としました。
しかしながら、2つの事件は、いずれも、根拠のない刑事告発ではないことは、処分理由が「嫌疑なし」の処分ではないことからも明らかです。それにもかかわらず、横浜地方検察庁が、「嫌疑不十分」を理由に不起訴処分としたことは、政府に忖度をし、結論ありきで捜査・立件を怠ったと考えざるを得ません。
日本で,名ばかりの政治資金パーティーの開催により,異常な利益率の下,実質的には寄附金の受領が横行しているのが現状であります(事件①)。さらには、山際氏は、政治資金を私物化するようなことまで行っています(事件②)。それにも関わらず、検察庁はこれを是認するもので、到底受け入れられない処分であり、検察審査会へ申立をすることとなりました。
事件①については176人、事件②110名もの多くの市民が検察審査会へ申立をしました。
検察審査会が、起訴相当または不起訴不当と判断すれば、あらためて捜査が再開されることになります。選挙権を有する国民の中から選ばれた検察審査員が、市民の目線で、権力に忖度した検察官が不起訴処分の不当性を明らかにし、政治献金による金権政治を正し、市民のための政治を取り戻すことを求めていきます。
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|インボイス制度の問題点(弁護士 川岸卓哉)
2023年4月13日 木曜日
川岸弁護士については、下記ページをご覧下さい。
2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として、「インボイス制度」が導入されることとなっている。これに対し、漫画家・アニメーション・声優・俳優の4つの団体が共同で反対の声明を発表するなど、多くの業界団体が反対の声明を発表している。インボイス制度は何が問題なのか。
1 インボイス制度の仕組み
インボイス制度では、仕入れ税額控除を行うために、取引事業者から登録番号が記載されたインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要がある。インボイスを発行するためには税務署に登録し、課税事業者にならなくてはならず、課税売上高が1千万円以下の免税事業者、いわゆる小規模事業者が事実上取引から排除されるなどの不利益を被る可能性がある。コロナ禍で困難を極めた小規模事業者にとって、取引先を失うことは死活問題である。取引を得るために適格請求書発行事業者となれば、免税とならずに生活が圧迫され、逆に免税事業者であり続ける選択をすれば取引が減少する可能性があり、同じく生活が圧迫される。
2 インボイス制度は広く影響が及ぶ
インボイス制度による影響を受ける業種は、建設業の一人親方、独立系SE、フリーライター、個人タクシーの運転手、フードデリバリーの配達員、漫画家、声優、アニメーター等々、幅広い職業に及び、その中には低所得でやりくりをしてきた者も多いことから、事業者団体が反対の声明を上げる状況となっているのである。
その影響は、売上高が1000万円以上の既に納税を行っている課税事業者にとっても無縁のものではない。冒頭で紹介した漫画家・アニメーション・声優・俳優4団体の記者会見では、課税事業者にとって多大な事務負担が生じること、作画作業にアシスタントを活用する漫画家にとってはアシスタントに登録を強いるのか自らが仕入税額控除を断念するのかという選択を強いられるうえ、インボイス制度の導入により2~3割の事業者が廃業を検討しており作業の担い手を失いかねないことなど、多くの懸念が表明された。
3 消費税のインボイス制度は税負担の実質的な負担の公平に反する
そもそも、消費税は、所得の過多によらず国民に一律の税負担を強いるもので、低所得者ほど負担割合が高くなる「不公平税」として、導入時点においても大きな反対があった。1988年の竹下内閣で税収を社会保障に用いるとしたうえで消費税法が成立したものの、零細事業者に対する影響が重大なものとなることから、消費税の取り扱いについては、年間の課税売上高が3000万円以下の事業者であれば、消費税の納税義務が免除されることとされた。その後1000万円以下の事業者へと改悪され、零細事業者への負担が引き上げられるに至っている。インボイス制度の導入は、免税事業者からの適切な納税を進める公平な税負担を標榜していると言われることもあるが、小規模事業者の免税は所得税の基礎控除などと同様に税負担の実質的な公平に資するものである。
4 世界の流れに逆行するインボイス制度
新型コロナ禍や円安、物価の高騰など生活への課題が山積し、フリーランスや個人事業者が大打撃を受ける現状において、世界では消費税の減税が進められる中、日本では、インボイス制度の導入による増税は、さらなる生活困窮へと追い詰められる者が増大する可能性がある。日本の対応は世界の流れに逆行するものと言わざるを得ない。インボイス制度は、国民の大半を占める零細事業者・個人事業主へのさらなる負担やプライバシー侵害を押し付ける「弱い者いじめ」にほかならず、直ちに中止・廃止されるべきものである。
いつの時代も為政者による税負担に対し生活のために抵抗してきたのが人民の歴史であり、我々も声をあげなければならない。
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